On a bench ブログ

ようこそ、当ブログへ。ジローと申します。
 毎日毎日、たくさんのCDやLPを聴いて過ごしております。

聴いたCD Michel Godard : Le Chant du Serpent

2017年09月30日 | ジャズ(フリー系)
Le Chant Du Serpent
 
Fremeaux & Assoc. Fr

Michel Godard (Serpent, tuba, ophicleide) Linda Bsiri (voice)  Marta Contreras (voice)  Catherine Dasté (voice)  Armelle de Frondeville (voice)  Jean-François Prigent (voice) 

 久しぶりにミシェル・ゴダールを聴く。

 ミシェル・ゴダールというのは基本的にフランス人のチューバ奏者なんだけど、メガネとモジャモジャ頭にヒゲ、そして横幅の大きい、いかにもチューバという楽器を吹くのに適しているように見えるおじさんで、主要な活躍場所はフリー系のジャズといったところでしょうか。

 で、普段そういうジャンルのCDを聴いているとけっこうよく見かける人で、自分が主役の盤もけっこうあるし、かなりいろんなところに顔を出してもいて、参加盤となるとすごく多いんじゃないかと思います。そしてこの人の代名詞といえば、何と言っても「セルパン」という古楽器。これは、チューバの祖先の楽器で全然ちゃんとした楽器なんだけど、とにかく見た目が強烈。黒くて曲がりくねっていて、ホントに黒い蛇(フランス語でセルパンは蛇)のように見える。で、この人が以前はほとんど廃れていたらしいこの楽器を取り上げ、さかんに演奏して復活させているというわけ。

 音楽的なジャンルとしては、往古のヨーロッパの古楽のジャンルから現代音楽的な要素、世界の音楽などを融合させてかなり独特な雰囲気(しかし、聴きにくくはない)の音楽を作りだしているという感じだけど、やはり一番の魅力はというと、チューバやセルパンの持つ、太い低音の響きに尽きるかなあと思います。特に、日本なんかの風土からするとこういうボリュームのある低音の文化はなかなか出てこないと思うし、こうして久々に聴くと、ああ、やっぱり時間的にも空間的にも遠いんだなあというか、ある種の「異界感」みたいなものさえ感じてしまう。

 で、この盤については、ぼくが見たのは今回初めてだったけど、録音年(1989年)からして彼自身の作としてはかなり初期のものかもしれない。構成としては、恐らくどのトラックも多重録音でゴダールがチューバ、オフィクレオド(セルパンからチューバに変化する途中に現れた楽器)サーペントによる低音のみのアンサンブルを奏でていて、そこに女声ヴォーカルが入るという感じ。音色が色々違うので、恐らくチューバも一種類じゃないかもしれないし、女性ヴォーカルは語りっぽいトラックがあったり現代音楽ぽかったり、曲も自作のほか即興っぽかったりジスモンチの曲や女性ヴォーカルの一人が作った(っぽい)曲があったりと変化も豊富。それと、ヴォーカルの中には女声のような男性の裏声の人もひとりいるみたい。

 全体の雰囲気としては、ジャズというよりもチューバ自体がクラシックの楽器だし、女声ヴォーカルもクラシックの匂いが強いので、古楽のアンサンブルがある企画として現代的な試みをやっている、という感じに近いかも(まあ、この人の盤は大体こんな感じというか、雰囲気が似ているんだけど)。

 実はこのゴダール、過去には他の盤であまりピンとこない盤もあったりしたのだが、この盤に関しては女声とチューバのみという構成がかなり功を奏して耳に残ると思うし、やはり初期の盤で活きがいいという面もあるのか、何だかついつい繰り返して聴いてしまった。

 それと、この人の音楽を聴いていていつも思うことのひとつは、ヨーロッパにはこういう変わった人が(ぼくが知っているのはほんのわずかだと思うが)たくさんいて、そういう人の存在が、ヨーロッパの音楽の厚みに一役買っているのだろうなあ、ということ。これは、かなりうらやましい。

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聴いたCD 門 光子 : ACROSS THE UNIVERSE 嘆き、祈り、そして踊る⋯。

