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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第14回 低価格指向には不況以外の必然性がある

2009年10月21日 08時22分37秒 | 今日の気づき
【2009年10月21日(水)】今回は10月21日付の日経MJの記事に注目した。1面から4面まで同紙がまとめた2009年版「eショップ・通信販売調査」の結果を紹介している。2008年度の通信販売の総合売上高(前年と比較可能な252社)は前年度比3.9%の増加。消費が低迷している中での増加は成長市場と言えるが、全体の伸び率は3年連続して縮小し消費市場の厳しさを映し出している。しかし、記事を追っていくと、初めから最後まで調査結果の内容は納得のいくことばかりである。
 例えば、全体では伸び率が鈍化しているが、インターネット通販は12.4%増。このうち携帯電話通販は13.2%増である。ネット通販では価格比較サイトの利用者が増えており、最低価格保証も始まっているという。宿泊施設や興行チケットなどのネット予約も引き続き好調でリピート客も増えているようである。商品分野別では、成長を支えているのは「家電・PC」で、北京オリンピックで地上デジタル放送対応テレビへの関心の高まりを背景に、家電を主要取扱商品とする企業の売上高は平均で14.4%増だったと伝えている。「書籍・エンターテイメント」、「食料品」の取扱店も2桁の伸びを示している。
 これら、記事で好調が伝えられている商品や企業で共通しているのは「安心感」と「信頼感」があることだと考えられる。家電やPCなどの高額商品を通販で購入するのは商品に対する「安心感」と製造メーカーに対する「信頼感」、製造メーカーの保証体制への「安心感」があるからだと言える。現物は家電量販店で確かめられるし、店員の説明も受けられる。さらには、店頭価格との比較もできる。一般的には、店舗経費がかからないのでネット通販の方が価格は安く設定されている。宿泊施設の予約もサイトは知名度があり、旅行代理店も名の通った企業である。宿泊先もネットや電話で調べられる。旅行代理店の窓口でカタログによる説明を受けるのと変わらない。ネットでは不安な場合は旅行代理店の窓口に行けば良い。利用者が納得できる方法をケース・バイ・ケースで選択すれば良いのである。ネット通販の企業と商品に利用者の「安心感」と「信頼感」が満たされてきたのである。
 「安心感」と「信頼感」が保証されれば、あとは「便利さ」、「価格」、「サービス」の差で顧客はどの販売チャネルを利用するかを決める。顧客に「安心感」と「信頼感」を与える品質が保証される時、価格競争が出てくるのは当然である。経済環境がそれをより鮮明にしていることはあるが、価格競争は起こるべくして起きていることだと言える。
 1975年(昭和50年)4月30日、最高裁は薬事法の薬局開設における距離制限規定が違憲であるとの判決を下した。これにより薬事法を受けて各都道府県で制定されていた薬局等の適正配置条例が撤廃された。距離制限規定は、一部地域での過当競争により一部業者に経営の不安定が生じ、その結果として施設の欠陥等による不良医薬品の供給の危険が生じることを防止すること、薬局等の一部地域への偏在の阻止によって無薬局地域または過少薬局地域への薬局の開設等を間接的に促進すること、を理由に設けられたものである。配置基準は都道府県の条例で定められたが、その主な内容は新規に薬局等を開設する場合は開設場所が既存薬局等からある一定の距離以上、離れていなければならないというものであった。人の往来が多い駅前や賑わう商店街などの好立地への実質的な出店制限となった。
 しかし、適正配置条例の撤廃後は既存薬局の近くにも出店が可能となり、直営またはテナント誘致で食品スーパーや総合スーパーにも医薬品売場が設けられるようになった。現在の好立地へのドラッグストアの複数出店やスーパーへのドラッグストアの出店は、この時から加速してきた。そして、それ以降の激しい競争の中で、日本的なドラッグストアの業態が確立されてきたのである。
 1970年代後半のある時、当時、医薬分業の先進地域と言われていた地方都市の薬局を取材した。適正配置条例に守られて競争がなく、処方箋調剤が進んでいたので、大衆薬も相談薬局として健康管理、適正な用法などのアドバイスをしながら定価販売を行ってきた。そこへ、適正配置条例が撤廃されたことで、駅前の総合スーパーに医薬品売場が開設され、東京や大阪など大都市部で行われているのと同じ程度の値引販売を展開した。地元では大騒ぎである。メインストリートの数店の薬局に飛び込んで話を聞いた。自分たちは相談薬局として薬剤師の専門知識と経験を生かして、風邪薬を売るにも、育児用ミルクを売るにもアドバイスをしながら販売し、強い顧客との関係を築いてきたから定価販売も可能だったのに、総合スーパーが安売りをするので顧客が奪われてしまったというのである。ずっと固定客だと思っていた顧客が総合スーパーの医薬品売場で買物をしているのを見てショックを受けたという話も聞いた。
 顧客は、テレビや雑誌、新聞でよく宣伝している大手製薬メーカーの風邪薬や大手乳業メーカーの育児用ミルクを買うのに、何回かアドバイスを受けると、ある程度の知識は得られる。病院に行くほどの症状ではないので薬局で風邪薬を買っているのだから、毎回毎回、相談しなくても、いつも服用している大手製薬メーカーの風邪薬なら安心できるので、安く買えるのなら、そちらを選んでも不思議ではない。相談が必要な時には従来からの行き付けの薬局へ行けば良い。育児用ミルクも同じである。
 「安心感」と「信頼感」が満たされれば価格に関心が向くのは当然の成り行きだと言える。日経MJの記事を見て、当時の取材の様子を昨日のように思い出した。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第13回 弁当市場は短期決戦・長期戦略

