【2009年11月5日(木)】このコラムは、本来なら11月5日の新聞を読んで書かなければならないのだが、4日の日本経済新聞の夕刊1面トップの記事を読むと、この記事で書きたいという気持ちが強くなり、実は4日の夜に、この原稿を書いた。5日の朝刊はどういう記事が掲載されるかわからないが、とりあえず、この原稿を5日のコラムとすることにした。
4日の夕刊1面トップ記事は主見出しが《外食・小売り 脱「全国一律」》、サブ見出しは《対応きめ細かく》、《ロイヤルHD 地方で値下げ拡大》、《ファミリーマート 弁当も地域独自色》である。ロイヤルHDがロイヤルホストで12月から立地別メニューを取り入れること、地域別価格は今春から既に導入していることなどを伝えている。リンガーハットは野菜を100%国産に切り替えたことで10月から値上げしたが値上げ幅を西日本と東京23区で変えていると。CoCo壱番屋は既に2007年秋以降にポークカレーを都心店と郊外店で値上げ幅を変えているという。デニーズも9月から立地や顧客層に応じて店舗ごとに昼食メニューを変更している。日本マクドナルドは2007年6月に外食企業で初めて地域別価格を導入した。
地域別価格は外食だけでなく、コンビニエンスストアでは、ファミリーマートが東北や九州などで地域ごとの嗜好に合わせた食材を使った独自の弁当類を販売し価格も変えているという。
この記事を読んで、すぐに、思い付いたのが、次の3点である。この3点が、5日のコラムを繰り上げて書くことをせり立てた要因でもある。
①チェーン店も個店主義でないと店舗は強くなれない。
②顧客は同一商品の地域別価格に納得するのか。
③チェーン店のスケールメリットと顧客価値の関係はどう考えるのか。
①チェーン店も個店主義でないと店舗は強くなれない。全国一律価格の価格は本部が決めたものという認識が店舗にも顧客にもあると考えられる。企業の方針は店舗を通じて顧客に伝わるので、店舗の役割は大きいが、顧客にとっては、「あの企業の品揃えは良くない」とか「あの企業の商品は安い」という見方になるのではないだろうか。しかし、地域別価格というのは顧客にとっては「店舗独自価格」というイメージが強くなるように思う。すなわち、「あの店舗の品揃えは良くない」とか「あの店舗の商品は安い」ということになる。企業より店舗の印象を強くした顧客に対応する店舗はというと、本部の方針を守り抜くのは当然だが、店舗としての強さを備えていかなければならない。
個々の店舗を強くするというのは個店主義の考え方である。チェーン店と言えども、単独店と同様の強さを持つには、マニュアルだけでは成し得ない。マニュアルを超えた店舗力が求められる。日本では小売業やサービス業の原点を「商人道」として語られることが多い。店舗運営の仕組みのことではない。チェーン化は店舗数と企業規模を短期日のうちに拡大させたが、市場が縮小し出すと、チェーンストア理論では陰に隠れてしまっていた 原点への回帰が始まろうとしているのではないだろうか。
②顧客は同一商品の地域別価格に納得するのか。地域別であろうとなかろうと、価格を変える時は商品も変える方が顧客への説得力と顧客の納得性は強くなる。ナショナルブランド(NB)でも街中の価格と山の上の価格が異なることがあるが、これは説得力も納得性もある。販売環境が大きく変わらない限りは同一価格が望ましいのではないだろうか。飲食店のメニューでも、全国チェーンの看板の定番メニューはNBと同じである。POSデータには顧客の購入動機は反映されない。不満を持っていても、他にない商品だから仕方がないとか、他店より優れているので仕方がないとか、味が好みだから仕方がない、というケースもあると考えられる。顧客が商品を支持しているとはいえ、購入理由に「仕方がない」が付く要素はできるだけ小さくするか取り除くべきだと思う。その対応として、価格を変えるなら、商品名や内容を少しでも変えるべきだろう。外食メニューや弁当類などは対応しやすいと言える。もちろん、すべてが地域別価格ということではないが、全国同一価格と地域別価格の織り合わせ方の研究も今後の課題であろう。
③チェーン店のスケールメリットと顧客価値の関係はどう考えるのか。地域別価格を設ける理由を考える時、チェーン店のスケールメリットは顧客から見ればどのように映るかということである。地域ごとに見ていくと、単独店でもチェーン店に負けない品質と価格、サービスを提供している小売店や飲食店がある。仮に、100店舗のチェーン店が地域別価格を導入する場合、同一価格地域の店舗数が10店舗になったとする。地域で繁盛している単独店に対して10店舗というのはそれなりのスケールメリットが出せて有利だと考えられる。店舗数が増えることで本部の設備投資や管理コストなど間接経費が嵩んで、店舗数をもっと増やさなければスケールメリットが出せないのなら、単独店の集合体を作る方が顧客のためになると言える。例えば、行列ができるラーメン店と中華系ファミリーレストランを対比させると、業態が異なるので比べられないというのでなく、仮に強いラーメン店の横に強いギョウザ専門店、中華料理店を集めて、単独店の集積体としてファミリーレストランと同じメニューを提供できるようになれば、ファミリーレストランの存在価値はメニュー以外のところに求めなければならなくなる。顧客価値をどう提供するのかを考えた時、量の追求で得られるスケールメリットと顧客価値の関係をさらに研究する必要があるのではないだろうか。すなわち、地域別価格を導入してもその地域だけに限ったスケールメリットは十分に得られるのではないだろうかということである。それに、本部として得られるスケールメリットを加えれば、チェーン全体のスケールメリットはさらに得られることは間違いない。
