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WINS通信は小売業のマネジメントとIT活用のための情報室

小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第24回 地域別価格は個店主義への原点回帰

2009年11月05日 00時24分13秒 | 今日の気づき
【2009年11月5日(木)】このコラムは、本来なら11月5日の新聞を読んで書かなければならないのだが、4日の日本経済新聞の夕刊1面トップの記事を読むと、この記事で書きたいという気持ちが強くなり、実は4日の夜に、この原稿を書いた。5日の朝刊はどういう記事が掲載されるかわからないが、とりあえず、この原稿を5日のコラムとすることにした。

 4日の夕刊1面トップ記事は主見出しが《外食・小売り 脱「全国一律」》、サブ見出しは《対応きめ細かく》、《ロイヤルHD 地方で値下げ拡大》、《ファミリーマート 弁当も地域独自色》である。ロイヤルHDがロイヤルホストで12月から立地別メニューを取り入れること、地域別価格は今春から既に導入していることなどを伝えている。リンガーハットは野菜を100%国産に切り替えたことで10月から値上げしたが値上げ幅を西日本と東京23区で変えていると。CoCo壱番屋は既に2007年秋以降にポークカレーを都心店と郊外店で値上げ幅を変えているという。デニーズも9月から立地や顧客層に応じて店舗ごとに昼食メニューを変更している。日本マクドナルドは2007年6月に外食企業で初めて地域別価格を導入した。
 地域別価格は外食だけでなく、コンビニエンスストアでは、ファミリーマートが東北や九州などで地域ごとの嗜好に合わせた食材を使った独自の弁当類を販売し価格も変えているという。

 この記事を読んで、すぐに、思い付いたのが、次の3点である。この3点が、5日のコラムを繰り上げて書くことをせり立てた要因でもある。

 ①チェーン店も個店主義でないと店舗は強くなれない。

 ②顧客は同一商品の地域別価格に納得するのか。

 ③チェーン店のスケールメリットと顧客価値の関係はどう考えるのか。

 ①チェーン店も個店主義でないと店舗は強くなれない。全国一律価格の価格は本部が決めたものという認識が店舗にも顧客にもあると考えられる。企業の方針は店舗を通じて顧客に伝わるので、店舗の役割は大きいが、顧客にとっては、「あの企業の品揃えは良くない」とか「あの企業の商品は安い」という見方になるのではないだろうか。しかし、地域別価格というのは顧客にとっては「店舗独自価格」というイメージが強くなるように思う。すなわち、「あの店舗の品揃えは良くない」とか「あの店舗の商品は安い」ということになる。企業より店舗の印象を強くした顧客に対応する店舗はというと、本部の方針を守り抜くのは当然だが、店舗としての強さを備えていかなければならない。
 個々の店舗を強くするというのは個店主義の考え方である。チェーン店と言えども、単独店と同様の強さを持つには、マニュアルだけでは成し得ない。マニュアルを超えた店舗力が求められる。日本では小売業やサービス業の原点を「商人道」として語られることが多い。店舗運営の仕組みのことではない。チェーン化は店舗数と企業規模を短期日のうちに拡大させたが、市場が縮小し出すと、チェーンストア理論では陰に隠れてしまっていた 原点への回帰が始まろうとしているのではないだろうか。

 ②顧客は同一商品の地域別価格に納得するのか。地域別であろうとなかろうと、価格を変える時は商品も変える方が顧客への説得力と顧客の納得性は強くなる。ナショナルブランド(NB)でも街中の価格と山の上の価格が異なることがあるが、これは説得力も納得性もある。販売環境が大きく変わらない限りは同一価格が望ましいのではないだろうか。飲食店のメニューでも、全国チェーンの看板の定番メニューはNBと同じである。POSデータには顧客の購入動機は反映されない。不満を持っていても、他にない商品だから仕方がないとか、他店より優れているので仕方がないとか、味が好みだから仕方がない、というケースもあると考えられる。顧客が商品を支持しているとはいえ、購入理由に「仕方がない」が付く要素はできるだけ小さくするか取り除くべきだと思う。その対応として、価格を変えるなら、商品名や内容を少しでも変えるべきだろう。外食メニューや弁当類などは対応しやすいと言える。もちろん、すべてが地域別価格ということではないが、全国同一価格と地域別価格の織り合わせ方の研究も今後の課題であろう。

 ③チェーン店のスケールメリットと顧客価値の関係はどう考えるのか。地域別価格を設ける理由を考える時、チェーン店のスケールメリットは顧客から見ればどのように映るかということである。地域ごとに見ていくと、単独店でもチェーン店に負けない品質と価格、サービスを提供している小売店や飲食店がある。仮に、100店舗のチェーン店が地域別価格を導入する場合、同一価格地域の店舗数が10店舗になったとする。地域で繁盛している単独店に対して10店舗というのはそれなりのスケールメリットが出せて有利だと考えられる。店舗数が増えることで本部の設備投資や管理コストなど間接経費が嵩んで、店舗数をもっと増やさなければスケールメリットが出せないのなら、単独店の集合体を作る方が顧客のためになると言える。例えば、行列ができるラーメン店と中華系ファミリーレストランを対比させると、業態が異なるので比べられないというのでなく、仮に強いラーメン店の横に強いギョウザ専門店、中華料理店を集めて、単独店の集積体としてファミリーレストランと同じメニューを提供できるようになれば、ファミリーレストランの存在価値はメニュー以外のところに求めなければならなくなる。顧客価値をどう提供するのかを考えた時、量の追求で得られるスケールメリットと顧客価値の関係をさらに研究する必要があるのではないだろうか。すなわち、地域別価格を導入してもその地域だけに限ったスケールメリットは十分に得られるのではないだろうかということである。それに、本部として得られるスケールメリットを加えれば、チェーン全体のスケールメリットはさらに得られることは間違いない。
 地域別価格を導入する機会に、顧客価値を高める最適なチェーン規模のあり方も考える必要があるのではないだろうか。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第23回 地方産品の「魅力」を日常の食卓に

2009年11月04日 18時30分59秒 | 今日の気づき
【2009年11月4日(水)】11月4日の日本経済新聞の朝刊では社会面に目が留まる。30面に《物産館人気ランキング》、《北海道が圧倒的首位》、《2位は沖縄 JTB調査》の見出しの記事が掲載されている。大手旅行会社のJTBが9月1日~10日にインターネットを通じて行ったアンケート調査の結果を紹介したものである。JTBの、物産館が観光客を獲得するきっかけになっている、とのコメントも伝えている。

