本日の未確認情報

政治・経済・市況・科学について、真偽不明な解説を書き綴るブログ

反社会的なウォルマート -ウォルマート・激安の代償-

2006-03-12 21:15:08 | 経済
 サイゾー1月号の町山智浩氏の記事によると、米国で「ウォルマート・激安の代償」(Wal-Mart:High Cost of Low Price)という映画が公開され、注目を集めているという。

 ウォルマートは言うまでもなく世界一の小売業で売上高はなんと30兆円。「エブリデイ・ロープライス」という激安戦略で売上を急速に伸ばしてきた企業である。

 この映画では、その激安路線を支えているのが低賃金労働者であること、そしてその低賃金労働者を支えているのが、政府の補助である事が明らかにされている。記事では、次のような驚くべき事実が紹介されている。

 1.従業員の8%が生活保護を受けている
 2.社員の半数は健康保険料が払えないため、政府の医療福祉を受けている
 3.結果、従業員は政府から年間16億ドルの援助を受けていることになる
 4.副社長が部内通達で、年金や健保のコストカットのため、体の弱い者や
  永年勤務の社員を減らし、体の丈夫な若者だけをパートで雇うように指示
  した

 このうち、4.については、以下のページにもう少し詳しく紹介されているので、引用する。
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2005_12/america_01.htm&no=9

 「10月26日付のニューヨークタイムス紙が報じた記事。これはウォルマート役員が書いた極秘メモの露見を伝えるものであった。メモには、労働時間の削減による更なるコスト削減、フルタイムからパートタイムへの転換、中高年労働者の排除、医療費負担を軽減するために健康に問題ある従業員を医療保険の適用除外とする計画などが記されていたとされる。加えて、長時間労働の強制、女性労働者への差別、児童労働などについてウォルマートが残していた記録が明るみに出たと同ホームページ(ウォルマート従業員会ホームページ)は掲載している。」

 「ウォルマート従業員会」は、同社の従業員の組織。ウォルマートが労組の設立を頑なに拒んできたため、会社を刺激しないよう、労組ではなく従業員組織として立ち上げられた組織である。
 実は、低賃金の労働条件は、ウォルマートが労働組合の設立を阻止してきたから可能であったのだと言われている。ウォルマートは全米最大の雇用主であるのに、これまで労組が設立されることはなかった。全米のナショナルセンターであるアメリカ労働総同盟・産業別組合会議も、日本の連合と同様に組織率の低下に直面している。そのため、最大の従業員を抱えるウォルマートでの組織化は、大きな課題として活動してきたのだが、同社の抵抗でなかなか労組設立に至っていないのである。

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 小売業は、製品の仕入原価と従業員の賃金が主なコスト。仕入原価が一緒なら、従業員も「安く」仕入れれば、激安でも利益が出るってことなんでしょう。が、それが社会の犠牲の上に成り立っているとすれば、本末転倒であると思えるのだが。

 
映画の公式ページは、コチラ。
http://www.walmartmovie.com/
DVDも売っている(ただし、リージョン1なので日本のDVDプレーヤでは再生できない)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000AYNG1G
 

外資に毟られるソフトバンク(笑)

2006-03-12 00:30:10 | 時事
 ソフトバンクに対抗して、サーベラスなどの投資会社がボーダフォンの買収を検討しているらしい。
「ボーダフォン買収、米投資会社なども検討…英紙報道」
http://news.goo.ne.jp/news/yomiuri/keizai/20060311/20060311i112-yol.html

 サーベラスなどの手強い競合が現れれば、買収金額は高騰するだろう。果たして、今のソフトバンクに2兆円以上の資金調達能力はあるだろうか?

 また、ソフトバンクは、LBOで買収資金を調達するらしいが、おそらく外資系銀行から資金調達するだろう。金額が上がれば、銀行は金利が増えてホクホクだろう。
 また、買収金額が高騰して一番トクをするのは、ボーダフォンの本社。
 いずれにしても、外資がトクをしそうな気がする。

 ボーダフォンは日本の携帯市場では負け組。これまで通りのやり方では復活するのは難しいだろう。ただ、ソフトバンクやサーベラスが買収し、激安料金を打ち出せば、多少は勝ち目があるかも知れない。でも、安いだけならPHSにはかなわない気もするが...