地域別価格を導入する機会に、顧客価値を高める最適なチェーン規模のあり方も考える必要があるのではないだろうか。(東)
4日の夕刊1面トップ記事は主見出しが《外食・小売り 脱「全国一律」》、サブ見出しは《対応きめ細かく》、《ロイヤルHD 地方で値下げ拡大》、《ファミリーマート 弁当も地域独自色》である。ロイヤルHDがロイヤルホストで12月から立地別メニューを取り入れること、地域別価格は今春から既に導入していることなどを伝えている。リンガーハットは野菜を100%国産に切り替えたことで10月から値上げしたが値上げ幅を西日本と東京23区で変えていると。CoCo壱番屋は既に2007年秋以降にポークカレーを都心店と郊外店で値上げ幅を変えているという。デニーズも9月から立地や顧客層に応じて店舗ごとに昼食メニューを変更している。日本マクドナルドは2007年6月に外食企業で初めて地域別価格を導入した。
地域別価格は外食だけでなく、コンビニエンスストアでは、ファミリーマートが東北や九州などで地域ごとの嗜好に合わせた食材を使った独自の弁当類を販売し価格も変えているという。
この記事を読んで、すぐに、思い付いたのが、次の3点である。この3点が、5日のコラムを繰り上げて書くことをせり立てた要因でもある。
①チェーン店も個店主義でないと店舗は強くなれない。
②顧客は同一商品の地域別価格に納得するのか。
③チェーン店のスケールメリットと顧客価値の関係はどう考えるのか。
①チェーン店も個店主義でないと店舗は強くなれない。全国一律価格の価格は本部が決めたものという認識が店舗にも顧客にもあると考えられる。企業の方針は店舗を通じて顧客に伝わるので、店舗の役割は大きいが、顧客にとっては、「あの企業の品揃えは良くない」とか「あの企業の商品は安い」という見方になるのではないだろうか。しかし、地域別価格というのは顧客にとっては「店舗独自価格」というイメージが強くなるように思う。すなわち、「あの店舗の品揃えは良くない」とか「あの店舗の商品は安い」ということになる。企業より店舗の印象を強くした顧客に対応する店舗はというと、本部の方針を守り抜くのは当然だが、店舗としての強さを備えていかなければならない。
個々の店舗を強くするというのは個店主義の考え方である。チェーン店と言えども、単独店と同様の強さを持つには、マニュアルだけでは成し得ない。マニュアルを超えた店舗力が求められる。日本では小売業やサービス業の原点を「商人道」として語られることが多い。店舗運営の仕組みのことではない。チェーン化は店舗数と企業規模を短期日のうちに拡大させたが、市場が縮小し出すと、チェーンストア理論では陰に隠れてしまっていた 原点への回帰が始まろうとしているのではないだろうか。
②顧客は同一商品の地域別価格に納得するのか。地域別であろうとなかろうと、価格を変える時は商品も変える方が顧客への説得力と顧客の納得性は強くなる。ナショナルブランド(NB)でも街中の価格と山の上の価格が異なることがあるが、これは説得力も納得性もある。販売環境が大きく変わらない限りは同一価格が望ましいのではないだろうか。飲食店のメニューでも、全国チェーンの看板の定番メニューはNBと同じである。POSデータには顧客の購入動機は反映されない。不満を持っていても、他にない商品だから仕方がないとか、他店より優れているので仕方がないとか、味が好みだから仕方がない、というケースもあると考えられる。顧客が商品を支持しているとはいえ、購入理由に「仕方がない」が付く要素はできるだけ小さくするか取り除くべきだと思う。その対応として、価格を変えるなら、商品名や内容を少しでも変えるべきだろう。外食メニューや弁当類などは対応しやすいと言える。もちろん、すべてが地域別価格ということではないが、全国同一価格と地域別価格の織り合わせ方の研究も今後の課題であろう。
③チェーン店のスケールメリットと顧客価値の関係はどう考えるのか。地域別価格を設ける理由を考える時、チェーン店のスケールメリットは顧客から見ればどのように映るかということである。地域ごとに見ていくと、単独店でもチェーン店に負けない品質と価格、サービスを提供している小売店や飲食店がある。仮に、100店舗のチェーン店が地域別価格を導入する場合、同一価格地域の店舗数が10店舗になったとする。地域で繁盛している単独店に対して10店舗というのはそれなりのスケールメリットが出せて有利だと考えられる。店舗数が増えることで本部の設備投資や管理コストなど間接経費が嵩んで、店舗数をもっと増やさなければスケールメリットが出せないのなら、単独店の集合体を作る方が顧客のためになると言える。例えば、行列ができるラーメン店と中華系ファミリーレストランを対比させると、業態が異なるので比べられないというのでなく、仮に強いラーメン店の横に強いギョウザ専門店、中華料理店を集めて、単独店の集積体としてファミリーレストランと同じメニューを提供できるようになれば、ファミリーレストランの存在価値はメニュー以外のところに求めなければならなくなる。顧客価値をどう提供するのかを考えた時、量の追求で得られるスケールメリットと顧客価値の関係をさらに研究する必要があるのではないだろうか。すなわち、地域別価格を導入してもその地域だけに限ったスケールメリットは十分に得られるのではないだろうかということである。それに、本部として得られるスケールメリットを加えれば、チェーン全体のスケールメリットはさらに得られることは間違いない。
地域別価格を導入する機会に、顧客価値を高める最適なチェーン規模のあり方も考える必要があるのではないだろうか。(東)