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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第4回 「エコ」を考えると限りがない

2009年10月06日 22時35分06秒 | 今日の気づき
【2009年10月6日(火)】10月6日付の日本経済新聞朝刊1面の主見出し「軽と小型車 開発一本化」、サブ見出し「三菱自、車台を共通に 人員や設備集約」の記事に目が留まる。流通関連、産業関連の記事では、他の一般紙が掲載していなくても日経には掲載されているし、一般紙に掲載されている内容は日経も掲載し、記事の文字数も多い。このコラムは流通業に関連した世の中の動きの「今」を新聞記事をセンサーに「気づき」を発見していくことをめざしている。必然的に日経の記事を取り上げることが多くなり、これからもそうなっていくのは間違いない。したがって、毎日、まず日本経済新聞に目を通す。ざっと見出しを追っていくと、必ず目が留まるというより、心に何かが引っかかって、その見出しをしばらく見続けている記事を必ずと言っていいほど毎日発見する。今日は先に挙げた記事に最も心が留まった。同じく6日付朝刊3面に「生活関連消費 中高年が主役」、「シェアで過半・逆転」の見出しで、2009年度には、眼鏡の小売最大手の三城ホールディングスが売上高に占める老眼鏡の割合が50%を超えたこと、紙おむつ市場は大人用が子供用を逆転する見通しであることなど、中高年向けの商品やサービスが国内市場の過半数を占める例が相次いでいることを伝えている。本来なら、真っ先に目が留まる記事のはずだが、なぜか、自動車業界のことはまったくの門外漢なのに、先の1面の記事に関心がいった。
 心に留まる記事と心を通過する記事の違いは何なのか。その分かれ目は、記事スペースの大きさや掲載ページの違いではなく、「これは新しいこと…」「これはなぜか…」と感じるか、「そんなことは当たり前…」と思うかの違いである。今日の例では、1面の記事に、門外漢ゆえに「そんなことは当たり前では…」と思う半面、「これはなぜか…」と感じたのである。
 記事は、三菱自動車は軽自動車と小型車のプラットホーム(車台)など自動車の骨格や基幹部品を共通化することで、人員や設備を集約して開発・生産コストを引き下げるという内容である。産業規模の大きさや商品単価(1台当たりの末端価格)の大きさなどから、決して一概に言えることではないのだろうが、共通・共有化は他の産業分野でも取り組んできたことで、やらなければならない切羽詰った状況にあることは予想されるが、なぜ今になってやるのか、今できるのなら、なぜもっと早くやって競争力を強くしなかったのか、という疑問を感じたことが、見出しに目が留まった理由である。あまりにも比べる対象が不釣合いだが、門外漢ゆえに感じることは、外食産業などは同じ食材をメニューごとに使い分けて、または使い分けられるメニュー開発に取り組み、食材管理、メニュー管理に注力してきた。本来なら「当たり前のこと」として心が通過する記事だが、これからの社会の変化、社会の価値観の変化の大きな基軸になると考えている「エコ」の問題とも関係する内容であることが、今日一番の関心記事となったのだと思う。
