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おつかれ山っ!/(^o^)\

山行報告&コラム

知床半島自転車ツーリングの旅No9「旅を終えて」

2004年08月18日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

19:30品川駅を走り出した新幹線の車窓には、大きなビルやギラギラ光るネオンが交互に流れていた。
通勤ラッシュも終わり、割と空いている車内で缶ビールを飲みながらナッツを頬張り
(あぁ、また現実に引き戻されたな…)
と、感傷にフケっている私…

17年前、会社の先輩から「いいよぉ~、北海道は!」と、言う言葉を聞かされた時、具体的に何がどう良いのか分からず、とにかく自然が素晴らしく、とにかく広い!…らしい、という事しか掴み取れなかったが、その風景を実際、自転車を漕ぎながらこの目で見て来た今、答えはやっぱりとにかく自然が素晴らしく、とにかく広かった!なのである。
なぁ~んだ、そんな感想しかないのか!と、思ってはいけない!
この自然が素晴らしいのが重要なのである。

この日本においてこれだけ自然が残っているのは貴重な事で、広い北海道の中から私が知床半島を選んだのは間違いではなかった!と、思わせるほどのエゾシカの出没率。
生態系に影響を及ぼさない程度に今後も大いに活躍してほしいもんである。
幸い出くわさなかったが、ヒグマの棲息数もかなりのものらしく、こちらも観光客からエサなど貰わず、プライドを持って遡上するサケを捕まえて活躍して欲しいところだ。
海鳥にも交通事故には充分気をつけて頑張ってもらいたい。

植生にしても、本州のものより比較的大きめのものが多く、原始地球を想像させ、標高1000mそこそこにして、ダケカンバの林やハイマツ帯が広がり、高山植物も見事だった。

とにかく広い!という事に関しても、牧場や耕地が多く、その規模も半端じゃないので地平線に向かって走って行くようだった。
大きな建造物も無いので空も広く、とにかく広い!
言葉にすると単純なセリフだが、体感すると全然違うのである。

人に関してどうかと言えば、さすがライダーの聖地北海道らしく、バイクツーリングの連中が多く見られ、自転車の私にも親愛的に親指を立てていった。
自転車ツーリングの連中もそこそこ見られ、やはり彼等も仲間意識で親指を立てて擦れ違った。
車もとても親切で、気を使って反対車線に大きくはみ出しては追い越して行った。
なんか皆、優しい感じである。

長い間、夢に描いて来た北海道。
こうして今この旅を振り返ってみても、とても充実した良い旅だったように思う。
ビール二缶を飲み干し、酔いがまわるにつれて、目に焼き付けて来た色んな風景が流れて行った。
そして、車窓に映った自分に…
(次は何処行こうか?)
などと問いかけてみるのである。


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知床半島自転車ツーリングの旅No8「あるじゃないか!サケをくわえたクマ!」

2004年08月18日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

AM7:00起床。
昨夜は寝苦しくてなかなか寝付けず、明るくなり始めたAM4:00頃ようやく眠りについた。
少し寝不足ではあるが、大浴場にて強制的に朝風呂で目を覚ます。
バイキングの朝食を腹一杯食べてチェックアウト。
ロビーに土産物を売る売店があったので少し覗いてみる。

店内にはメガネをかけた初老のおじいちゃんが座り、木彫りの置物を彫っていた。
そう言えば、北海道に来たら是非自分の為に買って帰ろうと思っていた物がある事を思い出した。
サケをくわえた木彫りのクマである!
これを買って帰らなければ、この旅の意味さえ無くなってしまう重要なファクターである!(ファクターってなんだ…?)

作品棚に陳列された商品を探してみると、
フクロウやリスがいるばかりでサケをくわえたクマが見当たらない。
おじいちゃんに
「定番のサケをくわえたクマが欲しいんだけど…」
と、言ってみると、面倒臭そうに老眼鏡を外し
「いやぁ~、今はねぇ、なかなか出ないからやってないんだよ」
そう言って、一番人気だというフクロウの置物を勧められた。
しかし、私の中ではサケをくわえたクマでなければ全く意味が無く、たとえフクロウがサケをくわえていても駄目なものは駄目なのである。
時代遅れだからこそ逆に新鮮なのだ!と、私がいくら力説しても、売れていないものは売れないのだ!と、言いたげな表情で、あくまでもフクロウを勧めるおじいちゃん。
注文しても今すぐに彫れるものでもなさそうなので、残念だがここはおじいちゃんの顔を立てて一番小さいフクロウを買って帰る事にした。
「まだ大きいのもあるけどねぇ~」
と、人の頭ほどあるやつを勧められたが、そんなにでかいフクロウを背負って自転車で走る元気は無い(笑)

AM9:45北海ホテルを出発。
女満別空港まで21kmのラストランだ!

39号線を北上して行くと右手に網走湖が見えて来た。
天気も良く、ちぎれ雲が流れるのを眺めながら気持ち良く走って行く。

道が除々に登り始めると、辺りは一面みどりの丘になり、左手に道の駅「メルヘンの丘めまんべつ」が見えて来た。
少し立ち寄ってみたが、わずかに地場産品が売られているだけでどこにもメルヘンが見つからない…
多くの謎を秘めたメルヘンの丘めまんべつである。

ここより道は降り坂になり、女満別駅前に到着。
JR女満別の駅前であるから、立ち並んでいる飲食店の中から「う~ん、お昼は何食べよう…」なんてチョイスが出来るのかと思っていたが、駅前と言った賑やかさは何処にも無く、全くやる気が感じられなかった。
仕方がないので、唯一あったコンビニで弁当を買い、網走湖畔に降りる。
湖畔には広々とした芝生があってキャンプ場になっていたが、誰もいなくてやはりここも全くやる気がない。
木陰で弁当を食べ、昼寝をして過ごす。
木陰から見上げる青い空に、雲がゆっくり流れていい感じである。
女満別空港まであとほんの僅かな距離となったが出発時間までにはまだまだ時間があり、何だか考えてみればこの旅で一番のんびり過ごしている。
毎日毎日スケジュールを予定通りこなし、慌ただしくペダルを漕いで来た。
几帳面なA型ゆえ仕方がない事だが、こういった時間も大切にしたいとあらためて思う。

1時間ほどの昼寝で昨夜の寝不足を取り戻し、再び走り出す。
女満別空港が近づいて来ると、轟音を上げながら飛行機が飛び立って行った。
(あぁ…、もうあの飛行機に乗って私も北海道から去ってしまうんだな…)
そう思うと何だか切なくなって来た。

13:20女満別空港到着。
自転車のタイヤを外し、輪行袋にしまい込む。
トラブルがあって飛行機に乗り遅れるような事があってはいけないと早めに来たが、16:00の出発には少し早過ぎたようだ。
暇なので、空港内の土産物売り場を見てまわる。
木彫りの置物のコーナーが棚にあって、諦め切れずに覗いてみれば…

あるじゃないか!サケをくわえたクマ!

北海ホテルのおじいちゃんは、今は売れないから作っていない!と言ったが、小さいのから大きいのまでしっかりあるじゃないか!
しかも、色んなバージョンがあって、よりどりみどりじゃないか、こらっ!
私は迷わず一番スタンダードで小さい奴を購入。
これで、このクマの置物を見るたびに楽しかった知床半島の旅を思いだせる事だろう。
良かった、良かった!

