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盛夏の尾瀬 ~五十肩登山と尾瀬散策~  その1 至仏山

2011年09月26日 | 山&ハイキング
五十肩。。!
毎年必ず出かけている夏山だが、今回は五十肩という大きな障害を抱えてしまった。5月のなかば、左肩の痛みが気になりだした。ちょっと無理して腕を伸ばしたりすると、肩がズキッと痛む。首の筋を痛めたときによく効くエレキ盤を貼っても、全然効かない。5月の終わり、子供の学校の運動会でPTA競技の玉入れに参加して、玉を投げたとき、それまで経験したことがないようなすごい激痛が肩から腕に走った。それからはこの激痛が、腕を不自然に伸ばしたり、とっさの動きをする度に走るようになり、この痛みに見舞われると、その場で顔を歪めて腕を押さえ、しばらくは動けなくなるほどに…

症状は、日に日にとまでは行かずとも、先週できた動きが痛くてできなくなっている、という具合に、徐々に徐々に悪化して行った。整形外科でマイクロ波治療やマッサージを受けても、マジックハンドと言われ、遠方から通っている人も多い接骨院に通っても一向に改善の兆しはない。痛みのポイントは増えるし、腕を動かせる範囲も狭まってくる。これでは夏山登山に差し障るではないか!

五十肩は3ヶ月から、人によっては2年も続く、という話も聞いたが、最短の3ヶ月で治るのは無理そう。いつものように20キロ近いリュックを背負って何日もかけて縦走するのはきついし、バランスを崩したとき、とっさに左手が出ないのでは危ない。話題の映画「岳」で遭難シーンをいくつも観て、この肩でいつものような登山をしたら命にかかわると自覚し、この肩でも行けそうなラクな山を選ぶことにした。

そこで浮上したのが尾瀬。平坦な尾瀬ヶ原ぐらいなら多少重いリュックを背負って歩いても大丈夫だろうし、そこのキャンプ場にテントを張って、荷物を思いきり軽くして尾瀬の名峰至仏山と燧ヶ岳の2座をそれぞれ往復するぐらいなら行けそうな気がした。登山道には危険箇所もないようだし。

登山歴30年にもなる僕だが、超有名な湿原があり、百名山が2つもある尾瀬にこれまで1度も行ったことがなかった。シーズンは人でごった返すという話は大きな敬遠材料だったし、人が来すぎて自然が破壊されたと聞けば、行くこと自体が自然破壊に荷担する行為になるのではという抑制も働いていた。そもそも猫も杓子も出かけていく尾瀬ってどうなんだろう、という懐疑心もあった。でも一度は尾瀬を見たいとは思っていたし、この肩じゃあ尾瀬ぐらいしか行けるところはない。

そんな消極的な気持ちで選んだ尾瀬だったが、下調べをするうちに気分は尾瀬モードに。そして実際の尾瀬は、尾瀬ヶ原や2つの山だけでなく、ビックリするほど素晴らしいところだった。大きなハプニングに見舞われながらも堪能した尾瀬での3泊4日をレポートする。


2011年8月7日(日)のち

初日は現地での行程は短い。尾瀬の近くはシーズン中は一般車通行規制が行われているため、車は戸倉の駐車場までで、そこからはシャトルバスで鳩待峠へ行くことになる。シャトルバスと言ってもワゴンの大型相乗りタクシーが、戸倉の駐車場と鳩待峠の間を、片道一人900円のチケットで運行している。僕が乗ったときは乗客は一人だけだった。午後2時過ぎで時間は遅いが、ハイシーズンの日曜日にお客が一人というのはちょっと寂しいのでは…

タクシーに乗る前から降り始めていた雨が、鳩待峠へ向かっている途中から激しくなり、雷まで鳴り出した。しょっぱなからイヤな天気だ。鳩待峠には20分程で到着。雨は小降りになったのでリュックを背負って、今日のキャンプ地、山の鼻へ出発した。15キロのリュックに五十肩は耐えられるか心配だったが、とりあえずは大丈夫そうだ。

鳩待峠から山の鼻までの道乗りは、樹林帯のなかの歩き易い木道か丸木の段で、全体にゆるやかな下り。道は往路用と復路用に分かれているのは、さすが日本有数のハイキングスポット・尾瀬といったところ。だけどハイカーは思ったより随分少ない。戻って来る人達は結構いるが、同じ往路を行く人は殆んどいない。小一時間で山の鼻に到着した。