 物や人の集約化は環境問題の解決では大変大きな部分を占める。雇用問題をあえて考えないで言うと、物や人が少なくなると、物や人の動きで費やすエネルギーが少なくなり、全車種合計の総生産工程数も少なくなる。「エコ」の問題は単なるエネルギー消費の問題にとどまらず、産業構造や業務プロセスにまで縦横無尽にメスを入れていかなければならない問題である。すでに無駄の排除と効率化に取り組んでいる企業があると思うが、会議一つを取ってみても、「エコ」の問題が関係してくる。会議の回数を減らしたり、効率的に行えるように努力するだけでなく、極端に言えば、同じ効率化に努力するにしても、いかに短い時間で濃い内容が伝えられるように工夫をして会議時間を短くするとか、早くもなく遅くもなく決められた時間に出席者がきちんと集まって会議が進められる環境を整えるとか、「エコ」に直接的、間接的にかかわる無駄の排除は限りがないほど多くある。現実には、あまり細かい決まり事を作ると逆にスムーズに事が運ばないこともあるが、メス入れを検討する箇所はどの業務分野でも無数に見つかるということである。要は、今の延長で無駄を除くのではなく、いったん白紙に戻してカウントゼロから組み上げなければ根本的な問題解決はできないというのが「エコ」の問題であるとも感じている。
 新聞記事から離れて、「エコ」の問題で気にかかっていることがある。これも業界のことは不案内なので、一人の素人の意見として受け止めてもらいたい。
 出版不況が言われているが、その中で、書籍・雑誌のリサイクルショップが定着している。リサイクルショップは「エコ」の一角を担う業態のイメージを持っていたが、それはそれと認めつつ、この先、このままで良いのだろうかと疑問に思っている。最近、不要な書籍を処分しようと、着払いの宅配便による「無料買取サービス」を利用した。リサイクルに回せないような古く、汚れた本も含まれていたが、ショップ側の判断でリサイクル販売できないものは資源ごみとして処分するということに承諾した上での「無料買取サービス」の利用である。第一陣として、段ボール箱6箱に約300冊を取りに来てもらった。宅配便の着払い依頼主控えには1箱の運賃が740円と記されている。この運賃は、「無料買取サービス」だから、当然ショップ側の負担と考えている。店頭で販売されても、資源ごみで処分されても、買い取った書籍は何らかの形で収益を生み、その中から着払い運賃も賄うものだと解釈している。ただ、実態の詳細はわからない。
 宅配便で出して約1週間後にハガキで査定の結果が届いた。リサイクル販売できない本は1冊としてあるが、買取金額の合計は609円だった。1冊2円の計算である。ショップは4,440円の運送料を自己負担し609円で商品(古本)を仕入れて利益を上げていることになる。帳簿上は別にして、買取金額の中に幾分かは運賃を含んでいるのではないかと思ってしまう。同じ新刊を買って来て、「無料買取サービス」と「店頭への持ち込み」を比べてみるとわかることだが、そこまではしなかった。第二陣として、文庫本を中心に32冊を同じく「無料買取サービス」で出した。今度は300円の査定であった。「無料買取サービス」と「店頭への持ち込み」を比べていないし、業界の仕組みにも不案内だから、これらの理解が間違っていたとすれば当該企業に迷惑をかけることになるので、先に断っておくが、「無料買取サービス」がどうのこうのと言うのではなく、それほどの金額にしかならないのなら、もちろん無料で良いから、市の資源ごみ回収や町内会の資源ゴミ回収に出した方がトラックが排出するCO2を少なくできたのではないだろうかという反省がある。「エコ」ビジネスの一角にあると思っていたビジネスの反「エコ」と思われるような仕組みを経験して、この先、このビジネススタイルが継続できるのであろうかと思うのである。流行の言葉を使うなら、「持続可能」なビジネススタイルなのだろうかということである。
 「エコ」の問題は様々な角度から縦横無尽に考えることができる。三菱自動車の記事に目が留まったのは、そういう「エコ」に対する思いが伏線としてあったのである。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第3回 次への発展は現実の肯定から始まる

