「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

続く異常気象 ~謎の快晴?

2018-10-18 | 雑記
こ、こんなの、私の知っているBelfastじゃない!

と叫びたくなるほど、連日、青空が続いています。
放射冷却なのか、夜間は5℃前後まで気温が下がりますが、日中は温かい日差しがあります。はっきり言って、こんなの異常気象です。私の知っている英国北アイルランドのこの街は、うんざりするほど冷たい雨が降り、どんよりした雲に覆われる場所だったはずでした。しかし、今週はなぜか快晴が続いているのです。
あれれ~、おかしいぞ~(コナン風に)。

まあ、天気が良いのはいいことです。私にとっては、雨よりも晴れの方が、やはり嬉しいですから。天候悪化に伴う季節性うつの発病もなくなるというものです。例えば、私も嫌なことは腐るほどありますが、今日、ラボを抜け出してすこし散歩したら、いい気分転換になったのでした。

今日は知人の誕生日をみんなでお祝いしました。隣の研究センターのポスドクですが、いつも優しく親切にしてくれる方です。だから、今日は本当に晴れて良かったなあと思いました。天気も彼女を祝福してくれていましたね。

Tomorrow never knows

2018-10-09 | 雑記
英国に戻ってきてから、修羅場が続いています。
これも今夏の国際共同研究がうまく進まなかったせいですが、私の拙い英語ではうまく事情をBossに伝えられず、かなりお叱りを受けてしまいました。私が理解に苦しむのは、Bossが私のことを何でも出来る万能人間であるかのように様々な要求をしてくることです。もし日本語で反論可能であったら、正直、「そんなの無理だろべ」と言ってしまうところです。
とにかく、汚名返上も含めて、これから1ヶ月が忙しくなるのは間違いありません。

さらに、来年帰国後のポジションについても調整が続いています。
所属医局の教授と相談しつつ進めていますが、高い競争率を誇るポジションに応募することになり、申請書類作成にも追われています。不採択だった時のことはあまり考えたくはありませんが、その時は東北に私の居場所があるのかどうか、実はよく判りません…
日本にはもう居場所がないのかもしれません。

10月はハロウィーンがあるので街のあちこちで装飾の準備が進んでいます。
楽しげな雰囲気の中で、しかし、すこし俯きがちで歩いています。
明日は明日の風が吹く(Tomorrow never knows)とは言いますが。
ここの風はちょっぴり冷たいです。

そろそろ英国へ

2018-09-14 | 雑記
長いなが~い日本での滞在を終えて、そろそろ英国へ戻ります。
今夏の日本における研究費、滞在費は、英国の某学会から助成されているので、なんとか素晴らしい成果を残したいところではありますが、「まあ、無理だろべ」と諦めています。短い論文を幾つか書きましたが、学術的な価値がどこまであるのか、自分でもよく判りません。しかし、出来るところから始めて行くしかありませんから。まずは手持ちのデータを発表していくしかないということです。

浅学非才の身ではありますが、それなりの研究業績を有する若手医学者として、私が熱意をもって国際共同研究をやろうとしたところで、今回は色々な困難に直面しました。私がお世話になった研究機関の先生方からは「長い目で見て欲しい」と言われましたが、日本人の私が日本語を駆使しても、短期間で共同研究を展開するのが難しいわけですから、今後英国から英国人研究者がこちらを訪れることはおそらくないでしょう。このままではただの時間の無駄になりますから。
世界との交流を増やして行くには、やはりもう少し学術研究機関として突き詰めていく必要があるかと思います。それはおそらく、ほとんどの日本国内の機関に当てはまることでもありますが。真の意味で「国際化」にはまだまだほど遠いと改めて感じています。