 同調査による上位10都道府県は次の通りである。

 ①北海道
 ②沖縄
 ③宮崎
 ④鹿児島
 ⑤京都
 ⑥宮城
 ⑦青森
 ⑧熊本、長野
 ⑨岩手、山形
 ⑩広島、新潟

 1位の北海道の人気度は群を抜いている。2位の沖縄は3位宮崎の3.1倍の得票だが、北海道は沖縄のさらに3.2倍の票を獲得している。宮崎は東国原英夫知事のPR効果もあって人気が上昇しているが、北海道はなんと、宮崎の9.9倍の票を得ている。農産物、海産物、畜産物はもとより、菓子、加工食品でも人気の商品が揃う北海道の人気は揺るぎないものがある。

 売上不振にあえぐ百貨店は、売上の落ち込みを人気の物産展の催事で補おうとしているが、百貨店でも北海道物産展の人気が高く、今年9月には東京・新宿で、伊勢丹、京王百貨店、小田急百貨店が会期を重なり合って北海道物産展を開催し業界の話題を集めた。首都圏に拡大すると、9月は16か所の百貨店で北海道物産展が実施されている。

 一方、JTBは毎年、1泊以上の日本人の旅行(ビジネス・帰省を含む)と訪日外国人について、旅行市場の見通し調査を行っているが、2009年の見通しは2009年1月に発表した。それによると、国内旅行人数(延べ人数)は、2007年実績推計が2億9,981万人、2008年推計が2億9,651万人、2009年見通しは2億9,325万人としている。経済環境悪化の影響を受けて、年々減少傾向にある。とはいえ、毎年、国内旅行に出かける延べ人数は3億人規模にのぼる。また、「食」は旅行の楽しみの大きな要素となっている。衣食住の視点では、「食」は衣、住に比べて地方色が強く、食習慣、料理法を含めて、その地方性を体験し味わえることが旅行における「食」の魅力となっている。旅行で得た経験や帰省先の懐かしい味を求める心が物産展人気の背景ともなっている。

 小売業にとっては、物産展は大きなビジネスチャンスとなる。スーパーでも地方の物産展や全国駅弁フェアなどを開催しており、チラシ特売の目玉の催しとなっている。しかし、通常の営業日の売場を見ていると、顧客の目を引くような人気の地方産品に出会うことは少ないように思う。主婦のように高頻度で店舗を訪れないので気が付かないだけかもしれない。いずれにしても、優良な地方産品は売場活性化と魅力ある品揃えでは大変有力な商材と言える。フェアなどの大きな企画でなく、アイテム数は少なくても、いつも地方の優良産品を訴求するワゴンを置くとか、店舗独自の「定番商品」と位置付けることも可能ではないだろうか。百貨店の物産展が好評だからミニ物産展を開催するということでは、一時の売上効果だけしか期待できない。

 物産館ランキングの記事を見て、物産館やアンテナショップのイメージ、旅行先での経験、百貨店の地方物産展フェアなどのイメージは自然に出てきたし、ランキングの結果を見ても、その通りと、別段、インパクトを感じることはなかったのだが、ふと、最寄り利用の食品スーパーの売場を思い描いた時、生活者の地方産品人気が大きく企画された物産展フェアまでは1つの「糸」でつながってくるのだが、そこから先の日常の食卓との間になると、一種の「断線」を感じる。その「断線」感が、記事に目が留まった理由かもしれない。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第22回 大手PBの拡大にも試練

2009年11月02日 22時32分57秒 | 今日の気づき
【2009年11月2日(月)】11月2日の日本経済新聞朝刊1面左下に《PB売上高5000億円目標》、《セブン&アイ 3年で2.5倍》、《先行のイオン追う》の見出しの記事が3段で掲載されている。セブン&アイ・ホールディングスは2012年2月期にプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」の売上高を2009年2月期の同売上高2,000億円の2.5倍に当たる5,000億円の規模に拡大するというものである。スーパーにおける加工食品の売上高に占める比率は現在の約10%から20%へ引き上げることになるという。PB売上高の推移は、2009年度2月期2,000億円、2010年2月期3,200億円、2011年2月期3,800億円、2012年2月期5,000億円と予想している。セブンプレミアムは2009年9月末現在で約800品目になっているが、2010年2月期には1,300品目、2011年2月期には1,600品目、2012年2月期には2,000品目程度になると見られる。ちなみに、2012年2月期目標の5,000億円のうち約9割が食品で残りは日用雑貨だという。

 この記事が示唆するところは大きいと言える。これはPBの進展より、本格的なPB時代の幕開けを意味し、今後のPBあるいはナショナルブランド(NB)がどうあるべきかの本格的な模索が始まったことを意味していると感じるからである。

 スーパーの加工食品におけるPBの売上比率が10%に届いたということは、生活者の消費ニーズをとらえて定着してきたことと言えるが、さらに、同20%にまで引き上げる可能性があるということは、今後の商品開発にもよるが、まだ生活者のPBへの潜在ニーズがあり、そのニーズへの対応、掘り起しができていないということである。また、20%の比率は節約指向、低価格指向への対応策としてPBを揃えているというより、PBがメインの品揃え商品の一角に広く定着し、この商品はNBでなくPBで十分という位置を得る商品が登場することを物語っている。既に一部では登場している。さらに、PB市場の拡大はグループ外への商品供給の可能性も選択肢の1つとして考えられる。PBの存在価値を問うことがNBの存在価値の見直しを促している。
 一方、NBメーカーにとっては、PBのシェアが拡大していくとNBを圧迫し、PBの生産受託は小売業の下請け工場的存在になっていく可能性をはらんでいる。大手NBメーカーにとっても、大手スーパーは重要な販売チャネルであり、消費市場が縮小し、大規模な生産設備を持っていることから、販売チャネルの確保、PB生産の受託の両面で、製販の相互協力関係は相互の利害が一致するところでもある。NBメーカーにとっても、PBとの棲み分けをどうするのか、創造的破壊が求められている。

