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みすゞの故郷を訪ねる山口の旅 その1(山口市、秋吉台、角島)

2014年11月06日 | pocknの気まぐれダイアリー

山口市
東京駅から新幹線のぞみ号で4時間あまりかけて新山口駅に到着後、レンタカーで山口市内へ。山口市は、室町時代に西国一の守護大名だった大内氏の拠点として繁栄し、「西の京」とも呼ばれ高い文化を誇った歴史ある町。市内には名所旧跡も多い。市街地からほど近い湯田温泉に一泊して、徒歩を基本に市内を観光した。

~山口サビエル記念聖堂~
日本にキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエルに最初に布教の許可を与えたのが大内氏。大内氏は山口で布教のための寺も与えた。ザビエルが山口に来訪してから400年の記念で建てられたのが山口サビエル記念聖堂。最初に建てられた聖堂は1991年に焼失してしまったが、7年後に再建されたのが今の聖堂。


丘の上に立つ聖堂は、大きな三角の屋根を持つ白を基調とした近代的な建築。内部ではこの聖堂再建の様子を説明するパネル展示やビデオ上映が行われていた。何より印象的なのは、洗練された色とデザインの明るくて大きなステンドグラス。光がいっぱい差し込んで、白壁や椅子にステンドグラスの色が映り、堂内は色彩と光で満たされていた。

~山口県政資料館~
サビエル記念聖堂の下を通るパークロードを北へ歩いて行くと立派なお堀で囲まれた広い敷地に突き当たる。新旧の県庁舎があるこの場所は幕末に毛利家が藩庁を構えたところで山口城跡とも呼ばれている。県政資料館の前に建つ旧藩庁表門がお城の名残を留めている。


1864年に築造されたというこの門は現在でも県庁の西口の門として利用されている。

県政資料館は旧県庁舎と旧県会議事堂から成り、無料で内部を見学できる。どちらも大正5年に建てられ、「西洋の近代的な建築様式と伝統的な和様式が融合した大正建築の粋を集めた貴重な建築物」(山口県のHPより引用)として国の重要文化財に指定されている。


旧県庁舎

高い屋根の中央部分にシンメトリーの両翼部分を持つ旧県庁舎の佇まいは優美で、力強さも持ち合わせている。内部の知事室や会議室も贅沢な作りで、知事の椅子に座れば偉くなった気分になれる。天井や柱の意匠を見るのも楽しい。


旧県会議事堂の中央部分には塔があって洋館の趣き。


旧県庁舎内の窓から見た旧県会議事堂

内部の会議場は今でも使えそうな状態。光沢のある木製の椅子や机、漆喰の壁や天井の曲線、意匠を凝らした柱、アーチ状の大きな窓など、すべてのパーツに価値を感じる。こんなところで県議会が行われれば居眠りやヤジもなくなりそう。


~一の坂川周辺散歩~
市内を南北に流れる一の坂川の周辺には、県政資料館をはじめとして歴史的な名所が点在している。8月の日本列島は猛暑に見舞われ、山口も35度を超える暑さのなか、水分補給をしながら(梨フレーバーのガリガリ君はヒットだった!)散策を楽しんだ。

国の重要文化財に指定されている1519年に建立されたという本殿の建つ八坂神社。境内や参道には無数の提灯が飾られていた。今夜はたまたま「日本三大火祭り」に数えられている山口七夕ちょうちんまつりが開催されるということでラッキー。

提灯はここだけでなく街中至るところで飾られている。今から夜が楽しみになってきた。

町屋風の古くて立派な旧家にも今夜のちょうちんまつり用と思われる提灯が飾られていた。入口に提がっている大きな提灯には「山口ふるさと伝承総合センター」の文字が… 自由に入れるので入ってみた。



ここは明治時代に作られた酒造商家とのこと。太くて立派な梁や長押、磨かれた板の間などが特徴の昔のお屋敷に、郷土の伝統工芸品などが展示されていて楽しい。

この敷地内にはほかに大内塗や和裁など、様々な伝統工芸の体験実習などが行われるところや茶室がある旧家もあり、本格的な施設として稼働していた。旅行ガイドには載っていなかったが一見の価値有り。

これも旅行ガイドには載っていなかったが、レトロな雰囲気の赤レンガの建物があった。ここは旧県立図書館の書庫だった建物を「クリエイティブ・スペース赤れんが」として再利用していて、展示スペースもあって様々なアートイベントや活動の拠点となっていた。


一の坂川周辺には他に由緒ある龍福寺などのお寺や、行かなかったが古民家を利用したカフェなど、大内文化の風情を偲ぶことができるスポットがあり、初夏には川のほとりでホタルが舞い飛ぶとのこと。季節ごとにいろいろな楽しみ方ができそうだ。