私は、日本人として、日本から世界へ研究成果を発信する必要を強く感じています。そうしなければ我が国の研究・開発面におけるプレゼンスは相対的にどんどん低下してしまうことでしょう。中国、インドなどの近年の研究成果は凄まじいものがあります。
したがって、私も日本人研究者の端くれとして、今後も日本の医学界、とくに放射線医科学分野で貢献したいと思っています。具体的には、日本で研究グループを率いて、現在取り組んでいる幾つかの研究プロジェクトをもっと推進したいのです。
しかし、現実はなかなか厳しくて、気持ちが折れそうになることもあります。

英国へ戻る時、私はいつも寂しいような、逆に安堵するような不思議な心地を抱きます。もちろん日本は母国ですが、しかし、より自由にやりたいことが出来る場所に行くのは研究者としての冥利に尽きるわけで、そういう意味では現時点においては英国に滞在しながら研究する方が私個人としてはハッピーな状態なのかもしれません。

日本で、福島のため、日本のために研究をしたいと思いますが、残念ながら日本では私のやりたい研究が出来ないのであれば、どうしたらいいのか?

自分の中に答えの断片はすでに幾つかありますが、一つの確信にはまだ至っていません。しかし、ある意味で楽観的でいられるのは「答えとは得るものではなく、いつだって突きつけられるものだ」と知っているからです。私がいくら悩んだところで、おそらくは周囲の環境と自分の希望を照らし合わせて、いずれ決まるべくして決まるのだろうとも思っています。

愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶ

2018-08-27 | 雑記
先週から怒りで脳汁が沸騰しそうな事柄が多くて、色々と苦労をしました。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ Nur ein Idiot glaubt, aus den eigenen Erfahrungen zu lernen」と鉄血宰相オットー・フォン・ビスマルクは言ったそうですが、彼が前例主義に囚われる我が国の組織を見たら何と言ったでしょうか。現在のように変化が激しい時代にもかかわらず、前例がなければ何も出来ない愚鈍な組織を見て、もしかしたら「馬鹿め」と言うのかもしれません。
最近、私も馬鹿な事務屋どもに馬鹿めと言ってやりたいことが多いです。

怒ってばかりいても仕方ないので、ヤケ食いです。
ということで、最近は蕎麦にはまっています。私は子供の頃から蕎麦好きでしたが、英国ではまともな蕎麦が食えないこともあり、最近改めて「蕎麦って美味しいな~」と実感しているところです。もしかしたら麺類の中で一番好きかもしれません。

南三陸さんぽ2018夏 ~名勝・神割崎

2018-08-18 | 雑記
バーロー、オメーのブログは「英国留学ブログ」じゃなくて、もはや「宮城放浪ブログ」になっているじゃねえか、バーロー。
と言われそうですが、もうすこし宮城県滞在は続くのじゃ。まあ、そのうち英国での研究も再開しますし、たまには日本でのんびりしたいし、東北大学で研究もしたいんじゃ~ということで、どうか許して下さい。

ということで、今日も今日とて宮城県太平洋側を旅しています。東日本大震災の時、津波の被害が深刻だった同地域を見ていると、今日までにだいぶ復興が進んだ様子がよく判ります。災害がきっかけとなって良くも悪くも劇的に変わり始めた人々の営みを見ると、やはり色々と思うところがありますね。

三陸復興国立公園である「神割崎(かみわりざき)」を訪ねました。
上の写真はちょうど岬が割れている場所です。遠い昔、南三陸町(旧・志津川町)と石巻市の境界がまだ決まっていなかった頃、ちょうどその浜に鯨が上がって二つの村人たちの間で獲り合いになってしまったことが三日三晩続いたそうです。その争う様子を見て神様が怒り、「仲良く鯨を分けるように」ということで鯨もろとも岬を二つに割ってしまい、その割れ目を二つの村の境界とすることにしたのでした。この場所が神割崎として現在に伝わっています。
おいおい、神様、ワイルドすぎだろ。

