



Q : 映画を見た。試写会前は韓国版『インファナル・アフェア』という話もあったが全く違う雰囲気だ。
“ギャングスタームービー”という表現が自然に思い浮かんだ。
JJ : 懸念はありました。それを抜け出したようです。
明らかに大きく違うと思い 作品に臨みましたが、常に気になってはいました。
最近の観客は“韓国版○○○”と言うのを嫌うようです。
他の見方をすれば、『泥棒たち』も韓国版『オーシャンズ11』とは全く違います。
韓国版 泥棒の話しです。
『新世界』はまた他の密度があります。
話しも勿論違いますが、互角に引き締めるテンション、張り詰めた呼吸が
また違った感じかと思います。
Q : 上手い俳優達の信頼のおかげかもしれないが、映画は顔のクローズアップがかなり多い。
もっと気になるのではないか。
JJ : 見てみると、むしろタイトなショットより広いショットが気になります。
カメラがタイトに捉えることで演技が変わるわけではありません。
最近は細かいシミはコンピュータがみな消してくれます。本当にありがたい(笑)
Q : 最近、さらに意味ある作品で自由に動いている。
特にイム・サンス監督の『ハウスメイド』以後。
JJ : それは事実です。
それ以来、どんな映画でも役が面白ければ出来るだろう、助演でも主演でも関係ないと思います。
おかしな人ではないですよ(笑)
“私はあんな台詞は言うが、こんなシーンは出来ない”と言うことはありません。
私のせいというより、運が良いようです。
そんな作品がよく入ってきたし、決めるしかない状況、雰囲気でした。
少し悩んだりしましたが、ほとんど拒否できない提案でした。
Q : チェ・ミンシクが直接電話して交渉したという『新世界』もそうだったのだろう。
普段 電話する仲ではないと言うが。
JJ : 考えてみればそうですね。
…誰が受けないんですか?
ミンシク先輩とは映画関係者の集いで挨拶をし、酒を飲みましたが、
お互い電話することはありませんでした。
私がとても好きな先輩で、先輩も私という後輩を悪くないと思ったようです。
Q : 『新世界』は“イ・ジョンジェの再発見”とも言われている。
チェ・ミンシク、ファン・ジョンミンを相手に互角だった。
JJ : そう見て頂けて嬉しいです。
重い映画なので 活躍する姿をあまりお見せすることが出来なかったから。
俳優には演技が上手いという言葉が最高の賞賛ですが、実は演技が上手いと言うより
新鮮だと言う声がもっと嬉しいんです。はるかに嬉しい。
“あの人に あんな面があったなんて”という声が嬉しい。
Q : 二人と初めて共演しましたね。
直接会ったチェ・ミンシクとファン・ジョンミンはどうでしたか。
JJ : ミンシクが先輩は どっしりした俳優と思いましたが、ただ重たいだけではなく、
鋭いながらも重い。
普通二つの内どちらかですが、この人は鋭くガッツリ食い込みながら、
それが重いので “オイ、本当に凄いな”と思いました。
ジョンミン先輩はポイントをよく捉えてます。頭がとても良い俳優というか。
演出的な目もあるので、とても広く鋭敏に動きます。
そんなことを予め読みながら演じるのを見守れました。
Q : ポスターを見るとイ・ジョンジェの名前がチェ・ミンシク、ファン・ジョンミンの前に出てくる。
内心胸が一杯なのでは。
JJ : 仕事をいくつもしてみると何ともないことです。全然重要なことではありません。
私がどのように出、人々の記憶に残るかが重要なんです。
名前が何番目に出たかなんて人は覚えてません。
ミンシク先輩もそんなことに対してあまり考えてないでしょう。
Q : 二人の間で“死ぬんじゃないか”と打ち明けたましたが。
JJ : 実際そう思ったこともあります。
“私は二人の間で踏み潰され、存在感がなかったらどうしよう、
ただ恩恵を受けようとしたが、埋もれそうだ”と。
実際、心配した人たちもいます。幸いにも殺されませんでしたが(笑)
Q : 映画を見た親友チョン・ウソンの反応はどうだでしたか。
JJ : とても心配したようです(笑) “あの役、出来るのか”と、とても心配していた。
映画を見て安堵のため息をつきましたよ。先輩達は有難い、とね(笑)
Q : 事実、2人の俳優でなくとも演技すること自体難しいキャラクターですよね。
ずっと演じてる人物ですから。
JJ : とても難しかったです。
内心 狂いそうなのに、近くにいる人には平気な振りをしなければならないのに、
観客には気がおかしくなってることを伝えなくてはいけない。
帰ろうかと思いました。
現場の雰囲気は楽しかったけど、個人的にはストレスがありました。
ずっと これで合っているのか、あのやり方が合ってるのでは、と悩みました。
Q : 今年でデビュー20年ですが。
JJ : 時間的にはそうなりました。時間は本当に早いです。年だけとる。
もうこれくらいにして欲しいです。時間の大切さを実感します。
そんな話しが多いのに、以前は耳に入らなかったけど、最近は本当に惜しい気がします。
Q : そのせいか、最近さらに忙しく動いているようだが。
今年の夏は『観相』が公開されるが。
JJ : そうです。最近は俳優業を休まず、ずっと作品に出てますが、
以前はそれを“多作俳優”と言いました。
それは“金儲けのため”と皮肉のような感じでした。
私は慎重に選び、ゆっくり動くのに慣れています。
最近はあまりにも媒体が多く、ニュースの種類も急増した。
すると、私が生きていることをお見せするためにも絶えず動かなければならない。
時間は大切なので、もう少しお見せしよう、と私もさらに忙しく動きますが、
あまりにも動いてなかったので、以前の習性もあって苦しんでます(笑)



Q : 久し振りに“男の映画”に出演したが。
JJ : そうですね。『タイフーン』(2005)以来なので8年振りです。
Q : 『新世界』に出演した決定的な理由は?
