彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (6) fin

2023-08-12 17:02:55 | 二、三の事情

上司は、

蕎麦屋の勘定をすまし、

わたくしを連れて、

銀座のネオン街へ

足を運んだ。



上司は、ある店の前に止まり、

地下へと階段をくだる。

そのあとを、なにも、お互い声を発することなく、

これは、当たり前のことだ、と、

暗黙の了解事項として、オレは、

儀式のごとく、続いて、一段、一段、階段をおりた。

そして、その店のドアを開けて店の中に入った。

高級クラブである。

店のなかは、

髪を綺麗に和髪に結いあげて、

華やかな着物を着た女性たちが、

きらびやかなシャンデリアのもと、

革ばりの濃い茶色のソファーで、

いちげんさんお断りのなか、

いちげんさんのわたくしを、

接待をしてくれる。

場違いのわたくしは、

戸惑って、隣に座った着飾った着物の女性に、

病院のことが、頭に引っかかりながら、

愉快ではないが社交辞令の会釈をした。

なんで、わたくしは、ここに、いるのだろう。

程なくすると、

「この店のママです、いらっしゃいませ」と、

髪を一段と、綺麗に和髪に結い整えた

華やかな、それでいて、シックに落ち着いた着物姿の、

ママが、挨拶に現れた、



始め、よく判らなかった。

それは、当然、そう言って挨拶をしているんだから、

この店のママなんで、しょ、と、

いまいち、納得できない、会釈をしたん、だが。



ママの挨拶の、ハスキーな声で、

記憶が、当時の、そう、その当時の、

眉のちょっと太い、斉藤由貴似の、

その顔とつながった、

えっ、えっ、えっ、えっ、

ト、ト、トモちゃん!?

眼帯から、

6年、いや、8年、

桁が、違う、よ、

やっぱり、トモちゃんは。

眼帯の彼氏とは、

捨てたのか、捨てられたのか、

上手く、捨てられるように、話を持って行ったのか、

トモちゃんは、

そんな器用な子じゃなかったはずだけど、

教わったのか、

環境がトモちゃんを育てたのか、変えてしまったのか、

この長いあいだに、なにが、あったんだろう、

トモちゃん、

いろいろ、あったんだろう、な。



おたがい、なにもない、

キヨい関係で良かったね。


出世だね、

貴方が、わたくしのまわりでの、

一番の出世頭になるんだろうね。

でも、

いま、幸せなのかなぁ、

満足なのかぁ、

トモちゃんは。


あれから、

新たな、姉妹店でも、出店して、

忙しくしてるのかな、トモちゃんは。

もう、トモちゃんって呼ぶのは、失礼だよね。

トモコさん。

ずいぶん、酔っ払っちまって、

お店の、場所も、名前も、憶えていない、よ。

その時いた会社とも、

トモコさんのお店を訪ねるために、

お店の名前と場所を、聞こうとしても、

連絡をとれる間柄じゃないし、

ふたたび、

トモコさんのお店の敷居をまたぐ

気持ちもないですしね。

 

その当時の話をしても、

おたがい、つまらないものね。



と、いっても

そもそも、トモコさんのお店は、

わたくしには、敷居が、高すぎるしね。



サヨナラ、元気でね、

トモちやん。



やっぱり、いまの トモコさんの ことは、

よく、わからないから。


お達者で。

 

トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづいていくんでしょう。



 

fin 

 

 

初出 17/08/16 05:18 再掲載 一部改訂

 


彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (5)

2023-08-12 00:45:38 | 二、三の事情

母が癌で入院しており

病院で、

付き添っていました。

 



その時、

わたくしの携帯に、着信が。

着信先を見ると、会社の上司だ。



今晩、銀座で、どうしても、会えないだろうか、と。



わたくしの頭をよぎったのは、

突然の、お客さんとの商談?、それとも、接待?

そんな、あたりさわりのない、ことを考えて、

待合せの銀座の蕎麦屋に向かった。



もう、上司は、テーブルに座っており、

まずは、飲もうと、ビールを飲んで、

日本酒を飲んで、締めに、蕎麦をたぐった。


なぜ?、なぜ?、なぜに?

わたくしは、ここで、蕎麦をたぐっているんだ。

わたくしを呼んだ、目的は、なんだ、

なんなんだ、よ。



なんで、呼び出されたのか、とたずねても、

上司は、まあ、まあ、まあ、と、

それ以外、なにも、言わない。


母のことが、気にかかる。



大瓶のビールと日本酒、2合、

二人で、飲んだだけだから、

まだ、まだ、全然、正気です。



これからです、

確信にいたる話は、………、、

 

 

トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます、

 

 

 

初出 17/08/14 05:09 再掲載 一部改訂

 

 

 

 


彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (4)

2023-08-12 00:38:05 | 二、三の事情

あくる日、

トモちゃんは、

右眼に眼帯をしてました。



酔っ払って、転んだのか、

上司としても、心配できいた。



トモちゃんは、「言えません、」と、拒んだけれど、

ずっ〜と、見守ってきた、上司のわたくしに、

話せないことって、あるのかい、と

ズルいけど、ことの顛末の事情を聞きだした。


やっぱり、

トモちゃんは、桁が、違う。

「十字架を、背負って、

 生きて行くことは、

 出来ません。」って、

キリスト教を持ち出した。



信心なんて、たぶん、これっぽっちもないくせに。

(深い信仰があったなら、謝ります。ゴメンね。)



