ズビグニュー・ブレジンスキーは、カーター政権の時の大統領補佐官で、80年代以降の米国の外交政策に大きな影響を与えた人である。また、彼はポーランドからの亡命者であったので、ソ連の全体主義への痛烈な批判者でもあった。現在は、CSIS(国際戦略問題研究所)に所属し、時々ブッシュ政権に批判的なコメントをしているのが報道されたりする。
さて、そのブレジンスキーの著書「地政学で世界を読む」(原著は97年刊行)は、米国の外交戦略の入門書的な本である。911以降の対テロ戦争を経た後ではさすがに古すぎる感じがあるが、ポーランドやウクライナ等へのEUの拡大戦略を唱えるなど、基本的なコンセプトは今読んでも充分に通用する内容である。
今日は同書から、日韓関係に関する下りを紹介する。昨今の作られた日韓友好ブームを読み解く上で、参考になるのではないかと思う。
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ブレジンスキーの朝鮮半島情勢についての地政学的分析は、要旨、以下の通りである。
(1)朝鮮半島が分断されたまま、豊かな韓国と貧しい北朝鮮の格差が拡大すれば、朝鮮戦争の再発の可能性が残る。その間、米軍は韓国に駐留し続けなければならないだろう。
(2)朝鮮半島が統一した場合を考えてみよう。米軍が駐留し続けることは、中国が許さないだろう。その場合、中国は統一を阻止するか、韓国に対して軍事力を行使する事も考えられる。
(3)一方、朝鮮半島から米軍が撤退した場合には、統一国家は中国の勢力圏に入ってしまうだろう。その場合、日本が、東アジアにおける唯一の米軍基地を提供し続けるリスクを負うのも難しくなる可能性がある。
(4)そうなると、米軍の東アジアでのプレゼンスは大きく後退してしまう。
以上のような考察を元に、ブレジンスキーは次のように述べている。
「日本と韓国が本当の意味で和解すれば、最終的にどのような形で朝鮮半島が統一するにせよ、その背景となる地域環境を安定させる点で、大きな前進になる。」
「この和解を進めるうえで、アメリカは決定的な役割を果たせる。ドイツとフランスの和解、そのあとドイツとポーランドの和解に使われた具体的な方法(大学の学術交流から軍隊編制の統合にいたる)をほぼそのまま適用すればいい。」
「日本と韓国が包括的な協力関係を結び、アジアに安定がもたらされれば、朝鮮半島の統一後も、アメリカは東アジアでの力を保ちやすくなるだろう。」
奥歯に物の詰まったような表現ではあるが、分かりやすく言うと、「日本と韓国が政治的・文化的・軍事的に統合が進めば、アメリカは、日本を通じて統一朝鮮半島国家に影響力を行使できるようになる。そうすれば、統一国家が中国の支配下に入るのを阻止することが出来る」という事なのだろう。
これが、日韓友好が“演出”される理由の、国際政治の視点からの解釈である。
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それにしても、アメリカというのは開けっぴろげな国である。「ドイツとフランスの和解、そのあとドイツとポーランドの和解に使われた具体的な方法をほぼそのまま適用すればいい。」などと、内政干渉の事実をあたかも自分たちの手柄のように言うのだから。
我々日本人としては、「和解に使われた具体的な方法」とやらを良く研究し、日韓間に「具体的な手段」で内政干渉されないように、監視して行くことが必要だろう。
私だって日韓でいがみ合う必要はないと思うが、だからと言って、何も他国のために、友好ムードを人工的に作り上げる必要などないではないか。
さて、そのブレジンスキーの著書「地政学で世界を読む」(原著は97年刊行)は、米国の外交戦略の入門書的な本である。911以降の対テロ戦争を経た後ではさすがに古すぎる感じがあるが、ポーランドやウクライナ等へのEUの拡大戦略を唱えるなど、基本的なコンセプトは今読んでも充分に通用する内容である。
今日は同書から、日韓関係に関する下りを紹介する。昨今の作られた日韓友好ブームを読み解く上で、参考になるのではないかと思う。
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ブレジンスキーの朝鮮半島情勢についての地政学的分析は、要旨、以下の通りである。
(1)朝鮮半島が分断されたまま、豊かな韓国と貧しい北朝鮮の格差が拡大すれば、朝鮮戦争の再発の可能性が残る。その間、米軍は韓国に駐留し続けなければならないだろう。
(2)朝鮮半島が統一した場合を考えてみよう。米軍が駐留し続けることは、中国が許さないだろう。その場合、中国は統一を阻止するか、韓国に対して軍事力を行使する事も考えられる。
(3)一方、朝鮮半島から米軍が撤退した場合には、統一国家は中国の勢力圏に入ってしまうだろう。その場合、日本が、東アジアにおける唯一の米軍基地を提供し続けるリスクを負うのも難しくなる可能性がある。
(4)そうなると、米軍の東アジアでのプレゼンスは大きく後退してしまう。
以上のような考察を元に、ブレジンスキーは次のように述べている。
「日本と韓国が本当の意味で和解すれば、最終的にどのような形で朝鮮半島が統一するにせよ、その背景となる地域環境を安定させる点で、大きな前進になる。」
「この和解を進めるうえで、アメリカは決定的な役割を果たせる。ドイツとフランスの和解、そのあとドイツとポーランドの和解に使われた具体的な方法(大学の学術交流から軍隊編制の統合にいたる)をほぼそのまま適用すればいい。」
「日本と韓国が包括的な協力関係を結び、アジアに安定がもたらされれば、朝鮮半島の統一後も、アメリカは東アジアでの力を保ちやすくなるだろう。」
奥歯に物の詰まったような表現ではあるが、分かりやすく言うと、「日本と韓国が政治的・文化的・軍事的に統合が進めば、アメリカは、日本を通じて統一朝鮮半島国家に影響力を行使できるようになる。そうすれば、統一国家が中国の支配下に入るのを阻止することが出来る」という事なのだろう。
これが、日韓友好が“演出”される理由の、国際政治の視点からの解釈である。
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それにしても、アメリカというのは開けっぴろげな国である。「ドイツとフランスの和解、そのあとドイツとポーランドの和解に使われた具体的な方法をほぼそのまま適用すればいい。」などと、内政干渉の事実をあたかも自分たちの手柄のように言うのだから。
我々日本人としては、「和解に使われた具体的な方法」とやらを良く研究し、日韓間に「具体的な手段」で内政干渉されないように、監視して行くことが必要だろう。
私だって日韓でいがみ合う必要はないと思うが、だからと言って、何も他国のために、友好ムードを人工的に作り上げる必要などないではないか。