公園は、キャンプ場がメインとなっていて、仙台など近隣地域からサマーキャンプでいらっしゃっている観光客の方々の姿がありました。中にはレストランもあり、地元名物の蛸を使ったタコ味噌担々麺が有名だそうで、食後のオクトパチュ~ジュースも人気だそうです。美味しかったです。

   

仙台さんぽ 2018夏 ~榴ヶ岡天満宮

2018-08-17 | 雑記
今日は仙台駅の東口の方を歩く機会がありました。
そこで、「杜の都の天神様」こと榴ヶ岡天満宮に行ってみました。久しぶりに訪れましたけれど、あまり変わっていませんでしたね。私は一応、医学者の端くれですので、学問の神様である道真公に「研究がうまく運びますように」とお祈りしておきました。
何もかも皆懐かしい…

英国でも石煉瓦の装飾が美しい教会に見惚れることがありますが、日本の寺社もそういう神秘的な美しさでは負けていないというか、やはりそれぞれ独特な雰囲気があるように思います。私は歴史好きのせいかもしれませんが、古い寺社を回るのがなんとなく好きですね。
榴ヶ岡天満宮は、松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で立ち寄った場所とも言われています。江戸時代の天満宮の姿を想像しながら境内を見ると、在りし日の俳聖の姿がかすかに見えたような気がしました。

 

Youは何しに日本へ? ~日本の学術機関の弱点について

2018-08-10 | 雑記
*本記事はすこし改稿しました。私はこれまで読者の存在をあまり意識してきませんでしたが(所詮私的なブログなので)、今後は読者のご意見を参考にしながら書くことに致します。本記事は読者の方からのレスポンスを鑑みて、すこし書き直した部分と補足した部分があります。


日本での滞在期間が長くなってきました。

Youは何しに日本へ? そう問われた際に、面倒に感じている時は「ただの夏休みですよ、アハハ」という説明をしていますが、もちろん、実際は違います。資格を取得するための研修も受講しましたが、一番の目的は当然「共同研究の遂行」であります。契約上、臨床もしていますが、やはり研究をこそしたいのです。

私がお世話になっている研究所では、東北地域住民から様々なデータを取得している、世界的にも類を見ない研究機関です。正直申し上げて、私自身、色々と思うところはあります。しかし、たしかに一つ言えるのは「取得されたデータは、ちゃんと研究利用・解析されなければ、取得した意味がない」ということです。

私は、東北地方の地域住民からすでに取得された膨大なデータの中から、せめて自分の放射線研究に活用できそうな点を有効にしたいと願っています。これまでに英国で取り組んできた研究と合わせることで、将来的に福島原発被災地に還元できるような、興味深い学術成果が得られるのではないかと考えています。したがって、英国の学術機関に籍を置いたまま、今は日本へ出向する形で、日英共同研究に取り組んでいます。

ただ、この研究所は研究者に対してある意味で過剰なまでに恵まれているのですが、残念ながら事務スタッフの貧弱さが目立ちます。これは東北大学全体に言えることかもしれませんが、事務仕事の多くにいわゆる「パートのおばちゃん」「田舎のおばちゃん」を雇っているせいで、事務方のパフォーマンスが全体的に低調なのです。

「研究のプロ」には、当たり前ですが、「事務のプロ」が必要です!

しかし、我が国を代表する学術機関として指定国立大学法人でさえ、「事務仕事も満足に行えないくせにおしゃべりと言い訳だけは一人前のおばちゃん」たちが跋扈してます。やはり悪貨は良貨を駆逐するものなのでしょう。もちろん、全員が無能とは言いませんが、パート感覚でいい加減な気持ちで、東北大学内の日本最高峰の先端的な研究所で事務をやっている方々があまりにも多すぎます。簡単な内容ならばともかく、すこし複雑化すると途端に機能停止する方々が少なからずいます。
それではやはり困ります。
本来ならば、世界一を目指す学術機関の事務部門は「世界一の事務部門」でなければならないのですから。
事務方をしっかりと育成する必要もあるでしょう。英語コミュニケーションの研修(せめて簡単な挨拶と事務対応くらいは出来るように)など、研究者だけでなく機関全体の人材育成を進めていくべきでしょう。