 セブン&アイ・ホールディングスは2009年10月16日に顧客参加型の商品開発を目的としたコミュニティサイト「プレミアムライフ向上委員会」をグランドオープンした。サイトの内容は①みんなの商品レビュー:セブンプレミアムの商品についての意見箱、②ななばた会議:セブンプレミアムについて、みんなで話し合う「セブンプレミアム」+「井戸端会議」=「ななばた会議」の場、③一緒に作るプロジェクト:みんなの声を集めて一緒に作るセブンプレミアムの商品化プロジェクト――である。2009年7月7日にβ版をオープンし現在の会員登録は約1,000人だが、グランドオープンにより初年度は約10,000人の会員登録を目指していく。顧客目線のPB開発が進められていくことになる。

 どの分野、どの局面でも、マイナス要因は様々な次の発展への問題提起をしてくれる。現在直面している、生活者の所得減少、消費経済の低迷、少子高齢化、消費市場の縮小、消費市場の成熟等々は、新しい消費社会を創造する機会を待ったなしで与えている。きれいに見える青い水を満々と湛えている時の池は長年の間に溜まった底の汚れを気付かせない。雨が降ると少し濁るが、雨がやむと元の水の色に戻る。しかし、水が干して底が見えると、長年にわたって積み溜まった汚れや捨てられたごみが見えてくる。池の水を底からきれいにするには、底の汚れを冷静に見つめ、受け止め、その掃除から始めなければならない。掃除の順序を決め、手順を考えることも必要となる。マイナスの局面はそういう現実を如実に示してくれる。問題点が見えてくれば解決は早いと言えるが、現実はそうは容易くない。入口を見つけるのに戸惑っているのに出口が見えるはずはない。そういう見えない出口を見つける舵取りが産業分野だけでなく、所得が安定しない生活者にも求められている。PBの大きな船出における舵取りが注目される。 (東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第21回 各店舗が“核店舗”となるテナントミックス時代

2009年10月30日 12時09分48秒 | 今日の気づき
【2009年10月30日(金)】10月30日の日本経済新聞朝刊は15面トップに《FC店舗数、初の減少》の主見出しで、サブ見出し《昨年度2.1%減》、《今年度さらに減少も 消費不振響く》が目を引く。社団法人日本フランチャイズチェーン協会が、毎年1回、日本国内のフランチャイズ・ビジネスの市場規模を把握することを目的に行っている、同協会加盟社以外のFC本部も含めた調査の結果を紹介している。現在の消費市場の現状を反映しており興味深く読んだが、同協会の発表資料によると、小売業の動向で、高い伸びを示しているのは家電量販店、ドラッグストア、ホームセンター関係である。
 家電量販店は大手チェーンによる地方チェーンや個人経営店のフランチャイズ化や店舗の大型化が要因となって店舗数は前年度比12.4%増、売上高は同16.8%増となり、唯一、店舗数、売上高とも2年連続の2桁成長となった。ドラッグストアはフランチャイズ方式による業界再編が急となり、店舗数は前年度比20.6%増、売上高は同28.1%増となった。また、ホームセンター関係も売上高が同10.2%増だった。
 家電量販店の動向が注目されるが、同記事下のヤマダ電機の《三越池袋店跡に旗艦店を開業 ヤマダ、きょう》の1行の記事に目が留まる。さらに、ヤマダ電機の記事の左上に《H&M、来秋にも出店》、《伊勢丹吉祥寺店跡に》の記事。両記事は35面の〔東京・首都圏経済〕面にも関連記事を掲載している。H&M(ヘネス・アンド・モーリッツ)の記事は《H&M、吉祥寺・武蔵村山進出へ》、《多摩の新集客拠点に》、《百貨店撤退跡 地元の期待高く》の見出し。ヤマダ電機の見出しは《池袋三越跡店舗 製品体験売りに ヤマダ電機》である。
 両記事に関心を持った理由は2つある。1つ目は、両方とも百貨店の撤退跡に大型専門店業態が出店したこと。2つ目は、集客力のある大型専門店であっても単独での集客力には限界があり、他業態売場との相乗効果を必要としていることである。
 H&Mは世界の3大カジュアルブランドの1つで、東京の銀座、原宿、横浜にも店舗を持つ。吉祥寺への出店は、伊勢丹吉祥寺店は2010年3月に閉店するが、撤退作業後の2010年11月の見込みだという。また、記事は来店客が集中する1、2階に出店する見通しだとも伝えている。伊勢丹吉祥寺店は本館が地上8階・地下1階建て、新館が地上7階・地下1階建てで、両館の地下2階が駐車場となっている。大型専門店とはいえ、百貨店の売場面積をそのまま使う規模ではない。ビルを運営する武蔵野市開発公社が相乗効果を高めるテナントミックスをどう作り出すのか注目される。H&Mは単独でも大きな集客力を持つキーテナントになるが、テナントミックスいかんによって、さらに集客力を高めることになるからである。
 武蔵村山への進出は、イオンモールが開発した、三越とジャスコをキーテナントとする大型ショッピングセンター「むさし村山ミュー」の三越撤退跡への出店である。三越跡には既に衣料品のフラクサスや家電量販店のノジマが出店している。三越1店舗で形成していたキーテナント機能を大型3店舗が担うことになる。
 一方、ヤマダ電機も三越池袋店跡への出店である。店名を「LABI1 日本総本店 池袋」とし、“この店を見ずして、家電は語れない”と同社の“家電維新”を示す店舗だとしている。品揃えは約150万点の規模となる。フロア構成は以下の通りである。

B2:日用品・医薬品・加工食品・化粧品
B1:理美容・健康家電・照明器具・書籍
1F:テレビ・デジタルレコーダー
2F:携帯電話・デジタルカメラ・オーディオ
3F:パソコンソフト・パソコンサプライ・BTOパソコン  企業法人・官公庁専用窓口
4F:パソコン・プリンタ・パソコン周辺機器
5F:冷蔵庫・洗濯機・調理家電・季節家電
6F:ブランド品・CD/DVDソフト・おもちゃ  キッズアイランド
7F:レストランモール(9店舗)
屋上:フットサル専用コート「アディダスフットサルパーク」

