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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

広上淳一/N響 @ ミューザ川崎

2020年07月26日 | pocknのコンサート感想録2020
7月25日(土)広上淳一指揮 NHK交響楽団
フェスタサマーミューザKAWASAKI 2020
ミューザ川崎シンフォニーホール


【曲目】
1.グリーグ/組曲「ホルベアの時代より」Op.40
2.ベートーヴェン/交響曲第8番ヘ長調 Op.92
【アンコール】
♪ モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲

~室内楽コンサート~
♪ロッシーニ/弦楽のためのソナタ第1番ト長調
 Vn:森田昌弘、白井 篤/Vc:宮坂拡志/CB:西山真二


僕が定期会員になっている唯一のオケ、N響を5ヶ月ぶりに聴いた。N響にとっても今日が休止以降初の聴衆を迎えての演奏会とのこと。これで3つのオケの再開記念コンサートに立ち会ったことになる。会場のミューザ川崎は合唱でステージに立ったことはあるが、聴衆としては初めて。遠いので敬遠していたが、我がN響を聴くために駆けつけた。客席は限定600席のみ使用で、「完売」ながら使用禁止の紙の貼られた席の多さが寂しい。

室内楽のプレコンサートは嬉しいプレゼント。ヴァイオリンの森田さんの挨拶に続いて始まったロッシーニは、体格のいい男性4人の見た目とは裏腹に優美で軽やかなアンサンブルを奏でた。艶やかな音色、生き生きとした息遣い、伸びやかな歌。コントラバスが入り、低音域も充実した明るく美しい響きでロッシーニの魅力を存分に楽しませてくれ、幸せ気分でオーケストラを迎えた。今日もオケへの暖かい拍手。いい習慣が出来たものだ。

最初は弦楽合奏によるグリーグ。第1曲はウキウキワクワクのイメージが強いが、オケはお互いの距離を探り合い、響きを見つけていくような丁寧なアプローチ。続く楽曲から感じたのは、血の通った人間の優しく深い息遣いと、落ち着いた語り。団員達が、本当に久しぶりに聴衆を迎えての演奏会ができたことの感慨を語り、伝えているよう。最後の「リゴドン」ではヴァイオリンソロで先導するまろさんが「いろいろあったけど、さあ前を向いて楽しく行こうや」と方向を示し、他のメンバーが「そだねー」と答えて希望のうちに曲を閉じた。

次はベートーヴェン。ここから登場の管・打楽器奏者たちにも拍手が送られた。冒頭の決然としたトゥッティの充実した響きから引き込まれた。元気が弾けるイメージの曲だが、広上/N響は慌てず騒がず、無駄に気負うことなく泰然自若の姿勢で進み、「ここだ!」というポイントに呼吸を集中させて風を起こし、力任せではなく、匠の技で大きなものを軽々と動かす。そんな的確な技の応酬が有機的に作用しあって一つの大きな作品を形作る。無駄なくギュッと引き締まった高い密度と迸るエネルギー、全体のダイナミズム。広上は音楽の大切なものを完全に把握して的確にオケに伝え、N響はそれを持ち前の妙技で音として放って行った。

これは、精巧な仕掛けが施された大きな噴水アートを見ている気分だ。狙いを定めてピュッと放たれる水。高い水や低い水、勢いも様々な水の線がキラキラと陽光を受けて飛び交う様子を見ているようなワクワク感。広上の時々小踊りする指揮姿や楽しそうなオケの表情という視覚的な要素も加わり何とも言えない愉悦感に満たされ、最後はトリハダがずっと立ち続けた。ベートーヴェンのフレッシュな魅力を濃縮した名演となった。

600人しかいないとは思えない大喝采がホールを満たした。広上さんとエアー握手をする団員達の嬉しそうな表情にジーンと来た。「音楽っていいな、と思ったら、またここに聴きに来てください。一曲プレゼントします。」という広上さんの挨拶のあと、今の気分を追体験できるような「フィガロ」をアンコールで聴けたのも嬉しかった。最後に植松さんが手を振って退場するまで聴衆の拍手は続いた。

N響は9月からの1年間の定期公演シーズンの中止が決まった。とても残念だが、代替の演奏会などでN響から離れてしまわないようにしたい。

広上淳一/日フィル(ブラ1)2020.7.10 サントリーホール
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