事務作業に代表されるように、これは日本の研究機関に共通して言えることなのかもしれませんが、「裏方的な仕事を軽視している」ことは大きな弱点ではないでしょうか?
当然研究者の頑張りも大事ですが、同時に周囲のスタッフのレベルも上げていかないと、英国など諸外国に比べて研究効率が落ちてしまうと思います。

たとえば、昔は多くの大学研究室で「助手」や「技官」というポジションの方々がいました。彼らは必ずしも目立った仕事はしなかったのかもしれませんが、大学院重点化や国立大学の独立行政法人化に伴う研究関連費削減によって、どんどん姿を消してしまいました。もちろん、事務のスタッフ数も減りました。
これではマズいのではないかと私は思うわけです。
これでは世界と戦えないのではないかと…

英国であればイライラすることがあっても不貞寝するしかありませんが、日本には美味しいものが沢山ありますから。ストレス解消にヤケ食いしています。
日本で絶対に太ってしまったorz

私立大学はある程度恣意的に学生を選んでいい!?

2018-08-02 | 雑記
東京医科大学とかいう大学が「女性学生の入学試験の点数を操作し、合格者が男性優位になるように図っていた」と報道されました。さもありなん、と言ったら怒られるかもしれませんが、1) 縁故学生、2) 女性学生、3) 高年齢学生(社会人を経験してから医学部に進む者)などの点数操作などは、ずっと昔からあるだろうと業界内では言われていたことでもありました。
東京医科大学のイメージ低下は避けられず、まっとうな手段で入学した在学生、卒業生の方々はさぞかし迷惑でしょうね。でも、仕方ないですね、そういう大学を選んだのは自分ですから。

先日、この件について某K大学という私立大学の医学部出身の先生とお話しする機会がありましたが、「私立大学の医学部なんだから、恣意的に医学生を選んでも問題ないでしょう」というご意見を述べていらっしゃいました。

私自身は、べつに私立の医大がどう学生を選別しようとどうでもいいのですが、だったら受験要綱に「本学は1) 縁故学生を優遇し、2) 女性学生を蔑視しており、入学試験においては得点を操作します」と正々堂々と書いておかないと、わざわざ高い受験料を払ってその私大を受験した学生さんにとってはフェアではなかったんじゃないかなと思います。

こんなことで日本の医療界は大丈夫か?と、ご心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
医師になるのに、医学部入試だけがチェックポイントではありません。国家試験がまともに機能していれば、アンフェアな手段で医学生になれたとしても、医師免許は得られませんから。国家試験まで不正があったらヤバイですが、たぶん、その点はさすがに大丈夫だろうと思います。

日本のお祭り

2018-07-21 | 雑記
実家の近くの夏祭りを観に行きました。
凄まじい暑さの中、自分自身が積極的に参加する気は0ですが、皆さんがワイワイしていらっしゃるのを観るのは、まあたまには良いかなと思います。日本のお祭りってこんな感じだったかな~とか思いながら、焼きトウモロコシを買いました。

日本は良いですね。英国北アイルランドも悪くありませんが、やはり母国が落ち着きます。
「このまま英国で研究を続けるのですか?」と聞かれることもありますが、来年英国大学院で博士号を取得した後は日本に戻りたいと希望しています。

留学は来年秋で終わる予定ですが、その後の就職先というかポジションについて、今は色々と探しています。せっかく留学したからには、放射線研究を今後も続けたいですし、出来れば福島原発被災地に還元できる成果を得たいと思っています。

現在所属している医局の教授にもご協力して頂いておりますが、来年の帰国以降どうなるかはまだ判りません。もしも東北大学内で自分で納得できるポジションが得られなかった場合、研究を続けるために日本全国どこへでも行く可能性があります。