2017年09月27日 | 現代音楽
ACROSS THE UNIVERSE 嘆き、祈り、そして踊る⋯。
 
M・A Recordings

〔曲目〕
・サティ:「メドゥーサの罠~ピアノのための7つの小品」よりポルカ
・サティ:ジムノペディ第1番
・ケージ:ある風景の中で
・フィデリコ・モンポウ:歌と踊り第6番
・アルヴォ・ペルト:アリーナのために
・グラナドス:組曲「ゴイェスカス」第1部~「嘆き、または美女と夜うぐいす」
・グラナドス:スペイン民謡による6つの小品~「サパテアード」
・藤枝守:モサラベ聖歌
・アンドリュー・ヨ—ク:祈りと踊り
・Jジョン・レノン& ポール・マッカートニー/ベリィ・サンドクヴィースト:アクロス・ザ・ユニバース

 これは先週だったか、中古屋のクラシック・コーナーのワゴンの中でたまたま見つけて、けっこう気に入ってしまったCD。

 雑多なCDがたくさん埋まっている中でひょいと手に取ったのがこの1枚で、ピアノものらしいけど何だかマイナーっぽいし全然知らないピアニストだからまあいいかと戻そうとした瞬間、「M・A Recordings」のレーベル名が目に入って、「おっ!」と思って曲目を見てみるとけっこう面白そうな選曲だと気づいた。

 で、聴いてみると、これがなかなか良い。ピアニストは門 光子(かど みつこ)さんというアンドリュー・ヨークと共演歴がある方で、録音は2006年ともうけっこう時間がたっているが、この時点でほかにも2枚「M・A Recordings」に録音があった模様。日頃このレーベルが好きだと言いながらも、自分はあまりクラシックに関してはチェックしていなかったので、これまで全く見逃してしまっていたらしい。

 で、このCDには「人間の根源的な悲しさと祈り、そしてつかの間の歓び」というテーマがあり(やはり、全くテーマがないものより、ある程度全体の主題があるほうが好きだ)、それに沿った選曲が特に前半聴き応えがあって、かなり浸れた。まず、サティの「ジムノペディ」第1番の遅いテンポでちょっとドキッとして、ケージの夢見るような美しさの「ある風景の中で」で陶然として(聴いたのは10年ぶりくらいかもしれない)、さらにずっと長い間遠ざかっていたモンポウの「歌と踊り」とアルヴォ・ペルトの(こちらも、たまに聴くと良いと思ったりもするけど、正直暗すぎてシンドイので遠ざかってしまう)「アリーナのために」という流れが秀逸というか、さらに陶然としてしまった。

 いやあ、ペルトもこうして1曲か2曲途中で挿し込んでくれるくらいなら、すごく良いとは思うんだけど・・・。それと、次のグラナドスも遥か昔に聴いて「なんだかゴチャゴチャとうるさい作曲家だな」と思った記憶くらいしかなく、そろそろもう一度再挑戦をとは思いつつも、なかなか手が伸びずにいたりした作曲家。「ゴイェスカス」なら何度も聴いたはずだが、こんな曲これっぽっちも覚えていなかった。

 ・・・というわけで、全体的にもとても美しい演奏が多くて(ただ、録音はちょっとくぐもった音にも聴こえたけど)、ホントに拾いものという感じだった(安売りのワゴンでホントに安く買ったので、なんだか申し訳ないようにさえ感じてしまった)。

 このCDの前に出した2作にもちょっと興味あるけど、探すとなるとかなりレアそうだなあ。

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聴いたCD Craig Brann : Mark My Words

2017年09月24日 | ジャズ(弦:Guitar,bass 等)
Mark My Words
 
Steeplechase

Craig Brann (g)  Greg Tardy (ts)  Mark Turner (ts)  Nicholas Kozak (as)  Nicholas Morrison (b)  Rudy Royston (ds)

 これは、ここ一週間くらいよく聴いたCD。

 ニューヨークで活躍するという若手ギタリスト、Craig Brann による2作目。このところ、ジャズではかなりギターの盤を拾う率が高くて、これもDUでギターのコーナーを見ている時にこの人の盤が何枚も並んでいるのを見つけたうちの1枚なんだけど、かなり良いです。

