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【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第13回 弁当市場は短期決戦・長期戦略

2009年10月20日 14時33分05秒 | 今日の気づき
【2009年10月20日(火)】10月20日付の日本経済新聞朝刊31面の一番下に「店員発案の弁当 ローソンが発売」の見出しで、本文19行の小さな記事が載っている。見出しの「店員発案」の文字に目が留まる。スーパーでは、地元の地域催事や食事の嗜好など地元の生活情報を豊富に持っている主婦のパート社員の意見を取り入れた商品開発や品揃え、価格設定、売場づくりなどには、かなり前から取り組んできた。事例もたくさんある。珍しい言葉ではなかったが、コンビニエンスストアでも、そういう時代に来たのかと。また、最近話題になっているコンビニエンスストアの価格競争。スーパーなどとの同質化競争を避けた業態の開発、展開で定価販売を維持してきたビジネススタイルがほころび出している。コンビニエンスストアも、かつてスーパーが経験した激しい競争状態を迎えているということが伝わってくる。しかも、異質化路線を成り立たせなくしているのは、同業態間競争より異業態間競争、多業態間競争の激しさである。定価販売を基本としているコンビニエンスストア間の競争では、これほどまでの価格競争は起きないからである。コンビニエンスストアも「地域密着」が求められるようになってきたのだろう。
 かつて、大手コンビニエンスストア本部の広報室で、商圏の考え方を聞いた。答えは「商圏という発想はない。半径何百メートルという商圏のとらえ方はしていない」と。続いて「車を運転している時に弁当が欲しくなった。その時にコンビニエンスストアの看板が目に入った。駐車場もある。買いたい弁当があった。便利である。顧客が必要になった時に、その商品を売っている便利な店が、そこにある。それがコンビニエンスストアである。道路は日本中につながっている。強いて商圏と言うなら、道路でつながっている日本全土が商圏ということになる」と説明をされた。そういう発想ができない時代に来ていると言える。
 もう1つ。本文の中に弁当の名称が「くる弁」とある。何の略称か知りたくなって、ローソンのホームページを開いた。驚くこと頻りである。弁当など中食市場の競争の厳しさは、それなりに理解していたつもりだが、何も理解していなかったことを知らされ、汗顔の思いでもある。
 「くる弁」とは「クルー弁当コンテスト」の略である。ローソンでは様々な加盟店参加の取り組みを行っているが、クルー弁当コンテストは2009年3月から4月にかけて、地元の食材を使った料理や地域の伝統料理などに一工夫を加えたメニューをテーマに弁当のアイデアを募集した企画である。ローソンではアルバイト・パートタイマーを「クルー」と呼んでいる。コンテストには、ローソンで働いているオーナー、店長、クルーであれば誰でも参加できた。全国から321件のアイデアが集まり、7支社ごとに審査し、各支社1品の代表作品を商品化して、10月27日から支社エリア内で発売する。その後、各支社での期間中の販売結果などにより1~3作品を選定し、2010年2月に全国発売する予定だという。
 ちなみに、10月27日から発売する「くる弁」は、次の7作品である。

◆北海道「ザンギソース丼」(450円)
◆東北「十和田バラ焼き弁当」(498円)
◆関東「信州名物 山賊焼き弁当」(530円)
◆中部「イタリアン味噌カツ丼」(498円)
◆近畿「ご当地!!B級グルメ対決弁当(加古川かつめしVS高砂にくてん)」(480円)
◆中四国「焼豚玉子めし」(498円)
◆九州「鳥人(ちょうじん)パワー弁当」(450円)の7作品である。

 一方、ローソンは全国発売、地域限定発売で様々な弁当を開発・販売し、それも短期間のサイクルで展開し、常に弁当売場の活性化を続けている。
 「くる弁」を発表した翌日の10月20日には「付け焼き 牛カルビ重」(480円)を「くる弁」と同じ10月27日から全国発売をすると発表している。「付け焼き 牛カルビ重」は、同社の「驚きの商品開発プロジェクト」の弁当第5弾の商品である。同プロジェクトは2009年7月に、顧客の「たまには良いもの」の要望に応えるために、原材料を起点に商品価値を3割アップさせた商品の開発を目指してスタートしたものである。弁当、デザート、パスタ、おにぎりの4カテゴリーで商品開発を進めており、これまで、弁当は5商品、デザートは1商品を開発している。10月にはパスタの商品化に着手する予定である。開発した商品は長期にわたって売り続けるのではなく、短期間で集中的に販売し、開発の頻度を高めているのが特徴である。食材を一括で仕入れ、商品部がその原材料を元に多種多様なメニュー開発をすることで、価値の高い商品を手ごろな価格で提供できるようにしている。
 同プロジェクトのこれまでの商品開発、販売の実績は次の通りである。

◆弁当第1弾「スタミナ牛焼肉弁当」(450円)。7月22日全国発売。約10日間で約110万食を完売。販売終了。
◆弁当第2弾「ダブルポークステーキ重」(500円)。9月15日全国発売。約2週間で約100万食を完売。販売終了。
◆弁当第3弾「大海老天重」(480円)。9月29日全国発売。約2週間で約100万食を完売。販売終了。
◆弁当第4弾「直火焼炙りチャーシュー弁当」(450円)。10月13日全国発売。第1弾~第3弾とほぼ同様に推移。現在販売中。
◆弁当第5弾「付け焼き 牛カルビ重」(480円)。10月27日全国発売。
◆デザート第1弾「プレミアムロールケーキ」(150円)。9月29日全国発売。発売から5日間で100万個以上を販売。現在販売中。

 そのほか、地域限定の弁当も開発、販売している。10月には6日から「鹿児島黒豚焼肉弁当」(500円)を関東・甲信越地区限定で発売した。約35万食の数量限定で、今回の売れ行き状況を踏まえて、全国もしくは他地区に拡大して販売する予定である。
 北海道では、北海道限定で、10月20日から11月2日まで、北海道の人気シェフ、勝山ヨシミ氏プロデュースのメニュー5品を順次発売する。北海道では、「驚きの商品開発プロジェクト」の弁当第4弾「直火焼炙りチャーシュー弁当」が完売する頃に、同第5弾の「付け焼き 牛カルビ重」が10月27日から発売され、その発売を挟むように、勝山ヨシミ氏プロデュースのメニュー5品が発売されていく。
 また、「驚きの商品開発プロジェクト」の弁当第5弾「付け焼き 牛カルビ重」は「もっとボリュームのある焼肉弁当を食べたい」という顧客の声を反映して、同第1弾「スタミナ牛焼肉弁当」より肉の量を増やすなど、より充実させた内容にしている。常に顧客を飽きさせない品揃えをし、開発した商品が顧客の要望をキャッチするアンテナの役割を果たし、キャッチした情報を次の商品開発に生かしている。しかも、価格設定は500円ラインを維持している。「驚きの商品開発プロジェクト」は消費の二極化に対応した高付加価値の高価格帯商品の開発を進めている。改めて、弁当類を中心にした中食市場の競争の激しさ、厳しさを学ぶことができた。(東)

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