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早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団第77回定期演奏会

2017年12月30日 | pocknのコンサート感想録2017
12月27日(水)松岡 究 指揮 早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団
~第77回定期演奏会~
杉並公会堂


【曲目】
1.モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲 K.620
2.ハチャトリアン/組曲「仮面舞踏会」
3.ブルックナー/交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 WAB.104

地元の小学校の音楽教室で毎年素敵な演奏を聴かせてくれるので興味を持ち、前回の定期演奏会に出かけて感動し、「次の定期も聴きたい」と思っていた早稲フィルの「冬定期」を夫婦で聴いた。「春定期」のメンバーをベースに今年の4月に入った1年生も加わり、ブルックナーの大規模な大曲を置いたプログラムで、早稲フィルはまたも素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

前回もそうだったが、早稲フィルでスゴイと思うのは、プログラムの「メイン」として最も力を入れるであろう後半の大曲だけでなく、前半の曲目も充実した演奏を聴かせてくれること。中身の詰まった濃い変ホ長調の響きで始まった「魔笛」序曲は、堂々とした風格と力強さを具え、生き生きとしたワクワク感を運んだ。主要部に至るまでのゆったりした部分で、弦がウェーブを繰り返すように立体的なうねりを聴かせ、リアルな音像を浮かび上がらせたのも素晴らしかったし、主要部で勢いよく頂点へと向かう見事なアンサンブルに、すっかり心を奪われた。

続くハチャトリアンの「仮面舞踏会」は、真央ちゃんが使ったことで有名な「ワルツ」を含む5曲から成る組曲。それぞれが個性的な魅力を放つ組曲に、松岡/早稲フィルは全力でアプローチした。「ワルツ」「マズルカ」「ギャロップ」といった、テンポの速い勢いのある曲では、生命力と推進力に溢れる演奏を聴かせた。とりわけ最後の「ギャロップ」は、底抜けの明るさで音楽を推し進め、ノリノリの演奏に心が躍った。ゆったりしたテンポの「ノクターン」では、春定期の「シェエラザード」で素晴らしいソロを聴かせた山田百花さんのヴァイオリンをまた聴くことができて嬉しかった。先端まで神経が行き届いたデリケートな演奏で、妖しい魅力を湛えた表情を聴かせた。

後半はブルックナーの「ロマンティック」。壮大で深淵な世界と、メランコリーなシーンとの対話が、悠久の時の流れを感じさせる音楽に、松岡/早稲フィルは全力で対峙し、音楽の計り知れないパワーとエネルギーを、エンジン全開で伝えてきた。ブルックナーの壮大な世界は、ただ力任せに吠えたって出せるものではない。松岡/早稲フィルは、若々しいエネルギーを迸らせながらも、細部まで緻密なバランスを取り、金管はまさに大聖堂に轟くオルガンのような厚みのある充実した響きを聴かせ、木管はその大聖堂に漂うお香のように柔らかな品を添え、弦は「魔笛」でも聴かせたウェーブのうねりを体感させ、常に「前へ突き進む」パワーをみなぎらせていた。

前回の演奏会でも感じたが、早稲フィルはメンバー全員が、一丸となって全力で立ち向かう様子が、視覚的にもビンビンと伝わってくる。弦楽器で言えば、左右の後ろのプルトのプレイヤーでも、弓を大きく使い、コンマスばりに全身を使って「自分はこう表現するんだ!」という意志がリアルに伝わってくる。皆がこういう姿勢で演奏に臨み、それが一つにまとまったときのパワーがどんなに強大なものになるかを示してくれた。そこには、ホルンやトランペットなど、難しいソロ楽器の大健闘による功績も大きい。

コンミスの山田さんがパンフレットに書いていた「思い入れのこもった熱い演奏を、ただ自己満足に終わらせず、技術がなくても楽しければいい、というところを超えた先に行きたい」という、アマチュアであることに甘えない高い志と向上心に支えられた演奏が実現した。この曲は大曲であるだけでなく難曲でもある。松岡/早稲フィルは、パワフルで壮大な世界を創り上げることには成功したが、メランコリックなものや神秘的な世界を表現する余地はまだ大きいとも感じた。それでも、演奏中随所で心拍数が上がってトリハダが立ち、プロオケでもなかなか体験できないほどの感動を味わわせてくれた早稲フィルの大健闘と、この大曲をここまでまとめ上げた指揮の松岡氏に、心からの盛大な拍手を送りたい。次回の定期は「ブラ1」。これも楽しみだ。

早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団第76回定期演奏会 2017.5.28 杉並公会堂
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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