 駐車場は専用駐車場、契約駐車場など周辺に4か所。サンシャインシティバスターミナルからは無料シャトルバスも運行している。

 ここで、注目したのはテナントミックスである。本来、テナントミックスは主な来店顧客層のニーズに対応してワンストップショッピング性を高めることが目的である。百貨店では地階などに食品売場を、最上階に催事場やレストラン街を設けることで、噴水効果やシャワー効果をねらっている。しかし、百貨店も専門店ゾーンに100円ショップが出店する時代となっており、従来の百貨店の顧客層とは異なる顧客を集めないと集客が難しくなっている。大型店が従来の顧客数を維持・確保し、さらに集客数を増やして商業集積間競争を勝ち抜くための戦略の変遷と言える。百貨店の顧客層もトップ富裕層は別にして、百貨店を利用する中間所得者階層は品質が向上している低価格指向の専門店にも関心を強めており、テナントミックスのあり様も時代を反映していかなければならないが、そういう意味でも、ヤマダ池袋店は注目したいのである。
 10月30日にオープンしたが、ヤマダ電機の調べでは午前10時の開店前に1万5,000人の顧客が列を作って並んだという。オープニングセールのパソコン・オーディオ・家電製品の買得品がメインの顧客と考えられる。食品の顧客が前日深夜から並ぶとは考えられない。通常営業日でも、従来の家電量販店のメイン商品分野と食品、飲食、フットサルは顧客の来店目的が必ずしも一致するとは限らない。立地環境を考えると、飲食も同様である。買物の前や後に食事ができれば顧客に利便性を提供することになるが、飲食店の競争が激しい地域だから、顧客も配達商品の購入が中心で手荷物が少ない場合は、買物後の食事場所の選択肢はヤマダ店舗外にも多く存在する。買物前ならなおさらである。
 家族客にも対応した食品も家電のついで買いを誘うケースがどれくらいあるかは未知数である。食品のついでに家電を買うというのも少ないのではないだろうか。店舗全体の集客数の拡大は間違いないが、家電、食品、飲食がワンストップショッピングされるというより、それぞれが強さを出し、「行き付けの店舗」の位置付けを確固たるものにして、食品の顧客に、「家電を買う時はここで」という意識を植え付ける効果は大きいと言える。「ついで買い効果」というより、次回の買物への「下見効果」の方が大きいと言えるのではないだろうか。日常消費財の食品と耐久消費財の家電では来店頻度が異なる。「下見効果」は家電の固定客化につながる。そういう意味での「ワンストップ」と言うなら、「1度の買物を1か所で済ます」ということではなく、「買物をする時には、いつも1か所でストップする」ということになるのではないだろうか。そのためには、店舗集積による総合力でなく、個々の店舗の実力の集積が「1+1=n」になるような総合力が求められる時代に入ったと言える。
 H&Mとヤマダ電機の出店記事を読んで、強力な核店舗の集客が他の店舗を牽引し顧客に利便性と満足性を提供し固定客化を進めていくだけではなく、それぞれの店舗がそれぞれの店舗なりに“核店舗”の位置付けで最大の集客と固定客化に注力する中で、その相乗効果で強い店舗を作ることが求められていることを感じる。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第20回 ネット通販が大きな潮流になる兆し

2009年10月29日 10時46分48秒 | 今日の気づき
【2009年10月29日(木)】10月29日付の日本経済新聞朝刊15面にオンワードの記事が掲載されている。主見出しは〈百貨店に次ぐ販路強化〉、サブ見出しは〈販売不振で 通販サイトや路面店〉。記事は、オンワードは売上の約7割を占める百貨店の販売不振が続いており通販サイトの開設や都心部への路面店の展開など新しい販売チャネルの開拓を始めたことを伝えている。路面店の展開よりも通信サイトの開設に目が留まる。婦人服の主要8ブランドを揃えたパソコンと携帯電話向けの本格的なインターネット通販サイトで、サイト名は「オンワード・クローゼット」。12月1日に立ち上げるという。
 ネット通販に興味を持つのは、今後の消費市場を展望する時、必ず、店舗販売の有力企業がネット通販に参入するのは間違いないと見ているからである。ネット通販への参入には、ネット利用人口やネット利用頻度の増加などが大前提になるが、具体的な参入のきっかけは企業ごとに異なる。したがって、個々の企業の参入時期は異なるが、リアル店舗販売と同じようにネット通販がわが国の消費社会に根付くことは間違いない。
 これからの少子高齢社会、人口減少社会を前提に考えると、今後の消費社会の方向性を決めていく要素は「市場の成熟」、「商品の品質向上」、「環境問題への対応」(エコ)の3点だと考えている。販売チャネル間の競争は「商品の品質向上」が大きく様変わりさせた。販売チャネルが商品の信用を保証するということもあったが、商品の品質が保証されていると、販売チャネルは商品を保証する絶対的な条件ではなくなってきた。有店舗販売対無店舗販売という競争の構図が崩れてきたし、有店舗販売の中でも異業態間競争が当たり前になっている。かつての特売は「価格」の訴求力で成り立っていたが、商品の質が伴わなければ特売をしても売れなくなってきている。生活者はブランド品の特売には強い興味を覚えるが、ただ安いだけの特売では行動を起こさなくなっている。正月の百貨店の福袋に人気があり、アウトレットモールが繁盛するのは、ただ値段が安いだけでなく、品質の良い物が安いからである。
 有店舗と無店舗の競争という構図ではなく、生活者に商品を届ける企業の販売チャネルが1本通っていて、その中はリアル店舗の販売方法やネット通販の方法など様々な販売方法があって、顧客はケース・バイ・ケースで、その時で最も利便性のある方法を選択できるという形が描ける。ネットスーパーは、普段は店舗に足を運ぶが、雨の日や重い物の買物、外出できない事情がある時などはネットスーパーを利用するなど、1人の顧客が販売チャネルを適宜、使い分けられる環境を提供している。普段利用しているスーパーだからスーパー自体を信用していること、購入商品がいつも買っているブランドの商品であったり信用できるメーカーの商品であることがネットスーパーの利用に安心感を与えている。
 オンワードのネット通販に興味を持つのは、長年の百貨店での実績の中で、既に高いブランド信用力、商品の品質信用力を有しているブランドをネット通販に乗せてきたからである。同じような動きが他の業種でも出てくることは必至である。ブランド力があることで成功が約束されているわけではないが、今後の消費成熟社会における販売チャネルの方向性を示す動きとして注目される。 (東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第19回 人は空気に学び空気で育つ 

