こんな夢を見た。
自分は高校に通っていた。
新学期、新しいクラス。
周りは知っている奴ばかりで、その中には中学の頃から好きだった田中さんもいる。
担任の女性教師が言った。
「ここはなんでも学べるクラスです。その中で自分が何者になろうとするかは自分次第です。あなた方はどんな学び方をするのかを選択していかなければなりません」
自分はまだ何者でもないただの高校生だった。
自分は無この先の人生をどうしたいのか、まだ何もわかっていなかった。
それは他のクラスメイトたちも同じで、どうすればいいのか全くわかっていなかった。
ただ田中さんだけは将来役者になりたいと言う夢を持っているのを知っていた。
それは中学生の頃に告白した時、自分は将来役者になりたいので恋愛とかしている余裕などはないと断られたことがあったからだ。
事の真実はさておき、フラれた事には変わりはない。
それでも田中さんとは友人としての関係は継続していた。
「席変えをします。自分が将来目指すものと近い人と固まって座ってください。場所は早いもの順です」
先生がそう言うと最初に動いたのは田中さんだった。
窓際の後ろから三番目の席に何の迷いもなく彼女は座った。
隣の席には田中さんの親友である藤崎さんが座った。
彼女がそこに座ったのは単純に田中さんの近くの席に座りたいと言う事だったろうと思う。
他の生徒たちも動き始めたので自分も動く。
できれば田中さんの側に座りたかったが、自分がなりたいものと田中さんがなりたいものが同じであるとは思えなかった。
そもそも自分になりたいものなど無かったし、何かなれるものがあるとも思えなかった。
そんな時、田中さんと目が合った。
田中さんは無言だったが、その目はどうするの?と僕に語りかけている気がした。
なりたいものが無いのなら、とにかく飛び込んでみればいいと考えた僕は窓際の一番後ろの席に座った。
田中さんの席まで一つ空いていたが、そこには他のクラスメイトが座っていた。
これが田中さんとの距離感であると僕は納得する。
田中さんも何も言うわけではなく、少し笑っていた。
授業が始まり、新しい学年が始まった。