ヤミ金収益 日本に返還
スイス当局没収のヤミ金犯罪収益30億
日本に返還へ
指定暴力団山口組旧五菱会系のヤミ金融グループによるマネーロンダリング(資金洗浄)事件で、日本、スイス両政府が、スイス当局によって没収された同グループの犯罪収益約58億円のうち、半額程度を日本に返還することで合意したことが分かった。
今月22日の閣議で正式決定する。外国で没収された犯罪収益が日本に返還されるのは初のケースで、法務・検察当局は返還金がスイスから引き渡され次第、被害者に分配する手続きに入る方針だ。
同事件では、同グループ最高責任者で「ヤミ金融の帝王」と呼ばれた梶山進受刑者(58)ら3人が組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠蔽)などで起訴され、東京高裁で懲役刑のほか追徴金計約94億円が言い渡されて確定した。
ところが、同グループはヤミ金融の収益を、匿名口座などを利用してスイスの銀行に送金しており、スイス・チューリヒ州が2004年6月、約58億円を犯罪収益として没収したため、日本では追徴できない状況が続いていた。
犯罪収益を没収した国が、被害のあった国に没収資金を返還する義務はない。このため日本、スイス両政府は05年6月に協議を開始し、スイス側は、没収資金が被害者に戻る仕組みが日本国内で整うことを条件に一部返還に応じる姿勢を示した。
これを受けて日本は06年12月、犯罪収益を被害者に分配する手続きを定めた改正組織犯罪処罰法などを施行した。
関係者によると、その後の両国間の交渉で、国際的な前例を参考に没収資金の半額程度に当たる30億円前後とすることで合意した。
返還された資金は今後、改正法に基づく新制度の初適用を受け、被害者に給付する手続きに入る。
法務省がいったん「給付資金」として保管し、支給対象となる犯罪の内容や、給付を申請でくる期間を公表。
事件の被害者は約6万人に上がるとされ、期間内であれば申請が可能となる。申請を検察官がチェックして被害者と認めれば、検察官が認定した被害額が給付される。
(2008.4.18:03・08: 読売新聞)