空港内の喫煙所に入り、時間を持て余しながら窓の外を見ると、正面に大きく裾を広げた斜里岳が見えていた。
(登りたかったなぁ…)
残念そうに眺めている私に気付いたのか、掃除に来ていたおばちゃんが
「斜里岳ですよ!私も高校生の時に遠足で登らされたけど、体力がなくて途中までしか行けなかったわ…」
と、教えてくれた。
ってか、おばちゃん!そんな橋田壽賀子のドラマみたいにさりげなく背後から話し掛けられたら
「では、次回来た時には、御一緒して頂けますか?」
などと言って、恋に発展してしまいそうだったじゃないか、おばちゃん!
旅人の心の隙間を狙う、油断ならない女満別空港清掃のおばちゃんである。

搭乗手続きもスムースに終わり金属探知器をくぐるが、羽田を出発する時よりも羽田に向かう方が検査が厳重で、警備員の数も多かった。
ニューヨークの9.11事件以来、テロに対する厳戒体制が敷かれ、空港全体にピリピリしたムードが漂っていた。

乗り込んだ飛行機は、遂に北海道の地を離れ、旋回しながらグングン高度を上げて行く。
広大な緑の大地に散らばった牛たちが、ミニチュアのようにどんどん小さくなって行った。
そんな風景を見下ろしながら、私は17年前に先輩から言われた「いいよぉ~、北海道は!」と言う言葉を思い出していた。


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知床半島自転車ツーリングの旅No7「旅の終わりのカウントダウン」

2004年08月17日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

AM6:00起床。
旅に出てから五日目になるというのに、今朝も身体中が痛くてなかなか起き上がれなかった。
いい加減、私の身体にも旅に順応して欲しいと思う。

今日は知床半島を離れ、網走までの道のりをオホーツク海沿いに85km延々と走る予定である。
撤収を終え、キャンプ場の受付に挨拶に行くと、スタッフの女性が「昨日の羅臼岳はどうでしたか?今日はどちらまで行かれるんですか?」と、聞く。
私は今までの旅の行程をざっと説明し、明日女満別空港から静岡に帰る予定だと言うと。
「えっ!私も静岡出身ですよぉ~」
と、また静岡県人である。
彼女もまた、観光で北海道を訪れた際、この自然の素晴らしさに魅了されてしまい、ここで働く事に決めたのだそうだ。
「気をつけて!」と、彼女に見送られてAM8:30しれとこ自然村を出発した。

ウトロの繁華街に唯一あるコンビニ、セイコーマートに立ち寄ると、大勢のサイクリストが朝食を取っていた。
殆どが学生風で若い人ばかりである。

海岸沿いに進み、トンネルを抜けると沢山の車が停まる駐車場があった。
とりあえず私も立ち寄ってみると、オシンコシンの滝があった。
上部のオシンとコシンの滝がひとつになって裾を広げる爽やかな滝であり、大勢の観光客が滝をバックに記念写真を撮っていた。
旅の途中、ほんのわずかな涼である。

静かなオホーツク海沿いの道をのんびりと進み、平坦な道はほんと気持ちいいいなぁ~、とつくづく。
穏やかで気持ちの良いツーリングだ。

斜里町が近づくと交通量が増え、左手に百名山のひとつ、斜里岳が見えて来た。
辺りは地平線まで畑が続き、とにかく広くて気持ち良いが、真っ直ぐに延びた道が果てしなく続き…(お~、どこまで行くねん!)って感じだ。

網走まで42kmの看板。斜里市街に入った所でコンビニを見つけ、昼食。
午後になると陽射しも強まり、とにかく暑い。
20kgのザックが肩に食い込み、その荷重をサドルで受け止める私のお尻も痛い!
ときどき上体を前に移動し、サドルの上にザックを乗せて走ると肩やお尻の痛みが軽減されて
「おっ!いい感じじゃないか!」
などと、独り言を言いながら進む。

網走まで33kmの看板を通過。
広々とした牧場脇を自転車で通り過ぎると、ウシやウマが珍しいものでも見るような顔つきで私の事をジーッと見送っていた。

網走まで26km、看板の数字が除々に減って行くと、この旅の終わりをカウントダウンされているような気分で淋しくなって来る。

網走まで18km、左に濤沸湖が現れて少し進むと、観光客が集まる小清水原生花園があったので立ち寄る事にした。
遊歩道が整備された海岸沿いの丘には時期がずれているのか花は全く無かったが、展望台まで行ってみると、今朝出発した知床連山から斜里岳までの湾曲した風景がパノラマ風に見えて、これだけの距離を走って来たのかと思うととても充実感があった。

駐車場に戻ると、今朝オシンコシンの滝からずっと同じペースで抜きつ抜かれつ走って来た学生風六人組のサイクリストがいた。
ずっと意識してはいたんだが、なかなか話すタイミングも無かったので声を掛けてみる。
とりあえず一番近くにいたメガネのお兄ちゃんに
「どちらから来られたんですか?」
と、話し掛けると
「え…、う~ん…」
なんだかモジモジしながら仲間に救いを求めている様子。
見兼ねたリーダーらしき女の子が「うちの息子に何かご用でしょうか?」と言った感じでハキハキ対応してくれた。
彼等は東京の大学のサークルメンバーで、二週間の予定で北海道ツーリング中だと言う。
二週間とはなんとも羨ましい話しである!
私も会社の短い夏休みを利用して静岡から来た事を話すと
「あっ、静岡の子なら、うちのメンバーに一人いますよ!」
と、言って新入生の小柄な女の子を紹介してくれたが、私とは親子ほど違う歳の差ゆえ、同じ市内だったと言う事以外あまり話も弾まず…
「じゃ、もういいですか?」
と、リーダーの女の子に促されて会話が終わってしまった。
しかし、北海道に来てからというもの会う人会う人静岡県人ばかりである。
なんなんだろうか…
もしかしたら私の知らない所で北海道の工作員が静岡に潜伏して「北海道祭り!」や「北海道フェア!」などを催し、「ほ~ら、カニはどうだ!ウニはどうだ!」などと観光客を呼び寄せているんじゃないだろうか?
今後「いいよぉ~北海道は!」と、言う甘い言葉は注意深く見守って行きたい。

網走まで7km、遂に看板の数字も、ひとケタになってしまった。
本来、夏休みを削られなければあと二日、サロマ湖を越えてまだまだ私の楽しい夏休みが続いていただろうに残念でならない。
網走市街に入ると車道も片側二車線になり交通量が激しくなって来た。

PM4:10網走駅に近い、北海ホテルに到着。
旅の最終日は必ずホテルに泊まり、身なりを綺麗に整えてから帰る紳士的な私である。
チェックインを済ませ、部屋のイスに腰掛けると何だかとてもホッとした。

中標津空港から知床半島を巡って網走まで、五日間の行程を無事終了。
今夜は旅の最後の夜を祝い、ホテルから歩いて5分の網走ビール館にて独り祝杯を上げる。
店内に入ると黒服のボーイさんなんかがいて、テント生活を続けて来た私にはちょっと不釣り合いな上品さが漂っていた。
幸いテラスにも席があったので、そちらに座らせてもらう事にする。
とりあえず、お試し地ビールセット¥819、なんてお買い得なものがあったのでそれを注文し、一番美味しかったものを後で注文しようと思う。
ウ゛ァイツェン、アルト、ピルスナーの三種がグラスに一杯づつ注がれ、どれも個性があってとても美味しかったが、決めがたいのでサッポロ生を注文(笑)
結局、いつもの味が美味しかったりするのである。

