記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

デジタル画像の補正と形態知覚の恒常性

2012年06月13日 10時27分33秒 | Weblog

  


絵画や文書あるいは図表をデジカメで撮ったとき、明るさ・コントラスト・ピントが適正だったら、絵や字が多少歪んで写っていても気にならない。
しかし、作品には全体を囲む枠があり、カメラの目線が少し傾いていただけでも歪みは顕著になり、少なからず気になる。

作品の実物を見ているときは、立ち位置が悪ければ長方形をしている実物の網膜像は歪んだ四辺形になっている筈だが、ヒトの視覚系はその歪みを意識することなく、直ちに長方形として知覚する。
デジカメで撮って画面を見てから歪みに気付きパソコンで補正しようとしても、歪んだ方形を自動的には補正してくれる訳でなく、改めて脳の処理とコンピュータ処理の隔たりを再認識させられる。

多くのデジタル画像の補正ツールはトリミング・回転・拡大収縮などの処理機能を備えるが、歪んだ画像の補正には任意の角度に変形する機能を持ったアップリケ―ションが必要になる。

Photoshop Elementsによる補正の手順:
1 最初に、目的の図形の4隅を囲んで、なるべく余計な部分が少なくなるように、四辺形に切り取る。
2 「表示」のメニューによって、四辺形の枠の中にグリッドを表示しておく。
3 「イメージ」のメニューから「変形 → ゆがみ」を選び、切り取った枠の4隅の角をマウスで1つずつ順にクリック・アンド・ドローし、目的の図形の4つの辺がグリッドに沿って長方形になるように調整する。1つの辺を動かすと他の辺が意図しない方向に動いたりするから少しずつ反復調整する。
4 最後に、枠を動かしたために生じた不要な周辺部分をトリミングする。

添付画像は長崎空港のエスカレータの上に掲げられている五光窯の平戸藤祥夫妻によるタイル絵で、その補正前と補正後。

今でも行っているのかどうか、心理学の初級実験やデモンストレーションに「形態知覚の恒常性」というテーマが有った。
振り返ってみると、実験やデモンストレーションの方法は学んだが、われわれの視覚システムがどうやって恒常性を持った知覚像を成立させているのかを明らかにするものでなかった。

われわれの脳が行っている方法は、ここに述べたようなパソコンによる手順と違って、ターゲットの中心に仮想の法線をあたかもジョイスティクのように立て、それを視線の方向に回すことで傾きを補正しているのではないだろうか。
大雑把な推測ではある。
しかし、われわれの知覚には外枠の形より、そこに囲まれているコンテンツの知覚の方が大事であって、それを構成する部分を成している絵や字などの知覚の過程で仮想法線が作られるのではないか、と思う。

作品の枠はコンテンツを引き立てるために意図的に付けられるか、そうでなくても境界として物理的に存在している。
しかし、知覚像には、そこに輪郭線が引かれていなくても、むしろ引かれていない場合にこそ、輪郭が知覚されることは良く知られている。
それはコンテンツ領域のにおける要素間の側抑制と呼ばれる相互作用によって生じている。
その相互作用に関連して、輪郭が囲む知覚面に直交して観察者との間の空間が知覚され、対象物と観察者の間の距離を結ぶ仮想的法線が生じるのではなかろうか。

そうした仮想的方法を現在のコンピュータで実現するのは難しいかも知れないが、もしかしたら、将来はそうした方法の方が簡単になるのではないか、と。


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