2009年10月20日 14時33分05秒 | 今日の気づき
【2009年10月20日(火)】10月20日付の日本経済新聞朝刊31面の一番下に「店員発案の弁当 ローソンが発売」の見出しで、本文19行の小さな記事が載っている。見出しの「店員発案」の文字に目が留まる。スーパーでは、地元の地域催事や食事の嗜好など地元の生活情報を豊富に持っている主婦のパート社員の意見を取り入れた商品開発や品揃え、価格設定、売場づくりなどには、かなり前から取り組んできた。事例もたくさんある。珍しい言葉ではなかったが、コンビニエンスストアでも、そういう時代に来たのかと。また、最近話題になっているコンビニエンスストアの価格競争。スーパーなどとの同質化競争を避けた業態の開発、展開で定価販売を維持してきたビジネススタイルがほころび出している。コンビニエンスストアも、かつてスーパーが経験した激しい競争状態を迎えているということが伝わってくる。しかも、異質化路線を成り立たせなくしているのは、同業態間競争より異業態間競争、多業態間競争の激しさである。定価販売を基本としているコンビニエンスストア間の競争では、これほどまでの価格競争は起きないからである。コンビニエンスストアも「地域密着」が求められるようになってきたのだろう。
 かつて、大手コンビニエンスストア本部の広報室で、商圏の考え方を聞いた。答えは「商圏という発想はない。半径何百メートルという商圏のとらえ方はしていない」と。続いて「車を運転している時に弁当が欲しくなった。その時にコンビニエンスストアの看板が目に入った。駐車場もある。買いたい弁当があった。便利である。顧客が必要になった時に、その商品を売っている便利な店が、そこにある。それがコンビニエンスストアである。道路は日本中につながっている。強いて商圏と言うなら、道路でつながっている日本全土が商圏ということになる」と説明をされた。そういう発想ができない時代に来ていると言える。
 もう1つ。本文の中に弁当の名称が「くる弁」とある。何の略称か知りたくなって、ローソンのホームページを開いた。驚くこと頻りである。弁当など中食市場の競争の厳しさは、それなりに理解していたつもりだが、何も理解していなかったことを知らされ、汗顔の思いでもある。
 「くる弁」とは「クルー弁当コンテスト」の略である。ローソンでは様々な加盟店参加の取り組みを行っているが、クルー弁当コンテストは2009年3月から4月にかけて、地元の食材を使った料理や地域の伝統料理などに一工夫を加えたメニューをテーマに弁当のアイデアを募集した企画である。ローソンではアルバイト・パートタイマーを「クルー」と呼んでいる。コンテストには、ローソンで働いているオーナー、店長、クルーであれば誰でも参加できた。全国から321件のアイデアが集まり、7支社ごとに審査し、各支社1品の代表作品を商品化して、10月27日から支社エリア内で発売する。その後、各支社での期間中の販売結果などにより1~3作品を選定し、2010年2月に全国発売する予定だという。
 ちなみに、10月27日から発売する「くる弁」は、次の7作品である。

◆北海道「ザンギソース丼」(450円)
◆東北「十和田バラ焼き弁当」(498円)
◆関東「信州名物 山賊焼き弁当」(530円)
◆中部「イタリアン味噌カツ丼」(498円)
◆近畿「ご当地!!B級グルメ対決弁当(加古川かつめしVS高砂にくてん)」(480円)
◆中四国「焼豚玉子めし」(498円)
◆九州「鳥人(ちょうじん)パワー弁当」(450円)の7作品である。

 一方、ローソンは全国発売、地域限定発売で様々な弁当を開発・販売し、それも短期間のサイクルで展開し、常に弁当売場の活性化を続けている。
 「くる弁」を発表した翌日の10月20日には「付け焼き 牛カルビ重」(480円)を「くる弁」と同じ10月27日から全国発売をすると発表している。「付け焼き 牛カルビ重」は、同社の「驚きの商品開発プロジェクト」の弁当第5弾の商品である。同プロジェクトは2009年7月に、顧客の「たまには良いもの」の要望に応えるために、原材料を起点に商品価値を3割アップさせた商品の開発を目指してスタートしたものである。弁当、デザート、パスタ、おにぎりの4カテゴリーで商品開発を進めており、これまで、弁当は5商品、デザートは1商品を開発している。10月にはパスタの商品化に着手する予定である。開発した商品は長期にわたって売り続けるのではなく、短期間で集中的に販売し、開発の頻度を高めているのが特徴である。食材を一括で仕入れ、商品部がその原材料を元に多種多様なメニュー開発をすることで、価値の高い商品を手ごろな価格で提供できるようにしている。
 同プロジェクトのこれまでの商品開発、販売の実績は次の通りである。

◆弁当第1弾「スタミナ牛焼肉弁当」(450円)。7月22日全国発売。約10日間で約110万食を完売。販売終了。
◆弁当第2弾「ダブルポークステーキ重」(500円)。9月15日全国発売。約2週間で約100万食を完売。販売終了。
◆弁当第3弾「大海老天重」(480円)。9月29日全国発売。約2週間で約100万食を完売。販売終了。
◆弁当第4弾「直火焼炙りチャーシュー弁当」(450円)。10月13日全国発売。第1弾~第3弾とほぼ同様に推移。現在販売中。
◆弁当第5弾「付け焼き 牛カルビ重」(480円)。10月27日全国発売。
◆デザート第1弾「プレミアムロールケーキ」(150円)。9月29日全国発売。発売から5日間で100万個以上を販売。現在販売中。

 そのほか、地域限定の弁当も開発、販売している。10月には6日から「鹿児島黒豚焼肉弁当」(500円)を関東・甲信越地区限定で発売した。約35万食の数量限定で、今回の売れ行き状況を踏まえて、全国もしくは他地区に拡大して販売する予定である。
 北海道では、北海道限定で、10月20日から11月2日まで、北海道の人気シェフ、勝山ヨシミ氏プロデュースのメニュー5品を順次発売する。北海道では、「驚きの商品開発プロジェクト」の弁当第4弾「直火焼炙りチャーシュー弁当」が完売する頃に、同第5弾の「付け焼き 牛カルビ重」が10月27日から発売され、その発売を挟むように、勝山ヨシミ氏プロデュースのメニュー5品が発売されていく。
 また、「驚きの商品開発プロジェクト」の弁当第5弾「付け焼き 牛カルビ重」は「もっとボリュームのある焼肉弁当を食べたい」という顧客の声を反映して、同第1弾「スタミナ牛焼肉弁当」より肉の量を増やすなど、より充実させた内容にしている。常に顧客を飽きさせない品揃えをし、開発した商品が顧客の要望をキャッチするアンテナの役割を果たし、キャッチした情報を次の商品開発に生かしている。しかも、価格設定は500円ラインを維持している。「驚きの商品開発プロジェクト」は消費の二極化に対応した高付加価値の高価格帯商品の開発を進めている。改めて、弁当類を中心にした中食市場の競争の激しさ、厳しさを学ぶことができた。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第12回 量的飽和から質的飽和に移行している 

