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小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第5回 価格競争におけるパラダイムシフト

2009年10月08日 22時34分39秒 | 今日の気づき
【2009年10月7日(水)】10月7日付の日本経済新聞朝刊9面の主見出し「イオン、2年連続最終赤字」、サブ見出しが「3~8月、スーパー事業不振」と「小売業界、消耗戦に」の記事。小売業界は2月期決算の企業が多い。商品の入替期に合わせているからである。連日、小売業の3月~8月の上期決算の発表記事が紙面を賑わしている。紙面は賑わうが、決算の内容は賑やかなものでなく、「赤字」や「不振」、「低迷」という字句が当たり前のように並ぶ。しかし、生活者の低価格指向のニーズに対応したディスカウント戦略が成功した企業は、文字通り賑やかな紙面となっている。
 イオン不振の内容は本コラム第3回の10月4日付日本経済新聞の記事でも触れているので、主見出しについては、関心が通過する記事だが、サブ見出しの「小売業界、消耗戦に」に心が留まる。
 理由は2つある。1つ目の理由は、紙面構成の作り方の良さでもあるが、業態間競合の厳しさを感じたからである。イオンの記事の左隣に「デフレは大いに結構」の見出しで、ニトリの似鳥昭雄社長のインタビュー記事が載っている。イオンの記事は「客離れを防ぐには、専業ディスカウント店やユニクロ、ニトリなど低価格専門店との競争からは離脱できない。円高を生かした海外調達など一段のコスト削減が必要になる」と結んでいるが、片や、ニトリの記事では「9月の既存店の客数が前年同月を18%上回ったのは評価してもらった証拠。11月にも値下げを計画している」と、昨年5月から6度にわたる家具などの値下げ効果について、似鳥社長のコメントを紹介している。 
 既存の営業形態からの低価格指向へのシフトの難しさと、初めから低価格指向の営業形態の確立をめざしてきた企業の差を感じる。「特売」感覚の低価格戦略など瞬間風速的にも通用しない時代に来ている。瞬間風速的に効果を出しても、その後のことを考えると、決して業績のプラス要因には働かない。企業、業態、店舗の「コンセプト」の見直し、新構築が問われているのではないだろうか。
 2つ目の理由は、金額的拡大が望めない消費市場の厳しい現状を感じるからである。ニトリの9月における既存店客数の対前年同月比18%増は、ニトリの強い価格競争力がニトリの「市場のパイ」の取り分を大きくしたが、パイそのものを大きくしたのではないと考えられ、消費市場の厳しい現状を感じる。しかも、低価格戦略が功を奏したとすれば、市場の金額規模は縮小したことになる。たとえ、低価格戦略で買い控えの殻に閉じこもっていた消費意欲を引き出すことができたとしても、家具などの耐久消費財の買い替えサイクルの期間で見た個数ベースの市場規模が大きくならない限り、市場の金額規模は縮小に向かうことになる。かつての「安かろう、悪かろう」の時代ではない。「悪かろう」では、生活者は低価格指向の商品に付いて来ない。
 商品の質は向上している。かつてと同じ品質環境での価格競争ではない。生活者が納得する品質の範囲内での価格競争である。価格競争においても、パラダイムシフトが起こっている。 (東)

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