~山口七夕ちょうちんまつり~
宿(KKR山口あさくら)で気持ちいい温泉に浸かり、おいしい夕食を頂いてからちょうちんまつりに繰り出した。

山口ちょうちん祭りの起源は今から600年以上も前の室町時代まで遡ることができる歴史と伝統あるお祭りで、今では毎年8月6日と7日に行われている。昼間歩いたパークロードの辺りには屋台がたくさん出て賑わっていた。

広場には山口ゆかりのフランシスコ・ザビエルにちなんでクリスマスツリーに見立て、提灯が高く積み上げられた「ちょうちんツリー」や「すだれちょうちん」などが赤々と夜空に浮かび上がっていた。この無数の提灯にはLEDランプとかではなく、一つずつ本物の火が灯されている。

路上では何基もの提灯神輿が勇ましい掛け声に乗って担がれていて迫力満点。


商店街が連なるアーケード内は提灯のイルミネーションがどこまでも続き、幻想的な光景を見せていた。風で提灯が揺れると、溶けた熱いロウが上から落ちてくることがある。これもホンモノのローソクならではのサプライズ。


提灯をよく見ると、こんな顔が描かれたものもある。



9時半を過ぎるとこれらの提灯の火は消される。この消し方が豪快!たくさん提灯がぶら下がっている枝をバシンと道路に叩きつけて一気に消された。

~瑠璃光寺五重塔~
翌日の午前中は山口市内観光の続き。最初は国宝の瑠璃光寺五重塔を訪ねた。緑濃い山の中腹、お寺に隣接する広々とした庭の奥に緑に囲まれた五重塔はあった。



室町時代に建立されたこの塔はその美しさから日本三大名塔のひとつに数えられているというが、その気品のある佇まいに思わず息を呑んだ。



先端が穏やかに反り返った屋根は檜皮葺き。下から見上げると、屋根の裏側に規則正しく並んだ唐様肘木(からようひじき)の縞模様の美しさにも惹きつけられる。裏山の道を登れば塔と同じ高さから眺めることもでき、そこでまた発見がある。いくら眺めていても見飽きることがない。

五重塔というのはいくら大きくても高くても、人が住むところではなく宗教的なシンボルとしての建造物だ。ここの五重塔は応永の乱で命を落とした大内義弘の菩提を弔うために弟の盛見が立案したという。

この五重塔の前に立って思わず息を呑んだのは、実用的な用途から離れ、大切な人の冥土の幸せを一心に祈って建てられた精神性の高い建築物としてのスピリチュアルな空気や美しさが具わっているからかも知れない。

~常栄寺雪舟庭~
続いて訪れたのは、やはり大内氏ゆかりのお寺・常栄寺。ここには、水墨画で有名な禅僧の雪舟が築いたと言われている庭「雪舟庭」があることで有名。お寺の本堂に上がると枯山水の雪舟庭を見渡すことができる。この庭は国の史跡・名勝に指定されている。


庭は回遊式で、遊歩道を歩きながら石の表情の変化を楽しむことができる。本当に雪舟が作ったという証拠はないとのことだが、石の表情や配置からは精悍なイメージが感じられた。


遊歩道はこの枯山水の庭を周遊するだけでなく、大きな池や更に奥の森の方までずっと続いていて、結構な山道を歩くコースになっている。何だか雪舟の山水画の世界に出会えそう…

秋吉台
山口市を後にして向かったのは、カルスト台地として有名な秋吉台。ここの一番のお目当ては、日本でも最大級の規模を誇る鍾乳洞の秋芳洞だ。

~秋芳洞~
洞窟系が好きな僕は、これまでも旅先で洞穴の名勝があれば大抵入ってみた。その中でも鍾乳洞は好きで、近場の日原鍾乳洞はもちろんだが、東北を旅行したときは龍泉洞、「愛・地球博」に行ったときは竜ヶ岩洞などなど、それぞれに感銘深かったがこの「秋芳洞」は、そのスケールの大きさにおいて他を圧倒していた。

秋芳洞は入口が3か所あるが、僕たちは秋芳洞正面入口から入り、反対側の黒谷口までを往復した。
川に沿って入口へ近づくと橋がそのまま洞内に続いている。奥に行くに連れて外界の光がだんだん遠くなり、光が届かない世界へ。振り返ると入口から差し込む光が川面にも反射して幻想的。

高い天井に川からの淡い反射光が映し出される「青天井」付近から始まる「探検コース」に行ってみた。ここは懐中電灯を手に、梯子を上ったり、狭い穴をくぐったりと、一般コースでは味わえない探検気分を体験できる。150メートル足らずのコースだがなかなか楽しかった。