メニューに知床鳥の唐揚げなんてのがあったので、せっかくだから地場のものを!と、注文してみたが、運ばれて来たのは普通の唐揚げ。
何が違うのか疑問になり、ボーイさんをつかまえて聞いてみるが「う~ん…」なんて言って良く分からない様子。
「ちょっと聞いて来ますよ!」と、言ってわざわざ厨房に聞きに行ってくれたが、自信ありげに戻って来たボーイさんは
「通常のニワトリより大きいのが特長です!」
(…て、おい、それだけか!)( ̄▽ ̄;)

店内はかなりの客で賑わっていたが、テラスで飲んでいるのは私ひとりだけだった。
店員が「虫いませんか?」と、気を使って虫よけスプレーを持って来てくれたが、賑やかな店内にいるよりテラスにいた方が、私には断然居心地が良かった。

網走川沿いのテラスで、真っ赤に染まった西の空を眺めながら飲むビールは最高!
BGMに流れるR&Bもいい感じである♪
五日間の旅を振り返りながらまったりと、至福の時を過ごした。

ホテルに戻り、明日の飛行機に持ち込めないガスカートリッジを処分するためランタンに火を点けて過ごす。
五日間もテント生活を続けて来て突然環境が変わったせいか、ベッドに横になってもなかなか寝付けなかった。
窓を開けて空気を入れ換えてみる。
何だか寝付けない…
結局、辺りが明るくなり始めた頃ようやく眠りについた。


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知床半島自転車ツーリングの旅No6「羅臼岳登山」

2004年08月16日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

隣のテントの子供が
「お父さん…、シカ!シカ!」
と、小声で言っていたので目が覚めた。
明け方から、テントの回りを何かがうろつく気配がしたので私も気にはなっていたが、外を覗くと三匹のシカが芝生に落ちた残飯なんかを食べていた。
昨日に引き続き「またか…」って感じだが、北海道の大自然はこれで良いのだろうか?
「シカよ!森に帰って自立しろ!」と、言いたい。
もっとこう、人間を見たらウソでもいいから慌てて逃げて欲しいもんである。
今後、知床半島が世界遺産に登録された暁には、是非シカの更正を図ってもらいたいと思う。

AM5:00起床。今日は羅臼岳に登るため早めに朝食を取る。
身支度を整えテントはそのままに、キャンプ場を出発。
ウトロバスターミナルからAM6:50の始発のバスに乗り、30分で羅臼岳登山口のある岩尾別温泉に到着。
登山口をAM7:30に出発した。

晴天に恵まれて、木漏れ日が気持ちの良い原生林を登って行く。
木や植物の名前は分からないが、本州と比較してみると葉っぱが大きいものが多く、北海道の山を登っている事を実感する。

ひとつ尾根に乗った所で先行する三人組の若いパーティーに追い付いた。
「こんにちは!」と爽やかに声を掛けてサクサク追い越して行くと…
「注意!ヒグマ出没多発区間!」の看板(汗)
この先アリの巣が集中し、頻繁にクマが食べに来るそうである。
思わず何気ない顔で休憩を入れ、再び若者達に先行してもらう。

1時間ほど登った所でオホーツク海側の視界が開け、昨日行った知床五湖が見えた。
羅臼岳の山頂もようやく姿を見せたが、かなり遠くに見えてまだまだ先は長そうである。
弥三吉水と書かれた水場を過ぎるとダケカンバの林に変わった。
標高はまだ700m。私の住む静岡県では考えられない植生だ。

ここで50代くらいの男性登山客と少し話をしたが、明日は斜里岳に行くと言う。
私は知らなかったが斜里岳も百名山のひとつで、遠方から来た登山客はみな羅臼岳と斜里岳をセットで登って行くのだそうだ。
そもそも私は自転車ツーリングが目的で、せっかくだから百名山もひとつくらい!と言う考えでいたので斜里岳はノーマーク。
百名山がもうひとつすぐ傍にあったのに、なんか惜しいことをした気分だ。

「仙人坂、頂上まで約3km」の標識を過ぎ、銀冷水の水場を過ぎると枯れた大沢に沿ってお花畑が続いていた。
ひとつひとつの花を眺めて行くのでなかなか進まない。

ようやくハイマツの中の羅臼平に到着!山頂へはあとひと登り!と、言った所だが、ここへ来てガスに覆われてしまった。
岩峰の山頂へ一歩一歩登って行くと、足元をエゾリス(写真イメージ)が駆け抜けて行く。
登山口を出発して4時間10分、羅臼岳山頂に到着!狭い山頂には20人ほどが休んでいた。
晴れていれば知床半島全体を見渡す事が出来たであろうが、霧に包まれた山頂からは時々ガスが切れてオホーツク海側が見えるのみである。

軽い昼食を取ったあと、下山開始!
登りの時にはそれほど気にならなかったが、二日目の羅臼峠で痛めた右ヒザが、降りになると一歩踏み出すごとにズキン!と痛み、冷や汗が出て来る。
右足に負担を掛けないように左足からゆっくりと降って行く。

羅臼平まで降る途中、羅臼側の視界もほんの少しだけ晴れて羅臼港が見えていた。
そんな景色を立ち止まって眺めていると、20代半ばの女性がやって来て、同じくその景色を眺めている。
少し話をしてみると、妹が北海道の大学に通っているので、遊びに来たついでに羅臼岳に登りに来たそうだ。
どこから来たのか聞いてみれば、また静岡県である!
地元のローカルな話で盛り上がってしまい、お互い単独行だった事もあって、以後、登山口に到着するまでずっと一緒に降ったが、私が休憩を入れると彼女も休憩を取るので何となく一緒と言った感じだった。

その後「注意!ヒグマ出没多発区間」の看板に差し掛かった時、彼女が
「クマって、襲って来た時リンゴを投げてあげたらどうなんでしょうねぇ?」
と、童話のような事を言う…( ̄▽ ̄;)
大丈夫だろうか彼女…?
ここにいるのはプーさんではない!本物のヒグマである!
本当のクマの恐ろしさを彼女に教えて欲しいとヒグマに願いたい私である。

PM3:30、彼女と共に登山口に到着したが、振り返ればいつの間にか彼女は別れの挨拶も無くさっさと自分の車に乗り込んで素早く帰って行った。
どうやら彼女は独りで歩くのが恐かったようで、私は利用されたらしい。
まっ、いっか…

PM4:30、しれとこ自然村に戻り温泉に浸かる。
とりあえず予定通り羅臼岳も登り終えて、とても充実した気分だ。

風呂上がり、生ビールを持って談話室に座ると、正面には40代後半くらいのおばちゃんが座っていた。
テーブルに登山地図を広げ、生ビール片手にタバコをプハーッとふかしている。
「羅臼岳に登られるんですか?」
そう私が声を掛けると、怪訝そうな顔で睨まれた…
(なんだ!おまえも山やんのか!)と、言いたげである。
聞いてみれば、おばちゃんは既に昨日羅臼岳に登り、一泊して硫黄山まで縦走して来たと言う。
「うわ~、いいですねぇ~!、私も時間があったら縦走したかったんですけどねぇ~」
と、言うと…
(おまえに出来んのかぁ?)と、言った表情でタバコをプハーッとふかして睨んでいる。
こ…恐いぞ!おばちゃん!(汗)