2009年10月28日 23時44分07秒 | 今日の気づき
【2009年10月28日(水)】日本経済新聞朝刊の〔企業総合〕面左肩に《人こと》という本文にして30行足らずの囲み記事が毎日掲載されている。記者が企業の経営者に様々な場面で聞いた話を、1つのポイントを切り口に紹介しているようである。時代の「今」をタイムリーに見抜いたコメントが多い。
 10月28日は、しまむらの野中正人社長が登場している。収益性の高い衣料品スーパーマーケットチェーンの業態を確立した企業として有名である。以前に何度か取材させてもらったこともある。新聞や雑誌に「しまむら」の見出しを発見すると、つい目が留まってしまう。今日も同じである。見出しは〈激安より値ごろ感を追求〉とある。野中社長の「安さだけでは売れない」というコメントとともに、昨年頃から主婦らに交じって女子中高生の来店が急増している要因の1つとして、ここ数年は商品調達担当者を年に何度も欧米視察に出し最新の流行デザインの把握に努めたことを紹介している。この、年に何度も欧米視察に出し、の箇所で学生時代の思い出が一気に出てきた。
 学生時代に新聞の全国紙の整理部で毎日見出しを付けている記者の話を聞く機会があった。その記者は休みになると、必ず、原宿や六本木に出かけるという。流行の先端をいく場所の空気を吸いに行くだけで、何かを見つけようとか、何かを積極的に得ようというのではなく、何も考えずに歩いているだけで良いと。原宿や六本木の空気に触れることで、見出しのセンスを磨いているのだとも。といって、具体的に何がどう影響したのかなどの因果関係はわからない。リアルの現場を経験することの大切さを覚えたことを思い出す。
 リアルの現場は直接仕事にかかわることでなくても、五感、ないしは、よく言われる第六感から吸収したものが無意識のうちに脳裏に吸収されるということがある。「企業風土」という言葉が使われたりするが、人が企業風土を作るとともに、企業風土が人を作る。かつて、食品スーパーマーケットチェーンの経営者が、海外研修など、社員教育に費用をかけて人材を育てるのは、決算書に表れない会社の資産を作る投資だと、よく話していた。海外視察で、五感、第六感から吸収するものは多いと言える。
 もちろん、企業では具体的な効果を描いて海外出張の計画を組み上げているが、見出しの、目に見える価格を強調した「激安」に対して、「値ごろ感」という言葉は、尺度は厳密に目に見える形で表せないが、きちんとした形で顧客を納得させる価値を提供することによって、表現が可能になるのであろう。 (東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第18回 ポイントカードの集客効果のウラにリスクあり

2009年10月27日 20時22分47秒 | 今日の気づき
【2009年10月27日(火)】10月27日の日本経済新聞は朝刊1面トップでポイントカードの大連合を報じ、同12面にも大きく関連記事を載せている。活況を示さない消費市場における顧客獲得施策の今後の展開が注目される。
 1面の記事は、主見出しは白抜き文字で〈ポイント共通化 国内最大〉。サブ見出しは〈ローソン・三菱商事など〉、〈来年3月新カード 5年後5000万人目標〉となっている。コンビニエンスストア大手のローソンと三菱商事、昭和シェル石油、音響・映像ソフトレンタルのゲオが買物で付与するポイントサービスで提携し、2010年3月から大手外食チェーンを加えて共通ポイントを発行、新カード『Ponta(ポンタ) 』も発行する。会員はカードを何枚も持たなくても1枚に集約できるので利便性が高まる。家族で貯めたポイントを1人に集約できる仕組みも検討しているという。新ポイントカード連合は1業種1企業に絞り込んで参加企業を集め、5年後に会員5,000万人の国内最大のポイントカード連合を目指すとしている。現在、食品スーパー、ドラッグストア、百貨店、外食チェーン、自動車メーカー、旅行会社、金融機関などと交渉中だという。同種のポイントカードでは、音響・映像ソフトレンタル最大手のTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが発行する『Tポイント』が先行し、提携企業56社・会員数3,300万人の規模となっている。今後、顧客囲い込みの強化、ポイント割引競争の激化 、価格引下げ圧力の強まりが進んでいくだろうとしている。
 また、12面の関連記事は、〈ポイント事業、陣取り激化〉を主見出しに、〈ローソン・三菱商事など連合〉、〈地域商店街も巻き込む〉のサブ見出し。買物客に利便性と割安感を訴求するポイントサービスは集客には欠かせなくなってきており、大型店が地域の商店街にサービスを広げる形態など、ポイントカードの提携先確保は地域の商店街をも巻き込んで陣取り合戦が激しくなってくるだろうと、報じている。
 電子化の進展は、電子マネー、ポイントカードなど、決済を含めて顧客サービスの分野で、既存の仕組みや枠組みに新しい風を吹き込んでいる。

 今回のポイントカード大連合に関連して、ポイントカードを軸に消費市場の競争の構図を考えてみる。まず、10%ポイントの家電量販店は単価の高い商品の購入が多いことが相乗効果となって、早くポイントが貯まりポイントはポイント取得店で繰り返し使われることが多くなる。顧客情報も蓄積できるので販促と固定客化で大きな効果をもたらす。
 しかし、一般的に大多数のポイントカードは1%還元である。1,000円の買物ができるポイントを集めるためには10万円の買物をしなければならない。単価の低い日常品を買う場合は同じ店舗で10万円の買物をするには1か月以上を要することは珍しくない。様々な物販店、サービス店で販促イベントが行われ、アウトレット店やディスカウント店が賑わっている。買物に使う10万円の一部を他店での有利な買物に回すことが増えれば、同じ店舗を繰り返し利用して貯めるポイントの魅力は薄らいでいく。10万円の買物で得た1,000円の買物サービスをポイント取得店以外でも使いたいという要望も出てくると思われる。さらには、1店舗でポイントを長い時間をかけて集めるより、日常の買物で利用している多くの店舗から広く集めて、使いたい時に使いたい店舗でポイントの買物サービスを利用する方が便利である。
 すなわち、1%還元のポイントカードは、ポイント取得店への再来店効果よりも集客効果が最も大きいと言える。ポイントも広く集められて、使える選択肢も多くなる方が顧客の利便性が高まる。固定客化は再来店効果への期待ではなく、来店した顧客に次も来店したいと思わせる店舗の魅力作りにかかっている。ポイント付与に要したコストを自店でのポイント利用で回収しようという固定客化は1%還元のポイントカードでは難しいと考えられる。
 一方、ポイントカードの連合体は『Tポイント』も『Tonta』も提携先を1業種1企業に絞り込んでいる。そうしないと、ポイントカードの差異化と提携企業のメリットは出せない。1業種1企業に絞り込むということは大手企業の連合体にしないとスケールメリットが出せない。同一業種における大手企業同士の競争が激しくなる。中堅・中小企業は大手企業間競争との同質化競争を避けつつ、同規模企業間競争でしのぎを削ることになる。また、ポイントサービスを推進する大手企業にとっても、ポイントカードはポイント付与率競争の消耗戦に陥る危険性がある。集客効果のウラにはリスクがある。集客効果を、リスクを上回る収益効果につなげていかなければならない。消費市場の成熟社会を迎えて、厳しい企業の生き残り作戦が展開されようとしている。今後の展開が注目される。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第17回 HC・ドラッグストアの食品展開に思う

