いつか書きたいと思っていたのだけれど、長くなるので避けていたスープレックスの深遠なる世界を、この際覗いてみたいと思う。ちょっと長くなりますがご容赦の程を。
スープレックスとは果たして何ぞや? この問いかけからして難しい。僕は長らく単純に「反り投げ」のことだと思っていた。ところが、スープレックスの生みの親とも言えるカール・ゴッチはそれではダメだと言うのだ。確か前田日明が凱旋帰国したときに、雑誌の談話で読んだのを記憶している。
「後方へ反り投げしてブリッジして固める技をスープレックスと言う」
これがゴッチが言う定義なのだ。
だから、スープレックスと呼べるのはジャーマンだけで、それ以外の反り投げの技は、「サルト」と呼びなさい、とのこと。
そんなことを言われても困るのだ。もう「スープレックス」という技の名称は一人歩きしている。ゴッチに言わせれば、ダブルアームスープレックスやフロントスープレックスはスープレックスではないのだ。じゃなんと呼べばいいんですかゴッチさん(汗)。今更、リバースアーム・サルトとかウンターグルフとか呼べないよぉ。ややこしいじゃないですか。
なので、ゴッチの言うことが正当なのかもしれないけれども僕はこれからもダブルアームスープレックスとか言い続けることにする。勘弁してもらう。慣れてるんだもん。
さて、そのジャーマンスープレックス(ゴッチの言う正統スープレックス)の元祖はもちろんカール・ゴッチであり、説明も不要な有名技。相手のバックをとって後ろに反り投げ固めるという技。相手に強いダメージを与えてそのままフォールを奪うという実に画期的な技の誕生だった。日本ではあまりの強烈さに「原爆固め」と言われるようになったのも周知の事実。
ゴッチの伝説として有名なものに、あのアンドレ・ザ・ジャイアント(モンスター・ロシモフ時代)を投げきったというものがある。後のアンドレよりも重くなかった時代ではあろうが凄いことは凄い。残念ながら写真でしか見たことがないのだけれど。
僕はゴッチ全盛期はもちろん知っている世代ではないので、むろんジャーマンの使い手として認識しているのはアントニオ猪木である。当時は、ジャーマンは高等テクニックであり、世界で使えるのはゴッチとヒロ・マツダ、そして猪木だけだと言われていた(実際はサンダー杉山なども使っていたが)。その猪木のジャーマンだが、当時は実に美しい人間橋を描いていた。
残念なことが一つあって、猪木のジャーマンとして最も有名なものに、ストロング小林に放ったジャーマンがある。プロレス史上に残る名場面と言われている。投げきった後自らの両足が浮いた衝撃は凄い迫力で、名場面と言われることに僕も異論はないのだけれど、あのジャーマンは猪木のなかでは完璧ではなかったと思うのだ。バックを取る位置が低すぎて、小林は頭から落ちずに背中から落ちている。あれでは普通は決まらない。それまでのダメージが大きくて小林は返せなかったものの、本来の猪木のジャーマンはあんなものではない。
その後猪木はジャーマンを使わなくなり(腰がダメになったか)、ジャーマンはその頃から幾多の選手が使用するようになっていく。やはり美しかったのは初代タイガーマスクで、こんなに身体が反るのかと思えるほどで、まるで「太鼓橋」であった。いろいろ名手はその後現れて、地味だがヒロ斉藤などは綺麗だった。あんなに腹が出ているのにどうしてこんなブリッジが出来るのだろうと不思議だった(ヒロ斉藤の場合は太鼓腹橋)。
しかし使い手が増えるにつれ神秘性が失われるのもまた自明の理で、「投げっぱなしジャーマン」なども現れ、どんどん痛め技として堕落していった。現在「決まれば必殺」のジャーマンは、高山くらいのものではないだろうか。まあ「デッド・エンド」もあるか。しかし本田も技の名前は統一してくれよ。ややこしい。
ゴッチが言う「スープレックス」の範疇になんとか入るのではないかと思われるのは、まずドラゴンスープレックスである。もちろん藤波の必殺技で、一時はあまりに危険なため封印していた。相手をフルネルソンに固めてそのまま後方反り投げし固める技で、確かに腕の自由が利かないため受身が取れない。
