能登半島地震「日本への報い」と喜ぶ中国人と心寄せる中国人
1月1日の夕方、石川県で発生した「令和6年能登半島地震」。時間が経つにつれて被害の大きさが徐々に明らかになり、心を痛めている人が非常に多い。世界各国の首脳などからも哀悼の意が寄せられ、とくに台湾などは蔡英文総統が6000万円の支援金を送ると発表するなど、支援の輪が広がっている。
そんな中、地震発生後に、中国海南省のテレビラジオ局の男性アナウンサーが「(地震が発生したのは)日本への報いか」などとSNSの動画で発言し、所属先のテレビ局が一時停職処分にすると発表、物議をかもした。この件は日本でも大きく報道されたが、中国人の反応はどうだったのだろうか。
「報い」への同意で増える「いいね」
同男性アナウンサーはSNS上の動画で「(地震が起きたのは)日本への報いか。日本で大地震が発生した。2024年、日本は暗雲に覆われるだろう。(福島第一原発の)核汚染水を海に排出してはならない」という趣旨の発言を行い、SNSで大きな注目を集めた。
男性アナの動画のコメント欄には当初、「その通りだ」「彼の発言は民意だ」「日本で起きた大地震を祝福する」と男性アナを支持したり、応援したりする発言が目立った。現在、この男性アナのSNSは閉じられているが、検索すると、1月7日時点でも男性アナの顔はぼかされることなく他のSNSで確認することができ、SNS上で男性アナが配信した動画自体も転送される形で閲覧できる。
それを見ると、無名の個人が発信したSNSでも、「いいね」は1000か2000以上もつき、注目度は高く、それらには「(男性アナの)斗音(ドウイン=動画のSNS)のフォロワーが600万から830万にまで増えた。『いいね』も数十万以上だ。
「アナウンサーの(動画を投稿した)目的は達成されたということだね」、「ますます有名になってよかった」などというコメントもある。この男性アナは以前から、東京電力福島第一原発の処理水の問題をSNSで頻繁に取り上げ、フォロワーが増えていた。
一方で、こうした意見ばかりではない。むしろ、男性アナを批判する声が少しずつ増えていったのだ。
中国でも大震災は起きている
海南省のテレビラジオ局がこのアナを停職処分にしたことを評価したり、「核汚染水とは関係がない問題。人の不幸を喜ぶのは最低の人間のやることだ」と言ったりする声も多く、男性アナに対する批判も多かった。そうした声は男性アナの支持派から「媚日、親日の意見だ」などと批判され、議論が過熱した。つまり、男性アナを支持しない人も少なくなかったということだ。
中でも目立ったのは、中国の地震との比較だ。
中国でも23年12月に甘粛省臨夏回族自治州でマグニチュード(M)6.2の大地震が発生し、130人以上の人が犠牲になったばかり。中国内陸部ではこれまでも何度も大きな地震が起きている。
08年に起きた四川大地震を覚えている人も多いだろう。マグニチュード(M)7.9の大地震で、死者・行方不明者は8万7000人に上った。当時の大地震と比較して、今回の日本の地震についてコメントする人もいた。
たとえば「中国の建物は手抜きのおから工事が多く、学校の校舎が倒壊して多数の子どもが亡くなった。地震の被害だけでなく、人災も多かった。日本でも古い木造建築などがあるだろうが、中国と比べれば人災は非常に少ないと感じる」、「中国で同規模の地震がまた起きたら、もっと大変なことになるだろう」などのコメントだ。
前述の男性アナの発言を意識して「中国でも何度も地震が起きているは、これは中国人への報いですか?」などと書いているものもあった。また、中国でも地震は身近な問題であるだけに、日本の耐震設備や道路などのインフラは中国より優れていると指摘するものもあった。
在日中国人からも支援の手
また、日本に住む中国人の中には、早速ボランティア活動を開始した人もいた。ふだんから在日中国人の困りごとを解決するために動いている有志のグループなどが、1月1日の夜から動いて支援物資を集め、石川県へと向かったのだ。石川県在住で現在テレビなどを見られない中国人に中国のSNSを使って情報を流したり、中国に住む中国人の友人らに日本の地震情報などを中国語で紹介したりする人も多い。
ある中国人は「なぜこんなにいい国の日本が、度重なる地震被害に苦しめられるのだろうか。悲しくてやりきれない」と書いており、在日中国人同士で募金活動をしているともあった。
日本でも同様だが、SNS上にはさまざまな意見が飛び交っている。中国ではとくに近年、ナショナリズムが高まっており、日本についての誹謗中傷は日常茶飯事だ。
過激な発言のほうが注目を集め、フォロワーが増える傾向があるため、不幸を喜ぶようなコメントを投稿する人も多いが、それに対する反論も非常に多い。SNSで常に日本の情報をチェックし、日本に心を寄せている中国人も少なくない。
(つづく)