分県登山ガイド「山梨県の山」で日向山の頁を見た時、コースタイム3時間5分とお手軽な山なのに、なんだこの高山のような花崗岩の白ザレは!と、気になっていた。
暫く気持ちが山から遠ざかっている間に、この日向山の存在などすっかり忘れていたのだが、ここに登った人の山ブログをたまたま見掛けたとき(おぉ!そういえば、あったな日向山!)と思い出した。
迷う事なく今回の山行は日向山に決める。
渋滞を避け、車の少ない夜のうちに前乗り。
自宅を21:30に出発し、最寄りの道の駅白州に到着したのは0:10だった。
コンビニで買ったビールとつまみで晩酌。
少し肌寒かったので時々車のエンジンをかけながら暖房を入れていたのだが、トイレに行こうと車を降りた時、すぐ後ろに一張のテントがあった事に気が付いた。
エンジン掛けっぱなしで申し訳ないことしたなぁ…と思ったが、改めて考えてみれば、道の駅の駐車場にテントを張る方が悪い。
(こういう事するから山ヤとかキャンパーとか嫌われんだよ…)
そう思ったら自分の嫌悪感も払拭された。
翌朝は5:40に起床。
後ろにあったテントは撤収されていたので、既にどこかの山に向かったのだろう。
とりあえず顔を合わせなかった事に安堵する。
(道の駅白州より望む甲斐駒ケ岳)
本日の矢立石登山口も駐車スペースが少なく、早朝から満車になるとの情報だったので慌ただしく朝食のパンをかじり、6:20道の駅白州を出発。
すぐ脇の道からグイグイと林道で標高を稼いで行く。
20台ほどが停められる矢立石登山口駐車場に到着すると、既に多くの登山客が身支度を整え出発するところだった。
駐車スペースは残り僅かひとつでギリギリ間に合った。
その後も次から次へと登って来る車で、狭い林道は立ち往生。
満車で引き返す車とそれを知らずに登って来る車で身動きが取れなくなっていた。
そんな渋滞を尻目に私ものんびりしていられず、慌ただしく出発。
今回は分県別登山ガイド山梨県の山に従い周回コースを取るため、すぐ脇にあるハイキングコース入り口は見送り、そのまま真っ直ぐ林道を進む。
林道脇には沢山のヤマツツジが咲いていた。
今回のコースタイムは極めて短いため、花を探したり、岩肌を眺めたり、隠れミッキーを探したりして、努めてゆっくり歩く。
(林道途中より見える甲斐駒ケ岳)
立ち止まってばかりいるので、後から来る登山客が大勢私を追い越して行く。
更にこんな早い時間から下山して来る中高年夫婦がいたりして、セオリーであるシャトレーゼ白州工場もまだ開いてないのではないかと大変心配である。
(林道崩落個所)
(錦滝手前の水場)
崩落により林道が荒れ始めた頃、東屋のある錦滝に到着。
追い越して行った登山客も皆ここでは休憩を入れ、滝の写真など撮っていた。
私は気付かずに過ぎてしまったが、水の落ちる岩肌にはユキワリソウが咲いていたとの情報を後のネットで知る。残念…
ひと息入れた後、これより急な登りに取り付く。
下山には不向きとあったガイドの通り、結構急な登りである。
汗が吹き出さないよう、何度も立ち止まっては息を整えて登る。
途中トラバース気味にクサリが掛けられた箇所があるが大した事はない。
しかし、これを回り込んだ所にドーンと無機質な鉄階段。
もう少し、ボルダリングコースになっているとか、せめてクサリ一本で攀じ登るとか素敵なアトラクションになっていれば充実したかもしれない。
鉄階段を登り切ると、後はもう新緑祭り!
とにかくもうこの時期、新緑からの木漏れ日が活字で表現出来ないくらいに美しい。
立ち止まっては何度も見上げてしまう。
ほどなく鞍掛山との分岐。
左へ行けば甲斐駒を眼前に望める鞍掛山のピークがあるとの情報だったが、今回はパスして直接日向山を目指す。
そして…
おぉ、来た来た白砂のザレ!
滑る足元を踏ん張りながら、ザクザク登って行く。
ようやく主稜線に乗り、振り返れば鳳凰三山と富士山が見えていた。
更に登り、ピークに石碑らしきものが見えたので向かってみる。
途中、こんな砂礫の場所にも力強く根を張る植物があった。
花崗岩の奇岩がニョキニョキ姿を現し、目を楽しませてくれる。
登り詰めた場所には分かりやすい大明神?の石碑。
後にネットで調べたところ「大明神」の上には「子安」の文字があったそうだが、欠け落ちてしまったとの事。
安産の神様だった。
そんな事とはつゆ知らず、静かに手を合わせていた私。
丈夫な赤ちゃんが生まれたらどうしようかと今もドキドキする毎日である。
西に見る甲斐駒ケ岳。
やっぱり残雪のある山は美しい。
南に鳳凰三山と富士山。
大明神の祀られたピークを一旦降り、雁ガ腹と呼ばれる白砂の主稜を行く。
と、ここで先ほどから同じペースで登っていた山ガールの二人組が、単独のおじさんに捕まって(話しかけられて)いた。
おじさんの大声で聞こえたが、鞍掛山へはどの位かかるのかといった事を聞いているようだった。
私も捕まったら面倒だと思い、背中を小さく丸めて通り過ぎ…ようとしたら。
「おい、お兄さん!」
(げっ…)
「鞍掛山は行ったことある?」
「いや、ここは初めてなんで行ったことないです。でもネットで見たら往復2時間程度で行けるみたいですよ」
「おぉそうか、じゃあ行ってみようかな!」
(行け行け!)