悩み深き夏ですね。

炎の仙台弾丸ツアー

2018-07-21 | 雑記
杜の都・仙台へ行きました。東北のくせに暑くて暑くて仕方なかったですが、18日から20日まで2泊3日の強行軍でした。当初の予定では福島県相双地域まで足を運ぶ予定でしたが、直前の予定変更が相次ぎ、結局、東北大学で様々な用事をこなすので精一杯でした。
東北大学の非常勤講師になってから、病院内だけでなく学内の色々な先生方とお会いしていますが、やはり専門分野が違う方々とお話しさせて頂くと面白いですね。自分の視野が広がるというか、様々な刺激になりました。

東京駅、KITTE、そして仙台駅。あちこち行きましたけど、本当、日本は人が多いですね。英国北アイルランドと比べて、どこも混んでいました。もはや自分には首都圏の通勤通学ラッシュは耐えられないなと、つくづく思いました。






旧横浜大口病院の不審死の真相が明らかになるか ~看護師逮捕「20人くらいに消毒液を」

2018-07-07 | 雑記
横浜市神奈川区の大口病院(横浜はじめ病院に改称)で相次いで患者さんが中毒死で亡くなられた事件、状況からしておそらく医療従事者が関与していることがもともと疑われていましたが、先日、看護師だった容疑者を殺人容疑で逮捕したという報道を知りました。どこまで殺人罪に問われるのかは判りませんが、本当に20人くらいに消毒液を投与したとしたら、医療従事者による大量殺人として記憶に残るものでしょう。

私は大口病院には行ったことはありませんが、神奈川区には中高の友人も住んでいましたし、かなり地元に近い場所で起きた事件だったので気になっていました。まずは迷宮入りせずに事件が解決に向かいつつあることを嬉しく思います。捜査関係者の方々はお疲れ様でした。

手塚治虫の名作漫画『ブラックジャック』の中で、テロリストが院内で手術中の医師と患者を人質にして院内を停電させ、患者を死なせる話があるのですが、その回の捕まったテロリストに向かってブラックジャックが語りかけるシーンがあります。
「たいした奴だな…簡単に5人も死なせるなんて」
「こっちは…ひとり助けるだけでせいいっぱいなんだ…」

ある程度予想されたこととはいえ、いざ本当に看護師の容疑者が逮捕されたとなると、色々と思うところがありますね。「ひとり助ける」ことさえとても大変だということをよく知っている医療従事者が故意に患者を死なせるなんて…

査読 peer review についての雑感

2018-07-05 | 雑記
『ブラックペアン』というドラマでも採り上げられていたようですが、医師や医学者の業績というものは基本的に「査読付き論文を出版してなんぼ」であります。査読付き論文を出版するジャーナルには大抵の場合impact factorという数値が付いているのですが、これまで出版した論文のジャーナルについたこの値を合計して、その研究者の業績をおおざっぱに評価することは良くも悪くも今でも行われています。

この「査読」というのは、ある論文が科学誌に投稿され時、同分野の研究者たちによって評価される過程のことです。すぐに出版すべきだ(accept)、わずかな訂正が必要だ(minor revision)、多くの修正が必要だ(major revision)、出版に値しない(reject)などの評価が査読を通じて決定されます。つまり、通常の場合、1報の学術論文が出版されるまでには、複数の研究者たちによるそれなりに厳正な評価を経ているはずなのです。それでも、時に「どうしてこんな論文が、このジャーナルに掲載されているのか」という批判が起こることもあります。STAP細胞論文などはその最たる例かもしれません。

この査読という作業は基本的にボランティアです。自分たちの論文も誰かに査読されているので、その恩返し(?)として誰かの論文を査読するような感じでしょうか。人に依るのかもしれませんが、査読するのはかなり手間がかかります。しかし、それなりの時間と労力をかけて他人の論文を査読しても何も後に残らないのではあんまりだろうということで、最近では査読歴も研究者の業績の一つとみなす風潮が広がっています。実際、査読を行った研究者にお礼として「査読証明書」を発行するジャーナルが多くなってきました。その証明書をもってして業績の証とするわけです。

