記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

「天使と悪魔」と反ド・ジッター空間

2011年02月15日 06時20分14秒 | Weblog
エッシャーの絵は「不思議な絵」として児童本にも沢山引用されたり、いろいろなデザインに流用されたりして多くのひとが知っているのですが、大学の心理学の授業で教材としてもしばしば用いられています。
ペンローズが「無限階段」や「不可能三角形」を錯視として心理学の雑誌に載せ、それが契機でエッシャーがそうしたモチーフの絵を描くようになったという因縁があるようです。

「天使と悪魔」の絵も知覚心理学の領域で、多義図形、図と地が反転する図形などのひとつとして教材になることがあります。
白い部分が図になって前景になり黒い部分が地になって背景に引込めば天使が対称に配置された図案として知覚されるが、逆になれば悪魔の図案になる、と。

もう一つ大きな特徴は、中心の図は大きく周辺は次第に小さいフラクタルになっていて、いわば円形の地平線に囲まれた世界を表していることです。
ある本が、この特徴に着目し反ド・ジッター空間の説明に使っていました。

他の本でド・ジッター空間や反ド・ジッター空間の説明を見たときは初めから理解を超えているとしか思えなかったのですが、その本で絵につられて読んだら何となく呑み込める気になりました。

ド・ジッターはアインシュタインの一般相対性理論の方程式の4次元解を発見したオランダの物理学者で、膨張する宇宙として一般に紹介されているのが、そのド・ジッター空間だ、とか。
ド・ジッター空間が正の曲率を持っているのに対し、反ド・ジッター空間の曲率は負で、それが生じる重力場は物体を中心に向かって引きつける。

この空間で沢山の粒子が互いに衝突して塊を作っていけば、中心に圧力と温度の高い星が生じ、やがてブラックホールになる、と。

「天使と悪魔」を宇宙空間のモデルとし、中心に生まれるブラックホールを黒い領域として描き加えるとします。
ブラックホールが次第に膨張すれば周りのフラクタル図形は地平線に向かって押し込まれた形になります。
ブラックホールに呑み込まれて見えなくなった図形の数がどんなに多くなったとしても、フラクタル図形のことですから、地平線に向かって押し込まれながら存在する図形の数は、奇妙かも知れませんが、減るということもないでしょう。

無限大から無限大を引いても無限大が残る・・・。
ブラックホールが呑み込んだ情報は、同じだけ地平線に残っている・・・。

そう考えれば納得できると思うのは、この世界でわれわれが経験している全ては無限の遠くにある宇宙の地平線にそっくり存在する、というフラクタル宇宙のことです。

地上の地平線は昔から有って誰でも知っているものですが、「コンピュータで作った」という仮想現実のための修飾語こそ付きませんが、これこそ一番の仮想現実です。
宇宙の地平線も仮想現実だと言って良いでしょう。
仮想現実とは真の現実に限りなく近いということなのか、真の現実そのものなのか、という議論の蒸しになったら、われわれがこの世界で経験している現実はどうなのか・・・、と終わりのない話になりかねませんが。

好みの問題かどうか、小生としては、限りなく近い真実こそが現実だ、と。


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