その後は再び山ガールの若いねぇちゃん達を逃すまいと必死で話すおじさん。
完全放置された間が持たない私は、黙って再び白砂を登って行く。
ズルズルと後退する足元を見つめながらずっと下を向いて歩いていたのだが、ふと顔を上げるとそこには場違いな光景が…
場違いというか…
少し考える時間を下さいと言うか…
そこにはウェディングドレスを着たカップルが立っていたのである。
女性カメラマンが同行していたので、挙式前の撮影と思われる。
山が縁になったカップルだろうか?
思わず私も「写真撮らせてもらっていい?」と声を掛けて撮らせてもらったのがこれ。
「ネットに上げる時にはちゃんとモザイク掛けとくから!」と声を掛けたが「いや全然大丈夫ですよ、どんどん上げちゃって下さい!」との快諾を頂いた。
新婦は素晴らしく綺麗で、私の胸には何故か井上陽水の「人生が二度あれば」が流れていた。
更に日向沢の縁を巻くように進み
日向山山頂到着。
(バックの甲斐駒が素晴らしい構図)
右下に見えるカップルも仲睦まじい。
依然、私の胸には井上陽水の「人生が二度あれば」が流れていた。
振り返って北には八ヶ岳連峰がズラーッと見えていた。
(一番左が最北の蓼科山)
それにしても標高1660mにしてこの花崗岩の景観とは、素晴らしくお得な感じだ。
時刻はまだ9:10だが、八ヶ岳を眺めながら昼食のおにぎりを食べる。
山頂にもだんだん人が集まり始め、賑やかくなって来たので下山に向かう。
降る前にもう一度甲斐駒を見納め。
中央やや右のピークが鞍掛山のようだ。
次回はあのピークに立って、迫る甲斐駒を拝んでみたい。
降りは東へ、自然林の中へと入って行く。
カエデの木が殆どだったので、紅葉の時期にはまた素晴らしい風景が広がるだろう。
ひっそりと三角点。
錦滝からの登りに反して、こちらは緩やかに降るとても気持ちの良いコース。
登山口近くには、ボルダーが取り付きそうな岩が沢山転がっていた。
炭窯の跡か?
時間を掛けて努めてのんびり歩いて来たが、約4時間の周回で矢立石登山口に到着。
駐車スペースに停められなかった車が登山口付近にまで溢れていた。
出発する時には気付かなかったが、40分降れば尾白川駐車場の標識があった。
ここからのアプローチの短さを考えれば、プラス2時間で下に停めても良いだろう。
尾白川渓谷という見所もあるみたいだし。
下山後は温泉。
朝、道の駅を出発した時、異論を唱えさせない「尾白川温泉→」の大きな看板があったので、温泉は既にここに決めていた。
看板に導かれて進むと温泉はベルガという複合施設の中にあり、誘導係の指示に従って入って行く。
キャンプ場やレストランがあり、水場のある公園では大勢の子供達がウヒャウヒャ楽しそうに遊んでいた。
温泉は820円。広々として清潔感ある館内。
時間が早かったため入浴客も少なく、ゆったり浸かることが出来た。
温泉を出たあと再び道の駅白州に立ち寄り、渾々と湧き出る甲斐駒ケ岳からの湧き水をペットボトルに詰めて持ち帰る。
今日は山仲間で親友だったチェブラーシカ氏の5回目の命日。
生きていれば恐らく今日も一緒に登り、下山後にはサントリー白州蒸留所の工場見学に行って呑んだくれていたであろう。
帰り道、彼の墓に立ち寄り線香をあげた後、甲斐駒の湧き水をたっぷりと掛けてやった。
さぁ、今日は近所の居酒屋にも充分間に合いそうだ。
呑みながら今日の日向山を反芻しよう。
(立ち寄り湯) 尾白川温泉¥820 ★★★★☆ ボディーソープ、リンスインシャンプー
(同行者) 無し
(参考コースタイム)
7:00 矢立石登山口
7:10 林道ゲート
7:50 錦滝
8:30 鞍掛山分岐
8:50 子安大明神ピーク
9:05 日向山山頂(昼食)9:35
10:55 矢立石登山口
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ウエディングドレスを着て登ったんならすごいけど、山頂で全裸になって着替えたんだとしてもすごいですね。
実はこのブログを読む前、10月11日に日向山に行く計画を立てていたんですが、思った以上にいい山ですね。
でも読んでよかったです。ゆっくり行くと車止められないですね。尾白川駐車場は広大なので確かにそちらに止めて登ってもいいかも。
夏はどっか行ったんですか?
参考にならないけど(笑)、山行報告楽しみにしてます。
ちょうど計画を立てられていたんですね。
日向山は紅葉が良さそうですよ、山頂付近もカエデばっかりだったし。
そうそう、健脚なかたこりさんなら絶対尾白川駐車場からがお勧めです。
新婦の彼女はドレスを担ぎ上げて、山頂で着替えたとおっしゃってました。
次回私も行く機会があれば、白砂のビーチの上でブーメランパンツに着替えたいと思います(ウソ)
夏は色々と忙しくて何処にも行けず。
涼しくなった10月に入ってようやくというか強引に笠ヶ岳に登って来ました。
今週乗り切ればなんとかひと段落しますので、またご報告します。
@横浜出張中