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N響 2018年12月B定期(フェドセーエフ指揮)

2018年12月16日 | pocknのコンサート感想録2018
12月13日(木)ウラディーミル・フェドセーエフ指揮 NHK交響楽団/
NHK東京児童合唱団

《2018年12月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
♪ チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」Op.71

今年のN響定期の最終公演となるBプロを指揮するのは、ロシアの巨匠フェドセーエフ。フェドセーエフという名前を聴くと、勝手にショスタコのシンフォニーなんかを指揮する厳めしい表情と威圧的な演奏をイメージしてしまい、今夜の「くるみ割り人形」もさぞや華麗で重厚で圧倒的な演奏になるのでは、と勝手に想像してしまったのだが、実際はそんなイメージとは対極とも云える心暖まる人間味溢れる「くるみ割り人形」だった。

普段は機能美とか、精巧なアンサンブルとか、輝かしいサウンドで魅了するN響だが、今夜はアンサンブルがもう少し弛くて、そして何より、東欧のオケのような味わいと温もりのある響きが聴こえてきた。組曲で聴き慣れた馴染みの曲もそうでない曲も、どれもが味わい深くジワッと心に沁みてくる。

前半ではこの演奏の良さが正直よくわからなかった。とても自然体で無理がないけれど、これといったサプライズとか、ここぞとばかりの聴かせどころみたいなものも感じられず、つかみどころがないままだった。1幕最後の「雪のワルツ」では、NHK東京児童合唱団の瑞々しく清らかで滑らかな歌声とオケが合わさった温かいサウンドが心地よかったが。

そんな前半の印象と比べ、後半は最初から稀有の感動が待っていた。後半の全ての楽曲に云えるのだが、一番有名な「花のワルツ」を例にその魅力を伝えるなら、フェドセーエフが胸の奥で大切に温めて仕舞っておいた贈り物を、そっと手を差し伸べて聴き手に届けてくれるような、温もりと優しさと愛情に溢れている。ゆっくりしたテンポから醸し出される味わい深さが、いつもならウキウキと心躍るフレーズを、泣けてくるほどじんわりと心に沁みる音楽にしてしまう。

フェドセーエフの老練の人徳のなせる業と言うべきか、寒々とした心に温かな明かりを灯してくれるようで、まさにクリスマスの時季にぴったりの演奏。全曲を聴き終わったときは、胸が熱くなってウルっと来てしまいそうな気持で夢中で拍手を送った。

Bプロでは、なかなかこういう曲をやってくれないし、合唱が入る曲を聴いた記憶がないほどやってくれずに不満だったが、それが一気に解消されたうえに、こんなにステキな演奏で聴かせてもらえて幸せいっぱいになった。86歳になるフェドセーエフだが、指揮姿も、ステージを行き来する様子もとても元気。是非近いうちにまたN響に客演してほしい。


♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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