今日も、警察からはなるべくロンドン中心部に出かけるなという注意が出ているので、かなり迷ったけれど、友人の家にいて、BBCを見ていた。幸い、何人かの弁護士と電話でインタビューができて、仕事のほうも思ったより進んだ。
アフリカ宣言のサインのときは、小泉さん真ん中にいたけど、あの緑色のペイズリー柄のネクタイは全然似合っていなかった。
それでこうしてエントリーもしているのだが、表題は、
私の一番お気に入りのミュージカルだ。
ちなみに今までロンドンまたはNYで見たものは、キャッツ、レミゼラブル、ミスサイゴン、ライオンキング、アイーダ、Beauty and the Beast, We will Rock You, マンマミーア。
初めて見たのは、1993年、留学中の英国でだが、感動のあまり、劇場でテープ(当時はまだCDはそれほど一般的でなかった)を購入し、大学の寮の部屋でいつもかけていたので、ほとんどのナンバーは今でも歌える。
今回、12年ぶりに同じ劇場:Her Majesty Theatreで見た。
(夜と週末はミュージカル・オペラ、夜開いてる美術館等に通っています。)
映画版を有楽町マリオンで見て、また、ロンドン行きの飛行機でやっていたので、それをまた見て、劇場版をまた見たくなったからだ。
私は演劇フリークだが、たとえ好きな役者が出ていても、同じ演目を二度見るということはあまりないのだが。
やはり、いろいろな意味で、非常に優れたミュージカル作品だと思う。
まず、内容面だが、ガストン・ルルーの原作を下敷きに、普遍的なテーマを斬新なスタイルで描いていることにあると思う。優しく、必ず幸せにしてくれるであろう男性と、危険で一緒にいても不幸になりそうな男性(このことは、私の一番好きなナンバーAll I Ask of You において、それぞれの男性がChristineに歌いかける科白が、 Raoulのそれが “Let me lead you from your solitude” であるのに対して、Phantom のは、“Lead me, save me from my solitude”であることに象徴されている)との間で揺れる女性というのは、源氏物語の浮舟と匂宮・薫大将の三角関係にも遡れる普遍的なテーマである。(そういえば、劇中最も美しいシーンであるPhantomがchristineを船に乗せ、地下水路をこぎ行くシーンは、匂宮が浮舟を舟に乗せて連れ出すシーンと似ている)
また、ChristineはPhantomに亡父の面影を投影しているので、これも古典的なエレクトラ・コンプレックスから説明できよう。
孤児である彼女の孤独とPhantomの孤独が共鳴しあって惹かれ合ったということも説得力をもって伝わってくる。
そして、これがミュージカルの場合、非常に重要な点なのだが、ミュージカルという形式の利点を十二分に生かしていることである。
ミュージカルには、「どうしてそこで急に歌い出すのか?」という根本的な不自然さが常に付きまとう(三谷幸喜の『オケピ!』にもそういう科白があるし、タモリもだからミュージカルは嫌いだと公言している)が、この作品では、舞台がオペラ座であり、主人公はPhantomと歌の指導を通じて心を通わせるという設定だから、歌うことはむしろ必然である。
さらに、作曲家が愛する女性の歌をプロデュースして成功させるというストーリーは、現実のA ウェバーと、当時の妻でchristine役のサラ・ブライトマン(後に離婚)の関係とも完全に重なっている。(日本でもTKと華原朋美がそのような関係だった)
そしてまた、劇中歌も、絶妙に物語とリンクしている。
RaoulがChristineを幼馴染と気づく場面で彼女が歌っているアリアThink of Meは”We never said our love was evergreen, or as unchanging as the sea, but please promise me, that sometimes, you will think of me!”となっており、その直後の再会のシーンで、Raoulは、子供のころ、彼女の赤いスカーフを拾うために海に入ってずぶぬれになった思い出を語る。
また、Phantomの、天才的な才能を持ちながら社会から隔絶された孤独感も、彼が作曲したという設定の音楽の素晴らしさとのコントラストで効果的に描かれている。これは、映画版『砂の器』(TV版は噴飯物)にも共通する。
Masqueradeはまさに、仮面の下に孤独を隠すPhantomの生き様そのもの、そして、劇の最後のフレーズは、”Hide your face, so the world will never find you”である!