しかし、羅臼岳ピストンで帰って来た私を気の毒に思ったのか、硫黄山への稜線がどんな様子だったか色々話してくれた。
驚いたのは、硫黄山からの降りでヒグマに遭遇した話しである。
10mほど先にヒグマの親子を見つけ、慌てて岩陰に隠れて熊鈴を鳴らしたが、なんと小熊が興味を示して近づいて来たと言う!
幸い親熊が去って行ったので小熊も後を追って引き返したらしいが、おばちゃんは恐怖のあまり暫く岩陰で固まってしまったそうだ。
大変恐ろしい話しである。
私も先ほどおばちゃんに睨まれて同じような気分を味わった事を忘れないでもらいたい。

夕食を食べに自転車で繁華街に出掛け、何となく見つけた海鮮料理の店「磯地」に入る。
食事と言うより呑みたい気分だったので、ジャガバターと、つぶ貝のわさび漬けを注文。
ジャガバターは旬じゃないのか普通の味だったが、つぶ貝のわさび漬けはとても美味しかった。

夜風が心地良い道をキャンプ場に戻り、ほろ酔い気分でテントに転がり込んだ。
PM10:50就寝


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知床半島自転車ツーリングの旅No5「知床峠越え」

2004年08月15日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

AM5:00起床。
テントを這い出ると、既に太陽はかなり登っていて北海道は日の出が早い事を実感する。
ここ羅臼町は西の空も山に阻まれて落陽が早いだろうから、全国で最も一日の行動が早い町なんじゃないだろうか?
そんな事を思いながら朝食のコーヒーを入れていると、テントの後ろがやけにガサガサとうるさい。
立ち上がってみると、なんとでっかいシカが私の事などお構いなしに平気な顔して草を食べている!
しかも、辺りを見回せば5頭も6頭もウジャウジャいて、思わず(鹿公園かっ!)と、シカに裏手のツッコミを入れたくなるほど。
山の中で時々シカを見掛けると、こんな近代社会にまだこんなシカが棲息しているのか!と感動し、シカよ!頑張れ!と、思わずエールを送ってしまう私だが、ここにいるシカはもう人慣れしてしまってキャンパーからエサを貰ってる奴までいる。
全然駄目である…、ちゃんとしろ!シカ!

今日の行程は、この旅の難関にあたる知床峠越え!
羅臼町からウトロに入り、知床半島の北側を少し観光して来る予定である。

AM7:15にキャンプ場を出発!334号線に入る。
「知床峠16km」と、言う標識が目に入り、気合いが…、入るなんて事は無く、16kmの登りを前に全く気合いが入らない私である。
(ゆっくり地道に行こう!)と、自分を騙しながらのんびり行くが、傾斜が上がるにつれて自転車を降りて歩いてしまいそうだ。
加えて昨日羅臼峠を越えた際、調子こいて重いギアのままガンガン登ったので右膝を痛めてしまった。
右足が一回転する度に痛みが走るので、極力左足で漕いで行く。
なかなか辛い峠越えだ。

息も上がり、500m登るごとに距離を示す看板が出て来ると、なんだか4ケ月前のフルマラソンの事を思い出す。
追い越して行くバイクツーリングの連中が、親指を立てて頑張れ!と、サインして行くが、それに応えていちいち片手をあげていると余計に辛い…

黙々とペダルを漕ぎ続け、標高が上がるにつれて霧が出て来た。
峠まで残り3kmという所に来て、遂に雨が降り出しレインウェアを着込む。
追い越して行く車からすればとても可哀相に見えるだろう。何だか惨めな気分だ…

羅臼町をスタートして4時間、霧の中にようやく知床峠標高738mの看板が見え、難関だった峠を制覇!
広い駐車場に到着し、辺りを見回すが展望はゼロ…、本来なら羅臼岳が間近に見えるらしいが非常に残念である。

休憩を少し入れた後、ウトロに向けて一気に下る!
風を切って走って行くと、汗をかいた身体が急激に冷やされてとても寒い。
羅臼側から4時間掛けて登った峠も、ウトロまでは30分であっと言う間に下り、知床自然センターに到着。ここで昼食を取る。

知床自然センターは、知床半島ウトロ側の観光拠点になっており、観光名所までシャトルバスが運行されている。
当初はカムイワッカ湯の滝まで自転車で行くつもりでいたが、右膝の痛みが芳しくないのでバスで行く事にした。
途中乗り降り自由で¥1150のチケットを買い、とりあえずカムイワッカ湯の滝に向かう。
道はダートでなかなか距離があったので、やっぱり自転車はやめて正解!
時々、自転車で行く人を見掛けるが、バスの巻き上げる砂ぼこりにやられてなかなか大変そうだ。
45分でカムイワッカ湯の滝入り口に到着。
ここより沢を登って行き、滝壺が湯舟になっている場所へと向かう。

入り口には、わらじ¥500の貸し出し業者がいた。
私たちはバスに乗る際、知床自然センターから「無許可営業のわらじ貸し業者にご注意下さい!」との注意を受けていたので裸足で登って行こうと思っていると、みんな借りていたので私も借りて登る。
滑りやすい沢の中をわらじでジャブジャブ歩いて行くのはなかなか気持ちが良く、結構危険な登りもあるのでわらじは大活躍である。
この場合わらじが無い方が大変危険である、何を考えているのか知床自然センター。

沢を登るにつれて水温が除々に高くなって来た。
登り始めて20分、人だかりの出来たカムイワッカ湯の滝に到着!滝壺には10人ほどが入っていた。
私が以前会社の先輩から見せてもらったカムイワッカ湯の滝の写真には、全裸ではしゃぐ姿が写っていたが、今は全員水着を着用しており昨日のセセキ温泉のように勇気ある男もいない。全くの誤算である…

こんな野趣溢れ出る温泉に入れないのは非常に残念だが、足だけ入れてちょっとばかりの温泉気分を味わった。
それにしても、滝が温かいのはとても不思議な気分である。

カムイワッカ湯の滝から再びバスに乗り、知床五湖で下車する。
ここでは知床五湖を巡るトレッキングコースが整備され、知床の大自然に触れる事が出来るらしい。
そんな事言われると、私も大自然に触れずにはおられず念のため売店で熊鈴を買って早速出発!
まず一湖があって、水はそれほど綺麗な感じでは無く沼と言った感じである。
木道を歩いてすぐに二湖。
山頂は雲に隠れているものの、知床連山が湖面に映りなかなか良い雰囲気である。
そして、三湖へ…、と進もうとしたら「クマ出没の為、立ち入り禁止!」のトラロープが張られていた。
立ち止まって暫く様子を伺ってみたが誰も入って行く者は無く、みな一、二湖のみの周回コースに戻って行く。
私もさすがに独りでは入って行く勇気が出なくて残念だが諦める事にした。
本州のツキノワグマでさえ恐いのに、ここにいるのはヒグマである。シャレにならない…

30分ほどであっと言う間に一、二湖を巡るトレッキングコースは終わってしまい、なんか不完全燃焼であるが仕方がない。
バスに乗って知床自然センターに戻った。

再び自転車に乗って出発!ウトロの街へ334号線を下る。
ウトロの繁華街から少し高台へと登り、PM5:00今日の宿泊地、しれとこ自然村キャンプ場に到着。
家族連れのオートキャンパーが殆どの中、私の小さなテントをポツンと張ると、大変肩身が狭く感じられた。