 で、このCraig Brann 、これがセカンド・アルバムで、その前のデビュー盤がクリスマス・アルバムだったと後で知って、クリスマス・ラウンジみたいな軽いノリの盤も作るのかと思ったら、そうではなくて、実はすごく敬虔なクリスチャンで、そういう意味合いでの制作だったみたい。「えっ、そうなのか。しかしそれは逆に興味深いなあ」と思って、またいつかチェックしようとその盤を調べてみたら、あららっ、何だか見覚えが。その盤、以前にすでに購入済みでそのままうっかり忘れていたのだった(基本的に、同じようなこの人の横顔のジャケットで、だから何だか妙な既視感があったのかと)。

 で、あわてて探し出してそちらのほうも聴いてみたのだが、演奏的にはこちらのほうが断然充実感あり。デビュー盤のほうは、何だか質素で朴訥な感じが漂っていたが、こっちのほうが音が張っていて、躍動感もあって面白い。

 といって、この人のスタイルは非常にシンプルというか、テクニック的にはあまりごちゃごちゃと余計なことをせずに、聴きやすい演奏に徹しているという感じ。なんだか、普段ニューヨークで活躍しているというのがミスマッチにも感じてしまう。

 とはいえ、それは彼自身だけに限った話で、ここではGreg Tardy 、Mark Turner ほかの共演者が今風の演奏を繰り広げていて、そういう先進的な雰囲気とBrannのある種保守的な雰囲気がうまくかみあって、そこが実はこの盤の魅力ではないかと。

 実際、Brannのプレイはリーダーだからやはり目立っているし、たまに高揚感がないわけではないものの、一生懸命がんばってソロで汗をかいているのは3管の人たちで、ふつう3管だとけっこううるさくなりがちだと思うのだが、ここではうまくBrannがコントロールしているのか、最初危惧したように彼のギターが埋もれたりすることもなく、基本的にとてもリラックスした雰囲気になっている。そして、それでいて変化があって楽しい。

 自分も、普段やはりニューヨークの売れ筋の人たちのCDを聴くこともそれなりにあるのだが、どうもそういう演奏って、繊細で芸が細かいのはそうなのだが、その分ちょっと線が細くなっていないかとか、ムリに新しさを出そうとしているようにも見えたりして、結局あまり気に入らないことが多いというか。

 そういう意味では、この盤みたいに(別にそんな意図があったではないと思うが)、そういう新奇な部分をサイドメンに任せて、自分はそれをコントロールして全体を見ていくというやり方は、ちょっと賢いのかもと思ったりもした。

 ともあれ、このCraig Brann 、非常にしっかりした芯があるミュージシャンに見えて、好感触。これからも、ちょこちょこと聴いてみたいです。

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聴いたCD モーツァルト:ピアノ作品集(アンヌ・ケフェレック)

2017年09月19日 | クラシック
Piano Works
 
Mirare France

〔曲目〕
・ロンド イ短調 K. 511
・デュポールのメヌエットによる変奏曲 ニ長調 K. 573
・幻想曲 ハ短調 K. 475
・ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調 K. 457
・幻想曲 ニ短調 K. 397

 このところ、自分の中で何か変化があったのか、長らくあまり聴けなかったモーツァルトがやっと聴けるようになってきた。ということで、ここ1,2週間ピアノを中心に数枚聴いていた中でも、これはかなりよく聴いた1枚。

 ちなみにこれ、ネットのデータでは輸入盤しか出てこないけど、自分が買ったのは(むしろジャズの方面でよく聴いている)MAレコーディングスが輸入した、日本語解説もついているもの。MAレコーディングスは美しい演奏が多くて以前から好きなレーベルだけど、これも聴いてみて、さすがというべき1枚かと。

 それと、ピアニストのアンヌ・ケフェレックは最近よく聴くようになったピアニストで、きっかけはスカルラッティのソナタ集だったと思うけど、徐々に好きになってもきているので、その点もこの盤を買ったきっかけのひとつ。