2009年10月19日 22時23分22秒 | 今日の気づき
【2009年10月19日(月)】日本経済新聞は月曜日の朝刊に「MONDAY NIKKEI」というニュースの解説ページがある。「NIKKEI NET」に掲載したニュースへのアクセス数に応じて作成した閲覧ランキングから1位のニュースなどを取り上げて編集委員が解説している。10月19日付朝刊15面の「MONDAY NIKKEI」は10月10日-16日のランキングを紹介し、「セレクト」欄で、「ヨウジヤマモト、民事再生手続き」の記事を解説している。見出しは《「安価で おしゃれ」に消費者流れる》。国際的なファッションデザイナーの山本耀司氏が創業した高級ブランドの㈱ヨウジヤマモトが14日に東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けたというニュースの解説である。負債総額は60億円。昨秋からの世界的な景気低迷の深刻さとファッション消費の構造変化が反映したもので、高級品市場が失速し、代わってH&M、ユニクロなど安価なファストファッションが急速に伸びていると分析している。総務省家計調査でも被服及び履物の1人当たり月間平均支出額の減少傾向が止まらないこと、仏ルイ・ヴィトンが東京・銀座への世界最大級の店舗出店計画を撤回したこと、伊ヴェルサーチが日本事業から撤退する見通しであること、欧州でも伊ジャンフランコ・フェレの持ち株会社や仏クリスチャン・ラクロワの経営危機なども表面化していること等を挙げ、世界の高級ブランドも厳しい状況にあることを伝えている。
 この記事を読んで、生活者の消費に対する価値観が大きく変わり始めたことを感じる。リーマンショック以降の世界的な不況が引き金になったわけだが、当初は「買えなくなった」ことで「買わなくなった」としても、見出しにあるように、いったんは「安価でおしゃれ」にシフトした消費が、その価値を認めて、「安価でおしゃれ」に留まる消費マインドが出てきたのではないだろうか。そこまで不況を脱しているわけではないが、「買えなくはない」けれども「買わなくなった」という傾向の消費が出てきたのではないだろうか。「安価でおしゃれ」は、かつての「安かろう、悪かろう」ではない。不況とはいえ、これだけ豊かな消費社会を経験してきた生活者は「安価」であっても「おしゃれ」でなければ、継続的な消費はしない。継続的に消費されているからファストファッションが伸びているのである。それを下支えしているのが素材の品質と加工技術の発達である。これらが大きく市場の構造、消費の構造を変えつつある。生活者も毎年溢れるように提案されてくる多くのデザインやカラーを経験してきた。斬新なデザインには驚きはするが購入する対象にはならないし、購入する対象になるもののデザインには驚きを感じなくなってきている。まさに、市場は飽和状態にある。時代は量的飽和から質的飽和の状態に移っている。全体の品質向上は商品のグレードを形成してきた「仕切り」を取り除こうとしている。生活者が求める商品の価値観、消費の価値観が変化している。かつての延長線上での市場活性化策が成り立たなくなってきているのである。
 20年以上も前の取材である。中国地方の観光都市の商店街にある婦人服専門店を訪れた。観光都市といっても地方の商店街だから華やかな雰囲気はない。「高級プレタポルテ」の看板も目立たない。1店舗だけで営業している高級既製服専門店である。市場は新しい消費を発掘し引き出すことが課題だと「ニーズからウォンツ」と、「ウォンツ」という言葉が頻繁に使われ出した頃である。50~60歳くらいだったと記憶しているが、その男性の店主に聞いた。「ウォンツ商品とはどういう商品だと考えていますか」と。店主の答えは次のようであった。「顧客が欲している商品と言うが、顧客が欲している商品は、かつて自分が着たデザインやカラーであったり、友人が着ていたもの、街で見かけた人が着ていたもの、テレビや映画で女優が着ていたもの、ファッション雑誌で見たものなど、何らかの形で自分が見た経験があるものから選んでいる。しかし、その顧客が本当に欲しているウォンツ商品を提案するということは、その顧客の好みに合った、その顧客が今までに着たことも見たこともない品質、デザイン、カラーを提案すること」だと。深く印象に残っている話であった。今は、そういう「ウォンツ商品」を見つけ出すこと自体が難しくなっているのであろうか。変化の時代に合った発想の転換が求められている。
(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第11回 書籍のニーズが変わり形態が変わる 