2009年10月05日 04時45分32秒 | 今日の気づき
【2009年10月5日(月)】5日は終日外出するため10月4日付の日本経済新聞から流通業関連の記事を探した。朝刊7面に「イオン、赤字120億円」を主見出しに、「3~8月最終損益 金融事業などで特損」のサブ見出しの記事。連日、小売業大手の決算記事である。いずれも業績不振の内容が並ぶ。相変わらず総合スーパーの不調が伝えられている。同記事でも、「主力の総合スーパーも天候不順などで苦戦」、「本体で総合スーパーを手掛けるイオンリテールの既存店売上高は約6%減った」、割安なPB商品拡販で「来店客数や買い上げ点数を伸ばしたが、価格下落を補えなかった。夏場の天候不順も響いた。ただ営業黒字は確保したもようだ」等々と。
 この種の決算記事でいつも気になることがある。必ずと言っていいほど、経営者側の「…変化の対応に後れた…」という類いのコメントが伝えられることである。同記事の中ではイオン側のコメントは報じられていないので、そういう趣旨のコメントがあったかどうかはわからない。小売業は変化対応業とはいえ、今の変化にタイムリーに対応するのは至難の業である。今の変化は質、形態、スピードが予測もつかなく絡み合いながら起こっている。変化への対応の巧拙を結果論として論じるのは簡単だが、日々走り続けている企業が急に方向を変えたり、机上で積み木を並べ替えるように営業形態を変えることなどできるわけがない。
 総合スーパーは登場した時には大きな顧客の支持があった。支持があって店舗数が増え店舗規模も大きくなった。顧客ニーズに応えようと品揃えや売場構成も変化させてきた。しかし、今は顧客の変化、市場の変化の中で「旧業態」になりつつある。旧業態になりつつあるからといって、その理由を「…変化の対応に後れた…」として説得力があるのだろうか。 30年ほど前、上場スーパーの決算発表の記者会見に初めて出た時に驚いたことがある。どのスーパーも、前年より数字が上がったり下がったりした理由として、天候要因の説明はまだしも、今期は前期より日曜日が1日多かったとか、昨年は閏年だったので今年の営業日は1日少なかった、ということが真顔で話されるのである。営業日数の違いは例え1日の増減であっても売上に与える影響は大きい。株主が注目し株式市場が目を光らせているので、そういう説明になるのだと思うが、果たして、対前期比売上の状況を「暦」で説明するのが適切かどうか疑問に感じたことを思い出す。社内の経営会議では、もっと本質的な原因究明がなされていたはずである。
 企業のマネジメントで「PDCAサイクル」の大切さがよく言われる。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)を繰り返して継続的に業務改善を行っていく管理手法である。仮説を立てて実行し、結果を検証して改善につなげていく「仮説検証」と同様の考え方である。小売業の現場では時々刻々の売上状況がPOSデータに記録されていく。日々、仮説検証をしていける環境にあり、その手法を磨いているところが競争力を強くしている。一方、企業の経営では、仮説検証、PDCAなどの手法は適さない。実行して、結果を見て、修正すれば良い、というわけにはいかない。失敗は許されないからである。結果を見て修正すれば良いPDCAをフィード・バック手法と言われるのに対して、失敗をしないように、事前に解決手段をすべて列挙し、どれが最善かを選ぶやり方をフィード・フォワード手法と言われる。概して、企業の現場はフィード・バック手法型で経営はフィード・フォワード手法型と言える。
 小売業においては、プロセスは異なっていても、両手法の「実行」の精度を高める基礎データはPOSデータの中にある。総合スーパーが新業態として興隆していた時のデータも、旧業態化しつつある今のデータも、すべてPOSデータに記録されている。商品が独りでレジに移動することはない。顧客は商品を選び購入するためにレジに運ぶ。POSデータには必ず顧客の意思データも蓄積されている。POSデータを顧客データと重ね合わせて活用できる環境も既に整っている。決算発表の席ではともかく、社内の経営会議では、「…変化の対応に後れた…」ことを経営判断のミスとするのではなく、結果論では認識が難しい時代の変化に真っ正面から向き合って、「事実」を肯定的に見ていくことが大事ではないだろうか。「事実」を「肯定」し、起っているすべてのことを肯定的に受け入れることが次の発展につながるのではないだろうか。「そんなことはわかりきっていることで、当たり前」と一笑に付されることを覚悟で感じたことを書いてみた。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第2回 まだまだ続く消費市場の縮小傾向