この、しれとこ自然村は、コインランドリーや温泉、宿泊施設や談話室なんかもあって、キャンプ場としてはなかなか設備が充実している。
早速、温泉に入りに行くと露天風呂からはオホーツク海が一望出来て、素晴らしいロケーションである!旅の疲れも一気に癒えた。
ゆっくり寛いだ後、テントサイトに戻りビールを開けて独り乾杯!
隣の家族連れは、私の事などお構いなしに醤油の香ばしい香りを漂わせながら、焼きハマグリなんか食べている。

PM6:20西の空が真っ赤に染まり、オホーツク海に夕日が沈んで行く。
そんな風景をほろ酔い気分で眺めていると、今日の辛かった知床峠越えの事など思い出して、我ながら良く頑張った!と、自分で自分を褒めてしまうのである。

今夜の食事は、るるぶに載っていた「荒磯料理くまのや」で、特製ラーメンを食べる事にした。
ウトロの繁華街から少し奥に入り、横町風の場所にある「くまのや」は全くの居酒屋であった。
美味しそうなメニューがズラリと壁に並び、思わず一杯やりたくなるが、今日は我慢我慢!¥850の特製ラーメンを注文する。。
運ばれて来た特製ラーメンは、ホッカイシマエビとタラバガニが乗った豪華なやつだったが、ラーメンと合わせると微妙な感じで(ふ~ん…)と、言ったところだろうか。
まぁ、話のタネに!って事で。

店を出てからキャンプ場への帰り道、繁華街を離れた国道は真っ暗で、空を見上げれば驚くほど無数の星が輝いていた。
自転車を止め防波堤に寝転んで、暫く見入ってしまう。

真っ暗な道をキャンプ場へと戻り、洗濯を済ませて長い一日が終わった。
明日は遂に羅臼岳登山である。
PM10:30就寝


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知床半島自転車ツーリングの旅No4「ウニ、イクラ丼の前に陥落」

2004年08月15日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

明け方からカラスのうるさい鳴き声で目が覚めていたが、身体がだるくてなかなか起き上がれなかった。
AM6:00になったのをきっかけに起床。テントから這い出ると、申し分ない青空が広がっている。
缶コーヒーを片手に100mほど歩き、なんとなく海まで出て防波堤に腰掛けてみると、今日も国後島がクッキリと見えていた。
ずっと憧れ続けて来たこの北海道の地で、こんなに普通に朝を迎えている事が可笑しくて、まだ夢から覚めていないような不思議な感覚である。

朝食を済ませ、撤収を終え、重いザックを担いで隣のバイクツーリングのお姉さんに「それじゃ、お先に!」と、旅人の爽やかな笑顔を見せると…
「あっ!ちょっと待って下さい!せっかくだからメルアド交換しませんか?」
と、言って引き止められ…たらどうしようとドキドキしていたが「あっ!気をつけて!」と、あっさり見送られてしまう。

AM8:00知床半島に向け出発!
今日の予定走行距離は95km、この旅で一番長い行程である。
日没までにはキャンプ地に到着したいので、海岸沿いの335号線をガンガン北上して行く。

真っ直ぐで快適な道が続いたが、道は除々に登り始め、アスファルトの強い照り返しもあるため汗が流れる。
重いギアのまま立ち漕ぎでガンガン登り、長いトンネルを抜けた所でようやく「らうす自然とみどりの村」なるドライブインに到着。
広い芝生のオートキャンプ場も併設され、レトリバーがフリスビーを追い掛けてバウバウ走り回っている。
どうやらここが羅臼峠になっているようだ。

雲の間から少しだけ羅臼岳も見え
「おぉ!二日後には、あの頂きに立つんだな!」
と、気合いが入る。

ひと息入れたあと、羅臼峠からは一気に降り羅臼町に入る。
お昼近くになり、そろそろお腹がすいて来たころ会社同僚のO氏の言った言葉を思い出した。
「羅臼に行ったら、是非「まるみ食堂」のウニ、イクラ丼を食べて下さい!ご飯が見えないぐらいの豪華さですよ!」
気が付くと…、目の前にあるじゃないか、まるみ食堂!
ちょっと高そうな感じの店で、私みたいな貧乏自転車ツアラーが入って大丈夫なのか!?
少し躊躇したが、いやせっかくなので入る事にした。

AM11:20と、正午には少し早い為、広い店内には二人の客がいるのみ。
私はカウンターに座り、メニューを見て驚いた!
ウニ、イクラ丼¥2850!…て、おいっ(-.-;)

あらかじめ値段を聞いておけば良かったと後悔するが、ここまで来てカツ丼¥1050を頼んでどうする…と、自問自答を繰り返した末、イクラを省いてウニ丼¥2300を注文した。いきなり大出費である。

運ばれて来たウニ丼は、ご飯が見えなくなるくらい!と、まではいかないが、納得出来るほどの新鮮なウニが盛られ、更にカニが丸ごと入った味噌汁まで付いてきてとても豪華で上品な感じである。
新鮮なウニをひとくち!
「う~ん…」
ウニが本当に美味しい食べ物なのかも分からない私の舌に、この美味しさが伝わらないのが非常に残念でならない(爆)
まっ、話のタネに!と言う事で!

気を取り直して今日の宿泊予定地、町営の「林間広場キャンプ場」に向かう。
335号線から山側へ急な坂道を登って行くと、どんどん人気の無い山間部へと入って行き、きつい坂道に息を切らしながら自転車を押して行ると突然ヤブの中からに大きなツノを持ったシカがピョーン!と、跳び出して来た。
腰を抜かしそうなほどビックリして、辺りを見回せば二頭、三頭、四頭…、ウジャウジャいるじゃないか!
(本当にキャンプ場なんてあるのか…?)と、少々不安になって来た頃、ようやくキャンプ場に到着。
駐車場には沢山の車が止まり、テントサイトもなかなか賑やかである。
いつもなら人の多いキャンプ場はウンザリする私だが、今回ばかりはクマの心配もあったので非常に安心した。

ここは町営のキャンプ場で無料になっており、水道、トイレも完備され、大変嬉しい施設である。
とりあえずテントを設営して荷物を置き、温泉に向かう。
今日の行程が95kmと長い距離になった理由がここにあるのだが、羅臼側から知床半島の先端に向かって走り、車道の行き止まり近くにあるセセキ温泉に入りたかった。
往復48kmの道のりである。

途中、ヒカリゴケが見られるという洞窟に立ち寄り、岩下を覗き込むと僅かに緑の蛍光色に輝くヒカリゴケが見られた。
八ヶ岳にもヒカリゴケが見られるポイントが有って、いつか見に行こうと思っていたので偶然にもこんな場所で見る事が出来てラッキーである。