2009年10月26日 17時02分29秒 | 今日の気づき
【2009年10月26日(月)】消費不振はいろいろな問題点を炙り出してくれる。所得が減り、かつ所得が安定しないということは、生活者にとっては大変厳しい現実だが、炙り出された問題点が改善されて消費生活が豊かになることは望ましいことである。そういう方向に進んでいくことは間違いない。生活者に支持されないと、特に生活者に直接かかわりを持つ川上・川中・川下の企業の存続は危ぶまれるからである。言い換えれば生活者の支持を得られない「生活関連企業」は生き残れないということであり、しかも、生活者は豊な消費社会への様々な局面を経験して「見る目」を養ってきたので、生活者に納得させるべく説得力のある対応をしないと生き残れないということである。
 10月26日付の日本経済新聞 9面の《経営の視点》に〈規模の追求、幻想にすぎず〉、〈低価格商品、智恵でつくる〉の見出し。旧態依然の低価格商品の開発手法に1つの疑問符を投げかけている。大手スーパーの、規模による仕入でコストを引き下げ低価格を実現する、という考え方はスーパー台頭期から変わっておらず、川上への対応を考えていかなければ、低価格化の結果として得られる利益を確保できなくなってしまう、と。大手スーパー各社の2009年3月~8月期の営業赤字は低価格化攻勢に生活者が価値を見出さず生活者の求める商品を提供し切れなかったことも一因だったのではないかとも言える、と解説している。そして、規模の追求が利益をもたらすというのは幻想に過ぎない、規模がないと低価格品ができないというのは言い訳だ、センスと智恵でいい商品はできる、といった、消費財と小売業に詳しい専門家や小売業経営者のコメントを紹介している。結論として、「身近な店舗にいい商品があること。これが強い会社をつくる第一歩だ。」と結んでいる。
 これだけ厳しい経済環境下、消費環境下では、企業が利益を出すのは並大抵のことでは実現できない。もともと、企業の利益は、企業活動を構成するすべての部門が関係し合って生み出されるものである。仕入では規模を拡大するだけでなく新しい仕入先の開拓も必要になる。商品開発、物流、販促、販売、人材の育成・活用・配置、情報の活用、意思決定の速さ等々、様々な要素で改善・改革が求められる。 
 また、同記事では、大手ホームセンターがメーカーと共同開発し448円(750ml)で販売する南米チリ産ワインの成功を紹介している。
 記事の内容とは離れるが、ホームセンターの食品販売で日頃感じていることがある。発端は10年以上も前になるかもしれない。その辺りは非常に曖昧だが、正月の何日目かに、正月料理に飽き、冷たい炭酸飲料を飲みたくなった。幸い冷蔵庫にストックがあったので、その思いはすぐに叶えられたが、正月明けに入ってきたドラッグストアの新聞折込チラシを見て、「驚愕」という言葉が相応しいほど驚いたことがある。炭酸飲料が1アイテムだけ、食品スーパーのチラシ価格に負けない破格の値段で特売にかかっていた。まだドラッグストアが取り扱う食品数が今のように多くない時である。チラシ紙面の中でも周りの商品との対比で違和感すら覚えるほどである。多分、冷蔵庫に炭酸飲料のストックがなかったら近くにチラシの店舗があるので、すぐに買いに行ったと思う。その時は、銘柄、種類は問わずに炭酸飲料であれば何でも良いというように、選択の許容範囲は極めて広かった。チラシに載った1アイテムの炭酸飲料が与えたインパクトを忘れることができない。もし、同じ商品がスーパーのチラシに載っていれば、ほかの買物がない限りはスーパーまで行こうとは思わなかったであろうし、ドラッグストアのチラシを見なかったら、通常価格でもコンビニエンスストアに走ったことと思う。品揃えは、顧客個人のニーズよりは顧客共通のニーズが優先される。品揃えのアイテム数や特売対象商品のアイテム数、特売商品の組み合わせによるメニュー提案など、スーパーとドラッグストアやホームセンターとでは同じ次元で特売を論じることはできないが、ドラッグストアやホームセンターの特売がスーパーに与える影響も少なからずあるのではないだろうかと考えている。
 そこで、2009年10月中旬を中心とするチラシを見ることにした。見たチラシは、ホームセンター2社、ドラッグストア3社、総合スーパー3社、食品スーパー3社の合計11社である。チラシ特売の期間、特売対象アイテム、特売対象の同類商品の種類・商品数など、すべてを同じ条件で比べられないので、あくまでも参考だが、一部商品において、「ホームセンター・ドラッグストア」対「総合スーパー・食品スーパー」で同類または同アイテムの特売価格比較を試みた。
 ビール系発泡酒と新ジャンル。ホームセンターA社は発泡酒のキリン・淡麗と淡麗グリーンラベル350mlを1ケース・24缶で2,880円(6缶当たり720円)。ドラッグストアE社は新ジャンルのアサヒ・ クリアアサヒ350mlを6缶で639円。一方、総合スーパーG社は新ジャンルのサントリー・金麦350mlを6缶で628円。総合スーパーH社も同じく金麦350ml6缶を637円。食品スーパーJ社も同金麦350ml6缶を628円としている。ビール系は新商品が次々と市場に投入され、ビール、発泡酒、新ジャンルの違いは商品名からだけではわかりづらく、価格を見て初めてわかるということもあるが、特売価格などが混じってくると、特に発泡酒と新ジャンルの区別がつかなくなる。味も良くなっており、生活者のブランドロイヤルティは弱くなっている。ビールには固定ファンが多いが、発泡酒や新ジャンルにブランドスイッチをした生活者はブランドへの固執がなくなり、価格やテレビCM、キャンペーンなどの影響を受けやすくなっている。ホームセンターやドラッグストアのビール系商品の特売はスーパーへの影響力を増している。
 次は、緑茶飲料のサントリー・伊右衛門2ℓの価格を比較した。ホームセンターB社148円。ドラッグストアC社168円。ドラッグストアD社147円。対して、総合スーパーF社158円。食品スーパーK社158円(他の対象商品を含めて、よりどり2個300円)である。緑茶に限らず、ブレンド茶、ミネラルウォーター、炭酸飲料などのノンアルコール系飲料もホームセンターやドラッグストアではよく品揃えされている。この商品群での異業態競合も激しくなっている。
 米も両業態群でよく特売の対象となるが、ドラッグストアや食品スーパーは5㎏袋が対象の中心になっている。米は同じ銘柄でも産地が多く、同じ産地でも農協によってパッケージの商品名表示に違いがある。例えば「秋田県産あきたこまち」、「秋田産あきたこまち」などの違いがある。さらには味を良くするためのブレンドが行われたりする。ここでは商品名は産地と銘柄だけとしたので、ここに挙げた商品はひとつとして同一のものはない。ただし、すべて平成21年産の新米である。ホームセンターA社の新米100%(チラシでは産地の表記はない)は10㎏3,080円。ドラッグストアD社の茨城県産こしひかりは5㎏1,680円。総合スーパーF社の秋田県産あきたこまちは10㎏3,480円。総合スーパーG社のPB秋田県産あきたこまちは5㎏1袋1,780円・5㎏2袋3,480円。食品スーパーI社の福島県産こしひかりは5㎏1,880円で同食品スーパーでは日替わり限定(1日限り)で茨城県産こしひかり5㎏を1,580円で特売。食品スーパーK社は秋田県産あきたこまち5㎏が1,980円だった。
 さらに、マーガリンの雪印ネオソフト320gがドラッグストアE社が189円、総合スーパーH社が248円という比較もできた。
 ここに挙げたのは、ある特定期間のチラシ広告に掲載された商品の比較であり、他の期間の特売では価格が違っていることもある。「チラシ特売」施策の比較ではない。しかし、単品ベースで見る限りは、ホームセンター、ドラッグストアの特売対象商品の訴求度は総合スーパー、食品スーパーと変わらない。単品購買であれば、最寄型のドラッグストアに顧客の足が向くだろうし、特売対象食品アイテムがホームセンターやドラッグストアの購買を促進することは間違いない。同類商品の競合だけでなく、特売対象商品に限定しても、異業態間で激しい競合が繰り広げられていることがわかる。
 先述の大手ホームセンターの「448円ワイン」の成功事例は、低価格商品の開発ということだけではなく、様々な視点を与えている。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第16回 コンビニにFCビジネスのほころびを見る