さて、私も最近、毎月のようにどこかのジャーナルから査読を依頼されるようになりました。Impact factorが高い一流ジャーナルから、名前を聞いたこともないジャーナルまで様々です。申し訳ないのですが、私はnative speakerではなく、他人様の英語論文の査読はかなり面倒なので、基本的には断ることが多いです。まだ他人の論文のことまで気にかけている余裕がないというか、恥ずかしながら自分のことだけで精一杯なので、例えば昨年は2件、今年もこれまでに2件くらい査読を引き受けてはきましたが、その数倍以上の査読依頼を断ってきました。今日も断りました。
そもそも私ごときが他人様の論文を論評して良いのかがよく判りません。
これまで引き受けてきた査読は、核医学、福島第一原発事故、放射線生物学、がん治療など論文のテーマは様々でしたが、他人様の論文をそれなりに一生懸命読んで「どこが良いか、どこが悪いか」を見極めようとするのはとても勉強にはなりました。たしかに勉強にはなりましたが、その論文を読んで勉強しているような者が査読なんてしていいものなのかどうか…

文科省科学技術・学術政策前局長の受託収賄容疑と、東京医科大学の裏口入学疑惑

2018-07-04 | 雑記
あまりにも馬鹿馬鹿しい内容なので世界に大々的に報道されていないのがまだ救いかもしれませんが、文科省高官の受託収賄逮捕と、その関係者の東京医科大学の裏口入学に関する報道についてはとても遺憾であります。21世紀のこのご時世でそんなことをやっているアホな輩がまだ息をしていたことに驚きを隠せないといいますか、今回の例が氷山の一角ではないことを祈っています(でも、1匹見つかったからには本当は100匹くらいいるのでしょうね、ゴキブリのように)。

日本の医師免許を持つ身として、私は私立大学への「裏口入学」がとても気になります。こういう風に金や権力で医師免許を無理矢理買おうとする輩に対しては、正直、嫌悪感しか抱くことが出来ません。
どうして不正までして医学部に入りたいの?
普通に入学試験を突破すれば良いのに…

残念ながら、正規の手段で医学部へ入学することが出来ないならば、その方は少なくとも医師になるだけの能力や適正がないのだろうと私には思います。入学試験で高得点をとる能力が必ずしも医師としての能力と比例するわけではありませんし、他にも必要な能力は色々とあると思われますが、少なくとも受験を勝ち抜くだけの「根気」と「情報処理能力」は、やはり医師に必要でしょう。辛くて大変な医療現場で他人の命を預かるからには、それなりの根気と情報処理能力がないといけませんから。
私は画家のように美しい絵画を描けませんし、音楽家のように美しい旋律を奏でることは出来ません。サッカー代表の選手のように、プレーを通じて、人を感動させることも出来ません。つまりはそういう職種への適性や能力を欠いているわけで、それはそれで仕方ないというか、素直に諦めるしかないだろうと思います。私だって、昔はプロ野球選手になりたかった時もありましたが、やはり諦めました。しかし、仮にそれらの適正や能力を欠いていたとしても、他に適性がありそうなものを見つけて頑張ればいいだけの話です。
繰り返しますが、裏口入学をしなければ医学部に進めない方は、残念ながら、医師になるだけの能力や適性がないと思われます。他の職種の場合と違って深刻なのは、そういう能力を欠く者が医者になると、適切な医療が施される可能性が低下し、患者さんの多大な不利益につながり、ときには死に至らしめることがあるかもしれないという点です。残念ながら、周囲に不幸をまき散らすだけなので、そういう方は医者をやらない方が社会的に望ましいのです。

