【2009年10月21日(水)】今回は10月21日付の日経MJの記事に注目した。1面から4面まで同紙がまとめた2009年版「eショップ・通信販売調査」の結果を紹介している。2008年度の通信販売の総合売上高(前年と比較可能な252社)は前年度比3.9%の増加。消費が低迷している中での増加は成長市場と言えるが、全体の伸び率は3年連続して縮小し消費市場の厳しさを映し出している。しかし、記事を追っていくと、初めから最後まで調査結果の内容は納得のいくことばかりである。
例えば、全体では伸び率が鈍化しているが、インターネット通販は12.4%増。このうち携帯電話通販は13.2%増である。ネット通販では価格比較サイトの利用者が増えており、最低価格保証も始まっているという。宿泊施設や興行チケットなどのネット予約も引き続き好調でリピート客も増えているようである。商品分野別では、成長を支えているのは「家電・PC」で、北京オリンピックで地上デジタル放送対応テレビへの関心の高まりを背景に、家電を主要取扱商品とする企業の売上高は平均で14.4%増だったと伝えている。「書籍・エンターテイメント」、「食料品」の取扱店も2桁の伸びを示している。
これら、記事で好調が伝えられている商品や企業で共通しているのは「安心感」と「信頼感」があることだと考えられる。家電やPCなどの高額商品を通販で購入するのは商品に対する「安心感」と製造メーカーに対する「信頼感」、製造メーカーの保証体制への「安心感」があるからだと言える。現物は家電量販店で確かめられるし、店員の説明も受けられる。さらには、店頭価格との比較もできる。一般的には、店舗経費がかからないのでネット通販の方が価格は安く設定されている。宿泊施設の予約もサイトは知名度があり、旅行代理店も名の通った企業である。宿泊先もネットや電話で調べられる。旅行代理店の窓口でカタログによる説明を受けるのと変わらない。ネットでは不安な場合は旅行代理店の窓口に行けば良い。利用者が納得できる方法をケース・バイ・ケースで選択すれば良いのである。ネット通販の企業と商品に利用者の「安心感」と「信頼感」が満たされてきたのである。
「安心感」と「信頼感」が保証されれば、あとは「便利さ」、「価格」、「サービス」の差で顧客はどの販売チャネルを利用するかを決める。顧客に「安心感」と「信頼感」を与える品質が保証される時、価格競争が出てくるのは当然である。経済環境がそれをより鮮明にしていることはあるが、価格競争は起こるべくして起きていることだと言える。
1975年(昭和50年)4月30日、最高裁は薬事法の薬局開設における距離制限規定が違憲であるとの判決を下した。これにより薬事法を受けて各都道府県で制定されていた薬局等の適正配置条例が撤廃された。距離制限規定は、一部地域での過当競争により一部業者に経営の不安定が生じ、その結果として施設の欠陥等による不良医薬品の供給の危険が生じることを防止すること、薬局等の一部地域への偏在の阻止によって無薬局地域または過少薬局地域への薬局の開設等を間接的に促進すること、を理由に設けられたものである。配置基準は都道府県の条例で定められたが、その主な内容は新規に薬局等を開設する場合は開設場所が既存薬局等からある一定の距離以上、離れていなければならないというものであった。人の往来が多い駅前や賑わう商店街などの好立地への実質的な出店制限となった。
しかし、適正配置条例の撤廃後は既存薬局の近くにも出店が可能となり、直営またはテナント誘致で食品スーパーや総合スーパーにも医薬品売場が設けられるようになった。現在の好立地へのドラッグストアの複数出店やスーパーへのドラッグストアの出店は、この時から加速してきた。そして、それ以降の激しい競争の中で、日本的なドラッグストアの業態が確立されてきたのである。
1970年代後半のある時、当時、医薬分業の先進地域と言われていた地方都市の薬局を取材した。適正配置条例に守られて競争がなく、処方箋調剤が進んでいたので、大衆薬も相談薬局として健康管理、適正な用法などのアドバイスをしながら定価販売を行ってきた。そこへ、適正配置条例が撤廃されたことで、駅前の総合スーパーに医薬品売場が開設され、東京や大阪など大都市部で行われているのと同じ程度の値引販売を展開した。地元では大騒ぎである。メインストリートの数店の薬局に飛び込んで話を聞いた。自分たちは相談薬局として薬剤師の専門知識と経験を生かして、風邪薬を売るにも、育児用ミルクを売るにもアドバイスをしながら販売し、強い顧客との関係を築いてきたから定価販売も可能だったのに、総合スーパーが安売りをするので顧客が奪われてしまったというのである。ずっと固定客だと思っていた顧客が総合スーパーの医薬品売場で買物をしているのを見てショックを受けたという話も聞いた。
顧客は、テレビや雑誌、新聞でよく宣伝している大手製薬メーカーの風邪薬や大手乳業メーカーの育児用ミルクを買うのに、何回かアドバイスを受けると、ある程度の知識は得られる。病院に行くほどの症状ではないので薬局で風邪薬を買っているのだから、毎回毎回、相談しなくても、いつも服用している大手製薬メーカーの風邪薬なら安心できるので、安く買えるのなら、そちらを選んでも不思議ではない。相談が必要な時には従来からの行き付けの薬局へ行けば良い。育児用ミルクも同じである。
