自治体法務(政策法務)が元気がないように思う。もともと自治体法務(政策法務)は、霞が関法務のくびきから逃れて、自治を実現するためのものであった。政策法務が言われ始めたころ、粗削りで、ややぴんとはずれの事例もあったが、霞が関法務を乗り越えようという意気込みが満ちていた。1990年なかごろだったと思う。
いまあちこちで、地方自治法138条の4③についての住民監査請求、住民訴訟が起こっている。市民参加の検討会を設置して、政策課題を検討する方法が一般的になっているが、その検討会が要綱設置で条例設置でないことが、違法だという議論である。
確かに、138条の4③には、「普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」と書いてある。これを形式的に読めば、調査や諮問のための市民参加委員会は、「条例」で設置しなければいけないように読める。
監査委員や裁判所は、この文理に忠実に考えて、要綱設置では違法と判断するが、本当だろうかというのが自治体法務(政策法務)の出発点である(判例が実務に追いついていない例である)。
霞が関法務を跡付けると、「機関」にならない道を探ることになる。報酬の払い方や組織にならないように検討委員会の設置要綱を苦心することになる(むろん、こうした対応も準備する必要がある)。
自治体法務からは、まず自治経営の基本から考えることになる。どうみても、役所(信託論)だけで自治経営はできないから、市民や自治会・町内会・NPO等の民間セクターも大いに頑張ってもらうことになる。この延長線では市民の参加も当然のことになる。しかも、日本の地方自治は二元代表制で、首長と議会が政策競争をするなかで、市民にとってのベターを提示していこうというシステムなので、執行部が、市民のニーズを聞くのは当然ということになる。当たり前のことであるが、執行部は市民の意見に縛られず(大いに尊重はするが)、また議会も縛られない。市民ニーズを把握することで、政策の質を上げていくのが、地方自治と考えると、首長も議会も、むしろ積極的に市民参加組織をつくり、政策の質を上げるべきということになる。これが自治経営のあるべき姿ということになる。
こうした自治経営の基本を踏まえると、138条の4③は、どのように考えるのか。要するに、条例設置の委員会と要綱設置の委員会があり、138条の4③で規定しているのは、前者の場合ということになる。では、どんな場合が条例設置なのか。
これは条例とは何かという基本に戻ってくる。具体的には、執行部や議会で、修正がきかず、審査会の決定が自治体全体の決定となるようなものは、条例設置でなければならないだろう。市民検討組織をつくり、自治基本条例や市民参加条例のたたき台をつくることは、そこからの提案は、市民の意見を踏まえた一つの提案であり、これをたたき台に、その後、執行部や議会で、大いに議論して、もっともふさわしいものを決めることになるので、必ず条例設置である必要はないだろう。
要綱設置ではダメという意見は、執行部は、徒手空拳で政策をつくれという意味であり、それを地方自治を推進する法が予定しているとは、とうてい信じられない(執行部は、個々の有識者の意見なら聞くことができるが、何人かで集まって、知恵を結集した場合は、意見は聞きことができないという、奇妙な結果になる)。
ただ、昭和22年制定の地方自治法は、執行部が政策を出すことをそもそも期待していない(国が出すので、それを忠実に実行すればよい)のだと考えと、従来の解釈の意味も分かるような気がする。
要するに、どのように自治を経営するのかという基本が問われているのだと思う。
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