2009年10月16日 18時24分06秒 | 今日の気づき
【2009年10月16日(金)】10月16日付の日本経済新聞朝刊の15面。「ローソン ファミマ サークルKサンクス 共通デザインの書籍販売」の主見出し。サブ見出しは「まず出版7社が参加 売り上げ増へ日販と組む」。競合するコンビニエンスストア大手が同一商品を共同で開発して販売するというのはどういうことなのだろうかと、記事を読み進む。複数の出版社の本を同一のデザイン、サイズに統一することで、顧客には視認性を高めて目立つように、従業員には容易に陳列できるようにすることができる。
 書籍は一般的に、初めはハードカバーで出版し、次に文庫本にするなど、1つの作品を2次利用、3次利用することで1作品当たりの収益性を上げている。2次利用、3次利用でコンビニエンスストアの顧客向けの低コスト・低価格の書籍に作り変えることで、潜在的な読者層の開拓が期待できる。新しい販路を開拓するとともに1作品当たりの収益性を高めたい出版社と書籍の売上を増やしたいコンビニエンスストア大手のメリットが一致した。第一弾として10月20日から出版社7社が参画し、8銘柄でスタートする。こうした取り組みは出版業界初の試みだという。
 早速、日本出版販売のホームページを開くと、10月16日付で「日販 CVS3社合同MD開発商品「DECOMAS」発売」のニュースリリースを掲載している。ニュースリリースによると、DECOMAS (Design Coordination as A Management Strategy)とは出版社共通の背デザインのオリジナル廉価版書籍の通称である。また、コンビニエンスストアの書籍展開の現状をニュースリリースから引用すると、「現在、書店においては、新書や文庫の豊富なアイテムが出版社別に陳列されているが、CVSの書籍展開については、コミック棚での背差陳列が主流だが、限られた少ない売場の中で版型やデザイン等、様々な形態のものがあり、煩雑化していた」とし、開発の経緯について、「①顧客にとって、見やすい・選びやすい売場作りを推進したい。②CVS加盟店のアルバイトでも容易にきれいに陳列できる状況をつくりたい。③出版社の様々な版型の書籍の背デザインを統一することで、①②を解消していけないものか? といった、3社のチェーンバイヤーの要望を受け、日販CVS部MD推進チームが企画、実現したもの。これまでも、コミックや書籍の廉価版は多数発行されていたが、CVS用の出版社共同の統一デザイン書籍は、出版業界初の試み」だと説明している。これにより、書店ルートでは囲い込みきれない顧客を取り込み、潜在的な読者層の開拓と出版界の活性化を目指していくという。
 DECOMASの概要については、次の8点を挙げている。
 ①版型 B6軽装版(廉価版書籍)、背デザインのオリジナルデザインで統一が原則
 ②コンテンツ 書籍2次利用、3次利用コンテンツ
 ③ジャンル ビジネス、自己啓発、時事ネタ、雑学、健康、ファッション(アダルト以外全般)
 ④価格帯 500円~700円位
 ⑤出版社 PHP研究所、KKベストセラーズ、日本文芸社、扶桑社、WAVE出版、アルファポリス、G.B. 他
 ⑥取扱いチェーン ローソン・ファミリーマート・サークルKサンクス 全店舗
 ⑦売場展開イメージ コミックゴンドラ背ざし集合陳列
 ⑧販売期間 60日

 かつて、書籍は家庭の文化度の象徴のように言われ、書斎を持つことに憧れを持つ中年男性が多かったり、何十巻にも及ぶ百科事典を買い揃えインテリアのように飾る家庭も珍しくない時期があった。しかし、最近では、リサイクル古書店ができたこともあるが、新刊を買って読み終えたら、高く売れるうちにリサイクル古書店に持ち込むという人が増えている。一方、CNET Japanは海外報道として、グーグルが現地時間10月15日にフランクフルト国際ブックフェアで、ウェブブラウザがあれば、誰でも購読できる電子書籍販売の新サービス「Google Editions」を2010年前半に立ち上げることを発表したと伝えている。書籍の電子化、図書館の電子化が進んでいる。リサイクル古書や2次・3次利用コンテンツ書籍、電子書籍など、書籍の形態にこだわらない人口が増えている。狭い売場とはいえ、コンビニエンスストアの書籍売場で、何か新しい顧客ニーズが発見されるかもしれない。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで 第10回 百貨店の「経営の再建」と「存在価値の蘇生」

2009年10月15日 15時44分20秒 | 今日の気づき
【2009年10月15日(木)】百貨店不振の記事が続くが、百貨店は「経営の再建」と併せて「存在価値の蘇生」が求められているのではないだろうか。経営の再建という観点では、集客のため、売上アップのために、低価格商品指向の専門店や低価格商品の導入など、非日常的買物指向の店舗から日常的買物指向の店舗にシフトさせるなど、様々な経営再建策が考えられるが、それでは仮に、競争に強い店舗が作れたとしても、「百貨店であること」が失われてしまうかもしれない。「百貨店であること」の意味には業態としての百貨店と存在価値としての百貨店がある。業態としての百貨店を維持するのが困難なら、「百貨店の時代は終わった」として、より生活者に支持される業態に生まれ変わるべきである。それと併せて存在価値としての百貨店の蘇生も必要ではないかと思われるのである。そういう危機感が迫る厳しさが伝わってくるのが、10月15日付の日本経済新聞朝刊13面の記事である。
 主見出しは「地方百貨店、再建を急ぐ」。サブ見出しには「大和、4店閉鎖/岩田屋、大手の完全子会社に」、「業績不振打開は不透明」と。大和は全7店舗中の4店舗の閉鎖だが、閉鎖する4店舗の合計売上高は2009年2月期で169億円。全体の2割強だという。経営資源を集中して業績の改善を図る。岩田屋は三越伊勢丹の完全子会社として再建に取り組むことになる。そして、その左下には「セブン&アイ 西武渋谷店にスーパー導入」の記事。渋谷店の地下食品売場の約1,700㎡のうち約1,200㎡が食品スーパーの「ザ・ガーデン・プラス」になる。運営はそごう・西武の子会社シェルガーデンが行うが、仕入・品揃えはヨークベニマルとイトーヨーカ堂が全面的に協力する。高級指向でなく、セブン&アイのPB「セブンプレミアム」も約400品目を扱い、日常の買物に対応した値ごろ感のある店舗にするという。
 百貨店は、当初、上流階級や富裕層をターゲットに高級品、一流品、輸入品など、一般の小売店では手に入りにくい商品を手がけ、美術品や工芸品、骨董品なども販売し、文化の発信拠点の要素も持っていた。戦後は高級品から大衆商品までを幅広く扱うことで発展してきたが、出店地域にとっては、ステータス・シンボル的な存在であった。歳暮・中元などの贈答品では百貨店の「包装紙」に価値があった。同じ商品でも、どの百貨店の「包装紙」なのかによって、贈答品の格付けに差が出るということがあった。地方にも百貨店が誕生しグレードの高い店づくりをしてきたが、地方によっては、都市型の有名百貨店の包装紙に包まれた贈答品より地方百貨店の包装紙に包まれたものの方が、贈った相手にありがたく思われることもあった。
 百貨店で買物をすることが憧れであり、百貨店で買物をしたことで生活のレベルが上がったと思う時代があった。その後、売上ナンバーワンの地位をスーパーに奪われ、百貨店という業態を形成していた壁が少しずつほころび、変化していくことになるが、地域の生活者にとっては「うちの地域には、この百貨店がある」と、百貨店は誇れる存在であった。百貨店は再建で何を目指していくのか。経営数値の改善だけでなく、存在価値を蘇らせることも生き残りの道ではないだろうか。そのためには何をすべきか。形態を維持するのではなく、元の形がなくなるほど大変革を行ったとしても、地元の人たちに「うちの地域には、この店がある」と誇れる存在に蘇ることが求められているのではないか。百貨店に限らず、「うちの町には、……がある」と言うことはよく聞くことである。そういうことも目指す再建を望みたい。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第9回 品質の向上が競争の方程式を変える

