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読響 特別演奏会:コバケンのベト7!

2020年07月22日 | pocknのコンサート感想録2020
7月21日(火)小林研一郎指揮 読売日本交響楽団
特別演奏会 ♯静かに、熱狂を待つ
サントリーホール


【曲目】
1.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219「トルコ風」
 【アンコール】
 ♪バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ト短調BWV1001~サラバンド
 Vn:三浦文彰
2.ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調 Op.92
【アンコール】
♪ ダニー・ボーイ


コンサートが再開されるようになってから聴く2度目の読響。指揮はコバケン。
最初はモーツァルト。読響による前奏は軽やかで瑞々しい。艶やかな音色で嬉々としたモーツァルトの若々しい感性を伝える。そしてヴァイオリンソロが入る。芯のあるしっかりした音がホールに響き渡った。三浦文彰のヴァイオリンは骨太で頼もしい。遠くへ伸びてゆく能動的な力強さもいい。けれど聴き進むうちに、この曲にはもっとチャーミングなところ、繊細さ、瞬時に気分を変える機転のようなものが欲しいと感じてきた。この曲は名曲だと思うが、今までライブで「これは!」と思う演奏に出会った覚えがない。難しい曲なのかも知れない。アンコールのバッハは、かっちりとしたフォルムを大きく使った充実したいい演奏だった。

後半はベト7。今年はよりにもよってベートーヴェンのアニバーサリー。それがコロナのせいで台無しになってしまったなか、素晴らしいベートーヴェン体験となった。
コバケンの魅力は、音楽を深く掘り下げて熱いパワーを大量に放出すること。大きなシャベルで大地を力強く掘り起こし、大きな山を築いて行く。ひと掘りひと掘りに全身全霊を打ち込み、オケも全身全霊で答える。音楽がフレーズごとに掛け声を伴って一歩一歩前進していくよう。重心が低く、濃厚で輝きのある読響サウンドがまた素晴らしい。

コバケンの演奏は僕の中での原点を感じる。中学・高校時代にクラシックに夢中になった頃の感動が蘇るとでも言ったらいいのだろうか。昨今は年長の指揮者でもピリオド奏法を採り入れた演奏が多いが、コバケンはベートーヴェンへの敬愛を込めて、自らが譜面から読み取った音楽の「魂」を伝えることに徹する。忠実にリピートする演奏も多いなか、コバケンはリピートを一か所も行わない。歴史考証よりも自らの感性に従っているかのよう。そこにはコバケン節とでも云える独特の歌い方やこぶしが出現する。第2楽章なんかは潤いすぎ、歌いすぎと感じたりしたが、音楽の全てに血が通い、愛があり、フィナーレでそれは炎のように熱く燃え上がり、圧倒的なクライマックスを築いた。心臓バクバクしてトリハダが立ちまくった。

ブラボーが禁じられた会場は万雷の拍手で包まれた。コバケンさんが良く通る地声で挨拶。4月に80歳の誕生日を迎えたけれど40もの公演が流れ、「今夜が80歳を記念する最初のステージになりました。」という言葉に拍手が湧いた。聴衆の前で指揮ができることの幸せとオーケストラへの賛辞を伝えた後のアンコールは定番「ダニー・ボーイ」。ベートーヴェンの時とはまた違った温度の拍手で包まれる。団員が全員退場するまで拍手は続き、コバケンさんが再び姿を見せた。ベートーヴェンの爆演、万雷の拍手、指揮者の挨拶、アンコールと進むなかでステージと客席の一体感が強まり、それを共有できる素晴らしさ。ライブでしか味わえないとつくづく感じた。

コバケンさんはただ一人マスクを付け続けていた。指揮者はしなくても大丈夫ではと思ったが、もしかしてコバケンさんは団員にこんなことを言ったのかも。「演奏中は皆さんがマスクを外して素顔を見せてくださっているのに、僕だけマスクを外さなくてごめんなさい。僕は演奏が盛り上がって感情が高ぶってくると、無意識のうちに息が荒くなってうなり声が出てしまうので、マスクは外せないんです。」とかね。

今夜は久々にホール入口で演奏会のチラシの束を受け取った。僕が学生時代にバイトをしていた、クラシックコンサートのチラシ配布を一手に担っていたコンサートサービスという会社が今でもやっているようだ。コンサートロスの状況下で心配していたが案内をたくさんもらえたので、貴重な情報源としてこの先の演奏会を選びたい。
読響 特別演奏会(鈴木優人指揮「ジュピター」ほか) 2020.7.5 東京芸術劇場
コバケン/読響の「復活」 2015.4.24 東京芸術劇場
新型コロナウイルスによるコンサート中止に思う 2020.3.21
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2 コメント

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おお、コバケン!! (マンマ♪)
2020-07-23 21:04:13
コバケンといえば、音大時代に指揮法の公開授業で
指されてステージに上がったことがあります。
ものすごく緊張していて何を言われたのか全く覚えがないのですけど。。。

シャベルで大地を掘り起こすような音楽は健在ですね。熱さが伝わってきます !!

私もまだまだ頑張らなきゃね♪
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Re:おお、コバケン!! (pockn)
2020-07-24 00:56:26
ciao! マンマ♪さま
僕は音大ではありませんが、大学の合唱部がコバケンとの縁があり、
コバケンさんの第九に合唱で出る機会が何度もありました。
オケにはと~っても丁寧なのに対し、合唱団にはすごく厳しくて、
暗譜が怪しいメンバーを見つけると「キミはもうこなくていい!」と本気で降ろしてました。
他のメンバーもヒヤヒヤ。。。
だけどコバケンさんの指揮には魔法をかけられたようになり、
第九が本当に素晴らしい音楽であることを心底感じつつ夢中で声を出し、
感動に痺れたのでした。
まだまだ頑張ろね。forza!
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