今回役者の中では、Raoul役のOliver Thorntonが貴公子然とした美貌なのがとても印象に残った。ウェールズ人で12歳で初めて見たミュージカルがこれだったそうだ。
映画版との比較では、まず、プロローグの終わりにシャンデリアのベールが解かれるところで、シャンデリアの光が当たったところから、モノクロの画面がカラーの19世紀末の輝かしいオペラ座の場面に変わっていくという、映画ならではの演出がすばらしい。
また、劇場版では、Phantomにやられっぱなしでどちらかというと情けないRaoulが、映画版では仮面舞踏会の後でも決闘しようと剣を抜いたり、墓場のシーンでは、Phantomと戦って実際にねじ伏せるところまでいっている点で、優しいだけでなく、強く勇敢な理想的な男性という面が強調されている。
また、映画版では最後にRaoulが競り落とした猿のオルゴールを妻だったChristineの墓に供えると、そこにPhantomのバラが置かれているという場面が付け加えられている。
ひとつ、映画版の方がリアリティを欠くのは、マダム・ジリーがPhantomが見世物小屋から逃亡するのを助けたという設定だ。劇場版ですら、娘のMEGが、朋輩の出世に全く嫉妬しないのが、不自然なのだが、映画では、さらにその母親が恩人なわけだから、「なぜ私の娘にこそ個人指導してくれない?」ということになりはしないか?この親子はお人よし過ぎないか、と思うのは私の性格がひねすぎているから?
私自身は、12年前に見たときは、留学という目的を果たし、次は結婚、と思っていた時期だから、Christineに感情移入し、前述のAll I ask of youも、彼女の立場から、孤独から救ってくれる男性にめぐり会いたい、と思いながら、オックスフォードの寮の部屋でこの曲を聴いていた。同じ意味で、中学のときから好きだったCarpentersのOnly Yesterdayの"After long enough of been alone, everyone must face their share of lonliness""I've found my home here in you arms"というフレーズも繰り返し聞いていたのだが。が、今回は、Phantomの救いのない孤独な魂と自分を重ね合わせてしまう。最後のシーンは、涙が止まらなくなった。
自分には過ぎた相手と結婚して10年経っても癒されないほど、私の孤独は根本的なものだったのだと今回気づかされた。
今回見た他の作品・We Will Rock Youとマンマミーアは、それぞれQueenとABBAのヒットナンバーの人気に依拠した作品で、ちょっと掟破りじゃないかと思う。
アフリカ宣言のサインのときは、小泉さん真ん中にいたけど、あの緑色のペイズリー柄のネクタイは全然似合っていなかった。
それでこうしてエントリーもしているのだが、表題は、
私の一番お気に入りのミュージカルだ。
ちなみに今までロンドンまたはNYで見たものは、キャッツ、レミゼラブル、ミスサイゴン、ライオンキング、アイーダ、Beauty and the Beast, We will Rock You, マンマミーア。
初めて見たのは、1993年、留学中の英国でだが、感動のあまり、劇場でテープ(当時はまだCDはそれほど一般的でなかった)を購入し、大学の寮の部屋でいつもかけていたので、ほとんどのナンバーは今でも歌える。
今回、12年ぶりに同じ劇場:Her Majesty Theatreで見た。
(夜と週末はミュージカル・オペラ、夜開いてる美術館等に通っています。)
映画版を有楽町マリオンで見て、また、ロンドン行きの飛行機でやっていたので、それをまた見て、劇場版をまた見たくなったからだ。
私は演劇フリークだが、たとえ好きな役者が出ていても、同じ演目を二度見るということはあまりないのだが。
やはり、いろいろな意味で、非常に優れたミュージカル作品だと思う。
まず、内容面だが、ガストン・ルルーの原作を下敷きに、普遍的なテーマを斬新なスタイルで描いていることにあると思う。優しく、必ず幸せにしてくれるであろう男性と、危険で一緒にいても不幸になりそうな男性(このことは、私の一番好きなナンバーAll I Ask of You において、それぞれの男性がChristineに歌いかける科白が、 Raoulのそれが “Let me lead you from your solitude” であるのに対して、Phantom のは、“Lead me, save me from my solitude”であることに象徴されている)との間で揺れる女性というのは、源氏物語の浮舟と匂宮・薫大将の三角関係にも遡れる普遍的なテーマである。(そういえば、劇中最も美しいシーンであるPhantomがchristineを船に乗せ、地下水路をこぎ行くシーンは、匂宮が浮舟を舟に乗せて連れ出すシーンと似ている)
また、ChristineはPhantomに亡父の面影を投影しているので、これも古典的なエレクトラ・コンプレックスから説明できよう。
