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小菅優「ベートーヴェン詣」2017

2017年06月20日 | pocknのコンサート感想録2017
6月16日(金)小菅優「ベートーヴェン詣」2017
~調布国際音楽祭2017~
調布市文化会館たづくり


【曲目】
1.ベートーヴェン/ピアノと管楽のための五重奏曲変ホ長調 Op.16
2. 藤倉大/GO~ピアノと管楽の5重奏のための~(小菅優 委嘱新作)
3.モーツァルト/ピアノと管楽のための五重奏曲変ホ長調 K.452
【アンコール】
ベートーヴェン/小菅優編/悲歌 Op.118

【演奏】
Pf:小菅 優/Ob:フィリップ・トーンドゥル/Cl:吉田 誠/Fg:小山莉絵/Hrn:トゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールト


バッハコレギウムジャパンをはじめ、多方面でメキメキと活躍の場を広げている鈴木優人氏のプロデュースで5年前から始まったという調布国際音楽祭の公演を聴いた。お目当ては僕にとって一押しならぬ「激オシ」のピアニスト、小菅優。プログラムは、その小菅と内外の若き名管楽器奏者たちが奏でる3つのピアノと管楽のための五重奏曲。

小菅のピアノはソロも素晴らしいが、室内楽でも彼女の持ち味がメンバーに乗り移って「小菅ワールド」がアンサンブル全体に行き渡るから素晴らしい。小菅が抜群の嗅覚で、音楽の美味しいところを的確に捉えて他のメンバーに語りかけるように示すと、メンバーはそれを敏感に感知して応え、生きたコミュニケーションが行き交う。焦点が定まり、爽快で生命力に溢れた音が行き交う。とりわけ音楽の素材自体が魅力たっぷりのモーツァルトで、小菅は飛び切り美味しい音を奏で、アンサンブルが息づき、その愉悦は最高の幸福感に達して、終始ウキウキワクワクさせてくれた。

こうしたアンサンブルの妙味を支えるもう一つの要因が、個々のプレイヤーの個性豊かな妙技だ。オーボエのフィリップ・トーンドゥルは弱音の美しさと表現の幅広さが耳を引き、吉田誠のクラリネットは活きが良く果敢に挑んでくる。小山莉絵のファゴットは潤いのある深い表情で存在感を示し、ファン・デァ・ズヴァールトが奏でるホルンは知的で研ぎ澄まされ、アンサンブルを引き締める。

個々の妙技は、小菅の委嘱により作曲された藤倉大の新作でのソロ楽章やデュオの楽章でも発揮された。なかでもクラリネットのソロの楽章での、きらりと眼光を効かせた吉田の超絶技巧の雄弁な演奏は見事だった。6つの楽章から成るこの作品は、自然の様々な情景を感じさせ、そこから何かが生まれる予感がした。

ピアノと管楽の五重奏のために書かれた作品の代表格とも言えるモーツァルトとベートーヴェンの作品に現代の作品を加えた演奏会は、プログラムとしても演奏内容もとても充実していて、この音楽祭の存在意義は十分に伝わってきたが、500席の客席の入りが7割程度だったのはもったいないなと思った。

小菅優 ベートーヴェンのピアノトリオ 2016.5.19 紀尾井ホール
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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