相泊まで続く道を進むと、右手の海岸には羅臼昆布の産地らしく沢山の漁師小屋が建ち並んでいる。
左手、山の斜面にはシカの親子が普通にいたりして、自転車で通り過ぎる私を不思議そうな顔で見送っている。
そんな海岸沿いの道をひたすらペダルを漕ぎ、1時間ほどでセセキ温泉に到着。
ドラマ「北の国から」のロケ地にもなった場所らしく大勢の観光客が来ていた。
道路下の海岸、波打ち際に石で組まれたふたつの湯舟が見えているが、湯舟には誰も入っておらず、さすがに私も入る勇気が出なくて(う~ん、どうしようか…)と、立ち尽くしていると、隣に二人乗りのカップルがバイクで現れ「セセキ温泉って、あれですか?」と聞く。
「そうそう!でも誰も入ってないねぇ~」と、私が言うと、カップルの男性は彼女に笑みを浮かべながらさっさと海岸に降りてテトラポットの陰に隠れた。
彼はあっという間に全裸になり、タオル一枚持って湯舟に入って行く。
観光客から「おぉ~!」と言う、どよめきが走ったが、私も続かない訳には行かない!今がチャンスである。
急いでテトラポットの陰に隠れ、全裸になって波打ち際の湯舟に向かった。

海面とほぼ同じ高さで、時折波しぶきが入って来る湯舟だが、湯温は高くてなかなかいい湯である。
バイクの彼に「なかなか勇気あるねぇ~」と、言うと「べつに…」みたいに軽く笑っている。
良く見ると彼の身体は全身入れ墨だらけで、もしかしたら公衆浴場で入場を断られたからここに来たんじゃないのか!?と思うほど。
どんな職業の方なのか大変興味深いところだが、あえてそこには触れずにそっとしておきたい。
どこから来たのか尋ねてみると、私と同じ静岡県から来たと言う。
詳しく聞けば同じ市内であり、彼女の家は私の自宅のすぐ近所であった。
そんな話しで盛り上がっていると、いつの間にか三人四人と入り始め、彼女まで水着に着替えてやって来た。
彼は、賑やかになった湯舟にうんざりしたのかいきなり海に入って泳ぎ出し、誰よりも先を行く若さを見せる。
とても自由奔放な男である。

たっぷり温泉で汗を流した後、本来無料の温泉にはなっているが「施設管理の為ご協力を!」との募金箱みたいなのがあったので¥200を入れて行く(少ないか…)

再びキャンプ場に向け24kmの道のりを走り、なんとか日没までには到着。今日の行程を終了!
ビールを開けて独り祝杯を上げるとドッと疲れが出て来た。
なかなか良く走った長い一日であった。


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知床半島自転車ツーリングの旅No3「北海道上陸!」

2004年08月14日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

こじんまりとした中標津空港に降り立つと、牛の匂いと言うか、肥の匂いと言うか、北海道には大変申し訳ない話だが強烈に臭かった…
長い間ずっと私の中にあった夢の北海道!のイメージとは裏腹に、こんな手荒い洗礼を受けた事は大変遺憾な事であるが、これも大自然の中に踏み込んだ証のひとつとして受け止めたい。

空港を出ると辺りには建物ひとつ無く、果てしなく緑の丘が続き、青い空には無数のちぎれ雲が流れていた。
そんな風景を見つめながら、遂に私は北海道という地に足を踏み入れたのだ!と、実感し、長い間立ち尽くしていたら、その間に飛行機を降りた他の乗客達はタクシーや迎えの車に乗り込み、あっという間に消えていった。

独り取り残された私が自転車を組み立て始めると、もう一人50才位のおじさんも折りたたみ自転車を組み立てていて
「おぉ!いるじゃないかサイクリスト!」
と、私も旅の気分が盛り上がって来る。
自転車の組み立てを終え、20kgもある重いザックを担いで自転車に跨がり、フラフラしながらPM1:00中標津空港を出発!
遂に夢の北海道自転車ツーリングがスタートした!

空港敷地の柵に沿って走って行くと、道端には葉の大きさが1メートルほどもある巨大なフキの葉が沢山生えていて、早速こんな事にも北海道の大きさを感じてしまう。
中標津市街地に入る手前に標津川があり、橋の上から覗き込んで見ると川の水が驚くほど綺麗だった。
早速寄り道して川のほとりに腰掛け青空を流れるちぎれ雲なんか眺めていると、とても気持ちが良かった。
そんな開放的な気分に浸っていると突然一台の車が河原に入って来て、乗っていた二人の男女は車を降りるなりニコニコしながら両手を降って近づいて来る。
(おぉ!?…なんだ!なんだ!こんな所に知り合いなんかいないぞ?)
と、警戒心をあらわに身構えていると、親友の塩コショー、Oジロー夫妻であった。
同じ時期に北海道旅行に行く事になっていたので、出発前に「旅先で会えたら面白いねぇ~」なんて言ってはいたが、こんなに早く遭遇してしまって…、本当に面白いじゃないか!
塩コショー、Oジロー夫妻はレンタカーを借りて四泊五日の旅行中。
知床峠を越え、摩周湖へ向かう途中だった。
すれ違いざま私の姿を見掛け「あんなにでっかいザックを背負って自転車に乗っているのは間違いない!」と、確信してUターンして来たのだそうだ。
今日、北海道に到着する事は事前に知らせてあったのだが、こんなに広い北海道で出会うなんて本当に驚きである。
これから自転車で五泊六日のテント暮らしをしようという私を見て、とても羨ましそうに「いいなぁ~」を連発する変な夫婦であった。

塩コショー、Oジロー夫妻と別れ、中標津市街地に入った所にコンビニがあったので、遅めの昼食を取る。
ついでに、これからの旅に必要なガスカートリッジを二本購入。
これは以前、会社で働いていたバイク乗りの兄ちゃんが教えてくれた智恵で
「飛行機には危険物が持ち込めないから、ストーブやランタンの燃料は山で使うガスカートリッジよりカセットガスの方がコンビニでも売ってるし旅先で入手し易いですよ!」
と言うアドバイスをもとにしたものである。
彼は一ヶ月間バイクで北海道を放浪した経験を持ち、その際、燃料を手に入り易いカセットガスにしたのだそうだ。
確かに山で使うような丸型のガスカートリッジでは、アウトドアショップを探さなければならず入手が困難。
私も彼のアドバイス通りストーブとランタンを、カセットガス使用のユニフレーム製のもので揃えた。これも旅人の智恵である。

軽い昼食を終えて再び走り出す。初日の今日の行程は24km。
中標津市街で少し迷ったが、軌道修正して坂道を下って行くと目の前に海が見えて来た!
「おぉ!根室海峡だ!」
海の向こうには国後島が見えている。
会社同僚で北海道バイクツーリングに何度も来た事のあるO氏の言葉に…
「国後島はすぐ近くに見えて、あれが外国だと思うと不思議な気持ちですよ!」
と、言った言葉を思い出す。
海岸に出てしばし休憩を取ると、もの凄い数の海鳥が「ニャーニャー」と、飛び回り、その数が半端じゃなかった!
中には車に跳ねられて死んでいるのまでいて、バカじゃないのか海鳥!?と、言ったところだ。

海岸沿いの244号線を北上し、今夜の宿泊地ポー川史跡自然公園に到着。
ここは民族資料館なども併設された遺跡になっているが、キャンプ地もあって入園料の¥310を払えば一泊出来るようになっている。
受付のおばちゃんに、近くに温泉はないかと尋ねてみると、何だか分からないような方言で
「信号を四つ行った所にあるよ!」
と、言うのでテント設営後に向かってみると、行けども行けども信号機が無い…
ようやく見つけた信号から数えて四つ目、距離にして5km走って温泉に到着。
今後、地元の人の距離感については気をつけなければならないと思う(汗)
しかし、温泉施設はなかなか良い感じで湯温も高く私好みである。
料金も¥350と格安!気持ち良く入浴出来た。

