巻頭写真 : 『妖精の岩』
海と信仰とケルト文化と古代巨石文明と
フランスにあってフランスではない異世界を巡ろう
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ブルターニュの首都三つの最後のご紹介となる『レンヌ』に着く前に
ブルターニュで最大で最も美しいと言われるドルメン
『La Roche aux Fées 妖精の岩』
に立ち寄ってみよう
『La Roche aux Fées 妖精の岩』
「ナント」から北へ80km
「ジャンゼ村」と「ルティレ村」の中間あたり
「Essé エッセ」という小集落の周辺のトウモロコシ畑や小麦畑の
合間に点在する栗林のひとつの中に
忽然と
それは存在している
Illustration by ⒸVIGNERON
紀元前3000年〜2500年の間
長さ19,5m
幅4,7m
最大高4,10m
32基の縦岩(メンヒル)
9基の上蓋の大岩
写真左端が開口部を持つ「前室」
右端が閉じられている「玄室」
開口部の蓋の部分の岩は長さ(幅に当たる)5,5m
左右で支えるドルメンは露出部の高さ1m
蓋をする上蓋岩の厚みも1m近い
二列目はやや崩れていて
左側面から見るより
右側面からの方が沈み方が大きいのが見てとれる
さらに三枚目の天板を支えるメンヒルも左右共に中央が消失している
ところどころに衝立のような張り出しがあって
全体が4つの石室に分けられていることがわかる(上掲の図面参照)
奥の人も見れば
高さも理解できるだろう
開口部の反対側が閉じられていて
そこが「玄室」なのだろう
上に登ってみると
天板の岩は平らではないこともわかる
立ち位置によって
目線の高さによって
見る角度によって
様々な見え方をする
本当に不思議な「アレ・クヴェールト」で
まさしく
「妖精の岩」と呼び習わされてきた意味が分かろうというものだ
※ ※
ここから北西に20kmで
「ラ・ロッシュ=ベルナール」から「ルドン」でご紹介した「La Vileine ヴィレーヌ河」
に沿った『Boel ボエル』村に至る
渓谷美と断崖の地層の美しさで知られるこの辺り
「ボエル」には名高い水車がある
流れを段差で遮っているので
右端に見える水門で船が航行できるようにした
見る位置を変えても
季節が変わっても
とても美しい佇まい
この辺りで「ヴィレーヌ河」は馬蹄形に蛇行しており
岸辺の一部は岩盤でかつては石切り場だったところもある
旧石切り場の崖
崖の上に固い岩盤が露出した部分もあり
ハイキングやトレッキングやサイクリングのコースとして好まれている
『Pont de Boel ボエルの橋』
この村の入口の橋はロマネスク時代のもの
※ ※
この「ヴィレーヌ」の流れを10kmも北へ遡行すると
いよいよ
ブルターニュの都の一つ『レンヌ』に至る
ヴレーヌは「レンヌ」の街中を流れる
中之島『Ile Hélier エリエ島』
首都なので市域は広く
かなりの規模の城壁に囲まれて防御されていた
『Porte Mordalaise モルダル門』
当然重要な拠点都市なりの
広い空堀に囲まれた城壁があったわけですから
城門も残っている
『Tour Duchesne デュシェンヌの塔』
城壁の橋頭堡となる頑丈な塔もある
4月のこの場所は
城壁に絡みついてしな垂れる藤の花が美しい
街のシンボルは
「ブルターニュ高等法院」「商工会議所」「大修道院」「オペラ座」「旧市街」
となる
まず「ブルターニュ高等法院」だが
『Parlement de Bretagne ブルターニュ高等法院』
独立国ブルターニュ公国最後の君主「アンヌ・ド・ブルターニュ」が
フランス王「シャルル8世」「ルイ12世」に相次いで嫁ぎ
フランス王国と合体した後も
ブルターニュの公爵位と領土は「王妃アンヌ」に帰属していたが
ルイ12世との間の娘「クロード・ド・フランス」がその相続権を持って
王族「サングレーム公爵フランソワ」に嫁ぐ
その後夫がフランス国王を継ぐこととなり「フランソワ1世」として即位
その際王はブルターニュの主権を完全に王国に吸収してしまって
1554年主権は消滅した
そのかわり「上級裁判権」をブルターニュに残して
ここ「レンヌ」にその場を設けた
したがって「Parlement」という名前なので
一般的には「ブルターニュ議会」と誤訳される事もあるが
実は『高等法院』が正しい
現在も「高等裁判所」として機能している
この「高等法院」前の広場を反対向きに見ると
まるでパリの中心部のような感じでビルが立ち並んでいる
そして
この建物も火災に遭遇した
1994年2月4日
その日レンヌを訪れたエドワール・バラデュール首相に
イギリスやオランダに有利すぎるEU漁業政策の採択による漁価の大暴落に抗議する
ブルターニュ中から4000名の漁民が集まって抗議行動を行い
機動隊の強権執行に両者乱闘状態となった
デモ隊の誰かが持参していた「救命信号弾」を空に向けて発射し
そのうちの数発が高等法院の屋根をぶち抜いて屋根裏の木組の中に入り込んで徐々に出火
数時間後の夕刻
火災発生に気がついた職員の通報で騒ぎが広がった
結局1日半燃え続け
翌々日朝に鎮火したが
Photo by ⒸLesEchos
結局内装の95%が消失してしまった
Photo by ⒸRennes.fr
Photo by ⒸRennes.fr
レンヌ市
イル・エ・ヴィレーヌ県
ブルターニュ地方(地方圏・州)
国
の積極的修復行動と
市民からの多額の寄付などにより
焼け跡から集めた1cmほどの破片に至るまでを検証して場所を特定
洗浄や再彩色や金箔の塗布など精力的に修復に取り組んだ
Photo by ⒸRennes.fr
Photo by ⒸRennes.fr
Photo by ⒸRennes.fr
各分野の専門家の献身的な修復作業の結果10年の工事期間の予定が5年で修復が完了
1999年業務を再開できた
大法廷
同
大法廷の部屋には
必要に応じてブルターニュ公爵がお忍びで裁判に出廷する特別な桟敷きが
残っている
小法廷の一部屋
エントランス・ホール
一般の内部見学も再開されている
さて
レンヌのご紹介は次回も続けます
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