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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

東京藝術大学 藝祭2023

2023年09月07日 | pocknのコンサート感想録2023
藝祭2023

今年の藝祭は4年ぶりにほぼ従来通りの形での開催となった。テーマは「いま、ここで」。特に学生時代は、今、ここでしかできないことに溢れている。それを3年もの間、学生生活は大きく制限され、それどころか活動を禁止され、抑圧された学生達の思いが噴き出るようなテーマではないか。

そんな思いを爆発させる3日間になったかどうか、毎年全日入り浸っている藝祭に今年は都合で3日目しか来ることができなかったが、以前の活気と人出が戻った藝祭のなかに朝から晩まで身を置いて、いま、ここでしかできない学生達のパフォーマンスを堪能した。

演奏会は抽選で当たった5公演と、ピロティで行われたライブを聴くことができた。これらの演奏について感想を述べ、限られた時間ではあったが、できるだけ見て回った展示を中心に写真を紹介したい。



9月3日(日)

もちテット
~9月3日のもち~
~第1ホール~

♪ フォーレ/ピアノ四重奏曲第2番ト短調 Op.45
Vn:島崎友貴乃/Vla:向井樺/Vc:津田美月/Pf:宮川栞

冒頭から充実した響きで、深い息でたっぷり朗々と奏でられる骨太のアンサンブルが心を掴んだ。島崎さんのヴァイオリンの硬質な艶が耳を引き、向井さんのヴィオラの深い味わいが胸に沁み、津田さんのチェロが滑らかに歌う。第2楽章では、メリハリの効いた宮川さんのピアノの颯爽としたアプローチがワクワク感を先導し、ピチピチ弾けるアンサンブルが心踊らせた。第3楽章は弱音でさらにたっぷりと歌って欲しいと思ったものの、フィナーレでは燃焼度を更に高めて、4人のベクトルが合わさり大きく力強い推進力で雄弁なクライマックスを築いた。完成度とテンションの高い充実した演奏だった。

現代アート×モーツァルト
~第1ホール~

♪ モーツァルト/クラリネット五重奏曲イ長調 K.581
Cl:時津りの/Vn:巽千夏、長谷川もも/Vla:浅野珠貴/Vc:倉田俊祐/美術:徳増凛

徳増さん制作のモダンアートの大きなオブジェをバックに奏でられたモーツァルト。クラの時津さんの衣装は、このアートと一体感を成すような大胆なデザインが施されていた。クラリネットは弱音の細い線が繊細な表情を湛え、滑らかな歌い回しで美しい佇まいを聴かせていたのが印象的。4人の弦のアンサンブルは、巽さんのヴァイオリンの語りかけるような抑揚や、倉田さんのチェロの優しく頼もしい存在感をはじめ、潤いのある豊かな響きでクラリネットに寄り添い、5人のアンサンブルは繊細でふくよかに、この作品の溢れる詩情を丁寧に紡いで行った。


Trio Vent
~第2ホール~

1.ドビュッシー/ベルガマスク組曲より 「前奏曲」、「月の光」
2.ドビュッシー/フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ L.137

Fl:井上詩歩/Vla:浅野珠貴/Hp:湊あゆみ

3人のプレイヤーを中央に、客席が円形に取り囲むように配置されたステージは照明が最小限に落とされ、幻想的な雰囲気のなかでドビュッシーの晩年のトリオと、それと同じ編成用にアレンジされたベルガマスク組曲から2曲が演奏された。3人の演奏からは柔らかな芳香が立ち上るよう。穏やかで陰影を丁寧に描いて行き、演出に相応しい淡いファンタジーを醸し出していた。ベルガマスク組曲のアレンジはもう少し3つの楽器が競いあって緊迫感を生み出すように展開してもいいかな。
MANTO VIVO ライブ
~管打楽専攻生~
~ピロティ~

♪ ムーンライト・セレナーデ 他

管打楽専攻生によるビッグバンド"MANTO VIVO"のライブを聴けたのは実に2018年以来。久々にピロティには小規模ながらバンドメンバーが居並び、これを取り囲むように観客がひしめき、大歓声のもと、学生たちのパッションが炸裂した。オープニングの曲は崩壊寸前までテンポアップしていきなり観客をライブのドツボにハメると、次のムーンライトセレナーデではたっぷりと歌心を聴かせてくれた。各管楽器のソロも型にハマらず思いをぶつけ、ドラムスの炸裂はトランス状態!コロナによる過剰な制限で抑圧されていた学生達のパワーが一気に噴き出たようなライブは、4曲+アンコール1曲と短くて、ビールも焼き鳥もなかったが、若い息吹が弾けた熱い音圧のなかに身を置く快感を味わった。愛用しているMANTO VIVOのオリジナルTシャツは作っていないとのことだが、これも是非復活させて欲しい。


星月夜
光崎検校『夜々の星』~うたと語りによる~
箏:城戸さくら/三絃・脚本:奥野楽/尺八:石橋えりか/朗読:岩本留理子
~第2ホール~

♪ 光崎検校/夜々の星

藝祭ならではの邦楽の公演。内気な町の娘の有明と、大名の鳥兎との淡く切ない恋物語を、現代語による朗読と、古典の箏、三弦、尺八、唄で綴ってゆく。歌詞やそれぞれのシーンの絵図のスライド上映も加わって、物語がより身近に感じられる演出も施された。地歌「夜々の星」をもとに創作された物語とのこと。古き良き太平の世に生きる有明の純真でひたむきな思いが、和楽器と唄から穏やかに、ひしひしと伝わってきた。箏の城戸さんと三弦の奥野さんが代わる代わる、或いは二人で歌う唄が、くっきりと澄んだ声と味わいある節回しで心に沁みて心地よく、いつまでも浸っていたい気分だった。朗読は分かりやすかったが、もう少し芝居がかっていてもいいかと思った。
トロンボーン科アンサンブル演奏会
~第1ホール~

1.J.ウイリアムズ/オリンピック・ファンファーレ & テーマ
2.ゲーム音楽メドレーin藝祭(トロンボーン科1年生)
3.小長谷宗一/"ドリーム" ~4本のトロンボーンのための~
4.S.フェルヘルスト/ザ・リヴァー・ベルズ ~トロンボーン8重奏のための~
(アンコール)モスコロスコ?


トロンボーン科の学生による総勢11名のアンサンブルは、トロンボーンが作り出すハーモニーの魅力と多彩さ、雄弁さを存分に伝えた。柔らかく包み込むような響きには人の吐息のような温かさがあり、1年生による4人のアンサンブルからは、この楽器が以前は葬儀の場などに限って使われていたことを思い起こさせる厳粛さも伝わってきた。さらに、バストロンボーンやコントラバストロンボーンが加わると重量感のある底なしのパワーを発揮する。細かい動きのフレーズも滑らかに吹きこなす腕前も流石。リズム系の楽曲では、バスが刻むビートがズンズンと腹に響いてこれも快感。出演した11名が全学年の総メンバーなのだろうか。結束力や和気あいあいとした雰囲気も感じられ、音楽を楽しんでいる様子にも好感が持てた。
写真で振り返る藝祭

神輿パレードは見れなかった・・・








こちらの神輿の実物は出払っていたので模型で

気になった展示をいくつか・・・










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