安田喜憲氏は、地質中の花粉の化石の分析を通じて、歴史上の植生を再現する手法を通じて、植生と文明との関係を分析して著名になった地理学者である。「森林の荒廃と文明の盛衰」などでの、歴史と文明とを結びつけた考察は、科学的裏付けもあって興味深い。もっと世界的に注目されても良い学者だと思う。
同書で特に興味深いのは、ギリシャ文明の盛衰と、植生との関係を分析したところ。
ギリシャ・エーゲ海というと、真っ青なきれいな海という印象がある。しかし、透明度の高い海というのは、裏返せば、生物が生息できない環境であるということ。それは、周辺の陸地に森林がないため、腐葉土などの栄養分が陸地から供給されないということである。
ところが、植生を花粉の化石から分析すると、数千年前にはハンノキ、ナラなどの森林が拡がっていたという。そして、これらの森林は人間の焼畑や燃料としての伐採によって、失われたのである。
森林の減少は、一時的に文明の隆盛を来す。なぜなら、砂漠化し、降水量が減少すれば、「大河のほとりへの人口の集中と、より強力な灌漑のコントロールの必要性を産み、中央集権的な国家の誕生をもたらした」(p174)からである。
しかしながら、さらなる森林の減少は、人口の流出と文明の崩壊をもたらす。その結果が、現在のギリシャのはげ山と、すきとおったエーゲ海である。
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ヨーロッパの精神の起源とも言えるギリシャ文明であるが、そのギリシャ文明はサステナビリティのない文明で、そのために滅んだと言えるだろう。
そして、自然環境の「サステナビリティのなさ」は、現代の欧米の文化にも脈々と受け継がれていると感じられる。
欧米文明は、ギリシャ→ローマ→フランス→ドイツ・イギリス→アメリカと、土地と森林を食いつぶしては次の地域に文明の中心を移動することで発展してきたと思う。しかし、いよいよ世界に残された土地は無くなりつつあるのである。
ギリシャ・ローマ文明とその継承者から決別すべき時に近づきつつあるのではないだろうか。
同書で特に興味深いのは、ギリシャ文明の盛衰と、植生との関係を分析したところ。
ギリシャ・エーゲ海というと、真っ青なきれいな海という印象がある。しかし、透明度の高い海というのは、裏返せば、生物が生息できない環境であるということ。それは、周辺の陸地に森林がないため、腐葉土などの栄養分が陸地から供給されないということである。
ところが、植生を花粉の化石から分析すると、数千年前にはハンノキ、ナラなどの森林が拡がっていたという。そして、これらの森林は人間の焼畑や燃料としての伐採によって、失われたのである。
森林の減少は、一時的に文明の隆盛を来す。なぜなら、砂漠化し、降水量が減少すれば、「大河のほとりへの人口の集中と、より強力な灌漑のコントロールの必要性を産み、中央集権的な国家の誕生をもたらした」(p174)からである。
しかしながら、さらなる森林の減少は、人口の流出と文明の崩壊をもたらす。その結果が、現在のギリシャのはげ山と、すきとおったエーゲ海である。
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ヨーロッパの精神の起源とも言えるギリシャ文明であるが、そのギリシャ文明はサステナビリティのない文明で、そのために滅んだと言えるだろう。
そして、自然環境の「サステナビリティのなさ」は、現代の欧米の文化にも脈々と受け継がれていると感じられる。
欧米文明は、ギリシャ→ローマ→フランス→ドイツ・イギリス→アメリカと、土地と森林を食いつぶしては次の地域に文明の中心を移動することで発展してきたと思う。しかし、いよいよ世界に残された土地は無くなりつつあるのである。
ギリシャ・ローマ文明とその継承者から決別すべき時に近づきつつあるのではないだろうか。