記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

シンギュラリティは近い(拾い読み その3)

2016年07月02日 16時58分52秒 | Weblog
可逆的コンピューティング
人間の脳で行われているように大規模並列処理でコンピューティングを構成するだけでは、エネルギーの消費レベルを保ち、それに伴う放熱を適度なレベルに抑えるには不十分。
現在のコンピュータのパラダイムは、非可逆的コンピューティング。プログラムが進行する各段階で入力データは破棄され、結果だけが次の段階へ引き継がれていく。抹消されたビットは周囲の環境に放出され、環境のエントロピーが増す。エントロピーが増すと温度が高くなる。
各段階の入力情報を削除せず、別の場所に移動させるだけにすれば、熱を発生せず、外部エネルギーを必要とすることもない。
否定notなどの可逆的論理演算は熱を取り込んだり放出したりすることなく実行できるが、論理積andなどの非可逆的演算にはエネルギーが必要になる。どのようなコンピューティングでも可逆的論理演算のみを用いて実行できることは1973年にIBMのベネットが示している。

すべての原子は動いていて、電子をやり取りしたり、素粒子のスピンを変更したり、急速に動く電磁界を発生したりしている。これらのすべての活動は、コンピューティングを表している。
1㎏の岩の内部では、事実上、毎秒10^42回の計算をしていることになる。
コンピュータがミクロレベルで可逆的な構成部品で構成されていれば、効率は最大になる。
実際には、コンピュータの出力を外部で受け取りたいとき、それは非可逆的なプロセスになる。
また、本質的にランダムな熱運動と量子効果が有るために、論理演算には内在的なエラー率が含まれる。
エラー検出や訂正のために非可逆的演算がなされ、熱を発生することになる。

脳のリバースエンジニアリング
今のところ、AIの研究や開発のほとんどには、必ずしも人間の脳の機能をベースとしていない工学的手法が用いられている。
脳のリバースエンジニアリングを行う能力は、指数関数的に伸びており、脳の内部を覗き込み、モデル化し、各領域をシミュレートすることが可能になってきた。
アルツハイマー病や脳卒中、パーキンソン病、知覚障害などの神経学的問題に対処する新しい手法を手に入れ、究極的にはわれわれの知能を大きく拡大することが出来るだろう。
シンギュラリティの到来を期待する根底には、非生物学的な媒体が人間の思考の豊かさや繊細さ、深さを模倣することができるようになる、というそもそもの仮定が有る。

非生物的知能の大きな利点は、機械どうしは知識を簡単に共有することが出来ること。
研究用コンピュータに、パターン認識のソフトを用いて人間の音声を認識させる方法を何年もかけて教え、エラーを修正し、カオス的自己組織化アルゴリズムを教え込んでパフォーマンスを忍耐強く改善したとする。そして自分のパソコンにも音声認識させようとするなら、これと同じような辛い学習プロセスをパソコンにさせる必要はない。既に確立したパターンを数秒でダウンロードするだけで良い。

脳と機械を接続する
人工移植神経を生物のニューロンに接続するにあたって、神経幹細胞からグリア細胞が生成され、脳を守るために「異物」を取り囲むという問題が立ちはだかったが、脳細胞に嫌われることなく、受け入れられるような特殊な被膜材が開発されている。
神経と電子装置を直接つなぐ研究が行われ、ニューロチップが開発されて、ニューロンと電子機器との間で、非侵襲性のコミュニケーションがとれることが証明された。
蝸牛移植では、聴覚神経が自らを再組織化し、人口神経装置から出るマルチチャンネルの信号を正確に解釈することが分かった。

人間の脳をアップロードすること
脳の目立った特徴をすべてスキャンし、それらをコンピューティング基板に再インスタンス化すること。
このプロセスでは、その人の人格、記憶、技能、歴史のすべてが、取り込まれる。
アップロードされたものが個人専用のチューリングテストをパスして、あなたと区別つかないと判断されたとする。アップロードされたものは、これまでの人と同じ人なのか、それとも新しい人なのか。
非生物学的部分の性能の方がはるかに優れているので、スキャンして移管するというアップロードがやがて当たり前になるだろうが、非生物学的思考へ移行するというシナリオこそ、人間の文明を根底から変容させるものになるだろう。



最新の画像もっと見る