2009年10月02日 22時27分36秒 | 今日の気づき
【2009年10月2日(金)】10月2日付の日本経済新聞朝刊9面トップに「セブン&アイ、再構築急ぐ」の記事。「3~8月、純利益35%減」「スーパー・百貨店不振」「コンビニ事業にも陰り」とサブ見出し。昨日に続いてセブン&アイの報道が続く。少し前まではイオンが小売業不振の象徴のように同じような論調でよく報じられていた。その前は百貨店業界だった。優等生のセブン-イレブンに支えられたセブン&アイの健闘と総合スーパー不振の影響を受けたイオンの厳しい状況がよく比較された。今回の記事ではセブン&アイの不振が大きく報じられているが、それでもセブン&アイの2009年2月期の営業利益はイオンの2倍以上の水準である。そのセブン&アイでさえ業績が悪化していることを、流通業界の不振ぶりを象徴することとして大きな扱いになったと思われる。トップ企業の業績悪化だから当然の扱いと言えるが、こうした業績悪化の報道はトップ企業に限らず、今後も後を絶たないだろう。消費構造が大きく変化しているからである。
 消費市場の容量以上に商品を詰め込めるだけ詰め込んで、パンク寸前になって、詰め込んだ商品が在庫として大量に残ってしまい、他を押しのけて詰め込むために敷いてきた生産体制は市場の動きにすぐには対応できず、市場の変化、市場の縮小に対応すべく、いかにソフトランディングするかが課題となっているものの、それもできずにハードランディングをして雇用問題を引き起こしているのが現状である。
 同じく10月2日付の日本経済新聞朝刊31面に「百貨店、早くもおせち商戦」という記事が載っている。従来のあるべき時期の商戦が早く始まったので、そのこと自体にニュース性があると言えるが、夏が終わったところなのに正月に関連した話題が登場することに、小売業の置かれた厳しい状況が伝わってくる。四季の美しい日本の小売業の売場から季節に沿った季節感がなくなるほど悲しいことはない。やむにやまれぬハードランディング的な動きと言える。
 今の消費市場は限界にまで膨らんだ風船が縮まろうとしているのと同じ状況である。あちこちにしわができるのは当然である。1つのしわを直しても、そのしわ寄せが他のしわを深くしてしまうことも珍しくない。商業の新しい秩序がグローバルの視点で求められる時代に入ってきたと感じている。海外進出にしても、進出先のことを差し置いて進出企業のことを優先して考えることができなくなってくると思われる。フェアトレードの問題などはその矛盾から出てきたものである。自国の市場が飽和になったから海外の市場に活路を求めるという考え方が成り立たなくなってくるだろう。発達した国や企業のノウハウを発展途上の国や企業の発展に貢献させることは必要だが、発展途上の国や企業が自分たちで成長できる力を蓄えてきた時には徐々に撤退していくことを考えなければならない。いわば、撤退を前提にした進出が求められる。経済社会は競争社会であり拡大基調の成長社会だから、撤退ありきの進出など考えられないことだが、子どもが成長するまで親が手を貸し子どもが成長すれば速やかに子離れしていくような関係を経済社会の枠組みの中に組み込ませることも求められるのではないかと考えられる。これは1企業の努力でできることではなく、国際的な枠組みの中で議論しなければ進まない問題である。
 話を戻して、わが国の消費市場の現状を見ることにする。下の数値は商業統計調査の年に合わせて人口推計と家計調査のデータを重ね合わせたものである。
 商業統計では2002年から2007年までに事業所数が減少し年間商品販売額も減少しているが、売場面積は拡大している。売上が落ちているのに売場面積は大きくなっているのである。逆に、売場を大きくしなければ売上を確保するのが難しくなっているのかもしれない。一方、人口は増えている。そこで大雑把な数値しか出てこないが、商業統計の数値を総人口で割り人口1人当たりの数値を出してみた。事業所数が減り、販売額も減っているが、売場面積は増えている。参考までに家計調査の変化も見た。2007年の世帯人員が2002年より減っているので1人当たりの消費支出は増えているが、1世帯当たりの消費支出は減少している。節約指向、低価格商品指向が進んでいることもあるが、収入が低迷しているので、金額ベースの拡大は限界にきているのではないだろうか。これからはエコ意識の高まりが消費に影響してくる。エコ指向で金額だけを見た低価格商品指向は和らぐかもしれないが、購入する数量や内容量の節約意識も強まってくるものと予想され、数量的節約指向が和らいだ低価格商品指向を上回ることもあり得る。
 消費経済の生々しい現実を反映する小売業にかかわる新聞記事では、バブリーな要素も加わって数量的な拡大がこれ以上望めないであろう消費市場を軸に読み進むことによって、小売業が直面する課題が見えてくる。(東)
 