2009年10月14日 23時45分58秒 | 今日の気づき
【2009年10月14日(水)】低価格指向の企業、店舗は好調だが、おしなべて、小売業の業績不振が続き、厳しい経営環境、厳しい消費環境を伝えるニュースが多い。10月14日付の日本経済新聞朝刊3面に「『強い流通』3つの法則」の大見出しが目に入る。久々に『強い』という文字を目にしたように感じる。サブ見出しは「消費不振でも3~8月好決算」、サブ見出し的に、3つの法則を「『ついで買い』誘う  自ら開発、自ら売る  大量に売り切る」と強調している。しかし、下の方には、「スーパー・百貨店低迷 Jフロント営業益54%減」のサブ見出し。スーパー、百貨店の不振は否めない。
 「『ついで買い』を誘う」の例では、ユニクロが低価格だけでなく高機能の商品が集客に貢献し、下着や靴下などの『ついで買い』効果が客単価を落とさずに来店客数を増やしたことを紹介している。飲食店では、中華料理店のハイデイ日高は390円ラーメンの顧客がビールなどを一緒に注文したこともあり客単価が前年同期から0.6%上昇したことを伝えている。
 「自ら開発、自ら売る」は、中間段階を省いてコストを下げ、海外生産などで生産コストを下げるとともに、海外生産では円高の恩恵も受けた「製造小売」の強さを挙げる。代表例として、3~8月期に3回の値下げをしたが、粗利益率が53%だった家具店チェーンのニトリを取り上げている。また、靴専門店のエービーシー・マートの最高益を支えたのは3月に発売した自社企画商品のヒールの高いスニーカーだと紹介している。
 「大量に売り切る」では、余分な在庫を持たない仕組みを構築した企業が高採算を維持したとして、衣料品販売のポイントとしまむらを例に挙げている。
 以上の3点の中で、『ついで買い』効果に注目したい。検証するためのPOSデータ、顧客購買履歴データを見ていないので、予想の域を出ないが、今の低価格商品指向は節約指向と同義である。節約指向の観点からは、低価格商品を買って余った金額で『ついで買い』をし、従来と同じ金額を支出することはあまり考えられない。『ついで買い』イコール『衝動買い』のイメージがあるが、『衝動買い』でなく『必要買い』としての『ついで買い』と考えられるのではないだろうか。A店で買っていたものをB店で『ついで買い』しただけで、B店は客単価を維持できたが、A店はその分、売上を下げ、低価格化が進んでいるので金額ベースの市場は小さくなり、小さくなった市場で競争が激化しているというのが現状だと考えられる。
 また、低価格商品の販売で従来とは異なる顧客層の購買が、一方で起こっているのではないかと思われる。390円ラーメンを注文する顧客がいつもはビールを注文していないのに、収入の好転など個人的な事情が変わらない限り、最近になってビールを注文するようになることは、まずないと考えられる。もし、ラーメンとビールを注文して全体の支出を抑えようとしているのであれば、新しい顧客が来店しているということも考えられる。
 同じ14日の午後7時30分。NHKの「クローズアップ現代」は「コンビニ弁当 値下げ競争の舞台裏」をテーマに、新しい競争局面を迎えているコンビニエンスストア経営の厳しい現状を紹介していた。消費期限が近づいた弁当を値引販売しているセブン-イレブンの店舗を取材。値引弁当を目当てに来店する顧客が増えたが、これらの顧客は『ついで買い』をせず、『ついで買い』が最も多いとされてきた弁当客の客単価が下がっていること、商圏内のスーパーが激安弁当を投入し、スーパーとの競争が激しくなっていることなどを伝えている。値引弁当を目当てに来店する顧客は支出金額を抑えることを目的としている新しい顧客が含まれていると考えられ、これらの顧客は『ついで買い』を呼び込まない顧客層でもある。そして、番組では、「便利さ」より「安さ」が重視されていると解説する。
 しかし、現状は、弁当と飲料などを買う弁当客の立場からすれば、距離が少し離れていても、同じ行動範囲にコンビニエンスストアとスーパーがあり、どちらにも同じ「便利さ」がある。「便利さ」と「安さ」のどちらかを選択しているのではなく、同じ「便利さ」の中で「安さ」を選んでいるのである。「便利さ」を特徴として、価格競争の土俵に上がらずに定価販売で成長してきたコンビニエンスストアの「便利さ」度が小さくなってきていることは間違いない。
 低価格指向商品が競争力を持つ底流にあるのは、やはり、品質の向上である。従来から、様々言われてきた消費に影響を与える要因が、品質の向上という環境下で、影響の及ぼし方に変化が起こっている。過去の成功や失敗に学びながら、先を「読む」力が求められている。未来を示す情報など、世の中には存在しない。過去と現在の情報しかない。過去と現在の情報から、いかに未来を「読む」かである。本格的な「情報活用時代」を迎えたと言えるのではないだろうか。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第8回 百貨店の「業態転換」!? 