洞内ではこれまでに見たことのないような変わった「オブジェ」にたくさん出くわす。特に特徴のあるものには「大仏岩」「マリア観音」「幽霊滝」などなど名前が付けられているが、これは「百枚皿」と命名された棚田のような造形。「皿」は100枚どころか500枚以上あり、大きな皿は直径が4メートルもあるという。これが敷き詰められた光景は壮麗。


無数の鍾乳石がつららのように細長く天井からぶら下がる様子が傘屋の天井みたい、ということで「傘づくし」。



秋芳洞のスケールの大きさは、コースの長さからも実感できるが、何といっても洞内の空間の広さにビックリした。それもそのはず。高さは40メートルにおよび、最大幅はなんと120メートルもあるとのこと。

空間が広い分、そこには巨大な鍾乳石が出来上がる。なかでも圧巻がエレベータ入口の近くにある「黄金柱」と呼ばれているこの大石灰華柱。高さは15メートル、幅は4メートルという柱が、まさに黄金色に聳え立っていた。

気の遠くなるような時間が作り出した自然の造形物にただただ驚くばかり。総延長にして8.9キロもあるという秋芳洞だが、見学できるコースはそのうちの1キロ程度。

公開されていないところには何があるんだろうか… 奥のほうは水没していて潜水調査が行われているとのこと。この鍾乳洞にはまだまだ謎が隠されていそうだ。


~秋吉台~
巨大鍾乳洞、秋芳洞の上には、石灰岩が露出した広大な台地、秋吉台が広がっている。ここは日本最大のカルスト台地。見渡す限りのなだらかな緑の丘陵に、石灰岩の塊がキノコみたいにニョキニョキと点在している。


これらの石灰岩の塊は、土の上にゴロゴロころがっているわけではなく、石灰岩で形成されたこの台地の一部が露出したもの。太古の昔は海だったところにサンゴなどが集まり、それが石灰岩となって何億年もかけて堆積してできたのがカルスト台地だという。その台地が長い年月をかけて浸食され、地上では石灰岩柱が現れ、地下では鍾乳洞になったのだ。
気の遠くなる年月をかけて形成されたカルスト台地が、東西17キロ、南北8キロに広がる秋吉台。総面積にして130平方キロ… 山手線の内側の面積が63平方キロと聞けば、その広さにただ驚くばかり。車で行けども行けども終わらないわけだ!

そんなひろーい秋吉台で訪れたのは、長者が森とカルスト展望台、それに若草山を巡るハイキングコース。長者が森は草地のなかにこんもりとオアシスのように木々が生い茂っているところ。木々の中は薄暗くて、地面から石灰岩が露出して、霊気が漂うパワースポットみたいだった。

カルスト展望台は360度に広がるカルスト台地を眺める絶好のスポット。そして展望台から小高い若草山の山頂を巡るハイキングコースを歩けば、自分が広大な台地の一つのパーツになった気分。
遮るものもなく、情け容赦なく太陽が照りつけてくる炎天下のハイキングだったが、初めて見るカルスト台地の雄大でちょっと不思議な風景は目にも心にも焼きついた。


~角島~
秋吉台から更に北上して、この日泊まったのは長門湯本温泉。みすゞの故郷、仙崎はもう目と鼻の先だが、翌日は仙崎へ行く前にちょっと角島(つのしま)に寄り道。ここは旅行初日、山口県政資料館を見学していたときに居合わせた人が「絶対おススメ」と紹介してくれたところ。この旅では、訪れる先々で地元の人が声をかけてきてくれ、親切にいろいろ教えてくれる。山口の人は人情味溢れるいい人がたくさんいるに違いない。

角島は山口県の北西端に位置する小さな島。この島へは立派な橋がかかり、抜群のドライブ&ビュースポットだった。海にかかる長い橋をドライブしていると、海の上を飛んでいるような感覚で超気持ちいい。しかも通行料は無料。海の色が、日本海のイメージとは全く異なる南国の海を思わせる美しいエメラルドグリーンをしている。遠浅の海の底に白い砂面が続いているせいだろうか。ここを勧めてくれた人が「映画の撮影スポット」と言っていたワケもよくわかった。


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角島の先端には灯台がある。辺りは風が強く、草が生い茂り、ワイルドな景色。灯台の中のらせん階段を上りバルコニーに出ると、強風のなか、大海原と島の海岸線が遥かに見渡せた。灯台に隣接する記念館に入れば、明治9年から航行を見守っているという灯台の歴史がよくわかる。

角島には他にも見所がいくつもあるようだが、今日はみすゞの故郷・仙崎へ行くのがメインなので、お昼前に仙崎に着くように角島を発った。



みすゞの故郷を訪ねる山口の旅 その2(みすゞの故郷を歩く ~仙崎・青海島~)
みすゞの故郷を訪ねる山口の旅 その3(萩)
みすゞの故郷を訪ねる山口の旅(メニュー画面)



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