夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

初の単著の研究書出版

2010年03月22日 | profession
ブログの更新が半年もあいてしまった。

死ぬほど忙しかったからだ。

第一に、初めて単著の研究書を出版したからだ。ロースクール関係の留学本なら1994年に単著で出しているし、共著なら法学関係のものが多数あるが。
原稿はかなり前に書き終わっていたが、情報のアップデートが必要(中国法はしょっちゅう変わるから)だったし、2009年8月に日本で発効したウイーン動産売買条約(CISG)のことも書く必要があると考え、中国契約法とCISG,ユニドロワ国際商事原則、ヨーロッパ契約法原則、UCC(米国統一商法典)、日本の民法改正提案を比較する章を新たに書き下ろしたりした。

中国は1988年にCISGを批准しており、かなり遅れて日本も批准した今、対中国との契約交渉で、中国法でなくCISG等の国際ルールを適用することがよりやりやすくなったので、各契約事項で、どの条項を適用したらいいかという実務的アドバイスも記述した。

中国契約法は1999年と遅くできたため、契約法の大原則にかかわること(無過失責任、瑕疵担保責任と契約責任の統一等)については、国際的潮流に適合している。日本の現行民法はそういう意味では遅れているが、近々予定されている民法大改正では、こうした国際的ルールの採用が提案されており、この点からも面白い分析になったと思う。

第二に、二年生のゼミの発表会があったからだ。
政策を作って府庁で発表するという授業だったのだが、私のゼミでは、「育児における男女共同参画」をテーマにした。

ハード面の調査に特化し、不特定多数が利用する場所に男女ともにアクセスできる場所におむつ替え設備やトイレの個室のベビーチェアなどがあるかどうかの調査を行った。

2006年に施行されたバリアフリー新法の委任を受けて上乗せ横出しをしている各自治体の条例の中には、公共の場所において、おむつ替え設備、ベビーチェア、授乳施設等をジェンダーフリーにアクセスできる場所に設置することを義務付けるものがある。

そこで、全国47都道府県と18全政令指定都市の条例の悉皆調査を行い、これらの規制の有無と適用範囲を調べ、優秀な自治体をピックアップした。top3は福岡市、東京都、京都府だった。

また、京都府内の不特定多数が利用する施設約200にこうした設備の有無をアンケートを行って調査し、京都府および京都市の関連条例の適合の有無を分析した。

報告書は1万字以上でいいところ、わがゼミでは本編と資料編を合わせて13万字近くになったし、発表会でもおほめをいただいた。行政法の先生にも「条例の悉皆調査なんて研究者でもなかなかできない」といっていただいた。

他のゼミの発表を聞き、報告書を読んで、いいにくいことだが、自分のゼミの学生にあまりに過剰な負担を課したのだということがわかり、ものすごく反省した。
私は法科大学院出身なので学部生のゼミを担当したことがなく、加減がわからなかったとはいえ、本当に申し訳なかった。

膨大な調査結果を15分でプレゼンするために、教室を借りて何度も予行練習をしたりした。こんな私についてきた真面目で健気な学生たちにはただ感謝あるのみである。

発表会の後、アンケート調査や聞き取り調査にご協力いただいた団体等に報告書を発送する作業を行い、やっと一段落した。

第三に、民法の講義でtutorialという個人指導をやっていたからだ。
授業中取り上げる判例百選の判例を予め受講生一人一人に割り当てておき、まとめたものを発表させる。事前にひとりひとりアポをとってもらって、書いてきたレジュメを基に指導し、かつ、毎回やっている小テストでその学生が間違った箇所を復習する、というもので、オックスフォード大学で受けた教育にヒントを得たもの。

ということで、学期中は非常に忙しく、春休みになってやっとこうしてブログを更新できた次第である。

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法曹養成機関とは思えない卑劣な行為

2010年03月22日 | profession

学生による提出レポートが学者の論文まるまる全部の剽窃(もちろん出典記載なし)だったという不正を、処分するどころか、煽り、内部告発したと疑われた教員への口にするのも汚らわしい方法による嫌がらせのために利用するような卑劣なこと(だけでなく正義を担うべき法曹候補者への教育上著しい害がある)を行った某法科大学院の出来事の詳細をやっと明らかにすることができる時期になった。乞うご期待。

