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「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

Derry/Londonderryの車両爆発事件

2019-01-21 | 2019年イベント
21日はアイルランド独立戦争から100年の節目だということは判っていましたが、在英国日本大使館からDerry/Londonderryの車両爆発事件に関する下記の注意喚起があって、ちょっとビックリしました。
どうやら何者かが時計の針を逆に進めようとしているようです。

●北アイルランド地方ロンドンデリーにおいて1月19日には車両爆発事件,21日には車両乗っ取り事件2件が発生しました。
●事件の背景などは明らかになっておらず,捜査中ですが,英国を含め外国ではこうした不測の事態に常に警戒する必要があります。
●最新情報の入手に努めるとともに,人が多く集まる場所(イベント,観光施設,駅や公共交通機関など)では周囲の状況に警戒するなど自らの安全確保に十分注意を払ってください。

Derry/Londonderryは、英国領北アイルランドにおいて二番目に大きい都市です。法的にはLondonderry(ロンドンデリー)という名称が正しいそうですが、もちろんこの名称はDerryという街の名前を大英帝国側が改称したものであり、アイルランド系住民には受け入れられておりません。したがって、Derry/Londonderryと併記するのが中立的かなと思われます(しかし、BBCは当然のようにLondonderryとしていますが)。
北アイルランド紛争(The trouble)において、Belfastと並んで、多くの犠牲者が出たことで知られているこの街で、テロを思わせるような事件が起きたのは遺憾ですね。これから3月のBrexit(英国のEU離脱)に向けて、この種の動きが活発化しなければいいのですが…

人が多く集まる場所で、周囲に気をつけていたとしても、いきなり爆破されたらどうにもならないでしょう。当然ですが、北アイルランド首都のBelfastも今後ターゲットになる可能性はあります。私とて今は死にたくはありませんが、テロ活動によって何が起こるか判らないという意味では、すこし不気味で恐ろしい感じがしますね。
今週末に日本に一時帰国する予定ですが、正直、今はすこしでも早く帰りたい気持ちがあります。

アイルランド独立戦争から100年

2019-01-20 | 2019年イベント
今年の2019年1月21日から遡ること100年前、1919年1月21日にシン・フェイン党議員らによって、第1回のアイルランド国民議会(ドイル・エアラン)が開催されました。そして、「アイルランド独立宣言」が採択されました。当然、英国政府は否定し、ついに2年以上に及ぶアイルランド独立戦争が勃発したのです。

そして、1921年、英愛条約が締結され、アイルランドは「アイルランド自由国」として独立を果たしました。このアイルランド独立戦争で活躍した人物として、シン・フェイン党幹部にしてIRA(Irish Republican Army)情報部長のマイケル・コリンズ(Michael Collins)が広く知られています。1922年に31歳の若さで暗殺されたこの政治家は、今もなお、アイルランド国内で人気が高いです。
彼を描いた1996年公開映画『マイケル・コリンズ』は有名ですね。

ちなみに、当時、北アイルランドとくに私が住むBelfastを含む東アルスターの住民達は大英帝国への帰属を支持する者が多く、実際、条約後に北アイルランドは大英帝国に編入しました。しかし、当然、アルスター州内にもアイルランド系住民は多く居たわけで、その後、IRAなどによるテロ活動の応酬が激化し、いわゆる北アイルランド紛争が起こったわけです。この紛争は1998年のベルファスト合意(Good Friday Agreement)まで続きます。

日本ではイギリスあるいは英国という呼称が一般的ですが、正式には「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」と言います。
そして、アイルランド独立以前は「グレートブリテン及びアイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Ireland)」と呼ばれていました。つまり、英国とは、昔も今も、イングランド、スコットランド、アイルランドの三つの王国を連合した「連合王国(United Kingdom)」がその本体なのです。北部の一部は残ったとは言え、この3つのうちの1つであるアイルランドが独立したわけですから。当時の英国の混乱の大きさが伺えますね。

で、何が言いたいかというと、アイルランドの独立はたったの100年前からなのです。
もちろんアイルランド島の歴史は古いのですが、国家としての歴史はそれほど古くはありません。大きな争いの結果、多くの血が流れ、ようやくつかみとった独立でした。その記憶は比較的新しいといえます。
そして、今年、Brexit(英国の欧州連合EU離脱)を迎えます。
アイルランドはEUに留まりますが、英国領北アイルランドは、当然、EUから離脱する地域です。これまでは同じEU加盟国同士ですから、国境の往来も自由だったのですが、しかしBrexit後はどうなるのか…

