Mudanin Kata / ムダニン・カタ | |
panai / NATURE BLISS INC. |
これは、以前から気になっていたCD。
チェロ奏者のデヴィッド・ダーリングと台湾の少数民族、ブヌン族という人たちの合唱をかけ合わせたCDで、発売当時けっこう話題になったと思います。
しかし、このデヴィッド・ダーリング。個人的にかつてECMを聴き始めの頃に出会った人であり、かなり印象にも残っているのだが、しかしどうしても音楽が甘すぎる(イージー・リスニングっぽい)と感じることが多く(当ブログでも以前何度かグチった)、今ではなかなか素直に受け入れられない感じにも。
なので、以前このCDの存在を知った時も、「きっと、素朴な民族音楽の合唱にダーリングのチェロをかぶせてアクを抜いて、聴きやすくしているんだろう」なんて考えて、多少敬遠していた面があったわけです(それと、中古価格も高かったし)。
それが、今回久しぶりに中古屋で見つけて、しかも安かったので聴いてみると、これがけっこう良い。このブヌン族の合唱は、正式には「pasibutbut」というらしく、Youtubeでちょっとチェックしてみると、ホントにCDでやっているのと同じ。
ある動画の中で、女の人が「自分たちは本当に歌好きでいつも歌っている。それも、他の部族は一人か二人で歌うが、自分たちはみんなで協調して歌う」という趣旨のことを言っているのだが、多人数での、しかも何声にも及ぶ多声合唱が非常に独特で、民族音楽研究的にも非常に貴重なんだそう。
CDの内容としては、その合唱にダーリングのチェロ等でシンプルな伴奏をつけた曲が大半で、それがなかなか雰囲気があって、確かに癒し効果も有りか、と。あとはチェロ独奏のECMみたいな雰囲気の曲をところどころにはさんだり(ただ、独奏や、伴奏の曲でもチェロの部分は別録りだったりするみたい)で、構成的にも飽きさせない。
とまあ、ある意味これは、かつての予想通りといえば予想通りなんだけど、しかしもしこれが、ダーリングのチェロなしでブヌン族の合唱だけ聴いたらこんなにスッと耳に入ってきたかというとそうではなくて、やはりこういう演奏も効果があるんだなあと合点がいったというか、今までの態度をちょっと反省した次第。
というか、考えてみれば、むしろダーリングは以前からこういう音楽をやっていて、それをぼくが勝手に「違う」って思っていただけだったわけで、別にケチをつける筋合いもなかったのかも。
あと、解説を読んでいてちょっと気になったのが、最初ダーリングが台湾を訪れた時、コンビで何度もECMに録音を残しているケティル・ビヨルンスタも同行していたらしいということで、もしかしたら、最初の構想ではビヨルンスタのピアノも入れる予定だったのかもしれない。
そうなれば、またどんなCDが出来上がっていたのか、ケティル・ビヨルンスタもちょっと思い入れがあったピアニストでもあるので、あれこれ想像してしまいます。