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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

小菅 優 ピアノ・リサイタル

2017年12月06日 | pocknのコンサート感想録2017
11月30日(木)小菅 優(Pf)  
~Four Elements Vol.1 Water~
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル

【曲目】
♪メンデルスゾーン/無言歌集~ヴェネツィアの舟歌第2 Op.30-6
♪フォーレ/舟歌 第5番 嬰へ短調 Op.66
♪メンデルスゾーン/無言歌集~ヴェネツィアの舟歌第3 Op.62-5
♪フォーレ/舟歌 第10番 イ短調 Op.104-2
♪メンデルスゾーン/無言歌集~ヴェネツィアの舟歌第1 Op.19-6
♪フォーレ/舟歌 第11番 ト短調 Op.105
♪ラヴェル/水の戯れ
♪ショパン/舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

♪ ♪ ♪

♪武満徹/雨の樹 素描
♪武満徹/雨の樹 素描II -オリヴィエ・メシアンの追憶に
♪リスト/巡礼の年第3年~エステ荘の噴水
♪リスト/バラード第2番
♪ワーグナー/リスト編/イゾルデの愛の死

【アンコール】
1.ラヴェル/夜のガスパール~オンディーヌ(水の精)
2.ショパン/24の前奏曲 Op.28~第15番変ニ長調「雨だれ」
3.ショパン/エチュード Op.25~第12番ハ短調「大洋」

ベートーヴェンのソナタ全曲演奏会と全集盤のリリースで、内外に揺るぎない評価を確立した小菅優が、今度は紀元前からこの世で最も根源的な四元素として語り継がれてきた「水・火・風・大地」それぞれをテーマに4回のリサイタルを行い、「この美しい世界の原点と、人生そのものの素晴らしさを探求していきたい」という、何とも壮大なプロジェクトをぶちあげた。シリーズ第1回目のテーマは「水」ということで、すべて「水」に関連した曲がプログラミングされた。

リサイタル全体から受けた印象は、冷静さと客観性。今までに聴いた小菅の演奏から伝わってきた、音楽の核心を捉えて、その魅力を最大限に引き出すやり方とは、ちょっとアプローチが異なるようにも感じた。透明で流動的で、決まった「形」を持たない「水」という、これほど近い存在でありながら、実は掴みどころのないものに対する捉え方として、冷静・沈着な態度は欠かせないのかも知れない。

そこから生まれるのは、水彩画のような柔らかくて透明な色調による佇まい。メンデルスゾーンやフォーレの舟歌からは、そこはかとない舟歌の詩情を、第三者として捉える目を感じた。ラヴェルや武満作品、リストの「エステ荘の噴水」からは、様々なテクスチュアを多層的に明晰に弾き分ける小菅の技が映え、静かに躍動する水の生命力が伝わってきた。

個々の演奏は素晴らしいに違いないのだが、メンデルスゾーンとフォーレの舟歌を聴いていたときと、後半のリストのバラードでウトウトしてしまった。小菅さんのリサイタルで眠くなるなんて… 長らく抱えていたイベントが無事に終わったあと、今日は初めて休暇を取って気が抜けたせいもあるかも知れないが、後半まで眠くなってしまうとは。

「気が抜けた」というプライベートな理由以外を考えると、小品ばかりだったため、ソナタなど多楽章構成の「メイン」があるプログラムと比べてパワー配分が分散されてしまったこと、メンデルスゾーンとフォーレの「舟歌」を交互に演奏したことで、聴く側の集中力が分散されてしまったこと、「水」という捉えどころのないものへのアプローチに、聴き手としてついて行けなかったことなどが挙げられるかも知れない。これらは殆ど自分の問題だが。

アンコールも水にちなんだ曲が続いたが、最後のショパンのエチュードは、燃えさかる炎のようなエネルギーが伝わる圧倒的な演奏で、「もしかして次の”火”への布石?」とも思ったが、この曲には「大洋」のニックネームが付いていることがわかり、これも「水」だったか、と納得。激流や大波(ドビュッシーの「海」のピアノ版など)を表現する大曲を入れてくれていたら、眠くならなかったかも。今回はこんな感想しか書けず悪しからず…

小菅優「ベートーヴェン詣」2017 ~2017.6.16 調布市文化会館たづくり~
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

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