ニュース#159
最新ニュース目次 ニュース画像庫
NASAが打ち上げた土星探査機カッシーニが、土星最大の衛星タイタンに、火山のような地形を発見したょ。「氷火山」と呼ばれ、メタンや水の氷、その他の炭化水素を噴出しているって考えられているんだ。もし本当なら、このような火山からタイタン大気中にメタンが放出されていて、そのためにタイタンには他の衛星には見られないような大量の大気があるのかもしれないねぇ。
タイタンは土星の周りを回る衛星の中で最も大きく、直径5150km。太陽系の衛星の中では2番目に大きく、水星や冥王星よりも大きいんだ。何と言っても大きな特徴は、厚い大気を持っていること。大気を持つ衛星は他にもいくつかあるけれど、タイタン程大量の大気を持つ衛星は他にないょ。地表での気圧は1.5気圧、つまり地球の1.5倍!タイタンの大気は主に窒素でできていて、その他に数%のメタンを含んでいるんだ。大気中のメタンは、太陽からの
紫外線や土星の
磁気圏からの高エネルギー粒子を浴びて、反応を起こし、より複雑な
有機物が作られてるょ(
ニュース#148参照)。それらの有機物がもやになって光を遮っているから、
可視光線でタイタンの地表を見ることはできないんだ。そのため、タイタンの地表の様子はカッシーニやタイタンに着陸したホイヘンスが探査するまで、ほとんどわかってなかったんだ。
ところで大気中のメタンは宇宙空間に常に逃げていくし、紫外線などによって分解されて他の物質に変化してる。それなのにタイタンの大気中にメタンがあるのはなぜだろう?きっとどこからかメタンが発生しているに違いないよねぇ。タイタンの地表の気圧は1.5気圧で、温度は-180℃だから、もし地表にもメタンがあるとしたら、メタンは液体として存在してる可能性もあるんだ。そんなわけでこれまでは、タイタンの表面には広大な液体メタンの海があって、そのメタンが常に少しずつ蒸発しているために大気中のメタンがなくならないのだろう、って考えられていたょ。
そこで土星探査機カッシーニはタイタンに何度か接近して大気の下の地表の様子を観測し、カッシーニから切り離されたESAのタイタン着陸機ホイヘンスは実際に大気の下に降りていって地表を調査したんだ。その結果確かに、大量の液体が流れた跡などが発見されたょ。でもそれらはみんな“跡”で、今では広大な海も大量の液体が流れる川も干上がってることがわかったんだ。じゃあメタンはどこから発生しているんだろう?
下の画像は、カッシーニに取り付けられている可視光・赤外マッピング・スペクトロメーター(VIMS)を使った観測で得られた、1辺が150kmの画像だょ(画像:NASA/JPL/University of Arizona提供)。2004年10月26日の1回目のタイタン・フライバイの時に得られたデータを分析してわかったんだ。VIMSは0.35µm~5.1µmの352種類の
波長を観測することができるょ。いろんな波長で観測することによって、表面がどんな物質で覆われているのかを知る手がかりが得られるんだ。下の画像の一番最後のカラー画像は、3種類の波長で得られた画像を合成した擬似カラー画像だょ(赤:2.75µm、緑:2.0µm、青:1.6µm)。
今回の画像に写っている地域は、タイタンの中でも暗い地域にあり、ホイヘンスが着陸した場所よりも東にあるょ(画像:NASA/JPL/University of Arizona提供)。
科学者たちは、これらの画像の中央やや右上に写っている直径30kmの同心円状の地形に注目したょ。そして、これがタイタンの火山じゃないかって考えてるんだ!円形地形の中央の暗い部分は
カルデラのように見えるし、周りの同心円状の明るい地形は火山から流れ出た物質でできているように見えるょ。何度も繰り返し噴火したために、その度に流れ出た物質が層状に蓄積し、このような同心円状の地形になったと考えられるんだ。西側(左側)に向かって2本の“溶岩流”のようなものも見えるねぇ。暗い線状の地形も見られる。地球や火星で見られる火山によく似ているんだ。下の図は表面の性質によって色分けした、火山周辺の地形図だょ(画像:NASA/JPL/University of Arizona提供)。
