伊勢神宮の建て替えが、財界主導で進められるらしい。以下は産経新聞のニュースの抜粋。
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千三百年前から続く伊勢神宮の大祭、式年遷宮に伴う社殿建て替えなどのために設立する財団法人の会長に、日本商工会議所の山口信夫会頭(旭化成会長)が、実務をとり仕切る副会長・事務総長には和田龍幸・日本経団連事務総長が内定したことが、四日までに分かった。財団は三月中にも設立が認められる見通し。ほかの役員には奥田碩(ひろし)・日本経団連会長(トヨタ自動車会長)、北城恪太郎・経済同友会代表幹事(日本IBM会長)ら財界トップが名を連ね、伝統の継承を、“オール財界”体制で支援する。
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/keizai/20060305/m20060305014.html
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なぜ伊勢神宮の立て替えを、財界が支援するのか。識者は、政教分離の原則から国が宗教団体を支援する事はできないからである、と説明するだろう。しかし、宗教施設であっても、文化財的価値の高い建物の維持管理には、国もお金を出しているのではないか。伊勢神宮ほどの歴史のある神社であれば、国がある程度の資金負担をしても良いではないか?
そうならないのは、伊勢神宮が単なる宗教施設ではなく、国家神道の象徴的な神社だからなのである(http://ja.wikipedia.orgで伊勢神宮の項を参照)。それゆえ、国家神道に反対する諸勢力は、伊勢神宮の国家関与に強く反対するのである。
例えば、新宗連。立正佼成会を中心とする宗教団体が作る組織である。新宗連は以下に抜粋するように、「靖国神社国家護持反対」とともに「伊勢神宮国有化阻止」を訴えている。
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http://www.kosei-kai.or.jp/activities/cooperation/network.html
第2次世界大戦後、「日本国憲法」によって信教の自由が宣言され、さまざまな新しい宗教教団が、戦後の疲弊しきった日本人に生きる希望と勇気を与えようと、活発な活動を展開するようになりました。そのような中、1951年10月27日、新宗教の諸教団が手を携えて、人々の魂の救済と社会の浄化、ひいては世界の平和に貢献していこうと新宗連が結成されました。...これまでに、原水爆禁止や開発途上国への開発援助などの平和運動、伊勢神宮国有化阻止、靖国神社国家護持反対など、信教の自由を守る運動を主に活発な活動を展開してきました。
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もちろん、伊勢神宮の国家関与に反対しているのは、新宗連だけではないが、論旨は同じようなもので、国家神道の復活を警戒しているのである。そして、それは中国や韓国が、小泉首相の靖国参拝を非難する理由とほぼ同じなのである。なにせ、伊勢神宮も戦時中の日本人の精神的支柱であったのだから。
財界が支援したのは、別に日本の伝統を守るためではなくて、おそらくこれらの政治的勢力に配慮したためだろう。
伊勢神宮の建て替え問題は、いわばもう一つの靖国神社問題でもあるのである。産経新聞も、「伝統の継承を、“オール財界”体制で支援する」なんて適当な感想でなくて、もう少し考えて記事を書いて欲しいものである。