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核燃料の国際管理構想で拡大する原子力発電

2006-03-23 23:46:29 | 経済
 核燃料の「国際管理構想」の実現性が急速に高まっているそうである(フォーサイト2月号参照)。

 核燃料の国際管理構想とは、ウランの濃縮や再処理によるプルトニウム抽出などの核燃料生産を特定の施設(国)にしか認めず、他の国ではその燃料を利用した発電のみが認められる、という構想である。

 最近のイランの核開発の問題でも明かなように、核の平和利用と軍事利用の境界は極めてあいまいである。それほど高度な技術が無くても、発電目的の燃料から、プルトニウムが抽出できることが、北朝鮮によって実証されてしまった。日本のような先進国が核兵器を開発できるであろうことは当然としても、インドネシア等の東南アジア諸国だって、北朝鮮よりは技術レベルは高いだろうから、原子力発電を導入すれば核兵器を作れることになってしまう。

 つまり、核不拡散のためには現在の核保有国以外への原子力発電自体の普及を抑止せざるを得ない状況に追い込まれているのである。

 そのような状況で出てきたのが、核燃料の国際管理構想である。

 構想には、二期目から原子力推進に政策転換したブッシュ政権が協力を表明しており、日本も経済産業省の総合資源エネルギー調査会が協力を打ち出したという(同記事)。

 構想が実現すれば、発展途上国にも原子力導入の可能性が広がり、原子力発電が急速に拡大するかもしれない。先進国においては温暖化対策で石油から原子力へとエネルギー転換が進んでいるが、温暖化対策が途上国にも義務づけられれば、途上国でも同じ動きになるだろう。

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 数年前まで、原子力には逆風が吹いていた。
 2003年1月には、高速増殖炉もんじゅに設置無効の判決が出され、同年の8月にはゼネラル・エレクトリック社の元社員による内部告発から原発のトラブル隠しが発覚し、原発の相次ぐ停止の事態へと進んだ。

 それからわずか数年しか経っていないが、状況は大きく変化している。原発の新規建設を停止していた米国が、新たな発電所建設を決定し、さらには核兵器燃料をプルサーマルも再開されるようだし、国内でも佐賀の玄海原発でのプルサーマル導入が地元議会で容認されるなど、状況変化が著しい。エネルギーを巡って大きな転換点に来ているように感じられる。

 エネルギー問題の今後を占ううえで、地球温暖化対策の動きと併せて、同構想についても注目しておきたい。

反社会的なウォルマート -ウォルマート・激安の代償-

2006-03-12 21:15:08 | 経済
 サイゾー1月号の町山智浩氏の記事によると、米国で「ウォルマート・激安の代償」(Wal-Mart:High Cost of Low Price)という映画が公開され、注目を集めているという。

 ウォルマートは言うまでもなく世界一の小売業で売上高はなんと30兆円。「エブリデイ・ロープライス」という激安戦略で売上を急速に伸ばしてきた企業である。

 この映画では、その激安路線を支えているのが低賃金労働者であること、そしてその低賃金労働者を支えているのが、政府の補助である事が明らかにされている。記事では、次のような驚くべき事実が紹介されている。

 1.従業員の8%が生活保護を受けている
 2.社員の半数は健康保険料が払えないため、政府の医療福祉を受けている
 3.結果、従業員は政府から年間16億ドルの援助を受けていることになる
 4.副社長が部内通達で、年金や健保のコストカットのため、体の弱い者や
  永年勤務の社員を減らし、体の丈夫な若者だけをパートで雇うように指示
  した

 このうち、4.については、以下のページにもう少し詳しく紹介されているので、引用する。
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2005_12/america_01.htm&no=9

 「10月26日付のニューヨークタイムス紙が報じた記事。これはウォルマート役員が書いた極秘メモの露見を伝えるものであった。メモには、労働時間の削減による更なるコスト削減、フルタイムからパートタイムへの転換、中高年労働者の排除、医療費負担を軽減するために健康に問題ある従業員を医療保険の適用除外とする計画などが記されていたとされる。加えて、長時間労働の強制、女性労働者への差別、児童労働などについてウォルマートが残していた記録が明るみに出たと同ホームページ(ウォルマート従業員会ホームページ)は掲載している。」