2009年10月23日 22時24分09秒 | 今日の気づき
【2009年10月23日(金)】このところ、時代の変化、その変化の基軸が変化していることをうかがわせる記事が多い。そういう視点から、「今」起っていることを新聞記事を1つのセンサーとして見ていくと、時代の大きな転換点に来ていることを感じる。10月23日付の日本経済新聞朝刊11面の左肩に連載《先読みビジネス天気》の4回目が掲載されている。〔コンビニ〕業界を取り上げている。見出しは《低価格対応に遅れ試練》。消費不振の影響を受けて、生活者の節約指向、低価格指向のスピードが予想外に速く、対応が追い付いていないこと、たばこ自動販売機用成人識別カード「タスポ」効果が一巡したことなどが要因に挙げられている。タスポ効果については「特需」と考えるべきで、特需の好影響があった売上に対する前年比を評価するのは少し酷なように感じる。むしろ、特需を生かしきれなかったこと、生かし切れないほど厳しい状況にあることが、コンビニエンスストアの置かれた状況の厳しさを物語っていると言える。また、低価格対応の遅れも、同じくコンビニエンスストアの置かれた状況の厳しさを物語っている。すなわち、不振の原因となった事象の底流にあるものは同じ要素を持っているということである。
 その要素とは、一言で言うなら、これまでの成長を支えてきた従来の「フランチャイズチェーン」というビジネスモデルが時代に適合しなくなってきているということではないだろうか。
 フランチャイズチェーンは、チェーン本部(フランチャイザー) が、店舗規模、営業形態、品揃え、価格、サービス、経営指導などをも含めて、標準化された店舗経営パッケージを加盟店(フランチャイザー)に提供し、加盟店は決められたルールに従って、店舗経営をするというビジネスモデルである。市場の状況が厳しいとはいえ、ある特定の店舗だけが別の運営形態をとることは、原則論ではフランチャイズチェーンのビジネスモデルに反することである。フランチャイズビジネスの根幹にかかわる問題である。セブン-イレブンが消費期限直前の弁当値下げを加盟店に認めたことは時代の大きな変化を象徴する出来事であった。
 社団法人日本フランチャイズチェーン協会はホームページの中で、フランチャイズビジネスのメリットとデメリットを説明している。メリットとしては、知名度のあるチェーン名やマーク・イメージを利用できる、事業経験がなくても本部の指導で事業を開始できる、本部の蓄積された実績と経験・ノウハウが生かされるので成功の確率が高い、本部の経営指導や援助が受けられ営業に専念できる、独立した事業者として営業できる、本部の大量仕入により安価で安定した商品の供給が受けられる、開業物件の立地調査を本部に依頼できる、スケールを生かした販売促進活動に参加できる、等々を挙げている。
 一方、デメリットについては同説明の記述を引用する。「(1)フランチャイザーの提供するフランチャイズパッケージのルールにより、チェーンの統一性が優先され、フランチャイジーは個人のアイデアを自由に生かすことが制限される。店舗のイメージ、取り扱い商品やサービス、メニューなどすべて本部の経営方針に従わなくてはならない。たとえば、勝手に指定以外の商品を販売したり、金額が安いという理由だけで、指定外の備品を使用することなどにも制約がある。また、営業時間・休日なども厳守しなくてはならない。(2)営業権の譲渡や、秘密保持義務などがある。また、契約期間途中での事業終了には一定の条件がある。」とある。いわば、事業経験がなくても独立した店舗オーナーとして事業者になれるが、独立した事業者としての自由度は低い。逆に、事業経験が豊富で経営ノウハウを積んでいる人や自分のアイデアや考え方を経営に大いに反映させていきたいという人には向いていない。
 しかし、当初は、このビジネスにかかわるすべての人にメリットがあったと言える。フランチャイザーは急速にチェーン網を拡大でき収益を上げ事業基盤を強くできる、フランチャイザーは事業経験がなくても店舗オーナーになれ高い収入が得られる、生活者は便利な店ができてありがたく思い消費環境が良くなる、商品メーカーは販売チャネルが拡大し業績がアップする、商品の取引や什器・設備関係の企業、店舗の建築業者、不動産業者も潤う、ことになる。
 これは競合もなく、新業態の市場が店舗を出せば出すほど拡大している時の話である。それでも、直営方式のレギュラーチェーンと加盟店方式のフランチャイズチェーンでは事情が異なるとはいえ、自社競合してでも他社より早く好立地を確保して出店した方が事業として有利に働く時期があった。自社競合しながらも売上が伸びたからである。ところが、競合が激しく、市場が縮小基調にあり、前年対比横ばいが「良好」と言われ、前年割れば「当然」のような状況下では、自社競合で負ける店舗を自ら作るわけにはいかない。時代は大きく変化しているのである。
 東海道新幹線が開通した時、その動力方式は「動力分散方式」を採用していることが話題になった。動力分散方式とは、各編成車両に動力装置を付けて、各車両の総合力で高速走行を実現しようとするものである。各編成車両に動力装置を付けるので車両の製造コストが高くなり、重量が重くなりメンテナンスの手間とコストもかかる。貨物列車であれば動力装置の重量を考慮しなければならないので最大積載重量が減るなどのデメリットがあると言われている。
 これに対峙する方式が「動力集中方式」である。動力装置のない軽量の車両を強力な動力装置を備えた機関車が引っ張る方式である。貨物列車によくある形態である。日本はもともと、曲線、勾配が多く、地盤が弱いなどの理由で、重量が非常に大きくなる機関車を走らせるのは軌道に大きな負担がかかり、軌道を強固にする工事が必要になるため、動力集中方式には向いていないと、動力分散方式が研究され、採用されてきた。両者のデメリットは技術革新が進み、改良が進んで縮小されつつあるが、ともあれ、フランチャイズチェーンのビジネスモデルは、列車の動力集中方式に似ている。技術的なノウハウを蓄積し磨き抜かれた能力を持つ機関車である本部が、店舗である編成各車両の負担をできるだけ軽くし仮説検証を繰り返して見通しが良くなった軌道(市場)を力強く走っているようなものである。ところが、軌道が変化の兆しをあらわにし始めた。それでも走り続けている軌道を外すわけにはいかず、一部の車両に突風が吹いて軌道上を走るのが難しくなるような状況が出てきたりする。それが常態化してきているのである。ビジネスモデルを再構築しなければ脱線の危険性がある。
 そういう意味では、本部の強力な指導によるチェーンオペレーションの展開、加盟店の資本の独立など、フランチャイズチェーンとの共通点はあるが、加盟店(または卸と加盟店)が本部組織を結成していること、本部は加盟店によって結成されたものだから本部の持続的な利益の還元が受けられること、加盟店同士の横のつながりがあることなどの特徴を持つ、動力分散方式に似ているボランタリーチェーンが、さらに注目される時代に来ているのかもしれない。しかし、ボランタリーチェーンであっても革新を続けていかなければ時代の変化に取り残されてしまうことになる。ボランタリーチェーンの詳細については、次の機会に譲るとして、コンビニエンスストアとしては、成功したビジネスモデルの優等生だったフランチャイズビジネスの従来の事業手法が成立しないほどの厳しい地殻変動的な変化の時代を迎えていることは間違いない。地殻変動だから、フランチャイズビジネスの手法自体が時代の変化に適合しなくなってきているのであって、業種業態ごとに差はあるが、他の業種業態でも同様の状況が生まれてくるものと予想される。
 小売業の優等生業態としてトップランナー的存在であったコンビニエンスストアの今後を様々と考える時、鉄道の優等生としてトップランナーだった新幹線とどこか参考になるところがあるように思えてならない。(東)