山の鼻は尾瀬ヶ原の西の端にあり、広大な尾瀬ヶ原ハイキングのスタート地点。

1キロ程度の手頃な周遊路があったので、テントを張ってからそこを歩いてみた。

広大な湿原のあちこちに可憐な花が咲き、明日登る至仏山の穏やかな山容が間近に望める。尾瀬ヶ原を縦断するコースへ少し歩を進めると、湿原の向こうには尾瀬のもうひとつの名峰・燧ヶ岳が望めた。こちらは2日後に登る。


至仏山


燧ヶ岳

夕食は至仏山荘でとらせてもらった。テント泊で小屋の充実した食事にありつけるのはありがたい。隣のテーブルは団体客で大賑わい。そんな賑わいをかき消すほどの激しい雨が降ってきて、テントの様子が心配になり、テントへ戻った。雨は寝るときもずっと降り続いた。明日の登山は無理かな…?

2011年8月8日(月)のち一時

3時50分に目覚ましが鳴ったが、相変わらず雨が降っているようで、テントに雫がポタポタ落ちる音がしていた。これじゃあ今日は至仏山は無理だな…

山に登れないとなるとどうしよう… 寝っころがったまましばらく考えていたが、念のため天気をちゃんと確かめておこうと、起きて空を見上げると、星がキラキラとまたたいているではないか!これなら至仏山登山は決行だ。テンションが急に上がった。急いで朝飯を済ませて4時57分にキャンプ場を出発した。

空はもうだいぶ明るい。至仏山への道は、昨日散策した周遊ルートから二叉路を左へ、湿原から樹林帯へ入って行く道を選ぶ。至仏山がたおやかな陵線をくっきりと夜明けの空に描いていた。


振り返れば、尾瀬ヶ原の向こうにそびえる燧ヶ岳の山の端から朝日が射してきた。


天気予報に反して、今日は天気は大丈夫そうだ。しばらく木道が続き、やがて石の登山道になった。昨日から降り続いた雨のせいか、登山道を沢のように水が流れ落ちている。この登山道の石は蛇紋岩という滑りやすい石なので注意するように、と登山口に看板が出ていたが、確かにこの石はツルツルして滑りやすい。その上登山道は水の通り道と化しているのでなおさら滑る。これは一歩一歩よほど慎重に歩かないと滑って転んでしまいそう。足の置き場を確かめながら、そこそこ急な滑りやすい道を登っていった。

登山道からの眺めはなかなかいい。日光白根山が見えるスポットもあるし、燧ヶ岳のビューポイントも多い。朝日を背後から浴びて、シルエット状に朝霧の上に屹立する燧ヶ岳の姿は、神々しいほどに美しい。


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負傷!!
相変わらず急な滑りやすい道を注意しながらひたすら登り続け、登山開始から1時間半になろうとした頃だった、気をつけて乗り上げたはずの石でツルッと滑ったかと思うと、体のバランスを崩し、前のめりに倒れ、顔面を倒れた先の石にガチンと思い切りぶつけてしまった。鼻のあたりでバキッと音がしたような…
「ヤバイ… 鼻の骨が折れたか!?」
鼻のあたりから血がポタボタ落ちて、岩に赤い斑点をつけて行く。鼻が折れて出血か?いったいどーすればいいんだ?

しかし出血はどうやら鼻血らしい。両鼻からの鼻血だった。首にかけていたタオルで鼻を押さえていたら、タオルはみるみる血に染まっていった。この鼻血を止めないと… その場で仰向けになり、鼻をタオルで押さえて止血を試みる。鼻の上部や額からも出血しているようだ。

あー、こんなふうに登山道のど真ん中で顔面血だらけでひっくり反っているところに、さっき追い越したシルバーさんの団体がやってきたら、きっと大騒ぎになってしまう。山岳救助隊を呼ばれてしまうかも。歩けるようなら先へ行くしかないだろう…

