悪魔の力が野々野足軽の足へとへばりついてくる。そしてそのまま落ちた。何をいってると思うだろう。だって野々野足軽は駅構内に立ってたんじゃないのか? とね。けど野々野足軽が駅構内に入った時には既に真っ暗な『闇』だった。
でもその闇に自然と立てたんだ。普通に歩けたし……まあけど野々野足軽は駅構内に侵入して歩いたのは三歩くらいだ。なにせ闇だったし、これ以上むやみに歩くのは危ないと思ってた。それに野々野足軽には力がある。だから下手に歩くよりも力を使う方がいいと判断してた。
「この――」
床に立ってたと思ってたら、実はそこは何もない場所だったというのは結構びっくりする。そのせいか、ちょっと力が不安定になった? 一気に心に悲しさ? というのか……絶望とでも形容すべき感情が襲ってくる。
そのせいか、目の前がぼやけた。頭ではこれはまずいってわかってる。そもそもが何が悲しくて涙が出てるのか……それが頭ではわからない。感情だけが先行してるみたいな……頭では心を落ち着かせようとしてるのに、心はそれをきいてくれない。
野々野足軽の力がバチバチと周囲に漏れ出してる。感情の制御が出来なくなったから、不安定な心が力を暴走させようとしてる。なんとか野々野足軽は防壁を貼ろうと思うが……感情が制御できないからうまくできない。
このままじゃ、もしかしたらこの駅自体が消し飛ぶかもしれない。それだけ野々野足軽の力は大きい。それこそ草陰草案や、アンゴラ氏……さらに言うと悪魔ともその総量はきっと隔絶してる。それだけの力が何の制約もなく放たれようとしてる。
「ぐうううううううううううう!!!」
野々野足軽は自身の力を抑えるかのようにその手を肩に回して、抱きしめる。でも当然、それで力の放出がとまるわけじゃない。ただの気持ちの問題だった。
『まったく、しょうがないですね』
そんな声が聞こえたと同時に、野々野足軽の心がスッと穏やかになった。それをなしたのはいつの間にかいたアース。彼女が野々野足軽の心に干渉してた悪魔の力を追い出してくれたらしい。
「くっ……はあはあ……」
野々野足軽の心は自身の制御下に入ったはずだ。けど野々野足軽は苦しそうだった。なぜなら、野々野足軽の力の放出は止まったが、既に出ていった力が周囲を満たしてるからだ。さっきまで絶望に染まってたから気づかなかったが、野々野足軽の力が大量に出たことで、周囲が明るくなってた闇が光になってる。
そしてさらにまずいことは……
「まざりあってて、このままじゃ……」
ただ単に野々野足軽が力を回収する……と言う段階は既に超えてしまってた。放ったままの力なら回収できたかもしれないが、周囲の闇を吹き飛ばすほどに干渉した力はもう簡単に野々野足軽だって回収できない代物になってた。でもこのまま放つとなると……それこそ駅自体が消え去るかもしれない。駅だけならまだいい。
問題はそこにいるであろう人々まで消え去る可能性があることだ。それを引き起こした張本人? それに野々野足軽はなる気はなかった。そんな罪を背負う覚悟は今の野々野足軽には流石にない。