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ある日、超能力に目覚めた件 第二章 第二話Part1

2024-07-15 18:46:02 | 日記
「おい、足軽。どうだ? 一緒に観るか?」
 
 自宅の自室からちょっと飲み物でも取りに行こうと一階に降りた野々野足軽。するとそこにはビール片手にテレビの前を陣取ってる父親がいた。既に出来上がってるのか、顔が赤い。そんな父親に野々野足軽の母親が「あんまり飲みすぎないでよ」――と言う。それに対して亭主関白な親父なら「うるせー!」とか怒鳴るんだろうが、野々野足軽の父親はそんなタイプではなかった。
 
「ははは、わかってるさ」
 
 そんな風に優し気に笑ってた。そういって母親が作ってくれたおつまみに手を伸ばす。ビールはこのくらいにしておつまみで口を満たそうとしてるみたいだ。
 
「どうだ足軽。今年は凄いぞ。特にここだ。ここのバッターが凄いんだ」
「野球に興味ないって知ってるだろ?」
「まあまあ。お前が好きな漫画とかみたいだぞ」
 
 そんな事を野々野足軽へと言ってくる父親は足軽を無理矢理隣に座らせた。いつもはそんなに干渉なんてしてこないが、酔っぱらってるからか、いつもよりはテンションがあがってるらしい。テレビで何を観てるかと思えばそれは野球中継だ。それも甲子園の映像だ。けど今は夜……リアルタイムじゃないのなら、既に結果が出てるのでは? とか思った野々野足軽だ。
 でもどうやら父親はそこら辺の情報を仕入れずに仕事終わりにその日にあった試合をゆっくりと観るのが好きなようだった。そして野々野足軽も野球に興味ないから、この試合の結果を知ってるわけもない。
 
 今は野々野足軽達は夏休みに入ってる。太陽が凶悪に降り注ぐ時期だ。万年家の中で過ごしてた野々野足軽だが、今年はどうやらそうではないみたいだ。今だって学校の宿題をせっせと取り組みつつ、色々と力を行使してる。なのでさっさとやるべきことをやらないと大変なことに……なるかもししれない。けど、こうやって父親が絡んでくるのも珍しいし、少しつきあってやるか……と息子として親孝行をしてやることにした。
 
「漫画って、なにそれ?」
「いやな、ここのバッターがホームランしか打たないんだよ」
「はあ?」
 
 野々野足軽はそんなに野球に詳しいわけじゃない。けどルールはわかってるし、学校の球技大会とかでもやったことはあるから観る分には困らない程度の知識はある。なのでそれがおかしい事なのはすぐにわかった。ホームランしか打たないってそれはもうおかしいなんてものじゃない。
 
「いやいや、いくら俺が甲子園に興味ないからってそれは酷いって。そんなのあり得るわけないじゃん」
「まあそう思うよな。お、ほら出てきたぞ。観てろ。きっと今日もホームランだ」
 
 そんな事をおつまみを食べながら父親は言う。そんなわけあるか……と思いながらも、テレビに視線を向ける野々野足軽。ちなみに近くにあった別のおつまみに手を伸ばす。バッターボックスに立ったのはいかにも野球少年って感じの丸刈りでこんがり日焼けしてる奴だった。てか大体丸坊主だから見分けが……とか思ってた。
 
 でも別段そんな特別そうには見えない。だって体格だってその彼は大きいかといわれるとそうでもない。普通だ。じゃあホームランをバカスカ打てるくらいに筋肉が服を盛りあげるほどにあるのか? となると、野々野足軽的には桶狭間忠国の方があるようにみえる。
 もちろん鍛えてないわけはないだろう。でも……そんなすべてのボールをホームランにするなんてほどに特別だとはおもえなかった。そして……
 
「ストラーイクツー!!」
 
 ――と既に宣言されてる。


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