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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ムーティ指揮「リゴレット」

2019年04月07日 | pocknのコンサート感想録2019
4月4日(木)イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.1
【演目】
ヴェルディ/「リゴレット」(抜粋上演、演奏会形式)
~東京・・音楽祭 2019~

東京文化会館

【配役】
マントヴァ公爵:ジョルダーノ・ルカ(T)/リゴレット:フランチェスコ・ランドルフィ(Bar)/ジルダ:ヴェネーラ・プロタソヴァ(S)/スパラフチーレ:アントニオ・ディ・マッテオ(B)/マッダレーナ:ダニエラ・ピーニ(MS)/ジョヴァンナ:向野由美子(MS)/モンテローネ:望月一平(Bar)/牢番:氷見健一郎(B)

【演奏】
リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭特別オーケストラ

演奏会形式での抜粋版とは云え、ムーティの指揮でヴェルディのオペラが聴ける貴重な機会を逃すまいと、発売初日にチケットを予約。簡単に取れたのは意外。しかし、1月に聴いたムーティ/シカゴ響が期待外れで、今夜の公演への期待が急にしぼんでしまった。チケット代もばかにならないし、誰かに譲ってしまおうかとさえ思ったが、そんなことしなくて本当によかった、、、と思える素晴らしい公演だった。

演奏会形式ということで、ムーティはずっと立って元気に指揮をした。演奏も水を得た魚のごとく、生き生きピチピチと瑞々しく、エネルギッシュ。かつ繊細の極みと云える表現も聴かせ、ヴェルディの暗く劇的で悲しくも、切ない愛に溢れたオペラの世界を余すところなく描いていった。ドラマチックな表現、アグレッシブな表現での充実ぶりもさることながら、輝かしい表現のなかに潜む暗い影まで感じられたこと、悲哀を静かに切々と訴える表情の綾の哀しい美しさが深く心に沁みたことに、ムーティの年輪を重ねたがゆえの真骨頂を感じた。

東京春祭特別オーケストラは、若いプレイヤーが集まった臨時編成のオケだが、ムーティの指揮に見事に応えた。透明で磨きのかかったアンサンブルの精度の高さ、輝かしいパワー、美しい歌、デリケートな表現どれもが素晴らしい。楽曲に散りばめられたソロ楽器の妙技にもホレボレ。どんな演奏家が集まって、どのぐらい合わせたのだろうか。常設オケと遜色ない音を聴かせた。

歌手陣も総じて充実した布陣。なかでもジルダ役のプロタソヴァの歌には心を打たれた。気高く美しく、強い芯が通っていて、チャーミングな表情にも長け、夜空を照らす一条の光のよう。リゴレット役のランドルフィも素晴らしい。苦悩を心の底に抱えつつ、屈折した思いのなかで娘への愛を熱くリアルに歌った。殺し屋スパラフチーレの凄味のある声と歌唱も存在感抜群で、上演を盛り立てた。マントヴァ公爵を歌ったルカは、立派な体格の割に声が薄く、プロタソヴァのジルダが素晴らしかっただけに、ジルダが命を奉げてまで助けるだけの魅力は伝わらなかったが、息の長い繊細な表現力は耳を引いた。

こと切れたジルダを抱いたリゴレットの後悔と嘆きの最後のシーン、オケのトゥッティによる強奏は、単に「これでもか」と煽り立てるだけでなく、ジルダやリゴレットの悲し過ぎる運命に寄り添うムーティの愛も感じられたことが、感動を一層熱くした。ほぼ満員の聴衆からの喝采とブラボーの嵐に相応しい、感動的な上演だった。

♪ ♪ ♪

終演後、「東京・春・音楽祭」の実行委員長の鈴木幸一氏が、ムーティ―氏の、音楽祭へのこれまでの貢献と今後の展望について紹介。このイタリア・オペラ・アカデミーでは、来年は「マクベス」、再来年は「仮面舞踏会」が取り上げられるという。これは楽しみだ。そして、ムーティ氏自身による挨拶。演出家の世界に奪われてしまっている昨今のオペラ上演を、演奏家の手に取り戻したいという話から、演奏会形式の今夜の上演にかけたムーティの意気込みを改めて感じ、この東京文化会館が、ムーティにとっての日本デビュー(1975)の思い出の場所という話から、ベーム/ウィーン・フィルに同行して指揮をした当時の鮮烈な映像が蘇った。

その後、このアカデミーの指揮講習に世界から集まった120人の若い指揮者から、最終選考に選ばれた4人の表彰式が行われ、その中にただ一人の日本人として沖澤のどかさんが、ムーティ―から修了証を授与されたのは嬉しかった。

ムーティ指揮 シカゴ響/ブラームス:1番&2番 2019.1.30 東京文化会館


♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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