初めて、聞いたが、

トモちゃんは、彼の暴力を、愛だと、思ってたらしい。

それは、ホントに、愛だったの、トモちゃん。



その彼氏に、

正直に、昨日の一件をすべて話して、

いま、眼帯をしている状況に到り着いたんだそうです。

なにも、話さなければ、

判りもしなかっただろうに、信心のなせるわざなのか

テキトーに、会社を休めば、いいと思うんだが、

たぶん、それも、トモちゃんにとっては、

「十字架を、背負って、

 生きて行くことは、

 出来ません。」

と、答えるんだろう。



そもそも、

なんで、眼帯の原因(もと)となる様な

コトをしてしまったの?、と、たずねると、

「あんなになっているのに、可哀想で」と、

トモちゃんは、人類愛のひと、なのだ。

ホントは、

深い、深い、深い、

慈悲深い信仰にもとづいているのかも。




さよなら、トモちゃん、

いい思い出をありがとう。

元気でね。



しかし、

ここで、話が、終わらないのが、

わたくしなどの、理解を超えて行く、

トモちゃんなのです。

 

 

トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます、

 

 

 

初出 17/08/12 04:49 再掲載 一部改訂

 


彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (3)

2023-08-11 07:19:16 | 二、三の事情

とうとうと、

そんなトモちゃんとも、

突然のお別れの時です。



ハードなこの業界で、

トモちゃんは、カラダを壊してしまいました。

 

ホントのところ、

わたくしには、トモちゃんのカラダが、

壊れてしまった理由は、

仕事なのか、何なのかは、うかがい知れません。

 

忘年会とともに、

トモちゃんの送別会となりました。

 

1階が、カウンターバーで、

地下が、プールバーになっている、

当時、よくある、イベントバーです。

 

会社の皆んなは、地下のプールバーで、

ビリアードをしながら、

わいわいがやがや、飲んでました。

わたくしと、同僚、先輩と、トモちゃん、

この4人で、1階のカウンターバーで、

思い出ばなしを、つまみに、

笑いながら飲んでいました。

 

皆んな、かなり、酔っ払っていました。

 

トモちゃんの隣の同僚が、

いたずらごころで、ズボンのチャックをさげ、

My Son、(マイ サン)、息子を、

どっこいしょ、っと、(これで、いいかい!?)

社会の窓から、社会へと、可愛い子には旅をさせろと、

立派に旅立たせました。

 


トモちゃんは、

わたし達の常識では、はかれません。

 

ふくんで、そして、上下運動に、

 

地下から上がって来て、それを目撃した女子社員が、

あわてて、地下の社長に言いつけ、呼びに行きました。

それで、この件に関しては、

一件落着に、み、え、た。

その社長を呼びに行った、

気のきかねぇ、いや、嘘です、

気のきいた女子社員が、

トモちゃんの彼氏に、

夜分遅くだけれども、と連絡をして、

酩酊しているトモちゃんの状況を説明して、

タクシーで帰らせました。

 

 


トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます、

 

 

初出 17/08/11 09:25 再掲載 一部改訂


彼女について 私の知ってる二、三の事柄 (2)

2023-08-11 03:06:09 | 二、三の事情

とある撮影の仕事で、

 

わたくしたちが、

地方ロケーションの仕事から、

撮影を終えて東京に戻る前日のことです。

 

東京の会社で留守番をしているトモちゃんに連絡し、

東京に戻る飛行機の便名とその到着時間を伝えて、

羽田から、撮影機材を都内の機材会社に、

返却するための機材車の手配をするように、

指示を出しました。


トモちゃんには、ちゃんと、メモを取らせ、

そのメモの内容を

復唱する様に繰り返させ、

念を押しました。



それで、あくる日、羽田に着くと、

トモちゃんは、

ひじを、くの字に曲げて

ハンドバックをさげていました。



「おつかれさまですぅ」ハスキーな声で、

トモちゃんが、笑顔で迎えてくれます。

お〜ぉ、お〜、お疲れ、

で、機材車は?

「ハイっ?」

ハイっ!?、じゃね〜よ、機材車は?

「ハイっ?」

トモちゃんは、とっても笑顔です。

いい加減にしろ、よぉ、!!

機材車は、どこなんだ、よぉ、!!

「呼んでません(笑)」

ぶちッ、ぶち、ぶち、ぶち、ぶちッ、

お前が、ひとり、迎えに来て、なんに、なるんだよぉ!

トモちゃんは、あふれんばかりの笑顔で、

「わたしが、迎えにくると、

 皆さんが、喜ぶと思ってぇ

さすが、トモちゃん、は、逸材です。

眉が太く、斉藤由貴に似て、とっても可愛いと、

自信たっぷり、なんでしょう。



昨日のメモは、

どうしたんだぁ!?

喰っちまったのかぁ!?



記憶は、溶けちまったのかぁ!?

われわれの常識の次元を超えています。



おかげで、ワゴンタクシーで、

機材は、無事、都内の機材会社に返却されました。



トモちゃんは、

まるで桁が違うんです。

 

 

 

トモちゃんの伝説は、

まだ、まだ、つづきます、

 

 

 

初出 17/08/10 17:21 再掲載 一部改訂