しかしこれはあくまで私見だけれども、あの体勢では相手の両肩がマットに完全に着きにくいのではないか。野暮な話ではあるけれど。ダメージを与えるのには実に合理的なのだが。
前田が猪木に対して放ったのを見たときは驚いたが、その後ドラゴンスープレックスも多くの継承者が現れ、普通の技になってしまっている。
「タイガースープレックス」も強烈だった。両手をチキンウィングに極めてそのまま投げるわけで、相手は全く受身が取れない。反り投げ固めの最も強烈なものだと言っていい。もちろんタイガーマスクの専売特許で、タイガーが三沢、金本と継承される毎に技も使い継がれていった。
面倒なことに「オースイスープレックス」というものもあり、これは回転エビ固めみたいな技でありスープレックスではないのだが、決まった形はタイガースープレックスと同じ。スープレックスと呼ぶなよ。マイティ井上が使ったのを見たことがある。
このジャーマン系統のスープレックスはバリエーションをまだ生んで、三沢タイガーは、タイガースープレックス'85とかも使っている。ハーフネルソンかスリーパーみたいな姿勢で投げる。ご存知ですね。また女子プロレスでは無茶な技も多数生まれている。胴を腕ごとロックして投げたり、両腕を前でクロスしてリストをロックして投げたりしている。死んじゃうぞ。
スープレックスの王道は確かにジャーマンスープレックスだが、他にもさまざまなスープレックスがある。ちょっと話が長くなりすぎて触れることが出来なかったので、次回に続く、ということにしたい。
小技さんのブログにスープレックス掲載あります。イラスト参照してみてください。ジャーマンとドラゴンはこちら♪ タイガーは、小技さんの素晴らしいHP小技のプロレス画集に掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
スープレックスとは果たして何ぞや? この問いかけからして難しい。僕は長らく単純に「反り投げ」のことだと思っていた。ところが、スープレックスの生みの親とも言えるカール・ゴッチはそれではダメだと言うのだ。確か前田日明が凱旋帰国したときに、雑誌の談話で読んだのを記憶している。
「後方へ反り投げしてブリッジして固める技をスープレックスと言う」
これがゴッチが言う定義なのだ。
だから、スープレックスと呼べるのはジャーマンだけで、それ以外の反り投げの技は、「サルト」と呼びなさい、とのこと。
そんなことを言われても困るのだ。もう「スープレックス」という技の名称は一人歩きしている。ゴッチに言わせれば、ダブルアームスープレックスやフロントスープレックスはスープレックスではないのだ。じゃなんと呼べばいいんですかゴッチさん(汗)。今更、リバースアーム・サルトとかウンターグルフとか呼べないよぉ。ややこしいじゃないですか。
なので、ゴッチの言うことが正当なのかもしれないけれども僕はこれからもダブルアームスープレックスとか言い続けることにする。勘弁してもらう。慣れてるんだもん。
さて、そのジャーマンスープレックス(ゴッチの言う正統スープレックス)の元祖はもちろんカール・ゴッチであり、説明も不要な有名技。相手のバックをとって後ろに反り投げ固めるという技。相手に強いダメージを与えてそのままフォールを奪うという実に画期的な技の誕生だった。日本ではあまりの強烈さに「原爆固め」と言われるようになったのも周知の事実。
ゴッチの伝説として有名なものに、あのアンドレ・ザ・ジャイアント(モンスター・ロシモフ時代)を投げきったというものがある。後のアンドレよりも重くなかった時代ではあろうが凄いことは凄い。残念ながら写真でしか見たことがないのだけれど。
僕はゴッチ全盛期はもちろん知っている世代ではないので、むろんジャーマンの使い手として認識しているのはアントニオ猪木である。当時は、ジャーマンは高等テクニックであり、世界で使えるのはゴッチとヒロ・マツダ、そして猪木だけだと言われていた(実際はサンダー杉山なども使っていたが)。その猪木のジャーマンだが、当時は実に美しい人間橋を描いていた。