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第15回 川中・川下連携で生活者指向の強化を望む

2009年10月22日 06時14分42秒 | 今日の気づき
【2009年10月22日(木)】10月22日はやはり同日付の日本経済新聞朝刊1面のトップ記事である。《伊藤忠、ユニーに出資》を主見出しに、サブ見出しは《実質筆頭株主に》、《中国に出店、共同事業》、《農作物 栽培・調達でも提携》。13面トップにも関連記事として、《伊藤忠、ユニーに出資》《スーパー、商社と提携加速》の主見出しに、《海外ネットワークに期待》、《商社 消費関連 強化狙う》のサブ見出しが目に留まる。記事によれば、これで商社と大手小売の提携の枠組みがほぼ固まったと、伊藤忠商事・ユニー、三菱商事・イオン、丸紅・ダイエー、三井物産・セブン&アイ・ホールディングスの提携関係を図で説明している。そして、大手商社と大手小売の提携は、海外進出による新たな消費市場の開拓と国内の低価格指向に対応した海外からの商品調達網の拡充を図りたい大手小売と、消費関連ビジネスを強化したい商社が、お互いにメリットを得られると判断したことによるものとしている。伊藤忠とユニーの提携では、ユニーは2011年以降に中国で10~20店舗の出店を計画しているが、この店舗展開において、伊藤忠が出資する中国の食品最大手の頂新グループが持つ調達・物流網の活用も視野に入れている。「食」の安全に対応した契約栽培事業にも共同で取り組んでいくという。
 新聞の大手小売の記事に商社の名前が出るのが珍しくなくなってきた。小売業のM&Aなどでは銀行の名前より商社の名前が目立つこともある。1960年代に当時の東大助教授の林 周二氏が流通革命論を出版し、その問屋無用論以降、卸売業は危機感を持ち続けてきた。その後、商社も大手小売との関係を強化してきたが、その背景には大手小売が業容を拡大していく中で、大手商社といえども 、中間流通企業として、かなり強い危機感を持っていたと言われている。しかし、時代とともに両者の関係は強まり、厳しい経済環境下での事業展開と商品開発・商品調達は両者の関係をより強固にしつつある。
 改めて見出しを見てみる。伊藤忠とユニー、スーパーと商社、(農作物)栽培・調達、(商社)消費関連強化等々の文字が並ぶ。両社の利害が一致したことによる提携には違いはないが、大手小売と大手商社の文字が並ぶと、生活者に対して、何かの価値を提供してくれるだろうと期待感が沸く。連日、新聞等で報道されているように、生活者を取り巻く経済環境の厳しさが、そういう目で見出しを見てしまうのかもしれないが、川中・川下連携が、さらに生活者指向へのシフトを強めていくことを望みたい。(東)