松下啓一 自治・政策・まちづくり

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★カリスマ職員と学ぶ(NOMA)

2015-07-11 | 地方自治法と地方自治のはざまで

 今夏のNOMAの研修は、愛知県一宮市の川合信嘉さんに来ていただき、協働のポイントをじっくりと伺うことができた。

 川合さんは、協働担当13年のベテランである。役所の中でも、法規担当などは一般に長くなるが、協働担当で、ずっと長くやるというのはあまり聞かない。その意味では稀有な例だろう。

 自治体のどの仕事でも、3年目の壁がある。最初はよく分からず夢中にやる。2年目になってわかったような気になるが、3年目に入って本当の難しさに気づき始める。その問題を抱えたまま、その後、1,2年、なんとか仕事をこなすが、多くの場合、抱えた問題の解決の道筋が見える前に異動になる。

 同じ仕事を13年もやってると、みんなが一度、通る道をすでに通っているので、その経験に基づくアドバイスをしてもらえる。そんな意図で、来てもらい、実際、ベテランならではの体験、経験に基づく話をたくさんしてもらった。

 例えば、NPO支援の継続性である。ふつうは、3年とか5年で、財政支援は終了である。ずっと続けるのは、NPOの自立性を阻害し、行政におんぶにだっこのNPOになってしまうからである。これはこれでもっともであるが、NPOの中には、もともと経済的自立性を期待できないものがある。

 例えば、ホームレス支援のNPOは、ホームレスから支援料を取るわけにもいかず、また寄付で運営すべきというのはひとつの理想であるが、現実には難しいために、経済的に自立して運営するのは至難である。また、ホームレス支援のような救貧活動は、もともと福祉活動の原点のような事業で、行政が直接行うべき事業ともいえる。このように公益性が極めて高い事業については、例外的に継続的な支援が必要な場合があるのではないかというのが、川合さんから出された問題提起である。

 住民投票のように〇か×だけで済んだら、ある意味簡単であるが、しかし、行政課題は〇と×の間に、無数の妥当点がある。しかも、テーマや事例によって、その決着点の位置が違ってくる。そこを探り、着地させるというのが、行政の仕事である。NPO支援についても、NPOの自立性は基本で、継続的支援はその自立性を妨げるので、期限を限るのは原則であるが、それだけではすまない場合があり、その例外をどのように仕切るかが問われてくる。

 この仕切りを納得的に設定するには、極めて高い公益性とは何かを判断する仕組みや、モラルハザードを防ぐための仕組みなど、慎重かつ周到な準備が必要で、厄介な作業になるが、それを一つひとつ解きほぐしながら構築していくのが行政の仕事である。大変であるが、こうした柔らかな公平性が自治体職員に期待されているということが、川合さんの問題提起なのだと思う。

 NOMAの研修は、短期間の上に、全員が初対面なので、運営が難しいが、今回の研修生も、ワークショップを始めると、途端に和気藹々と、とてもいい雰囲気になった。協働という同じ土俵にいるためだろうか、あっという間に打ちとける。受講生の中には、今年、大学を卒業したばかりという受講生もいて、まるでゼミ生と変わらない。

 研修では、焼津の魚河岸シャツや新城市の若者政策なども紹介できた。むろん定番のRisaのファッショショーやK.sかぁの鰹節の話も出た(私の名前をグーグルで検索すると、なぜか画像は私ではなく、ファッショーの画面になる)。有意義な時を過ごすことができたことに感謝したい。

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