温泉帰りの道に一軒だけあったコンビニらしき店で、ビール&つまみと夕食を買い、薄暗くなった道をひたすらキャンプ場まで戻った。
5kmの道程に身体が冷え切った頃、テン場に戻り、とりあえず初日終了のカンパイ!
ビールを飲みながらようやくゆったりとした時間を過ごすと、改めて北海道にいるんだ!という実感が湧いて来た。

そんな夕暮れ時、一台のバイクがエンジン音を轟かせて私の隣に入って来た。
「…んだよっ!こんな時間にテント設営すんのかよ!」
と、私は嫌悪感をあらわにして睨んでいたが、ヘルメットを外したその人物は髪の長い若い女の子だった!
まさにラッキーストライクである!(゜▽゜)!
その女性はバイクのエンジンを切って私に近づいて来ると
「スミマセ~ン…、隣にテント張らせてもらっていいですかぁ?」
と、笑顔で言うので
(おぉ~!えぇ~よ!えぇ~よ!でも、俺のテントも張ってしまうかもしれないけどなっ!ワウワウッ!)
と、オーソドックスなオヤジギャグを言ってしまいそうになるのをグッと堪え…
「あっ!構わないですよ!どーぞ!」と、素敵な笑顔を見せる紳士的な私である。

心地良い夜風に吹かれながらほろ酔い気分に浸っていたが、突然強烈な脱力感に襲われた…
よく考えてみれば夜勤明けのまま行動し、24時間以上活動しているのである。疲れない筈がない。
夕食の片付けを終えて死んだようにシュラフに潜り込んだ。
20:30就寝


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知床半島自転車ツーリングの旅No2「出発の朝」

2004年08月14日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

2004年8月14日、出発の朝。
AM8:10発、東京行きの新幹線のチケットをポケットに忍ばせて、AM5:00まで働いていた…
なんでやね~ん!(TOT)と、叫びたい所だが出発前夜の仕事がちょうど夜勤にあたってしまい、出発のギリギリまで働くハメになってしまった。
もしも、残業になるような事があったら新幹線に乗り遅れ、飛行機にまで乗り遅れて私の夢の北海道が遠い彼方へと飛び去ってしまう。
AM5:00になったら何が何でも尾崎豊の「17才の地図」ジャケットのように会社を抜け出してやろうと身構えていたが、無事定刻通り仕事も終わりやれやれである。

予定通りでかいザックと輪行袋に入れた自転車を片手に静岡駅のホームに立った。
新幹線に乗り込むこの時が勝負なんだが、車両の一番後部になる座席の、後ろにある荷物を置けるスペースを確保出来ないと大変な事になる。
このでかいふたつの荷物を置く場所がないからだ。
置け無い場合は車両の連結部分でずっと立って行かなければならず、しかもそこにいると駅での乗り降りの際とても邪魔になって、小心者の私には大変な心労である。
時間通り新幹線がホームに滑り込んで来ると、私は車内の乗車率を目で追い、割と空いている事に胸を撫で下ろした。
夏休みを削られたお陰でこの日はもう帰省ラッシュもピークを過ぎ、車内に乗り込むと荷物を置くそのスペースも空いていたのでホッとした。まずは第一関門突破!と言った所だ。

品川駅で新幹線を降り、羽田空港に向かう為、京急線に乗り換える。
この乗り換えがまた大変で、京急線乗り場まで普通に歩いても10分は掛かる。
30kg以上ある重い荷物を持ちながら間違えて反対方向に歩いてしまった事もあり20分ほどウロウロしたら、もう既に額からは汗が滴り落ちて京急線のホームに立つ頃には恥ずかしいほどTシャツが濡れていた。
ここまで来ると流石に人の数も増え、割と混雑している。
汗の臭いを気にしながら人の波に乗り、それでも何とか列車には乗る事が出来たのでホッと一息。
夢の北海道ももうすぐだ!などとニヤニヤしながらポケットに手を入れた時、大変な事態に気が付いた!

(切符が無い…)

この緊急事態に慌てふためく私の姿を、まわりにいる乗客達に悟られてはいけないと、何食わぬ顔で窓の外の景色なんか眺めながら指先だけは必死にポケットのあちこちを探していた。
(どこだ…、何故無いんだ…、どこだ…)
頭の中で過去の記憶を辿り、また辿り…、ハッ!と気付いた。
(自動改札だ…、自動改札で切符を取り忘れた…)
重い荷物を持ちながら改札を抜ける人の流れに乗る事ばかりに気を取られ、自動改札で切符を取るのを忘れてしまったらしい…
この緊急事態に(やってしまった!)と落胆する私の顔を、まわりの乗客達に悟られてはいけないので、何食わぬ顔で車内の広告なんかを見上げながら(どうしよう…)と考えてはみたが、駅に着いたら精算所で正直に言うしかないじゃないかバーカ!と、頭の中でもう一人の私が呟いていた。

羽田空港駅に到着し精算所で背中を丸めながら事情を説明すると…
「どこの駅から乗りましたか?いくらでしたか?」との尋問を受け
「品川駅から、400円です」と、涙を溜めながら私が答えると。
「今度から気を付けて下さいね!」と言って、困っている小学生を諭す様に駅員さんは改札を通してくれた。
情けない…

ようやく羽田空港に到着し、搭乗手続きを取るところまでやって来た。
ここも私にとって大きな難関であり、実のところ生まれてこのかた37年間飛行機に乗った事が無く全くの初体験なのである。
初体験と言うと、その前には「甘い」とか「切ない」とか書きたくなるものであり、書いた後にはハートマークなんかで締め括りたいのが世の常だが、今は全くそんな心境では無くただただ田舎者である不安を悟られないように旅慣れた雰囲気を漂わせながら足早にANAの搭乗窓口へ進むのであった。
X線で荷物の中を調べるものと思われるトンネルの中へザックを通した後、コンベアに乗せられた私のザックは裏へと続く黒いカーテンをくぐり奥へと消えて行った。
続いて輪行袋に入れた自転車を通そうとしたが大き過ぎて入らず、検査員は面倒臭そうな顔つきで袋を開け、中の自転車を確認するとコンベアには乗せずに手で持って裏へと消えて行った。
あとは自分自身なんだが入場前の金属探知器をくぐる際、検査員が小さく早口な言葉で「携帯など…#%$&」と、言っていたのが聞き取れず、従うままに通過したらピィィィ~と言う警告音が鳴り、待ち構えていた他の検査員達がサササァ~と、手慣れた手つきで私に駆け寄り「身に付けている金属類がありましたら、こちらに入れて下さい」「靴も脱いでこちらに履き替えて下さい」と、スリッパを履かされて、私は一気に容疑者扱いとなってしまった。
金属探知器であるなら、そうならそうと始めからハッキリした口調で分かるように言わんかい!こらっ!と思ったが、なんとか二度目のトライで無事通過。
私にかけられた外国人不法就労の罪は解かれ、無事飛行機に乗り込む事が出来たのである。