孤児である彼女の孤独とPhantomの孤独が共鳴しあって惹かれ合ったということも説得力をもって伝わってくる。
そして、これがミュージカルの場合、非常に重要な点なのだが、ミュージカルという形式の利点を十二分に生かしていることである。
ミュージカルには、「どうしてそこで急に歌い出すのか?」という根本的な不自然さが常に付きまとう(三谷幸喜の『オケピ!』にもそういう科白があるし、タモリもだからミュージカルは嫌いだと公言している)が、この作品では、舞台がオペラ座であり、主人公はPhantomと歌の指導を通じて心を通わせるという設定だから、歌うことはむしろ必然である。
さらに、作曲家が愛する女性の歌をプロデュースして成功させるというストーリーは、現実のA ウェバーと、当時の妻でchristine役のサラ・ブライトマン(後に離婚)の関係とも完全に重なっている。(日本でもTKと華原朋美がそのような関係だった)
そしてまた、劇中歌も、絶妙に物語とリンクしている。
RaoulがChristineを幼馴染と気づく場面で彼女が歌っているアリアThink of Meは”We never said our love was evergreen, or as unchanging as the sea, but please promise me, that sometimes, you will think of me!”となっており、その直後の再会のシーンで、Raoulは、子供のころ、彼女の赤いスカーフを拾うために海に入ってずぶぬれになった思い出を語る。
また、Phantomの、天才的な才能を持ちながら社会から隔絶された孤独感も、彼が作曲したという設定の音楽の素晴らしさとのコントラストで効果的に描かれている。これは、映画版『砂の器』(TV版は噴飯物)にも共通する。
Masqueradeはまさに、仮面の下に孤独を隠すPhantomの生き様そのもの、そして、劇の最後のフレーズは、”Hide your face, so the world will never find you”である!
今回役者の中では、Raoul役のOliver Thorntonが貴公子然とした美貌なのがとても印象に残った。ウェールズ人で12歳で初めて見たミュージカルがこれだったそうだ。
映画版との比較では、まず、プロローグの終わりにシャンデリアのベールが解かれるところで、シャンデリアの光が当たったところから、モノクロの画面がカラーの19世紀末の輝かしいオペラ座の場面に変わっていくという、映画ならではの演出がすばらしい。
また、劇場版では、Phantomにやられっぱなしでどちらかというと情けないRaoulが、映画版では仮面舞踏会の後でも決闘しようと剣を抜いたり、墓場のシーンでは、Phantomと戦って実際にねじ伏せるところまでいっている点で、優しいだけでなく、強く勇敢な理想的な男性という面が強調されている。
また、映画版では最後にRaoulが競り落とした猿のオルゴールを妻だったChristineの墓に供えると、そこにPhantomのバラが置かれているという場面が付け加えられている。
ひとつ、映画版の方がリアリティを欠くのは、マダム・ジリーがPhantomが見世物小屋から逃亡するのを助けたという設定だ。劇場版ですら、娘のMEGが、朋輩の出世に全く嫉妬しないのが、不自然なのだが、映画では、さらにその母親が恩人なわけだから、「なぜ私の娘にこそ個人指導してくれない?」ということになりはしないか?この親子はお人よし過ぎないか、と思うのは私の性格がひねすぎているから?
私自身は、12年前に見たときは、留学という目的を果たし、次は結婚、と思っていた時期だから、Christineに感情移入し、前述のAll I ask of youも、彼女の立場から、孤独から救ってくれる男性にめぐり会いたい、と思いながら、オックスフォードの寮の部屋でこの曲を聴いていた。同じ意味で、中学のときから好きだったCarpentersのOnly Yesterdayの"After long enough of been alone, everyone must face their share of lonliness""I've found my home here in you arms"というフレーズも繰り返し聞いていたのだが。が、今回は、Phantomの救いのない孤独な魂と自分を重ね合わせてしまう。最後のシーンは、涙が止まらなくなった。
自分には過ぎた相手と結婚して10年経っても癒されないほど、私の孤独は根本的なものだったのだと今回気づかされた。
今回見た他の作品・We Will Rock Youとマンマミーアは、それぞれQueenとABBAのヒットナンバーの人気に依拠した作品で、ちょっと掟破りじゃないかと思う。
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ジェラルド・バトラー,エミー・ロッサム,パトリック・ウィルソン | |
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