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やっとかめ室内管弦楽団 第5回演奏会

2018年06月12日 | pocknのコンサート感想録2018
6月9日(土)沖澤のどか 指揮 やっとかめ室内管弦楽団
  ~第五回演奏会~
小金井宮地楽器ホール(大ホール)

【曲目】
1.ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
2.ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調 Op.104
 【アンコール】
 バッハ/無伴奏チェロ組曲第3番~サラバンド
 Vc:山本裕康
3.ドヴォルザーク/交響曲第6番ニ長調Op.60
【アンコール】
ドヴォルザーク/スラブ舞曲第10番ホ短調Op.72-2

団員のハセジュンさんにお誘いいただき、アマチュアオケ「やっとかめ」の演奏会を夫婦で聴いた。「やっとかめ」とは名古屋弁で「久しぶり」という意味だそうで、学生時代に名古屋でオケをやっていた人達が東京で「やっとかめ~!」と集まって結成されたという。指揮の沖澤のどかさんは、ベルリンで研鑽を積みつつ、ドイツでも盛んに指揮活動をしている期待の若手。彼女が藝大在学中、藝祭でオペラやオーケストラ公演を指揮するのを聴き、まとめ方の上手さや、繊細な表情付けに好印象を持ったことを覚えているが、それ以来の再会となる。

最初は定番とも言える「魔摶の射手」序曲。出だしこそ、音を出すのに緊張している感じだったが、有名なホルンの旋律が鳴り響くと、会場の空気が一変。深い森の情景が広がった。そして繰り広げられたオペラのガチンコ対決をイメージする音楽では、オケが一丸となって果敢に立ち向かい、「カッコいい!」と思う瞬間に何度も出会ってトリハダが立った。これを聴けば、このオケが高い技術だけでなく、熱い心を持った集団であることは明白だ。

チェリストの山本氏を迎えたドボコンでオケのテンションは更にアップして、輝かしい響きと、エネルギッシュなパフォーマンスで、オケパートのカッコよさを示した。ソロの山本氏は、芯のある音で音楽の方向を能動的に示し、きりっと引き締まって研ぎ澄まされた演奏を聴かせた。沖澤さんは、ソロの息遣いやアゴーギクをオケに的確に分かりやすく伝え、アマオケでは難しさもあるソロとオケによるリアルな丁々発止へ導いて行った。

メインに置かれたのはドヴォルザークの6番。前の2曲でもそうだったが、例えば弦パートは弓を大きく使うなどして、どのパートも大きな呼吸で伸びやかな歌を奏でた。美味しい空気をたっぷり吸い、明るく暖かい日差しを浴び、全身で生きる喜びを謳歌しているよう。どの場面でも音楽が満面の笑みで輝いていて、聴いている方も笑顔になる。プレイヤーの皆さんはあからさまに笑ってはいなかったが、心では楽しい笑い声をあげていただろうし、沖澤さんは、きっと笑顔で指揮していたのではないだろうか。音楽全体から明るさと幸福感が醸し出され、若々しいエネルギーを放出させて、パワーみなぎる演奏を繰り広げた。

各パートはがむしゃらに演奏するのではなく、金管アンサンブルのバランスの取れた美しいサウンドがあったり(日に影に大活躍のホルン!)、木管(特にフルートの妙技!)の細やかで豊かな表情付けがあったり、室内管弦楽団と呼ぶには大所帯ではあるが、室内楽的な精度と親密さを聴かせた。これはやはり沖澤さんの力が大きいに違いない。沖澤さんはこの8年の間に、繊細さに加えて音楽を大きく捉え、大きく表現する術を身につけ、「やっとかめ」という技も熱意も持った素晴らしいオケとの共演で、その力を最大限に花開かせたと言えるだろう。

しっとりと叙情的な演奏を聴かせアンコールでは、沖澤さんは指揮棒を持たずに全身で音楽を伝え、まるでダンスを踊っているようだった。沖澤さんの今後の活躍にも期待が膨らんだ。


ブログ管理人作曲によるCD
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~(MS:小泉詠子/Pf:田中梢)

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