 「ウォルマート従業員会」は、同社の従業員の組織。ウォルマートが労組の設立を頑なに拒んできたため、会社を刺激しないよう、労組ではなく従業員組織として立ち上げられた組織である。
 実は、低賃金の労働条件は、ウォルマートが労働組合の設立を阻止してきたから可能であったのだと言われている。ウォルマートは全米最大の雇用主であるのに、これまで労組が設立されることはなかった。全米のナショナルセンターであるアメリカ労働総同盟・産業別組合会議も、日本の連合と同様に組織率の低下に直面している。そのため、最大の従業員を抱えるウォルマートでの組織化は、大きな課題として活動してきたのだが、同社の抵抗でなかなか労組設立に至っていないのである。

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 小売業は、製品の仕入原価と従業員の賃金が主なコスト。仕入原価が一緒なら、従業員も「安く」仕入れれば、激安でも利益が出るってことなんでしょう。が、それが社会の犠牲の上に成り立っているとすれば、本末転倒であると思えるのだが。

 
映画の公式ページは、コチラ。
http://www.walmartmovie.com/
DVDも売っている(ただし、リージョン1なので日本のDVDプレーヤでは再生できない)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000AYNG1G
 

知られざるパチンコ業界の参入規制

2006-02-26 00:27:48 | 経済
 パチンコ(ホール)業界は日本人の経営者の割合が少ないと言われている(もちろん、統計データなどのがあるわけではないので、俗説である可能性は否定できないが)。しかし、日本は自由主義経済の国である。医療や鉄道などの規制業種以外は参入したい人は誰でも自由に参入できるはずである。特にパチンコ業は非常に儲かった時期があったので、もし誰でも参入可能なら、出自に関わらず資金を持った人がどんどん参入し、民族的な偏りは消えている筈である。そうでないとすると、何らかの参入規制装置があるのではないか?

 そう考えてパチンコ業界の参入規制について調べてみたのだが、このテーマで調査した文献は見当たらなかった。そこで、ウェブ資料を中心に自分で調べた範囲で、パチンコ業界の参入規制について整理しておきたい。

 言うまでもなく、パチンコ業界は遊技機を製造するメーカーと、末端のホールに大別される。

 まず、メーカーについて。

 メーカーは、日本遊技機工業組合、日本電動式遊技機工業組合という業界団体を作っている。かっては、これらの下部組織として、日本遊技特許運営連盟と日本電動特許という団体(会社)があったが、日本遊技特許運営連盟については、97年に公正取引委員会より排除勧告を受け、解散している。

 排除勧告を受けた理由は、日本遊技特許運営連盟がパチンコに関する基本特許を所有し、特許の利用に排他的な制限を設けることで、遊技機の製造への参入を困難にしていたためである。なお、このように特許権を共有することで既存業者による寡占化をはかることを、特許プールという。
http://t4tomita.lolipop.jp/pnc/pnc05.html

 「週刊ダイヤモンド」の間部洋一氏の記事(上記ページ)によると、

 日本遊技特許運営連盟と日本電動特許は、「関連する工業所有権を独占しその実施権を各台メーカーに許諾している」。さらに、日本遊技機工業組合、日本電動式遊技機工業組合に加入できるものは「現在の出資企業の社長とその四親等以内の親族に限定されて」おり、「新規加盟を求める企業は、組合に加盟できなければ特許が使えない」。

 すなわち、遊技機の製造については、97年までは「社長とその四親等以内の親族」という極めて厳格な参入規制が敷かれていたことになる。公取の排除勧告を受けて、現在はそのような参入規制は無くなっているのだろうか?日本遊技特許運営連盟は解散しているが、日本電動特許は廃止されていないようだ。日本電動式遊技機特許という会社があり、特許プールを続けているらしいことが以下のページからわかる。おそらく組織名変更したのだろう。
http://www.ntspat.co.jp/pnr/so_2002_07.htm
http://www.ip.courts.go.jp/documents/shingai_1710.html