また、そのような社会的リスクがある裏口入学を認めてしまう私立の医科大学の判断も「愚の極み」といえるでしょう。すこし極端だということは自分でも判っていますが、こういうアホな例を絶滅させるために、私大の医学部や獣医学部などはある程度廃止したらいいのではないかとさえ思っています。今回の例でもそうですが、結局、アホな政治家や官僚が自分の関係者に便宜を図るため、私立の学校を使って無茶苦茶やるわけですから。もう、ウンザリしています。
今の日本の首相に対して私は正直失望していますが、おそらくモリカケのような例は、残念ながら、彼に限らずとも政治家たちの中でそれなりによくある話なのではないでしょうか。私は個人的には「国政を担う国会議員には、滅私奉公で、国益を求める人物にこそなってほしい」といつも願っていますが、職能に伴う裁量の大きさ、つまり「権力」を「自分のもの」と勘違いして甘い汁をすう馬鹿な政治屋はそれなりの割合でいるのだろうと考えています。そして、それを見抜けずに投票してしまうような愚かな国民も本当は悪いのでしょう。官僚についても同様です。私は「公務員は公僕として日本社会がうまく機能するように支えてほしい」と願っていますが、残念ながら、現行の公務員試験を通過する人の中にも「権力」を「自分のもの」と勘違いしている輩はそれなりの割合でいるのでしょう。今回の文科省高官の受託収賄と関係者の東京医科大学の裏口入学の件を「一度きりの過ちだろう」と考えるとしたら、人が好すぎるというものでしょう。
したがって、現行の社会制度の中でその種のアホな政治家や公務員がある程度存在してしまうことを許容しつつ、それでも社会全体にとってもうすこしマシな道を探るとしたら、腐敗した権力と結託して不正を働く可能性がある「越後屋(越後屋、おぬしも悪よのう)」みたいな連中、今回の場合でいえば私立学校、を潰すのが一つの方法なのではないかというのが私の意見です。とくに市民の生命の危機に直接関与する医療従事者の育成については、フランスのように医師を全員公務員にして国公立の教育機関で育成する形にするなどの可能性も模索して良いのではないでしょうか。

すくなくとも、今回の件で「裏口」の存在が露見しつつある東京医科大学とかいうアホな医大はもう廃止すべきでしょう。
裏口入学で権力者の子息に医師国家試験受験資格を与えようとしたのは、上記のように「社会を危険に晒す」ような行為です。将来的に多くの患者さんがもしかしたら不幸になったかもしれないわけですから。そのような社会的リスクを無視してでも文科省高官の歓心を得ようとする自分勝手で浅ましく愚かな学校には、国から出ている補助金(いわゆる私学助成など)を即刻全額返還し、さっさと潰れてもらった方がいいのではないでしょうか。今回の裏口入学が事実だとしたら、「医師を養成する場」として、この医大ははっきり失格ですね。

論文が通らない、ああ通らない、通らない

2018-06-29 | 雑記
29日夜に米国から「残念ながら投稿していただいた論文は採択されませんでした」という連絡があり、不採択は仕方がないとはいえ、やはりひどく落胆しました。現在、私があちこちへ投稿している論文は今回不採択通知があったものを含めて3報あります。
できるだけ早くそれらが出版されてほしいといつも願っているわけですが、3報のうち1報はもうとても長いつきあいといいますか、1年以上にわたってなかなか採択されずにいます。もう2報のうちの1報は、放射線生物学研究上とても重要な内容だと思うのですが、NatureやScienceには通らず、こちらも徐々に長期戦の様相を呈してきました。この論文が通らないと、来年からのポジション獲得が出来ませんし、つまり「日本に帰れない」のですがね。困りました。
論文が通らないことには何も始まらないわけで、苦戦を強いられています。6月、7月はあちこちに出かけようかと思っていましたが、とてもそういう状況ではなくなってきました。厳しい状態が続いています。