７０年前に制作 「希望の馬車」見本盤
東海林太郎
発見された「希望の馬車」
戦前から戦後にかけ国民的歌手として活躍した東海林太郎さん（１８９８～１９７２年）＝写真＝の未発表音源が見つかった。約７０年前、関係者の試聴用に作られた見本盤だ。制作したレコード会社、テイチクエンタテインメントにも原盤が残っていない歌で、貴重な発見だ。
見つかった歌は、「希望の馬車」。小笠原美都子さんとの共演曲で、＜走れ 走れ ランランランラン＞などと、東海林さんらが軽やかに歌っている。
戦前レコード文化研究家の保利透さんが１年ほど前に入手、テイチクが８月に発売したＣＤ「スター☆デラックス 東海林太郎」に収録した。同社にはレコード原盤が残っていなかったが文書資料は存在しており、１９４１年７月７日の録音であることが判明した。
保利さんは「東海林さんはきちょうめんな人で、自分でも同曲の録音を記録していることはファンの間では知られていた」と話す。当時は、曲をとりだめするケースが多く、保利さんは「戦時下で物資が乏しく余計なレコードを出せなくなったのでは」と話す。テイチクの檜山直樹ディレクターは「東海林さんは同時期に戦時色が強い歌も出しているが、戦時下に『ランラン』などという歌詞はそぐわないとされたのかもしれない」と、推測している。
（2012年8月31日
読売新聞）
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