独立戦争開始から100年、再び、アイルランドは変化の時を迎えようとしているのかもしれません。

混迷する英国政府 ~生き延びるメイ内閣

2019-01-16 | 2019年イベント
昨日、政府によるEU離脱協定案が議会で否決されたのに、今日、メイ内閣自体は続投とは…

おそらくは世界史に残るイベントが英国議会で連日起こっています。日本から来ている身としては、英国がどこに向かうのか、議会は一体全体何がしたいのかを、一歩引いた視点から観察できる貴重な機会となっています。色々な意見がありましたが、英国は引き続き、このタフな女性首相に政府の舵取りを託すようです。フォークランド紛争を指導した鉄の女・サッチャー元首相もそうでしたが、英国は難局を迎える時に女性の首相が奮闘することになっているのかもしれませんね。

北アイルランドにいる身としては、北アイルランドとアイルランドの国境に関する論点の一つ、所謂「バックストップ」の問題が気になりますが…。
メイ首相は「バックストップは絶対に起こらない」と発言していますが、しかし、私は「正直、ホンマかいな…」と不安に感じています。そんなに早くEUと協定を結べるのかは不透明だと思うのですがね。私は、北アイルランドは英国内においてもかなり特殊な地域だと感じるので、それ相応の配慮は必要なのではないかと考えています。
いずれにせよ、北アイルランド紛争のような悲劇は二度と繰り返さないで欲しいものです。

2019年は「変化の年」に

2019-01-06 | 2019年イベント
2019年が始まりました。昨年末から色々なことがあって、年末年始はあっという間に過ぎていきました。ふと気付いたら、もうこんなに時が流れていて、びっくりしました。

今年は、英国大学院博士課程修了の年です。
長かった留学もついに終わりが見えてきました。英国では何か大事なものを学べたような気もするし、何も学べなかったような気もします。日本では医学博士号は「足の裏の米粒(つまり、取らないと気持ち悪いが、取っても意味が無いもの)」と揶揄されますが、英国でのPhD (Medicine)という学位を活かせるかどうかは今後の自分次第でしょう。PhDの学位が私を助けてくれるということではなく、学位に恥じない自分であろうとすることで、結果として、研究者として活躍できればいいですね。
英国での大学院博士課程は、結局、ただの通過点に過ぎません。

今年の9月が博士論文Thesisの提出期限になっています。記述量としては、だいたい200~300頁くらいと言われています。本学だけに限らず、英国における伝統的な研究大学においては、博士論文にこのくらいの量は要求されるそうです。
日本の現行の博士課程では、3月に博士論文を数十頁くらい書いて提出すれば、普通はそのまま3月中に学位が取得出来ます。しかし、本学では博士論文審査に6週間くらいは要します。9月に博士論文を提出し、11月頃に最終審問(学位授与の決定はこの審問にかかっています)があり、12月に卒業式という感じです。最終審問が10月、11月、12月のいずれになるかは教授達の都合によります。英国の学位授与のタイミングが曖昧なのはこの制度のせいなのです。
私もまだ数十頁しか博士論文を書けていませんが、なんとか期日までに書き上げることができれば良いなと願っています。まあ、頑張ります。

さて、学位を取得した後はどうするか?

色々な選択肢がありますが、実は、自分の中でだいたい答えは出ていました。でも、「思い切る」ことはなかなか容易ではありませんでした。男というものは実に面倒な生き物でして、ほとんど答えが決まっているくせに、色々と悩むことがあるのです。正直、あとは誰かに背中を押してもらえればと思っていましたが、最近、ようやく背中を押してもらうことが出来ました。わざわざ日本から私の背中を押しに来るような奇特な方がいるとは思っていませんでしたが、実際には、そういう優しい人がいたのでした。ビックリしましたね。
まだ、正式に身の振り方が決まったわけではありませんが、就職先についてはほぼ決まったと言えるでしょう。正式に決まったら、このブログにも書くことが出来るかもしれません。以前にも書きましたが、英国留学後も、次は北欧に留学というか派遣されることになりそうです。なんというか、こんな人生を送ることになるなんて子供の頃は夢にも思わなかったけど、なかなか面白い挑戦になるのではないかなと思って、今はそれなりに満足しています。

今年は、たぶん、私の人生において最も変化の大きい年になるでしょう。仕事(Work)もプライベート(Life)も。いわゆる節目というやつでしょうか。はてさて、一体全体、どうなることやら…