○○くん、私はもうとっくにそこにはいないし、君ももうそこの学生ではないのだから、前のような手は使えないよ。もちろん、また文科省にファックスしても笑われるだけ。君ももう惑わない年なんだからいい加減、大学に利用されただけ(しかも、過去に他の大学に行くと伝えたとたん教授会に出るなと言われたり授業を外されたり、予定の4か月も前に無理やり辞めさせられた先生が二人もいたため、嫌がらせを恐れてぎりぎりまでいわないようにしようと大学に伝えていなかっただけで、私はあの出来事の半年以上前に別の大学に移ることが決まっていたのだから、大学としても君の不正を利用してあんな手の込んだ罠をしかけたのは馬鹿みたいな徒労だったわけ)で、個人的には寧ろひどい損をしていることに気づくべきだし、刑法の授業で230条の2は習ったよね?


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行政監視の対象となり、社会一般から深い疑念を持たれる人事対応がなされている法科大学院

2010年03月22日 | profession
参議院議員 山本栄一氏のブログより

http://www.yamashita-eiichi.com/diary2/diary2_20081029.html

××大学法科大学院
2008年10月29日
 平成20年10月29日、行政監視委員長として「××大学法科大学院」を視察した。以下、同大学院の概要と視察の視点等について報告する。

Ⅰ 大学院の概要


Ⅱ 視察の内容
•法科大学院側から設立の経緯や運営状況等について説明を聴取した後、質疑応答。講義(刑法)、演習(民法)を参観し、図書館、自習室、学生ラウンジ等の施設を見学。
•学長、法曹法務研究科長、理事等が対応。

Ⅲ 視察の視点
 本法科大学院は、平成16年6月の設置申請の際に、未提出論文を受理済みとして申請するという不祥事があり、研究科長等の関係者が懲戒処分を受け、平成18年度の学生募集を自粛するという事態となった。また、本年、第1回目の大学院修了者による司法試験受験において合格者ゼロという結果となったことから、行政監視(不正不当行為の防止、及び、それに関係する税金の無駄の排除)の重要な対象と考えた。

•現行の司法試験制度をどのように評価しているか。
•司法制度における法科大学院の位置付けをどのように考えているか。
•××大学法科大学院の存在意義をどのように考えているか。
•今回の司法試験受験結果を踏まえ、今後の大学院運営をどのように考えているか。
•不祥事を踏まえ、教職員倫理の徹底のために、どのような努力をしているか。
•法科大学院設置のコンプライアンス委員会は、どのように機能しているか。

Ⅳ 所見と課題
•全国的な司法試験の合格率は3割台(平成20年は、受験者数6,261人、合格者数2,065人)に落ちており、法科大学院方式を採用した意味が社会的に問われるようになっている。

•法科大学院方式を採用したにも関わらず、大学院修了者が受験すべき司法試験が「競争」の色彩を強めていることから、司法試験制度が内包する矛盾(法曹になるため本来すべき勉強と、単なる受験勉強とのギャップ)を露呈しつつあるように思われる。

•法科大学院の設立時に不祥事があり、初回の司法試験で合格者がゼロであったことは、今後の大学院運営において極めて重大である。当面の課題は、とにかく1人でも多くの合格者を出すことであり、それは他のどの法科大学院よりも緊急で重要な課題といえよう。

•不祥事について責任者が処分されているが、中心人物である法科大学院の研究科長等がその職を辞したものの、経済学部長等の要職に就いている等、社会一般から深い疑念を持たれる人事対応がなされている。倫理規定の制定やコンプライアンス委員会の設置なども行われているが、納得を得るためには、何より適正な処分が不可欠である。

(一部省略)

言っていることはきわめてまっとうである。

確かに書いてもいない論文を書いたと設置申請書に書き、その責めを負って理事を辞めた教授が経済学部長になったり、定年後も副学長になったり、申請書に完成させたと書いたその論文を申請から6年たってもまだ完成させていないことは、法律家を養成する研究科をもつ大学とは思えない異常な状況だ。

しかし、もっとひどいことが行われていたことをこの政治家は知らない。


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