幸い鼻血はとりあえず止まったようだ。足も手も負傷はしていない。五十肩のダメージもたいしたことはなさそう。立ち上がってみたら何とか歩けそうだったので、登山を続行した。鼻っ柱に血がべっとり付いているのが鏡がなくても見える。すれ違う人がいたらさぞやびっくりされるだろうが、この道は登り専用なので人とすれ違うことがないのは助かる。

しばらく登り続けると「森林限界」の標識があった。それまでもビューポイントはいくつもあったが、そこからは常に素晴らしい展望が得られ、怪我にもめげず写真撮影が忙しくなった。


岩は相変わらずツルツルしているし水の流れもあるが、水はようやく途切れがちになってきた。山がなだらかなせいで、山頂がなかなか見えてこないが、展望と花々を楽しみながら歩けるので気分もいい。

この至仏山は「花の宝庫」ということで、あちこちで高山植物が目を楽しませてくれる。ただ「花の宝庫」と言えば、やっぱり北アルプスの後立山連峰あたりの花の群落にはかなわないかな…

こんな怪我をしてしまったが、何とかコースタイム内で山頂(2228m)に到着した。登り始めから2時間46分。


至仏山の山頂は広々としていて展望は360度の大パノラマ。尾瀬ヶ原を懐に抱えた燧ヶ岳の姿が格好よくて見応えがある。初めて登る尾瀬の山からの眺めは日光白根山、男体山ぐらいしかわからない。山頂にいた人に他の山を教えてもらった。赤城山、皇海山、会津駒ヶ岳、それに越後駒ヶ岳や平ヶ岳… 初めて見る山も多い。


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なだらかな山容の至仏山だが、西側はごつい岩が露出して険しい表情を見せていた。朝方は尾瀬ヶ原を覆っていた朝もやもすっかりあがっていた。こうして見ると、尾瀬ヶ原の大きさ、池塘や、ところどころグリーンベルトのように樹木が生えている地帯の様子が一望できる。


山頂では例によってのんびりと過ごす。コーヒーをいれ、菓子パンをかじり、スケッチブックを開き絵筆を走らせた。





怪我はさほど痛まない。山頂でたっぷり2時間過ごして、小至仏山経由の下山コースを辿る。

抜群の展望をほしいままに楽しみながらの、小至仏山への稜線歩きはアルペンムード満点で気分がいい。「花の山」という名に恥じず、いろいろな種類の花があちこちで咲き誇っていた。



実際の標高よりずっと高い高山帶を歩いている気分になれるのは、北アルプスなどに比べて森林限界がずっと低いため。殆んど行ってない東北の山もこんな感じなのかも知れない。


「笠ヶ岳」と言っても、これは尾瀬の笠ヶ岳

下山途中で、後から登ってきて先に下山して行ったシルバーの団体さんに追いついた。僕の顔を見るなり、「あら、その顔どうしたの?」と訊かれた。事情を話すと「登ってるとき血がたくさん落ちてるのを見て、どうしたんだろう、って言ってたんだけど、あなただったんだぁ」周りの人達にもかなりびっくりされた。また追い越していくおれの後ろ姿に向かっておばちゃんが「気をつけて下りなよ。鼻っ欠けニイちゃんになったらタイヘンだよ」と声をかける。ホント気をつけねば!

展望抜群の稜線歩きから樹林帶の下山路へ入っても展望は悪くない。ガイドには「ぬかるんでいる」と書いてあったが、ぬかるみもなく、登りのルートより歩きやすい。太陽が上がってもう随分たつので、ぬかるみも解消されたということなのだろう。

山頂から1時間56分で、昨日のスタート地点、鳩待峠に到着。下界的な雰囲気の漂うこの場所は人も多く、この顔では目立ってしまうし、素通りして、一旦テント場へ戻るため、昨日辿った同じ道へ進んだ。荷物を全部背負って歩いた昨日は小一時間かかった山の鼻までの道のりを、今日は40分ほどで歩いた。
山の鼻のテント場

すっかり乾いたテントをしまって、このあと明日の燧ヶ岳登山に備え、尾瀬ヶ原の東端の「見晴」へ向かう。

盛夏の尾瀬 ~五十肩登山と尾瀬散策~ その2 燧ヶ岳

盛夏の尾瀬 ~五十肩登山と尾瀬散策~ その3 尾瀬ヶ原散策 へ

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