【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第64回
「天の時 地の利 人の和」(孟子)
四書五経とは、数ある中国古典の中から、特に儒教で重視されている9つの文献のことで、
四書とは、「大学・中庸・論語・孟子」、
五経とは、「易経・書経・詩経・春秋・礼記」になります。
今回は、四書の中にある「孟子」からの一節になります。
「天の時は地の利に如(し)かず、地の利は人の和に如かず」
戦いに勝つための条件として、昔からこの3つのことが言われてきました。
孟子(もうし)は、この3つに優先順位を あえてつけています。
経営や人生においても、何か始めようというときに この言葉は参考になるかと思います。
「天の時」とは、まさにタイミングが大事だよ と言っています。
時代の波や、景気などの状況をどう見極めるかなどが とても重要だということになります。
ビジネスなども、どのタイミングでスタートするかによって、
どれだけの利益を得られるかなども 決まってきます。
次に、「地の利」です。いくら天の時に恵まれても勝てないのは、
地の利を得ないからだというのです。戦い不利な地形に布陣したのでは、
これまた初めから苦戦を免れません。ビジネスにおいても、
お店を出すなどにしてもどこで お店を出すかはとても重要になってきます。
ただ、この天の時と地の利が整ったとしても、
もっと大事なものがあると孟子は言っているのです。
それが、「人の和」です。まさに、これは 内部の結束力になります。
組織の中で、いくら資金面や戦略や、業績が良かったとしても、
この人間関係が整っていないと 一時的なものとなってしまう可能性があります。
ただ、この組織の和 ばかりが強調されてしまうと、
一人一人の個性も消されて 埋没してしまいます。
理想的な組織とは、個性が発揮されるような環境がありながらも、
組織的に調和してお互いに活かしあって、支え合っている組織ということになります。
ですので、組織で成果を得るためにも、この「人の和」はとても重要なものになってきます。
現代的にいえば、日本の組織は 伝統的には、この「人の和」というものを重視してきていたので、
これが日本企業の強さと呼ばれた時期もありましたが、
様々な環境的な変化や時代の流れで、多様性が求められるようにも、
「人の和」の定義もどんどん変化してきているようにも感じます。
異質な背景やバックグラウンドを持った人たちだからこそ、
お互いに認め合いながら、活かしあうような時代になっているように感じます。
個人的には、3つ目の「人の和」を 特に大事にしていきたいと思っていますし、
だからこそ この東洋思想を通じて、自分を磨きながら、
みんなで仲良くしていけるような 社会を作っていきたいと考えています。
参考文献
『四書五経の名言録』守屋洋著 日経ビジネス人文庫