残念なことが一つあって、猪木のジャーマンとして最も有名なものに、ストロング小林に放ったジャーマンがある。プロレス史上に残る名場面と言われている。投げきった後自らの両足が浮いた衝撃は凄い迫力で、名場面と言われることに僕も異論はないのだけれど、あのジャーマンは猪木のなかでは完璧ではなかったと思うのだ。バックを取る位置が低すぎて、小林は頭から落ちずに背中から落ちている。あれでは普通は決まらない。それまでのダメージが大きくて小林は返せなかったものの、本来の猪木のジャーマンはあんなものではない。
その後猪木はジャーマンを使わなくなり(腰がダメになったか)、ジャーマンはその頃から幾多の選手が使用するようになっていく。やはり美しかったのは初代タイガーマスクで、こんなに身体が反るのかと思えるほどで、まるで「太鼓橋」であった。いろいろ名手はその後現れて、地味だがヒロ斉藤などは綺麗だった。あんなに腹が出ているのにどうしてこんなブリッジが出来るのだろうと不思議だった(ヒロ斉藤の場合は太鼓腹橋)。
しかし使い手が増えるにつれ神秘性が失われるのもまた自明の理で、「投げっぱなしジャーマン」なども現れ、どんどん痛め技として堕落していった。現在「決まれば必殺」のジャーマンは、高山くらいのものではないだろうか。まあ「デッド・エンド」もあるか。しかし本田も技の名前は統一してくれよ。ややこしい。
ゴッチが言う「スープレックス」の範疇になんとか入るのではないかと思われるのは、まずドラゴンスープレックスである。もちろん藤波の必殺技で、一時はあまりに危険なため封印していた。相手をフルネルソンに固めてそのまま後方反り投げし固める技で、確かに腕の自由が利かないため受身が取れない。
しかしこれはあくまで私見だけれども、あの体勢では相手の両肩がマットに完全に着きにくいのではないか。野暮な話ではあるけれど。ダメージを与えるのには実に合理的なのだが。
前田が猪木に対して放ったのを見たときは驚いたが、その後ドラゴンスープレックスも多くの継承者が現れ、普通の技になってしまっている。
「タイガースープレックス」も強烈だった。両手をチキンウィングに極めてそのまま投げるわけで、相手は全く受身が取れない。反り投げ固めの最も強烈なものだと言っていい。もちろんタイガーマスクの専売特許で、タイガーが三沢、金本と継承される毎に技も使い継がれていった。
面倒なことに「オースイスープレックス」というものもあり、これは回転エビ固めみたいな技でありスープレックスではないのだが、決まった形はタイガースープレックスと同じ。スープレックスと呼ぶなよ。マイティ井上が使ったのを見たことがある。
このジャーマン系統のスープレックスはバリエーションをまだ生んで、三沢タイガーは、タイガースープレックス'85とかも使っている。ハーフネルソンかスリーパーみたいな姿勢で投げる。ご存知ですね。また女子プロレスでは無茶な技も多数生まれている。胴を腕ごとロックして投げたり、両腕を前でクロスしてリストをロックして投げたりしている。死んじゃうぞ。
スープレックスの王道は確かにジャーマンスープレックスだが、他にもさまざまなスープレックスがある。ちょっと話が長くなりすぎて触れることが出来なかったので、次回に続く、ということにしたい。
小技さんのブログにスープレックス掲載あります。イラスト参照してみてください。ジャーマンとドラゴンはこちら♪ タイガーは、小技さんの素晴らしいHP小技のプロレス画集に掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
たしかに最近は「投げっぱなし」が多いですね。スープレックスは、背中が柔軟で、ブリッジうまくないと使えないみたいですね。
私もしっかり「ホールド」したほうがいいと思います。
女子プロだと、豊田真奈美選手のジャパニーズオーシャンスープレックスが美しいと思います。
女子プロで主として使われるスープレックスには言及しなかったのですが、見ていてあまりにも危険な技が多すぎますねぇ。^^; ジャガー横田のだるま式スープレックスからどんどんエスカレートして、ジャパニーズオーシャンスープレックスともなるとよく事故にならないなぁと…。怖い怖い(汗)。
体重の違いがあるとは思いますが、とにかく危ない。しかし女子は身体も柔らかく、ブリッジは実に綺麗に決まりますねー。