On The Road

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2010-03-03 21:19:44 | OnTheRoad第5章
 高校のときも僕は何をするにもこだわりがないと思われていたらしい。短距離でも跳躍でも出場する選手がいなければなんでもいやがらずにやっていた、とあずが笑った。なんでも得意なわけじゃないけどホントいやがらずに。
 あずは長距離が得意だったから、ほかの種目をやるつもりはなかったそうだ。仕方なくじゃなくて、一生懸命やっている僕はカッコよくなかったかもしれないけど、あずはそんな僕を「けっこう好き」だった。「だってマネできないもん」

 「僕は自信を持って堂々と走っていたあずの脚が好きだったんだ」と言って僕は気付いた。あずの脚は茶道部の木村さんの脚に似ているんだ。

 「脚が好きなんて言うとセクハラになるよ」と言ってから、「私はほっそーい脚になりたかったんだ」とあずが笑った。「あのときにそう言ってくれたら、拒食症になんかならなかったのに」
 「17や18の男子なんてガキだから気付かなかったんだ。ホント、ごめん」。僕は何度も頭を下げた。「そのままでいいよ」

 「なんか、恥ずかしくなってきたから、頭下げないで。つらいこともあったけど、今はけっこういい感じだから」。あずが言って喫茶店の伝票を手に取った。「コージ君は300、私は350円」僕たちはワリカンと決めていたけど、僕が350円渡すと、ありがととあずが受け取った。



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