 上記の週刊ダイヤモンドの記事からは、特許プール以外の問題点も浮かび上がる。

 記事では、「組合に加盟している台メーカーが作った機械は、警察庁の委託機関である財団法人保安電子通信技術協会で検査され」、「技術協会への加入申請手続は組合を通じてなされる」とされている。
 これが事実なら、警察による検査を受けるためにも業界団体への加盟が必須となることを示している。

 このように、特許プール、警察による検査の二つの側面で、業界団体への加盟が実質的な参入障壁となっていることが伺える。

 次に、ホールについてみてみよう。

 中小機構のパチンコホール事業への参入方法を説明したページに、「遊技台数の制限、休日等の一定の自主規制ルールを設けている地区が多いため地区遊協(注:ホールの地域団体)には加入したほうがよい」との記述がある。
http://j-net21.smrj.go.jp/venture/startup/jirei_h019.html
あくまでも「自主規制」であれば加入は必須ではないであろうが、ホールの設置は公安委員会の許可が必要なので、団体に加盟していないホールは「自主規制」に従っていないと判断されて許可が下りないことはあるかも知れない。

 また、ホールの新設を公安委員会に届け出る際には、「検定通知書の写し」、「製造業者の保証書」等を添付しなければならない。
http://www.police.pref.saitama.lg.jp/kenkei/sinsei/huzoku/huzoku-s.html
この書類は、メーカーがホールから注文を受けた際に対して発行するもので、納品される遊技機が、型式認定を受けた機種と同一であることを証明するものである。
http://www.y-pokka.jp/data/data_19.shtml
従ってホールは、メーカーから証明書をもらえなければ公安委員会への申請を行うことができない。メーカーは組合に加盟している限られた数に限定されていることと併せて考えると、ホールへの参入はメーカーによる裁量の余地が大きいと思える。

 それでは、中古の遊技機についてはどうか。許可の際には新品と同様に保証書を提出する必要があるが、中古機を別の地域に移動する際には、保証書を遊商(全国遊技機商業協同組合連合会傘下の遊技機販社の組合)に提出し、打刻を受けることとなっている。
http://www.vqnet.com/information/q_a/word.html

 別の資料によると、中古機について「作成した書類は、各地区遊商組合員または回胴遊商組合員を仲介して、各地区遊商及び回胴遊商に提出、打刻を受けなければならない」となっており(注:回胴はスロットのことである)、遊商の組合員に仲介してもらえわなければ、打刻を受けることはできないようである。
http://www.adcircle.co.jp/greenbelt/news/200411/0401.html

 このように、中古機を導入しようとしても、遊商への加盟が実質的な規制となっていることが伺える。

 さて、以上がパチンコ業界の参入規制についての調査結果である。
 まとめると、メーカーでは業界団体が実質的な参入規制の装置として機能しており、寡占化した少数のメーカーが、全国のホールを垂直的に支配しているように見える。メーカーの参入規制がポイントのようである。大変巧妙な仕組みに思えるが、一体、誰がこのような仕組みを考え出したのだろうか?警察?

 パチンコ業の根拠法である風俗営業取締法が施行されたのは、昭和23年のことである。この年は、、競馬法・自転車競技法も制定されており、日本のギャンブル元年ともよばれている。日本への施政権返還の直前のことである。
 パチンコと公営ギャンブルは同じ理由で、何らかの必要性があって戦勝国により日本に“持ち込まれた”のだと思う。競艇の例を出すまでもなく、公営ギャンブル・パチンコが戦後の日本政治に与えた影響は計り知れないものがある。占領末期のこの辺りの事情は、いずれきちんと調査されるべきテーマであろう。

写真:オリジン弁当の店頭に貼られたドンキのTOBに反対する声明文