2009年10月13日 22時51分27秒 | 今日の気づき
【2009年10月13日(火)】10月13日は朝刊が休みである。12日付の日本経済新聞朝刊9面を見る。「QVCが通販で扱った婦人服 百貨店で安く販売 まず小田急新宿店で」の見出しが目に入る。テレビ通販大手のQVCジャパンが通販番組で扱いを終えた婦人服を4~6割引程度で販売するアウトレット店を小田急百貨店新宿店に25㎡規模で開くという内容である。出店は期間限定だが、今後も連携を拡充することも検討する考えを持っている。QVCは新規顧客の獲得で、小田急百貨店は他店との差異化でメリットがあるという。自店の売れ残り商品をセールにかけるのではなく、他業態の売れ残り商品のセールに売場を貸すというのは、顧客から見た百貨店像を変えるのではないかという懸念がある。かつて、百貨店は「場所貸し業」と揶揄されたこともある。自主企画商品の開発、自主企画の売場づくりに注力してきた。その中でも、顧客から見た百貨店像の維持には努めてきた。すなわち、顧客の目から見た百貨店業態の形は維持してきたと言える。
 総合スーパーが台頭し大型化した時期に郊外立地の大型総合スーパーのオープニング取材をした時のことである。開店時の入口での来店客の挨拶を終えた役員に話を聞く機会があった。これだけの店舗規模で総合的な品揃えをしていると、顧客は百貨店と間違ってしまうのではないか、百貨店との区別が付かないのではないか、そうすると、商品の品質で百貨店と差があるので、顧客を惑わすことにならないか、と質問した。その役員は、今日の顧客は百貨店と総合スーパーの違いをきちっと認識している、との即答。その理由を教えてくれた。百貨店は、顧客はよそ行きの服装をして靴を履いて行くが、総合スーパーの顧客は、普段着で、履物も普段に履いているもので、サンダルのこともある。オープン時に社長や役員、店長が入口で30分くらい来店客に頭を下げているのは、来店のお礼を言っているだけではなく、顧客の足元を見ているのである。今日の顧客の半分はサンダル履きだった。今日の顧客はこの店を総合スーパーときちんと認識している、と。
 他業態のアウトレット店を誘致してまでも、差異化を図り、来店客、売上を確保していかなければならないという、百貨店の閉塞感にも近い厳しさが伝わって来るが、将来的には百貨店内にミニアウトレットモール街ができるかもしれない。今の生活者は百貨店、総合スーパー、ショッピングセンターなど、小売業から見た業態区分をきちんと認識できるのだろうか。
 一方、同じく12日付の日本経済新聞朝刊13面の「クイックサーベイ」欄に「『百貨店に行く回数が減った』は40%」、「品揃えへの不満強く」の見出し。記事はインターネット調査の結果を分析、紹介したものである。百貨店商法は価格以上の上質な価値を提供することにあったが、百貨店に対しても、顧客の低価格指向が強くなっており、価格も含めた品揃えで、顧客のニーズと大きなギャップがありそうだ、と解説している。また、百貨店に望むものを聞く問いには、「ほかの店にないもの」、「ライフスタイルの提案」で50代の回答率が他世代より多かったと、百貨店の生き残る道を示唆している。
 定年後のセカンドライフを行動的に過ごそうとするアクティブシニアがクローズアップされる時代である。アクティブシニアは自らのライフスタイルを、どこか、または誰かに提案を求めるとともに、それをヒントに、自ら店舗をアソートする意欲のある世代とも言える。受動的に提案を求めているのではなく、能動的に提案を求めている人たちが多くなっているのではないだろうか。調査の結果に学びながらも、50代になると、そういう意識も強くなってくるのではないだろうかと感じている。そういう意味では、消費行動でも多様性を持った世代とも言える。
 百貨店にテレビ通販のアウトレット店が出店すること、シニア世代が百貨店や高級品専門店とともに、低価格指向専門店にも足を運び、自らのライフスタイルに合った店舗、商品を様々な情報を集めてアソートすること。その背景には、総体的に、商品の品質が向上したという消費環境の大きな変化があることは見逃せない。業態、価格、世代という、消費を考える基軸が大きく変化している。基軸の変化を見損なうと、変化の予測を見誤ることにもなりかねない。変化の予測が非常に難しい時代を迎えたが、変化の先にあるものは虚像ではなく実像である。実像である限りは、予測が的を射る可能性は必ずある。その可能性を大きくするのが情報活用であり、情報を読み解く分析力だと言える。 (東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第7回 コンビニはタスポ効果の生かし方が課題

2009年10月09日 19時03分34秒 | 今日の気づき
【2009年10月9日(金)】今回も小売業の2010年2月期の8月中間期決算の記事を取り上げる。10月9日付の日本経済新聞朝刊3面に、大手コンビニエンスストア4社の2009年3月~8月期連結決算が8日に出揃ったとして、4社の決算内容を紹介しながら、小売業の中でも比較的好調だったコンビニエンスストアも長引く消費不振で息切れした状況を解説している。
 主見出しは「コンビニ3社 営業減益に」である。サブ見出しは「3~8月 ファミマ9%、セブンイレブン2年ぶり」、「タスポの効果一巡 低価格競争激しく」となっている。記事では、冷夏で夏物が振るわず主力の弁当・惣菜でスーパーなどとの価格競争が激化したこと、自動販売機でたばこを買うのに必要な成人識別カード「taspo(タスポ)」の導入で店頭でたばこを買う人が増えた、いわゆる「タスポ効果」があったとしながらも、下期はタスポ効果が7月で一巡したことから苦戦しそうだと予想している。
 4社の概要については、ファミリーマートが3月~8月期の連結営業利益が9%減となり、海外を含むセブンイレブンも上期としては2年振りに営業減益となったとしている。サークルKサンクスも営業減益で、ローソンは昨年に子会社化した生鮮コンビニの九九プラスの好調などで連結は営業増益だったが、単独では減益だったことを紹介している。
 今回の記事で気に留まるのはサブ見出しにある「タスポの効果一巡」という文字である。コンビニエンスストアの記事では、タスポの導入後は、特需に匹敵するようなタスポのプラス効果が頻繁に取り上げられ、導入後1年を経ると、効果の薄らいできたことをマイナス要因であるかのように書かれてきた。決算数字を見る限りは、タスポ効果が一巡すると、前年対比売上高の伸び率を下げる要因には違いないが、消費が冷え込む中で、強く営業攻勢をかけることもなく、来店客数が増えた。特需が恒常的に続くわけがない。特需で増えた来店客をどうつなぎ止められるかが大きな営業テーマであろう。来店客数を維持するのが難しい時代に、来店客数が毎月、対前年比で増え続けたことの「強運」とも言えるタスポ効果を今後の営業に、いかに生かしていくのか、コンビニエンスストア業界に期待したい。
 そこで、コンビニエンスストアにもたらしたタスポ効果について調べてみた。
 タスポカードとは、未成年者の喫煙防止対策の一環として、未成年者が自動販売機でたばこを買えないようにするために、成人にのみ発行される成人認識のためのICカードのことである。それに伴い、全国のたばこ自動販売機がタスポ対応に置き換えられた。そして、タスポ対応のたばこ自動販売機は2008年3月から7月にかけて順次稼働することになる。3月に鹿児島県と宮崎県でパイロット稼働し、5月に第1次エリアとして21道県、6月に第2次エリアとして15府県、7月に第3次エリアとして9都県で稼働し全国で稼働を始めた。
 一方、タスポカードの利用より店頭での購入を選ぶ愛煙家がコンビニエンスストアに向かった。タスポ対応のたばこ自動販売機の稼働が進むに連れてコンビニエンスストアがその恩恵を受けることになる。したがって、コンビニエンスストアにとっては特需とも言えるタスポ効果は2008年5月から顕著になりタスポ対応のたばこ自動販売機が全国稼働する2008年7月をピークに、全国稼働から一巡する2009年7月まで続く。
 社団法人日本フランチャイズチェーン協会は正会員のコンビニエンスストア本部11社〔㈱エーエム・ピーエム・ジャパン、㈱ココストア、㈱サークルKサンクス、㈱スリーエフ、㈱セイコーマート、㈱セブン-イレブン・ジャパン、㈱デイリーヤマザキ、㈱ファミリーマート、㈱ポプラ、ミニストップ㈱、㈱ローソン〕を対象に毎月、営業状況を調査し「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」として発表しているが、本稿ではタスポ効果がピークだった2008年7月と対比させるために最近5年間の7月の営業状況とタスポ効果が出始めた2008年5月以降の同じく営業状況を下にまとめた。
 同月報の解説でタスポ効果が売上好調要因の1つとして初めて出てくるのは2008年5月である。その後、2009年7月の月報まで毎月、タスポ効果に触れられていた。下の数字は全店ベースだが、売上高を既存店ベースで見ると、2008年5月から2009年5月の間だけが対前年比で増加が続いている。その前後は減少基調である。増加した月の中でも2009年5月は1.0%増で最も伸び率が小さく、同年6月はマイナス2.3%、同年7月はマイナス7.5%と続く。タスポが稼働している月との対比では当然のこととして伸び率が下降している。