ただし、火山と言っても地球や火星の火山のように溶岩を噴出すわけじゃないょ。タイタンの火山は恐らく、メタンや水の氷に他の
炭化水素が混じったような物質を噴出していると考えられてるんだ。そのため“氷火山”とも呼ばれるょ。氷火山は既に1989年、NASAの惑星探査機ボイジャー2号によって海王星の衛星
トリトンで発見されているんだ。トリトンは火山が水の氷と一緒に窒素などを噴出していているために、窒素などでできた薄い大気を持っていると考えられているょ。これと同じようにタイタンでも、火山から噴出したメタンが大気中のメタンの供給源になっているんだろうね。
でもこの地形、本当に火山何だろうか?場所や形が変化しないことから雲ではないと考えられるし、その形から砂丘のようなものでもないと考えられるんだ。今のところ火山と考えるのが一番自然みたいだね。
もし本当に火山なら、これでタイタン大気中にメタンが存在する理由が説明できるねぇ。でも新たな疑問も出てきたょ。このような火山がいくつも存在するのか?火山活動のエネルギー源は土星による
潮汐力なのか?それとも他にエネルギー源があるのか?など、今後の探査で分かってくるかもしれないねぇ。
下の画像はVIMSが
赤外線域で撮影した画像で、最も
解像度が高い部分では1.8kmまで見分けられるょ(画像:NASA/JPL/University of Arizona提供)。
紫外線 光(電磁波)の一種。目には見えない光だょ。紫外線は可視光線(目に見える光)より波長が短くてエネルギーも高い。紫外線はDNAを傷つけるなど生物にとって有害で、殺菌などに使われるょ。
磁気圏 磁力がはたらく範囲のこと。磁力がはたらく場を磁場っていうんだ。地球や水星、木星、土星などの惑星、それに太陽などの恒星は強力な磁場を持っているょ。ちょうどコイルに電気を通すと磁場が発生するように、天体の磁場は内部の物質の対流によって発生するんだ。
有機物 炭素原子を骨組みとする化合物だょ。生物の体は主に水と有機化合物でできているんだ。ただし、二酸化炭素のような炭素の酸化物や、炭素のシアン化物、金属の炭素塩などは、有機化合物には含まれないんだ。有機化合物は炭素原子の他、水素原子や酸素原子、窒素原子などがよく含まれているょ。有機化合物以外の化合物を無機化合物っていうんだ。
可視光線 光(電磁波)の一種。目に見える光のことだょ。
波長 光は波となって伝わっていくんだけど、その波の間隔を波長っていうんだ。
カルデラ 火山の中央や周辺部に見られる、広い窪んだ地形のことだょ。火山が噴火した後、中央部が陥没してできるんだ。
炭化水素 炭素原子と水素原子だけでできた化合物だょ。最も単純な炭化水素はメタン(CH
4)。
トリトン 海王星の衛星の一つ。直径2700kmで、月よりやや小さく、冥王星よりやや大きい天体だょ。海王星の衛星の中では唯一の大型衛星なんだ。普通衛星は、惑星の公転と同じ向きに公転するんだけど、トリトンは逆向きに回る逆行衛星で、もともとは単独の小惑星(冥王星より大きいから惑星?w)だったのが海王星に捕らえられたものだと考えられてるょ。
トリトンの表面は-220℃。主に氷でできているんだけど、表面はドライアイスで覆われてるんだ。1989年にトリトンに接近したNASAの惑星探査機ボイジャー2号は、噴煙を噴き上げる活火山を発見したょ。主に窒素からなる薄い大気が発見され、上空には薄いもやの層も発見されたんだ。
潮汐力 他の天体の重力の影響で、天体が引き伸ばされる方向に働く見かけの力だょ。月によって地球に働く潮汐力を例にとろうね。重力は距離が近い程大きい。だから地球の月に近い部分は、月から離れている部分よりも強く月に引き寄せられる。だから、地球には地球-月方向に引き伸ばされる力が働くでしょ?これが潮汐力だょ。潮の満ち干は、潮汐力によって地球の海水が移動することによって起こるんだ。
赤外線 光(電磁波)の一種。目には見えない光だょ。赤外線は可視光線(目に見える光)より波長が長くてエネルギーも低い。
解像度 画像の鮮明さのことだょ。どのくらい細かいものまで見分けられるかを表すんだ。