美化される日露戦争

2006-03-12 00:06:34 | 政治
 最近映画化された「東京大学物語」の江川達也が、ビッグコミックスピリッツで「日露戦争物語」を連載している。近代国家へと脱皮しつつある日本が、欧米列強の圧力をはねのけて独立を維持すべく、知恵と勇気を持って大国ロシアと戦う...キャッチコピーを付けるとすれば、こんな内容である。

 ストーリーと歴史解釈は司馬遼太郎の受け売りで何ら目新しいものはないのだが、あまりにも歪んだ歴史観であると言わざるを得ない。

 日露戦争の真相は、ロシアの伸張をおそれたイギリス・米国が日本をけしかけて戦争に持ち込み、ロシアの国力を消耗させて帝政ロシアの崩壊へと導いた、ということである。すなわち、日本は帝政ロシアに対する噛ませ犬だったのである。

 以下、その論拠をいくつか示す。

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(1)ビゴー風刺画

 写真はいずれもフランス人画家・ビゴーが書いた風刺画である。教科書にも載っているので、ほとんどの人は見たことがあるであろう。

 写真(上)は見ての通り。少年の姿で表わされた日本をそそのかすイギリスと米国(右)である。
 また、写真(下)は、日露戦争をけしかけるイギリスである。この絵については、以下のページで、次のように説明されている。
 「怖がる日本を『奴はのろまだから大丈夫』とけしかけるイギリス。イギリスは日本と日英同盟を結び、18億円の戦費に対して500万ポンドを日本に貸し付け、アメリカ金融業者のヤコブ・シフも500万ポンドの公債発行をアメリカで引き受けた。」
http://www.geocities.jp/kawabeh1924/kaigun/genin/63bigo/bigo.html


(2)ドイツ人・ベルツの日記

 明治9年に東大医学部の教師として来日し、診察を通じて多くの政治家と交流のあった、ドイツ人・ベルツの日記(岩波文庫)から抜粋する。

 「(日英同盟の締結により)今や日本では、ロシアとの避けがたい一戦を開始するのに十分な程度に協力であり、援護されたと感じるに至った。しかもこの戦争こそは、正しく英国の欲していたものなのであった。こうして英国自身は指一本触れることなしに、そのアジアにおける不断の危険な敵手は、当分の間、不具にされてしまったのである。」

 ドイツ人・ベルツも、ビゴーと同じように見ていた訳である。

 このような英米の思惑を知ってか知らずか、日本国内にはロシアと同盟すべきという意見もあった。そしてその最右翼が伊藤博文だったのである。

「戦後、ロシアと攻守同盟を結ぼうとする思想は、明らかに日本ではますます、人気を得ている。...伊藤公爵が最初から、ロシアと協定することに賛成であり、イギリスとの同盟が、侯を出し抜いて、その不在中に締結されたことが周知である。」

 そのような国内世論を反ロシアに誘導するためか、英米の宗教団体までが、謀略と思えるような活動をしていたようである。ベルツは、次のようなエピソードを紹介している。

 「英、米の新教伝道者連中の態度は、この戦争における最も不快な現象に属するものだ。かれらは、今や神道や仏教の信徒とすら合同して大会を催し、その席上で、今度の戦争は人種と宗教には何の関係もないこと、日本は野蛮国ロシアに対し真の文明を代表するものであること等を宣言した。」

 なお、同盟国・イギリスはロシア・バルチック艦隊のスエズ運河通行を許可しなかったため、喜望峰経由で長期間の航海を余儀なくされて消耗し、日本海海戦で負けた、と言われている。が、実際には艦隊の一部はスエズ運河を通行しているのである。そして、日本に向かう途上に、間違ってイギリスの漁船を攻撃し(ハル港事件)、撃沈してもいるのだが、イギリスはこれに対して報復することすらしなかったのである。
 再び、ベルツの日記から。

 「バルチック艦隊のスエズ運河通行に、でき得る限りの便宜が与えられる旨の報道は、当地で非常な驚きと憤りを引き起こした。艦隊の通過中は、他のすべての船舶に対し、南方よりの運河入航を禁じ、しかもこれと関連してなお、あらゆる面倒な規定が設けられた。これが、日本の同盟国たるイギリスの行為なのだ。」

 イギリスがロシアの邪魔をしなかったのは、日本を勝たせたいが、勝ちすぎるのも困ると考えていたためである。

 「イギリスは、バルチック艦隊をやっつけることまでは考えていない。なぜなれば、イギリスの計画におあつらえ向きなのは、日本もまた、あまり強大にならないことであるからだ。かくてこそイギリスは、東アジアで思いのままに振る舞えるのだ。イギリスの政策のこんなねらい所は、元来、だれにだってわかるはずなのだが、日本の新聞はわからない」

 ベルツは政界の中枢とも交流があったため、ここで紹介した以外にも、実に興味深い証言が盛りだくさんである。いずれ別のテーマでも紹介したい。


(3)イギリス紙の記者・モリソンの暗躍

 最後に、イギリスの日本での世論操作の実態を暴いた著作「日露戦争を演出した男 モリソン」(ウッドハウス暎子)を紹介したい。

 ロンドンタイムズの記者・モリソンは、「ロシア南下の脅威に苦しむ日本に対露決戦を焚きつけるべく情報戦を仕掛け始める。」(裏表紙紹介文)

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 これらの事実のうちいくつかは歴史の教科書にも載っていることであり、敢えて言うまでもない事かもしれない。しかし、マスメディアのパワーは絶大である。

 メディアに影響されて日露戦争を美化する日本人が増えないことを願うばかりである。