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マロオケ2016「モーツァルト6大交響曲」

2016年05月08日 | pocknのコンサート感想録2016
5月5日(木)マロオケ2016
~篠崎史紀のモーツァルト6大交響曲演奏会~
サントリーホール


【曲目】
1.モーツァルト/交響曲第25番ト短調 K.183
2.モーツァルト/交響曲第36番ハ長調 K.425「リンツ」
3.モーツァルト/交響曲第38番ニ長調 K.504「プラハ」
4.モーツァルト/交響曲第39番変ホ長調 K.543
5.モーツァルト/交響曲第40番ト短調 K.550
6.モーツァルト/交響曲第41番ハ長調 K.551「ジュピター」

N響のコンサートマスター、王子ホールの人気シリーズ「マロワールド」のシェフ、ジュニアオーケストラソサエティの指導など多方面で活躍するマロ(篠崎史紀)さんの呼びかけに、各地のオーケストラの首席やコンマスなどを務める古くからの音楽仲間が集まってできた「マロオケ」。4年前から熊本を舞台に行われている演奏会が大評判を得ていたが、サントリーホールで初の東京公演を行った。モーツァルトの交響曲のなかでも僕がとりわけ大好きな6曲を全部やるというのがまた嬉しい。

普段は別々に活動するメンバーによる特設オケで指揮者なし、ボリューム的にも相当にヘビーな内容のコンサートとなれば、普通の感覚では半信半疑になるところだが、マロさんが持つ音楽仲間との絆の強さ、その仲間で奏でるアンサンブルの素晴らしさを「マロワールド」などで知る者としては、大いに期待して五月晴れの下、夫婦でサントリーホールへ出かけた。

初めてマロオケを聴いて真っ先に感じたのは「強い意思」。メンバー一人一人が何を思い、一つのパートとしてどんな音を作り、オーケストラ全体としてどう伝えようか、という明確で強い意思がビンビンと伝わってくる。プレイヤー一人一人の「顔」、パートとしての「顔」、そしてオーケストラ全体の「顔」がはっきりと見える。

それから対話の面白さ。弦楽器のパート間で交わされる対話、弦と管の間で交わされる対話などが実に生き生きとして楽しげなのだ。そこには、相手の出方を瞬時に受けとめて反応する、半ば即興的なやりとりも聴かれ、ライブならではのワクワク感に溢れている。プレイヤーの表情を見ていると何か楽しいゲームでもやっているよう。「マロワールド」での室内楽の演奏で行われているやり取りが、オーケストラでも同様に行われている、というのはある意味スゴイ。パート間のやり取りだけでなく、同じパート内でも、「ここはこう行こう!」といった思いが、瞬時に全体に伝わって行くのだ。

こうした「意思」や「対話」は、モーツァルトの音楽の様々なシーンで求められているものとぴたりと結びつき、聴いていて常に共感と発見がある。音楽が盛り上がる場面での高揚感、柔らかく天に舞い上がるような浮遊感、悪ふざけして楽しんでいるような遊び心等々…

こんな具合に生命力みなぎり、能動的な語りかけがあり、甘美な歌がある魅力たっぷりの演奏なのだが、それでも演奏会でごく稀に体験する、心臓のバクバクが止まらず、トリハダがビンビン立つような感動の絶頂には至らないまま、演奏会も終盤を迎えた「40番」で、それまででも十分に魅力的だったオケの音と、そこから伝わるメッセージが、自分の中では明らかに違って聴こえてきた。

それを言葉で表すことは難しいのだが、オケが発酵し、熟成されているような深みとか、コンマスのマロさんのイニシアチブが要所要所で演奏をリードしているように思えたのが、完全にオケ全体が一つの生命体になり、何か見えない力で動き始めたような感覚… 40番が終わったとき、「ジュピター」では何かとんでもない素晴らしいことが起こるのではないかという予感が来た。

そして迎えた最後の「ジュピター」。最初の音から最後の瞬間まで、至るところで心臓バクバク、トリハダビンビン状態が起こった。これは何?今まで長々と書いてきた称賛の言葉ではとても表せず、ただ「モーツァルトの霊とジュピター神がマロオケに舞い降りてきた」としか書くことができない。最後のコーダでは熱いものがこみ上げて、ウルリ。。と来てしまった。

満員の会場はブラボーと大喝采の嵐。4時間近い演奏会を終えたマロオケの面々の清々しい表情。これまでの熊本公演でも、「世紀の名演」が繰り返されているということは聞いていたが、それを自ら体験した感動!それにしても、名匠の指揮者と世界の頂点にいるような常設オケを持ってしても、毎回ここまでの演奏が実現するわけではないことを思うと、こんな演奏を毎回やってしまうマロオケってあまりにすごすぎる。

この演奏会のサイトに掲載されている対談で、「メンバーはとにかくマロオケで演奏することが大好きで、楽しくて仕方ない」と書かれている。強い絆で集まった超一流のプレイヤー達が、常に最高のアマチュア精神(アマオケが稀にすごい演奏をしてしまうときのような)で臨むことで、こういうことができるのかも知れない。ただ、これは簡単なことではないはず。そんなことをやってしまうマロオケのメンバー全員に、最大の賞賛と感謝を伝えたい。

会場入り口では、チェロの胴体を利用した募金箱で、熊本への復興支援への協力を呼び掛けていた。マロオケのホームグラウンドは熊本!素晴らしいオケへの賞讃と感謝、復興支援への祈りを込めて支援金を託した。


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