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――パナソニックを中心とした電機業界の記事集.

薄型テレビ事業、収益力回復が急務 再生かける11年度

2011-05-28 | 世界市場



 薄型テレビ市場が厳しさを増している。

 家電の花形商品で、かつては利益の稼ぎ頭でもあったテレビ事業だが、軒並み苦戦している。一方で商品単価は毎年3割程度下がる。

 今年は、日系メーカーの業績を支えてきた地デジ特需もなくなり、メーカー同士の生き残りをかけた戦いが加速する。


厳しい状況

 家電AVメーカー各社の決算発表が出そろった。日系各社の業績はリーマンショック以降順調な回復を見せ、東日本大震災の影響はあるものの、概ね改善傾向を示している。

 しかし、薄型テレビに限っては、市場の大手メーカーがことごとく厳しい状況になっている。

 パナソニックは、薄型テレビの10年度グローバル販売実績は、PDPテレビが前年比10%増の752万台、液晶テレビが41%増の1272万台で、トータルは同28%増の2023万台。

 数量ベースでは3割近い増加と好調に推移したが、単価下落や円高の影響で売上げ金額は同1%減の9979億円にとどまり、収益面で前期に引き続き赤字となった。

 大坪文雄社長は「薄型テレビは、激しいグローバル競争の中、収益力の回復が急務。11年度はテレビ事業の再生を賭けて挑戦する」と述べている。

 ソニーも、コスト削減を図るほか、台数も2240万台を販売しながら11年3月期は750億円の赤字。12年3月期についても2700万台の販売を目指すが、赤字は残る見込み。

 「次世代ディスプレイなどにならない限り現在の形ではテレビでは大きな利益は見込めない」(加藤優EVP CFO)。


●シャープ、東芝健闘

 市場シェアの高いメーカーが軒並み苦戦するなか、健闘したのがシャープと東芝。

  シャープは、国内市場が大幅な伸びを示すなか国内トップシェアを掘る強みを生かし、11年3月期の液晶テレビ販売台数は前年度比145.5%となる1482万台、売上高も同120.5%の8035億円と躍進。

 テレビを含むAV・通信機器の営業利益は同2.6倍となる407億円となった。「国内は6割増、海外も中国を中心に2桁増となった」(片山幹雄社長)。

 東芝は、徹底した水平分業モデルの追求とPC事業との連携調達などによりコスト低減が進み、国内と新興国の好調により黒字を維持。

 特に新興国向けで専用モデルの投入を進めるなど強化。テレビ事業は07年下期から黒字を続けており、デジタル時代のテレビビジネスモデルをほほ確立したといえる。

 国内比率を高めている日立コンシューマエレクトロニクスもエコポイント効果や、コスト低減の効果などから黒字化を実現。

 09年度に久しぶりにテレビ事業黒字化を達成した三菱電機も個別事業の開示は行っていないが同じく国内好調により黒字を続けた見込み。


勝ち組不在

 ただ、これらの黒字達成したメーカーはいずれも赤字となった各社に比べると国内比率が高いことも業績好調の要因となっている。

 昨年は欧米テレビ市場が停滞し、特に米国市場は夏から秋にかけて販売台数が前年を割り込むなど低迷が続く。

 必然的に価格競争なども激化。これらの市場への依存度が高いメーカーは厳しい状況になっている。

 一方、今年はアナログ放送終了やエコポイント特需などで好調な日本市場も今年8月以降は停滞が予測される。

 11年は1300万-1500万台と10年に比べ4―5割減となるほか12年は1千万台を割る見込みで、国内への依存度が高いメーカーにとっても来期以降は好調を持続できるかは不透明な状況。

 薄型テレビ市場は利益を教授すべき上位メーカーが利益を確保できないという異様な状況となっている。

 勝ち組不在のなか、商品価格が下落一辺倒の状況により、まさに生き残りをかけた血で血を洗う争いになってきている。

 それぞれが勝ち残っていくためには切り口を変えた新たな価値提案が必要。




【記事引用】 「電波新聞/2011年5月27日(金)/1面」