「安心感」と「信頼感」が満たされれば価格に関心が向くのは当然の成り行きだと言える。日経MJの記事を見て、当時の取材の様子を昨日のように思い出した。(東)
例えば、全体では伸び率が鈍化しているが、インターネット通販は12.4%増。このうち携帯電話通販は13.2%増である。ネット通販では価格比較サイトの利用者が増えており、最低価格保証も始まっているという。宿泊施設や興行チケットなどのネット予約も引き続き好調でリピート客も増えているようである。商品分野別では、成長を支えているのは「家電・PC」で、北京オリンピックで地上デジタル放送対応テレビへの関心の高まりを背景に、家電を主要取扱商品とする企業の売上高は平均で14.4%増だったと伝えている。「書籍・エンターテイメント」、「食料品」の取扱店も2桁の伸びを示している。
これら、記事で好調が伝えられている商品や企業で共通しているのは「安心感」と「信頼感」があることだと考えられる。家電やPCなどの高額商品を通販で購入するのは商品に対する「安心感」と製造メーカーに対する「信頼感」、製造メーカーの保証体制への「安心感」があるからだと言える。現物は家電量販店で確かめられるし、店員の説明も受けられる。さらには、店頭価格との比較もできる。一般的には、店舗経費がかからないのでネット通販の方が価格は安く設定されている。宿泊施設の予約もサイトは知名度があり、旅行代理店も名の通った企業である。宿泊先もネットや電話で調べられる。旅行代理店の窓口でカタログによる説明を受けるのと変わらない。ネットでは不安な場合は旅行代理店の窓口に行けば良い。利用者が納得できる方法をケース・バイ・ケースで選択すれば良いのである。ネット通販の企業と商品に利用者の「安心感」と「信頼感」が満たされてきたのである。
「安心感」と「信頼感」が保証されれば、あとは「便利さ」、「価格」、「サービス」の差で顧客はどの販売チャネルを利用するかを決める。顧客に「安心感」と「信頼感」を与える品質が保証される時、価格競争が出てくるのは当然である。経済環境がそれをより鮮明にしていることはあるが、価格競争は起こるべくして起きていることだと言える。
1975年(昭和50年)4月30日、最高裁は薬事法の薬局開設における距離制限規定が違憲であるとの判決を下した。これにより薬事法を受けて各都道府県で制定されていた薬局等の適正配置条例が撤廃された。距離制限規定は、一部地域での過当競争により一部業者に経営の不安定が生じ、その結果として施設の欠陥等による不良医薬品の供給の危険が生じることを防止すること、薬局等の一部地域への偏在の阻止によって無薬局地域または過少薬局地域への薬局の開設等を間接的に促進すること、を理由に設けられたものである。配置基準は都道府県の条例で定められたが、その主な内容は新規に薬局等を開設する場合は開設場所が既存薬局等からある一定の距離以上、離れていなければならないというものであった。人の往来が多い駅前や賑わう商店街などの好立地への実質的な出店制限となった。
しかし、適正配置条例の撤廃後は既存薬局の近くにも出店が可能となり、直営またはテナント誘致で食品スーパーや総合スーパーにも医薬品売場が設けられるようになった。現在の好立地へのドラッグストアの複数出店やスーパーへのドラッグストアの出店は、この時から加速してきた。そして、それ以降の激しい競争の中で、日本的なドラッグストアの業態が確立されてきたのである。
1970年代後半のある時、当時、医薬分業の先進地域と言われていた地方都市の薬局を取材した。適正配置条例に守られて競争がなく、処方箋調剤が進んでいたので、大衆薬も相談薬局として健康管理、適正な用法などのアドバイスをしながら定価販売を行ってきた。そこへ、適正配置条例が撤廃されたことで、駅前の総合スーパーに医薬品売場が開設され、東京や大阪など大都市部で行われているのと同じ程度の値引販売を展開した。地元では大騒ぎである。メインストリートの数店の薬局に飛び込んで話を聞いた。自分たちは相談薬局として薬剤師の専門知識と経験を生かして、風邪薬を売るにも、育児用ミルクを売るにもアドバイスをしながら販売し、強い顧客との関係を築いてきたから定価販売も可能だったのに、総合スーパーが安売りをするので顧客が奪われてしまったというのである。ずっと固定客だと思っていた顧客が総合スーパーの医薬品売場で買物をしているのを見てショックを受けたという話も聞いた。
顧客は、テレビや雑誌、新聞でよく宣伝している大手製薬メーカーの風邪薬や大手乳業メーカーの育児用ミルクを買うのに、何回かアドバイスを受けると、ある程度の知識は得られる。病院に行くほどの症状ではないので薬局で風邪薬を買っているのだから、毎回毎回、相談しなくても、いつも服用している大手製薬メーカーの風邪薬なら安心できるので、安く買えるのなら、そちらを選んでも不思議ではない。相談が必要な時には従来からの行き付けの薬局へ行けば良い。育児用ミルクも同じである。
「安心感」と「信頼感」が満たされれば価格に関心が向くのは当然の成り行きだと言える。日経MJの記事を見て、当時の取材の様子を昨日のように思い出した。(東)