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小売業・IT活用・消費市場の今をウォッチング/WINS企画/東 秀夫wins.azuma@sunny.ocn.ne.jp

【日替コラム】今日の気づき/新聞を読んで   第6回 小売業の異業態間競合は「常態」である

2009年10月08日 22時44分39秒 | 今日の気づき
【2009年10月8日(木)】小売業、サービス業の8月期中間決算の発表が続いている。業績予想の下方修正、赤字決算が目立つ。業績不振の理由として必ず登場してくるのが競合店との競争の厳しさである。10月8日付の日本経済新聞朝刊12面に吉野家ホールディングスの3月~8月期の中間決算の発表記事が掲載されている。主見出しには「吉野家HD 最終赤字3億9100万円」、サブ見出しに「3~8月期 牛丼・ステーキ店低迷」とある。業績不振の主な理由として、「主力の牛丼店がコンビニエンスストアなどとの競争激化で苦戦し…」、「消費者の節約志向が強まり、値引き攻勢をかけているスーパーなど「内食・中食」企業との競争が激しくなった」と、主力業態の低迷を挙げている。牛丼店同士の競争は言うまでもなく、同一商品市場における他業態との競争の厳しさを浮き彫らせている。前回で取り上げたイオンとニトリの記事でも、イオンは競争相手を同業態はもちろんのこと、むしろ、ニトリなどの他業態を意識していることをうかがわせている。
 とはいえ、小売業の競争相手はいつも他業態であったと言える。消費市場が拡大している時は、異業態間の競合は同業態間の競合の前に存在感が隠れてしまっていた。市場が拡大基調にあるので、他業態に奪われた売上は同業態同士で競合しつつ市場を拡大させることで、その影響力を打ち消してきた。まさに「売上がすべてを癒す」という状態であった。
 特に、小売業態としては新興勢力であったスーパー業界は、チャレンジャーらしく、いつも既存業態と競い合ってきたし、事業を脅かす勢力とは、新興勢力ともつばぜり合いを演じてきた。総合スーパー化は百貨店と競合する局面を持つ。専門店事業にも取り組んできた。ファミリーレストランなど外食産業の台頭は家庭内への食材販売に影響すると、自ら外食産業に進出した。中食、外食との競合ではミールソリューションのコンセプトで惣菜売場の拡充を図っている。
 かつて、携帯電話が若者の間に普及し出し電車内での携帯電話の使い方のマナーが悪いと、携帯電話を片手に大きな声で話す若者に社会の非難が集中していた時、コンビニエンスストアは「コンビニの競争相手はケータイ」だとして対策を練っていた。コンビニエンスストアに向いていた若者の支出がケータイに奪われており、それをいかに取り戻すかが課題となっていたのである。
 そのコンビニエンスストアについて、同じ8日付の日本経済新聞朝刊10面に主見出し「加盟店支援 ファミマが140億円」の記事。サブ見出しは「今期、過去最高 販促へ上積み」である。「2010年2月期に、フランチャイズチェーン(FC)加盟店への支援に過去最高の約140億円を投じる。各店の値引きなど販売促進、多店舗展開や弁当類の廃棄コストに充ててもらう」と、その理由を説明している。弁当類の廃棄コストに代表されるように、中食アイテムにおけるコンビニエンスストアの競争相手は弁当を扱う全業態、さらには先に挙げた牛丼店のようなファーストフード店、弁当・寿司・ピザなどの宅配業態など多岐にわたる。中食の宅配ではファミリーレストランも参入している。地元のレストランも昼食時に店頭で弁当を販売する。ビジネス街などでは、弁当や昼食メニューをその場で調理して販売する車が昼食時にだけ出現する。営業時間では24時間営業のスーパーなどとも競合する。
 消費市場が縮小し、競合が激しくなるのにしたがって、ずっと続いていた異業態間競合の実態が鮮明に浮かび上がってきた。新業態の登場もあり、内容、厳しさに違いはあるが、異業態間競合は小売業の宿命的とも言える「常態」なのだろう。(東)

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