出発時刻になり飛行機は建物を離れたが、滑走路がたくさんあるせいか敷地内を右に左にダラダラと動き回り、なかなか飛び立とうとしない。
(いつになったら飛び立つんだ、この飛行機は…)
そう思い始めた頃、グォォォ~とエンジンの音が一気に大きくなり、動き出したと思ったら本気で加速を始めた。
「おぉ!すげぇ~すげぇ~!」と、どんどん加速を増すごとに加わるGは、富士急ハイランドのドドンパを彷彿とさせ、おもわず両手を上げてしまい…そうな訳はなく、私の想像していた離陸の瞬間とは、ジェット音をキュゥィィィ~ンと鳴らしながら、もっとこう大人っぽくスムースに飛び立つもんだとばっかり思っていたので少し意外だった。
それ以上に、いい大人である私が飛行機の離陸について、こんなに長く説明している事に驚かされる。
つくづく、息が出来ないほど抱きしめたくなる可愛らしい私だと思う今日この頃である。

更に話を続けるが、離陸した飛行機は旋回しながらグングンと高度を上げ、まわりの景色もどんどん広がっていった。
江戸川だろうか?大きな川にミニチュアのような船が白波を引いている。
霞ケ浦だろうか?大きな湖のような水面がキラキラと輝いている。
幸運にも私の座席は窓側だった為、その初めて見る景色を北海道に到着するまでずっと子供のように眺めていた。

機体が徐々に高度を下げ、雲の中を突っ切ると憧れの北の大地が見え始めた。
緑色の畑が遠くどこまでも広がり、やはりそのスケールの違いに感動!
バラバラに区画されたデコボコな土地の中に、でっかいトラクター、ドーム型の牛舎、放牧された牛、と、飛行機から眺めるミニチュアのようなそれらは、まるで箱庭のようで「おぉ!北海道だぁ!」と、独り興奮してしまうのだった。
飛行機は1時間30分で中標津空港に到着。私は生まれて初めて北海道の地に足を踏み降ろしたのであった。


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知床半島自転車ツーリングの旅No1「いいよぉ~、北海道は!」

2004年08月13日 | '04知床半島自転車ツーリングの旅

遂にやって来た夢の北海道!
こんな言い方をすると大袈裟だが、私にはそれぐらい思い入れのある場所である。
遡る事17年前、私が今の職場に勤めて間もない頃、四つ年上の先輩から北海道についての話を良く聞かされていた。
彼はバイク乗りで良くツーリングに出掛け、北海道を旅した時の話や、その時の写真を見せてくれては「いいよぉ~、北海道は!」を連呼していた。
その北海道が具体的に何がどういいのか今ひとつピンと来なかったが、とにかく自然が素晴らしく、とにかく広いらしい。
中でも私の興味を引いたのは、彼がその北海道旅行の途中、大阪から来ていた独り旅の女性に一目惚れし、口説いた末にそのまま彼女を地元の静岡に連れ帰って結婚してしまった話しだった。
それは素晴らしい!とにかく広いじゃないか!と、感動し、その頃まったく旅行になど興味の無かった私でさえ、それくらい人の心を開放的にさせる北の大地とはどんな素晴らしい所なんだろうか?と「いつか行ってみたい…」長年そんな思いを抱いていた。

その後にも彼からだけでなく、沢山の人から「いいよぉ~北海道は!」を聞く事になるのだが、私の職場は約半数がアルバイトとして働いており、その出入りも激しく、なかには半年ほど働きお金が貯まると北海道に出掛け、またお金がなくなると働きに来ると言ったとても健康的な生活を送っている者もいて、大抵そういった人間はバイクツーリングをするライダーであり、決まって口にした言葉は「いいよぉ~北海道は!」だった。
そんな言葉をたくさん耳にする度に私の中で
ライダーの聖地北海道♪
旅人の聖地北海道♪
じゃがいもの産地北海道♪
と、韻を踏みたくなるほどヒップホップなイメージが出来上がり、いつか行ってみたい!の度合いも増すばかり!Aha!Yeah!なのであった。

それと平行して、いつの間にか私も気が付けば馬鹿が付くほどアウトドアにのめり込んでおり、テントやシュラフを持っては自転車ツーリングにまで出掛けるようになっていた。
そして、何度かツーリングを重ねたのち、いつか行ってみたいと思っていた旅人の聖地北海道に「行きたい!」と思う気持ちから「行こう!」に変わったのである。

まずは旅の資金を得る為に、北朝鮮と並んで「悪の枢軸」とまで名指しにされた私の妻と、交渉に挑まなければならない。
私がどれだけ長い間、北海道の旅を夢見て来たか!この旅が私の人生にどのくらい影響を与えるか!と、言ったところを力説し、それでも駄目なら…、実は私にはアイヌの血が流れているのだ!と、涙を流しなら打ち明けようと思っていたが、妻はあっさり…
「行って来れば~」
と、言う…

(-.-;)恐いじゃないか…妻!

相手の条件を飲んでおいて、次にどんなカードを切って来るのか不安でならないが、とりあえず今はその厚意を素直に受け止めておきたい。

目標を決めたら突っ走るタイプの私であり、A型の血液を沸々と煮だたせながら、ひとつひとつ緻密にスケジュールをまとめて行った。

漠然と北海道に行く!と、言ってもサラリーマンである私にとって、自転車で全てを回るのは到底無理な話しなので、だいたいどの辺りに行くのか絞らなければならなかった。
そこで、毎度頼りにしている旅の情報誌「るるぶ」を買いに本屋へ!
さすがは北海道!一冊には収まり切れず、東西南北、四つのエリアに別けて売り出されている。
ただ漠然と北海道に行きたい!と思うのみで、これといった場所も全く決めていなかった私は、その四冊を前に目が泳いでしまい、挙動不審な怪しいおっさんに見られたに違いないが、それくらい北海道は広かったのである。
北海道全図の地図をながめているうちに、知床半島が世界遺産の登録を目指している事をふと思い出した。
道東が掲載されている「るるぶ」を手に取りパラパラとめくってみると、知床五湖のトレッキングコースや羅臼岳登山、滝壺や海の中にある露天風呂など、そこには私の求めていた野趣溢れ出るアウトドアのすべてが揃っていた。
私は思わず「おぉ!これだ!」と、少年の様な歓喜の声をあげてしまったら恥ずかしいので、おもむろに本を閉じて大人の余裕を見せながらゆっくりとレジに向かったのである。

家に帰ってから改めてどこを見たいのか、どのくらい移動出来るのか、テント場はどこにするのかといった細かい計画を練って行った。
初めはフェリーで北海道入りするつもりでいたが、知床半島とは全く正反対の苫小牧にしか入港出来ず、仕方がないのでお金は掛かるが飛行機を使うことにした。
したがって、出発地点は中標津空港。五泊六日で知床半島を巡って網走まで行き、帰りは女満別空港から帰って来る。そんな計画になった。

余談だが、当初は網走の先、サロマ湖を越え七泊八日でオホーツク紋別空港から帰って来る予定でいたが、今年は例年にない仕事の忙しさで、会社側が勝手に私の夏休みを三日も削ってしまった為、買ってあったチケットもキャンセルし、スケジュールを変更して新たにチケットを買い直したのである。
夏休みでみんながドヒャドヒャと押し寄せて、ウヒャウヒャとカニを食べて、キャーキャー言って、お土産を買って帰るここ北海道において、一ヶ月前にチケットを買い直すだなんて…
チケットが取れたから良かったものの、もし取れなかったら私の楽しい夏休みにどう責任を取るつもりでいたんだろうか会社!
全く油断ならないのである…
と、言う訳で、旅の計画も整い、無事「知床半島自転車ツーリングの旅」は出発を待つばかりとなったのである。


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