 というわけで、このCD。録音にこだわりがあるMAレコーディングス経由ということで音質もクリアでやや硬質な中にも温かみが感じられてすごくいいし、アンヌ・ケフェレックの演奏も、批評みたいなことは言えないし別に言いたくもないけど、言ってみれば上のジャケットみたいに素敵で美しい。具体性に欠けた表現になるけど、演奏家としての厳しさはもちろんある中で、包容力や作品への尊敬や愛情、優しさみたいなものを感じます。

 モーツァルトの演奏で昔からちょっとイヤだったのは、すごく全身全霊で、神経質で陶酔したような感じの演奏だった。そういう雰囲気を感じると、悪いけどちょっと引いてしまう。それより、「大人」として演奏するならやはりある程度の距離は必要で、例えばモーツァルトに微笑みかけているような雰囲気が出ていたらいいと思う。あと、CDの解説とかでのモーツァルト礼賛の熱っぽさも、もうちょっと抑え気味にしてくれればいいのにと思うことも多かったり。

 ・・・おっと、いけない。あまり毒を吐くのはやめておこう。

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聴いたCD Richie Beirach : EON

2017年09月10日 | ジャズ(キー:Piano,Organ 等)
ナーディス
 
ユニバーサル ミュージック クラシック

 Richard Beirach(p) Frank Tusa(b) Jeff Williams(ds)

 どうも、ジローです。

 う~ん、この投稿、けっこう久しぶりというか、8月中旬に前回の投稿をしてから約3週間も経ってしまいました。いやあ、こんなに間が空いたのは、約10年前にHPを立ち上げて以来、初めてかも。

 今回、特に何かはっきりとした理由があったわけじゃないけど、いやむしろそうでないだけに、自分でもちょっと戸惑ってしまったというか、地味にショックでした。

 これが単なる小休止なのか、それとも自分の中で何かが変わってしまったのかはまだよく分かりませんが(文学の分野のツイッターも同時に止まっていたけど、そっちは2,3日前にとりあえず再開)、しかし10年といえばやっぱりそれなりの長さ。すぐにはっきりと止めようとは思ってはいないけど、正直、何か曲がり角には来ているのかもしれません(といって、これまで通りに音楽を聴いていれば、自然に感想が湧いてくるし、沸いてくればこうして書きたくなるような気もするのだが)。

  ・・・・

 それはさておき、これはここ数日よく聴いたCD。もともとのタイトルは「EON」だけど、日本盤では「ナーディス」。

 実はこのリッチー・バイラーク、これまでECMを中心に多少は聴いてきた中で、正直あまりピンときたことがなかった。しかし、これは良いです。何と言うか、とにかく全体に「フレッシュさ」みたいなものが満ち溢れているという感じ。

 それは多分ECMとしてもまだそうだったと思うし、リッチー・バイラーク自身としてもそうじゃないだろうか。思えば、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」やヤン・ガルバレクとヒリヤード・アンサンブルの「オフィチウム」を聴いて以来、ECMをかなりの数聴いてきたんだけど、結局好きだったのは概ね比較的初期の音だった。

 もちろん今でもECMからは盛んに新譜が出ていて、音質自体はそりゃあ今のほうが断然いいし、この「EON」とも比べ物にならないと思うけど、しかしこの場に満ちている空気感はまさに新しいムーヴメントが勃興期にしか身にまとえない熱気というべきものではないか、というような思いが強い。この盤、もう何度も聴いたけど、その最初の1音からしてすでに今の音とは根本的に何かが違うというか、久しぶりにECMでアドレナリンが分泌された感じ。

 バイラーク自身も、これがデビュー盤だったということで、彼のピアノを表現する言葉としてはどうしてもどの盤をとっても透徹した北欧的な叙情性みたいなことになってしまうと思うのだが、しかしやはりここにある若さと熱気、(以前聴いた音源は正直あまり覚えてないけど)きっとそれより数年後とは違うような気がする。あと、ドラムスの音の感触とかも、ホントに以前何度も聴いた感触なんだよなあ(ドラマーは違っても)。

 リッチー・バイラーク、最初の頃にこの盤に出会っていればよかった。

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