JJ : 昨年1月『泥棒たち』(2012)の撮影が追いこんでる時、ミンシク先輩から電話が来ました。
“俺とジョンミンが出演する映画で、ジャソンというキャラクターを引き受ける俳優を
探している”と言いながら私が推薦されました。それが『新世界』でした。
考えることもなく、そのまま投入されました(笑)
Q : シナリオを読むと“男たちの世界”がずっしり込めれらている。
裏切りと暗闘が背景だが、男たちの絆が感じられた。
“男の映画”に対する飢えがあったのなら魅力を感じるだろう。
JJ : 俳優なら線の太い映画でアクションを見せたいと言うロマンがあるでしょ?
ところが、実際韓国ではノワールの興行成績はあまり良くないから企画も難しいし、
投資もうまくできないようです。
投資会社の立場では避けざるを得ないジャンルなんです。
『新世界』は久し振りに出てきたノワールという点で惹かれましたし、
粗いけど、一方では切切さも込められている点が良かったんです。
Q : 切切さはイ・ジャソンの担当だ。イ・ジャソンの役に対してどのように接近したのか?
JJ : チェ・ミンシク先輩が私を推薦しながらこんな話をしました。
“ジョンミンと俺は粗い面が目立つキャラクターだ。
2人の間で調和を作り出す役がジャソンだ”と。
ジャソンは警察だが身分を隠し、組織で活動する人物です。
その組織内でジョンチョン(ファン・ジョンミン)に人間的な情を感じる。
だが遂行しなければならない任務もあるので二つの世界で葛藤するしかない。
また、警察と暴力が対立する中でジャソンは苦悩に陥るが、
その心理的苦痛に悩む人物だと思います。
Q : パク・フンジョン監督の表現によれば『新世界』はエピックノワールだ。
しかしフィクションだ。
パク・フンジョン監督はジャソンにどのような点を強調したのか?
JJ : 苦しい心情です。
ジャソンは“暴力団を止めて全て投げだしたい”人だ。だがそんなことできない。
時間が経つほど抜け出す事が出来ない沼に陥るキャラクターです。
ある世界から抜け出したい気持はあるのに我慢しなければならない。
それでパク・フンジョン監督に“ノワールなのに メロー映画を撮ってるようだ”
と言ったところ、すぐに“その気持ちだ”と言われました(笑)
Q : 『新世界』は悲壮な感情を基に、男たちの友情と義理、そして裏切りと復讐を描く。
イ・ジョンジェにとって、この映画は“男”の存在感を再確認できる時間だったのか?
JJ : 明らかに気運は感じました。
男たちの血が沸くような血気旺盛さ、と言わなければならないでしょうか?
なぜそんなことを言うのか?義理、欲望、権力のような単語を聞けば血が騒ぎ、
熱くならないか?
『新世界』は男たちのそんな映画です。
人は生きながら誰でもジレンマに陥る。どんな関係の中でもジレンマに陥り、
どちらか一つを選択しなければならない状況に直面した時、辛く大変です。
ジャソンもやはり同じです。
粗い男たちの世界で突破口を見つけ、もがき、そんな人物です。
Q : フィルモグラフィーを見ると初期には『イルマーレ』(2000) 、『インタビュー』(2000)等
メローに重点を置いており、最近では『泥棒たち』(2012)、『観相』などの
アクションスリラーが多い。作品を選択する基準が変わったのか?
JJ : 正直よく分かりません。
以前はソフトなイメージでしたが、最近は刃の鋭いイメージに変わったのかな?
まだ定義出来ない時点みたいです。
私がどんな俳優なのか、どんな俳優になりたいのか。
今後2~3年、もっと多くのキャラクターを演じれば感が捕えられるようです。
多くの人物を演じていると、私によく合う色を探すことが出来ないでしょうか?
ところが1つだけハッキリしています。
今後、どんなキャラクターに挑戦してみたいとか、どんな人物に惹かれると言うより、
ある役に深く入り込み、本当に“そう”なるのが演技だという確信があります。
Q : イ・ジョンジェにとって演技以外の“新世界”は何ですか?
JJ : 美術です。
今、国立現代美術館の広報大使としても活動していますが、美術への愛着があります。
大衆にはあまり知られていませんが、美術界ではかなり知られてます(笑)
創意的な活動をするわけではありませんが、展示会をよく見ます。
「世界の果て」(2012)というビデオ アートに出演したのも、
美術界の知人たちに推薦され作業しました。
Q : 美術をなぜ好むのか?
JJ : 基本的に美しい物が好きです。
それが何であっても“美しい”対象に視線が行きます。
性格がそうです。調和がとれていて、美しく飾ってあると気が済みます。
美術は美を追求する分野ではないですか?
そして役者という職業は絶えず表現しなければならないので、
インスピレーションを得る過程も重要ですが、美術でそんな経験も出来ます。
Q : 30代が終わり40代に入った。イ・ジョンジェの40代はどんな姿だろうか?
JJ : そうですね、どうしても演技に集中する時間になるんじゃないですか?
衣料の事業もし、化粧品事業もし、ビルも建ててみましたが、
結局私に残ったのは演技しかないような気がします。
“熱心に”という言葉は誠意なく聞こえることがありますが、
それが俳優の本質であるようです。