社団法人日本フランチャイズチェーン協会・コンビニエンスストア統計調査(全店ベース)より

《年・月》  《売上高》     《店舗数》    《客数》     《客単価》
05年07月 653,806百万円  39,392店舗  1,097,263千人  573円
06年07月 639,710百万円  40,337店舗  1,090,287千人  562円
07年07月 654,090百万円  40,893店舗  1,111,824千人  588円
08年05月 648,846百万円  41,399店舗  1,110,142千人  585円…月報解説でタスポ登場最初
08年06月 648,709百万円  41,367店舗  1,109,338千人  585円
08年07月 745,546百万円  41,443店舗  1,266,246千人  589円…タスポの影響が最大
08年08月 734,252百万円  41,645店舗  1,222,967千人  600円
08年09月 674,226百万円  41,566店舗  1,157,446千人  583円
08年10月 686,766百万円  41,559店舗  1,185,853千人  579円
08年11月 657,758百万円  41,666店舗  1,121,449千人  587円
08年12月 702,129百万円  41,714店舗  1,138,010千人  617円
09年01月 630,177百万円  41,800店舗  1,048,625千人  601円
09年02月 582,856百万円  42,047店舗   995,368千人  586円
09年03月 662,596百万円  42,004店舗  1,121,247千人  591円
09年04月 645,007百万円  42,070店舗  1,122,636千人  575円
09年05月 669,575百万円  42,153店舗  1,161,680千人  576円
09年06月 654,746百万円  42,204店舗  1,163,331千人  563円
09年07月 708,485百万円  42,345店舗  1,237,420千人  573円…月報解説でタスポ登場最後
09年08月 712,864百万円  42,557店舗  1,228,961千人  580円


 一方、上の数字で注目したのは客単価である。2005年7月と2009年7月が同じで、この間、600円前後で推移し、ほとんど変わっていない。一概には言えないが、1人当たり客単価の平均値で見る限りは、たばこを買った顧客は他の商品も買っていることになる。たばこ1個だけの購入者が増えると客単価の平均値を下げることになるからである。
 そこで、全店ベースだが、各年の7月とタスポ効果が出始めた2008年5月、最新統計の2009年8月の1店舗当たりの売上高と来店客数を上の数字から算出した。売上高の単位が百万円、来店客数の単位が千人、店舗数の単位が店で、算出した数字の単位が万円、人と、単位取りに整合性がないが、傾向性はつかめると、あえて計算した。
 下の数字を見ると、1店舗当たりの売上高は2008年7月が最も大きいが、その後も、タスポ導入前と比べると増えている。一方、1店舗当たりの来店客数は同じく2008年7月がピークで、その後は下降傾向だが、タスポ前に比べて、決して少なくなってはいない。来店客数は増えている。


1店舗当たりの売上高・客数(全店ベース)  ※コンビニエンスストア統計調査より算出

《年・月》  《1店売上》 《1店客数》
05年07月 1,660万円  27,855人
06年07月 1,586万円  27,029人
07年07月 1,600万円  27,189人
08年05月 1,567万円  26,816人
08年07月 1,799万円  30,554人
09年07月 1,673万円  29,222人
09年08月 1,675万円  28,878人


 努力しても来店客数が増えない時代である。現状維持すら難しい競争の激しい時代である。小売業の中でも、比較的好調を保っていると言われるコンビニエンスストアでも、既存店ベースの売上高は2000年以降、ほとんどの月で前年割れである。タスポ効果で増えた客数をどうつなぎ止めて、固定客化していくのか。今後の課題と言えよう。(東)