経済産業省・商業統計①
                   
                    《2007年》      《2002年》
 
事業所数               1,137,859      1,300,057

年間商品販売額(百万円)    134,705,448     135,109,295

売場面積(㎡)            149,664,906      140,619,288




総務省・人口推計②
                
                  《2007年(10/1)》    《2002年(10/1)》

総人口(千人)             127,771         127,435




①、②より人口1人当たりの数値を算出

                   《2007年》      《2002年》

事業所数                0.0089         0.0102

年間商品販売額(万円)      105.4272       106.0221

月間商品販売額(万円)        8.7856        8.8352

売場面積(㎡)              1.171        1.103




総務省・家計調査 1か月間の支出 総世帯

                    《2007年》     《2002年》

世帯人員(人)               2.54         2.63

消費支出(円)              261,526      269,835

1人当たり消費支出(円)        102,963       102,599





【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第1回 かつて経験のない激しい流通決戦が首都圏で始まる

2009年10月01日 23時47分51秒 | 今日の気づき
【2009年10月1日】10月1日付の日本経済新聞朝刊1面トップに「ヨーカ堂、30店閉鎖へ」の大きな見出し。いよいよ従来型の総合スーパーが終焉の時に向かって速度を上げて進んでいることがうかがえる。イトーヨーカ堂だけでなく、どの総合スーパーも不振が続き、その対応が緊急の課題になっている。景気が低迷から脱出できず、家庭の収入が減り、人口が減り、少子高齢化が進み、市場には商品が需要を上回る勢いで溢れている。生活者は節約指向とエコ意識の高まりで無駄な消費をしなくなり、節約指向は低価格指向を誘い、素材品質の向上と生産技術の発達が低価格商品の品質を高め、生活者は商品の選択眼を磨きつつ低価格商品を安心感を持って購入するようになってきた。一方、小売業は自社の存続を賭けて、出店し、または閉鎖・業態転換を進めてきた。同種の商品が多業態で販売されている。同業態店舗間競合、異業態店舗間競合、地域間競合だけでなく、商品間競合も常態化している。その典型例が100円ショップの登場による新たな業態間競合である。
 競合が激しくなり、市場が不可抗力的に変化してくると、弱い部分が脆く綻びていくのは当然のことである。従来型の総合スーパーの時代が終わりつつあることを、業態構造とか産業構造と、構造問題で片付けるにはあまりにも酷である。「変化対応業」として、小売業は他の業界にも増して市場の変化、生活者の変化への対応に努力してきたはずである。そういう努力が実を結ばない時代を迎えている。市場そのものが根幹から変わっていくような地殻変動が多面的、多元的に起こっていると考える方がわかりやすい。今まで経験したことのない変化が起こっており、今、その入口に差し掛かり、入口の厳しい状況、その先の対応策が見当たらない厳し現状が見えてきたところのように感じる。日経1面トップの見出しを見て驚かないのは、そうした大きな変化を感じているからだろうか。もっとすごいことが起ることもあり得て、その時も、もしかして大きな驚きを感じないかもしれない。同じ理由からである。
 同記事によると、セブン&アイ・ホールディングスは、ヨーカ堂事業のてこ入れ策として、来期以降、首都圏の好立地に大型ショッピングセンターなど大型店の出店を予定しているという。好立地とは異質間競合の観点から新しい提案型店舗の創出による競合の無風地帯と考えざるを得ないが、異業態間でも同質間競合が起こっているオーバーストア地帯で「好立地」の条件はすぐには思い当たらない。少し前、9月25日の日本経済新聞朝刊15面に「PBの海外調達拡大」の見出しで、セブン&アイと西友の動きを紹介していたが、セブン&アイは海外で調達したPBを日本ではセブン-イレブン、イトーヨーカ堂、ヨークベニマルなどの食品スーパー、そごう・西武の百貨店、アメリカではセブン-イレブン・インクの店舗で販売するという。一部の商品とはいえ、百貨店と食品スーパーとコンビニエンスストアが低価格指向の同じPBを販売することなど考えられなかったことである。ホームセンターやドラッグストアが食品スーパーやコンビニエンスストアが扱う食品や日用雑貨品を当たり前のように扱うようになって久しい。商品を切り口とした業態間の壁がなくなりつつある。かつては考えられなかったことが、今、起こっている。少しずつ起こってきた変化が一気に火山が噴火するように大きな変化として顕在化してきたのが今の状況と見ることができる。
 食品スーパーは小型店化して首都圏の市場をうかがい、業態転換したディスカウント店の出店も相次ぎ、総合スーパーは装いを変えて首都圏に照準を合わせる。迎え撃つ既存店、既存業態も競合に備える。人口の都市部への回帰傾向があるとはいえ、消費市場の縮小基調は変わらない。とてもオーバーストアを吸収することはできない。その先にあるものは、厳しい、そして激しい競合しかない。競合を勝ち抜くための体質、体力をどれだけ養えるかが勝敗の分かれ目になる。競合または変化の中心軸がかつて経験したことのない「市場の変化」に移っていることが、今起こっている最も大きな変化である。(東)