【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第6回 小売業の異業態間競合は「常態」である

2009年10月08日 22時44分39秒 | 今日の気づき
【2009年10月8日(木)】小売業、サービス業の8月期中間決算の発表が続いている。業績予想の下方修正、赤字決算が目立つ。業績不振の理由として必ず登場してくるのが競合店との競争の厳しさである。10月8日付の日本経済新聞朝刊12面に吉野家ホールディングスの3月~8月期の中間決算の発表記事が掲載されている。主見出しには「吉野家HD 最終赤字3億9100万円」、サブ見出しに「3~8月期 牛丼・ステーキ店低迷」とある。業績不振の主な理由として、「主力の牛丼店がコンビニエンスストアなどとの競争激化で苦戦し…」、「消費者の節約志向が強まり、値引き攻勢をかけているスーパーなど「内食・中食」企業との競争が激しくなった」と、主力業態の低迷を挙げている。牛丼店同士の競争は言うまでもなく、同一商品市場における他業態との競争の厳しさを浮き彫らせている。前回で取り上げたイオンとニトリの記事でも、イオンは競争相手を同業態はもちろんのこと、むしろ、ニトリなどの他業態を意識していることをうかがわせている。
 とはいえ、小売業の競争相手はいつも他業態であったと言える。消費市場が拡大している時は、異業態間の競合は同業態間の競合の前に存在感が隠れてしまっていた。市場が拡大基調にあるので、他業態に奪われた売上は同業態同士で競合しつつ市場を拡大させることで、その影響力を打ち消してきた。まさに「売上がすべてを癒す」という状態であった。
 特に、小売業態としては新興勢力であったスーパー業界は、チャレンジャーらしく、いつも既存業態と競い合ってきたし、事業を脅かす勢力とは、新興勢力ともつばぜり合いを演じてきた。総合スーパー化は百貨店と競合する局面を持つ。専門店事業にも取り組んできた。ファミリーレストランなど外食産業の台頭は家庭内への食材販売に影響すると、自ら外食産業に進出した。中食、外食との競合ではミールソリューションのコンセプトで惣菜売場の拡充を図っている。
 かつて、携帯電話が若者の間に普及し出し電車内での携帯電話の使い方のマナーが悪いと、携帯電話を片手に大きな声で話す若者に社会の非難が集中していた時、コンビニエンスストアは「コンビニの競争相手はケータイ」だとして対策を練っていた。コンビニエンスストアに向いていた若者の支出がケータイに奪われており、それをいかに取り戻すかが課題となっていたのである。
 そのコンビニエンスストアについて、同じ8日付の日本経済新聞朝刊10面に主見出し「加盟店支援 ファミマが140億円」の記事。サブ見出しは「今期、過去最高 販促へ上積み」である。「2010年2月期に、フランチャイズチェーン(FC)加盟店への支援に過去最高の約140億円を投じる。各店の値引きなど販売促進、多店舗展開や弁当類の廃棄コストに充ててもらう」と、その理由を説明している。弁当類の廃棄コストに代表されるように、中食アイテムにおけるコンビニエンスストアの競争相手は弁当を扱う全業態、さらには先に挙げた牛丼店のようなファーストフード店、弁当・寿司・ピザなどの宅配業態など多岐にわたる。中食の宅配ではファミリーレストランも参入している。地元のレストランも昼食時に店頭で弁当を販売する。ビジネス街などでは、弁当や昼食メニューをその場で調理して販売する車が昼食時にだけ出現する。営業時間では24時間営業のスーパーなどとも競合する。
 消費市場が縮小し、競合が激しくなるのにしたがって、ずっと続いていた異業態間競合の実態が鮮明に浮かび上がってきた。新業態の登場もあり、内容、厳しさに違いはあるが、異業態間競合は小売業の宿命的とも言える「常態」なのだろう。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第5回 価格競争におけるパラダイムシフト

2009年10月08日 22時34分39秒 | 今日の気づき
【2009年10月7日(水)】10月7日付の日本経済新聞朝刊9面の主見出し「イオン、2年連続最終赤字」、サブ見出しが「3~8月、スーパー事業不振」と「小売業界、消耗戦に」の記事。小売業界は2月期決算の企業が多い。商品の入替期に合わせているからである。連日、小売業の3月~8月の上期決算の発表記事が紙面を賑わしている。紙面は賑わうが、決算の内容は賑やかなものでなく、「赤字」や「不振」、「低迷」という字句が当たり前のように並ぶ。しかし、生活者の低価格指向のニーズに対応したディスカウント戦略が成功した企業は、文字通り賑やかな紙面となっている。
 イオン不振の内容は本コラム第3回の10月4日付日本経済新聞の記事でも触れているので、主見出しについては、関心が通過する記事だが、サブ見出しの「小売業界、消耗戦に」に心が留まる。
 理由は2つある。1つ目の理由は、紙面構成の作り方の良さでもあるが、業態間競合の厳しさを感じたからである。イオンの記事の左隣に「デフレは大いに結構」の見出しで、ニトリの似鳥昭雄社長のインタビュー記事が載っている。イオンの記事は「客離れを防ぐには、専業ディスカウント店やユニクロ、ニトリなど低価格専門店との競争からは離脱できない。円高を生かした海外調達など一段のコスト削減が必要になる」と結んでいるが、片や、ニトリの記事では「9月の既存店の客数が前年同月を18%上回ったのは評価してもらった証拠。11月にも値下げを計画している」と、昨年5月から6度にわたる家具などの値下げ効果について、似鳥社長のコメントを紹介している。 
 既存の営業形態からの低価格指向へのシフトの難しさと、初めから低価格指向の営業形態の確立をめざしてきた企業の差を感じる。「特売」感覚の低価格戦略など瞬間風速的にも通用しない時代に来ている。瞬間風速的に効果を出しても、その後のことを考えると、決して業績のプラス要因には働かない。企業、業態、店舗の「コンセプト」の見直し、新構築が問われているのではないだろうか。
 2つ目の理由は、金額的拡大が望めない消費市場の厳しい現状を感じるからである。ニトリの9月における既存店客数の対前年同月比18%増は、ニトリの強い価格競争力がニトリの「市場のパイ」の取り分を大きくしたが、パイそのものを大きくしたのではないと考えられ、消費市場の厳しい現状を感じる。しかも、低価格戦略が功を奏したとすれば、市場の金額規模は縮小したことになる。たとえ、低価格戦略で買い控えの殻に閉じこもっていた消費意欲を引き出すことができたとしても、家具などの耐久消費財の買い替えサイクルの期間で見た個数ベースの市場規模が大きくならない限り、市場の金額規模は縮小に向かうことになる。かつての「安かろう、悪かろう」の時代ではない。「悪かろう」では、生活者は低価格指向の商品に付いて来ない。
 商品の質は向上している。かつてと同じ品質環境での価格競争ではない。生活者が納得する品質の範囲内での価格競争である。価格競争においても、パラダイムシフトが起こっている。 (東)